想定外の事態のお話
仮眠のつもりが寝込んだ罠
日が変わる前に出来上がって良かった
合体!?
その心を揺さぶるフレーズに思わず足が止まりそうになるが、それを必死に我慢して動き続ける。
はっきり言うが、現在の状況は決していい訳じゃない。
秘密兵器じみた感じで出してきたそれらだが、普通、こんな一介の野盗風情がそこまで強力な機体を持ってるとは思わなかった。
けど、いざ対峙してみるとこれが予想以上に厄介だった。
リーダーが「おそらく古代遺跡の発掘ゴーレムだ!気を付けろ!」って叫んでたけど、本当に強い。
上から落ちてくる雷。
これに当たると痺れるらしく、二組いる護衛パーティの片方の戦士がお陰で早々に戦線離脱に追い込まれた。完全な麻痺ではなかったが、動きが止まった所に砲撃が飛来し、吹き飛ばされた。
幸運な事に盾がある方向からだったので直撃ではなかった為、命はとりとめたものの、重傷だ。直撃喰らった時の事なんか考えたくねえ。
おまけに、上と横に意識を持ってかれると音も臭いもなく忍び寄ってきた蛇が襲撃してくる。
こっちがまた厄介で、音も臭いもないもんだから、ギリギリまで気づかないときたもんだ。
(おまけに相手がゴーレムだもんなあ!!)
俺のスキル、首狩りはあくまで相手の生命の流れを断ち切る事で首を落とす技。
すなわち人工生命体であるゴーレムだと生命の流れって奴がない!
いや、力の流れそのものは感じるから、多分それを断ち切れるようになれば倒せるのかもしれないんだが……今は無理。
となると、一撃必殺が駄目なら後は他で何とかするしかない。
空を駆ける事で蛇からの攻撃をそもそもなくして、砲撃に専念した。
同じく空を飛ぶ相手からは傘を使うか、あるいは同じ高度に上がった。
どうも口というか嘴から雷発射してくるらしく、見てるなら発射タイミング分かるんだよな。もっとも、そっちに気を取られてると砲撃でヤバい事になるんだが。
とにかく、そうやって時間稼いで対抗策を考えている最中に「合体」の言葉が……!
多分、強くなるんだろうな。
掟破りの合体妨害の方がいいんだろな……。
だが、しかし!
合体を見届けずして、何が男か!!!
そんな俺の視線の先でふわりと丸っこいゴーレムが浮かび上がって……ええええ、二つに割れた!?
内部から胴体部分が展開、半球部分が更に分割、四つに分かれ、更に変形した内、二つは背中へと回りテールバインダー風に、残る二つが盾のように折りたたまれながら肩と接続される。
そこへ砲撃ゴーレムが駆け寄って、変形。
腕となり、胴体の肩に接続。
砲口から手が握られた状態でガシャン!と飛び出す!
更に、地を高速で這って、接近した蛇が中央で折れ曲がり、そこだけ明らかに太い別パーツがあったんだが、それが展開した胴体と合体して、腰部と脚部へと変わる。
最後に鳥が急降下しつつ変形して兜のような形状となり、胴体かがガキャーン!と飛び出した部分と合体して、頭部へと変わった!
さすがに名乗りを上げたりはしないが、そのまま重厚な雰囲気のゴーレムが完成したっ!!
「……おい」
何かな、リーダー。
「……お前なら、合体時にちょっかい出せたよな?」
「悪かったと思う。反省はしていない!」
だって、作った奴分かってるな!って感じでさ。
目の前で本物の合体ロボが完成していくんだ。そりゃあ、見てるさ!!
サイズとかも「なるほど、だからあれはあのサイズだったんだ」とか納得!
「ようし、行け!ゴーレム!!」
『…………』
あ、やばい、奴が動き出した!!
って、いきなりラティスに向かって全力で突っ込んでった!?
ちょっと待てええ!!……あ?
『お初にお目にかかります、マスター』
「え……え?え?」
「は……ってちょい待てえええええ!?てめえのマスターは俺だろうがああああ!!??」
……何か、ラティスの前で騎士みたいに片膝ついてんだけど。
ラティスは困惑して、あわあわしてる。
さっきまで威張ってた野盗の親分は呆気にとられた直後に喚きだした。
なんだ、これ。
誰か、この状況を説明してくれ。
ゴーレム合体プロセス
丸っこい機体が中央で分割されて、合体機構が露出
正解は砲撃機が腕になり、砲口から(何故か)握り拳がガシャーン!と飛び出てくる
蛇が真ん中で折れ曲がり、先端部が90度曲がって、更に中央部分が下方に折れ曲がって、胴体と合体
最後に鳥が合体、鳥の羽パーツとかが機体背部に装備され完成!