お頭の話
祝、一月連続掲載!
先月15日から掲載開始して、本日で一ヶ月となりました。今後もよろしくお願いします
くそっ!してやられた!!
現在野盗の親分をしている男は舌打ちした。
何時ものお仕事を、何時ものようにやるだけだったはずが、非常識にも空を駆けてきたウサギに三名いた弓持ちがあっさり仕留められた事で状況は一気に悪化した。
上からドサドサと首のない死体が落ちてくれば、しょせんは元々は一旗あげてやると村を飛び出したはいいが、現実の前にスラムでくすぶってたような連中を集めただけあって、あっさり声を上げて位置を暴露する奴が続出した。
これが兵士崩れや、男のような冒険者崩れならまだ下手に声を上げる事の危険性を理解しているから、悲鳴を我慢もするが、生憎手駒にそんな奴はほんの一部分だ。
一方で、護衛についてた連中はそれなり以上の手練れだったらしく、片方が守りを、もう片方が動き回って次々仕留めていく。
(……動きに迷いがねえ。最初からそう打ち合わせてたって事かよ)
このままだとそう時間を必要とする事なく、男の盗賊団は壊滅するだろう。
しょせんは数頼みの野盗と、普段から鍛錬を怠らない上位冒険者。
奇襲がうまくいってれば護衛って仕事の関係上、依頼人から離れなくなって後は降参に追い込めばいい。
男は商品の半分と引き換えに見逃していた。
全部奪ってしまえば確かに儲けはでかくなるが、その分こっちの被害もでかくなる。
頂いた後で約束を破れば、その分次回以降が面倒になる。
そう思ってたんだが……。やっぱしいつかは「そもそも奪われないようにしてやる!」って思うよな。
「ちっ、仕方ねえ……出番だぞ、おまえら!!」
五組九の瞳が闇の中で光った。
――――――――――
「そこまでだ、お前ら!!」
そう言って恰好良く子分達の前に出たまでは良かった。
俺の切り札。
以前は探索冒険者だったが、その時に潜った遺跡で偶然見つけた古代のゴーレム。
そいつを使って戦闘を仕掛けた、までは良かった。
五体のゴーレム達は強力だった。
それは間違いない。
鳥を模した一体は空を舞い、雷で攻撃。
破壊力は大きくないが、麻痺させる一撃は相手の動きを鈍らせ、こちらを優位に運ぶ。
もっとも大型で丸みを帯びた一体は盾役だ。
強固な障壁を盾状に展開し、攻撃を的確に防いでいる。腕で持っている訳ではないので、必要な方向に瞬時に展開できるのが強みだ。
二体は砲撃。
砲台というべき二体は動き回りながら攻撃を仕掛けている。
一体は蛇のような刃。
二体の砲台が遠距離から、一体がその攻撃の下を掻い潜って、鋭い刃にて砲撃でも仕留めきれぬ相手を斬る。
動きを鈍らせた上で、遠距離から攻撃を仕掛け、それを何とか防いでも下から伸びあがってくる刃に殺される。ならばとマスターを潰そうにも盾役が控えていて、防がれる。並大抵の相手ではどうにもならないはずのそれは現在、たった一体の魔物に何とかされちまっていた。
「よっ、はっ、ほっ、なんとっ!!」
そんな声を上げながら、空をかけるウサギ野郎。
空を駆けているせいで蛇刃は届かない。
砲撃は森の木々に巧妙に阻まれている。
鳥だけは警戒しているのか妙な盾を傘みたいに展開している。生憎、鳥型は攻撃力はそう高くない。奴の真価はあくまで動きを低下させる為のデバフ攻撃と、上空の視点を他に伝える事で砲撃と蛇刃という二つを当てるサポート役だからだ。
いや、サポート自体は大事だ。今はそれが役に立ってねえだけでな。
だが、別に不利になった訳じゃねえ。それどころか、一番機動性のある奴を足止め出来てるし、蛇刃は結果としてフリーになってる。こっからだ、こっから……だってのによお。
「お、親分……」
……手下共の目にはあんだけ強いゴーレムを出しても、仕留められないようにしか見えてねえらしい。
完全に逃げ腰になってやがる……。くそ。
「何、弱気になってやがる。いいだろう、ならあいつの本当の力って奴を見せてやるぜ!!」
なんかやな予感がしてんだけどなあ。俺はそれを振り払うようにして腕を振った。
「合体だ!!」
遺跡探索で偶然このゴーレムを動かしてしまった事が彼が転落するきっかけでもありました
自分自身の腕磨く事を忘れ、楽する事しか考えなくなったら、後は落ちてくしかないよね