戦闘護衛の話
気づけば、明日で一月連続投稿だった
【風の囁き 私にもそっとその声を届けておくれ】
常に使い続ける事は難しい魔法でも、すぐ傍まで来ていると分かっていれば問題はない。
「それなりの数がいますね……確かにこの数が、これだけきっちりと隠蔽を行って奇襲をかけたとなればこれまでの襲撃も納得いくというものです」
……口調は丁寧なんだが、声が全然笑ってねえな。
リーダーの指示で、あっちのチームの魔法使いが魔法を使った。
攻撃魔法もそれなりに使えるが、護衛という仕事の関係上、感知系統の魔法が得意なんだそうな。
護衛ってのは依頼人に被害を出さないようにするのが第一。
討伐は討伐相手が逃げたりしてない限り、一度は交戦しないといけないが、護衛は交戦が必須じゃない。というか、依頼人からすれば避けられる戦いは避けたいのが本音だよな、普通。だから、自然と感知系を磨くようになっていたらしい。詳細な場所を探ったりするのは負担が大きいが、害意を持つ相手が一定範囲に入ったら警報を鳴らす、とかなら割と長時間張れるとかいった結界系も同じく。
さて、そんな彼女が探った所、現在感知出来る野盗と思われる数はおよそ二十。
こちらの護衛の数は俺達込みで十二。
余りこちらの護衛が多すぎても相手が警戒して出てこない。
……うん、まあ、実は今回、野盗の被害に苛立った商人達に野盗討伐も兼ねて送り出された商隊なんだ。
俺はあの日、護衛依頼を探してたのは確かだ。
ラティスの為を考えると、討伐よりは護衛の方がいいだろうとは思ってた。
や、ラティス自身は俺についてくる気満々だったが、生憎、討伐は他と比べて特に高ランクと低ランクの同行が厳しく制限されてる依頼だ。もっとくわしく言うなら、低ランクの依頼に高ランク冒険者が教育を兼ねて同行するのは問題ないが、高ランク冒険者向けの依頼に低ランクが同行するのは規制が厳しい。
ま、分かるよな。
討伐って危険な魔獣を相手にする事が多い。
そんな場所に新人を同行させたらどうなるか火を見るより明らかってもんだ。だから、連れていく場合は依頼の規定ランクの一個下までで、連れていく人数も五人に対して一人まで。
Cランクへの依頼なら、同行出来るのはDまでって事だ。で、ラティスのランクはFで、俺がB。
Dランクの依頼なら問題ないんだが、そっちだと安いんだよな。
ただまあ、これも抜け穴があって、護衛とか狩猟/採取、探索という雑務以外のランクも同行資格として認めてもらえる。
だからまあ、護衛のランクを上げようとも思ったんだよな。俺も将来、世界を旅する時、護衛依頼ランクが高けりゃ、動きやすい。アイカさんを雇ってた前のパーティがそうだったように、高ランクの護衛冒険者は遠くまで行く仕事なんかを得やすいから、護衛をしながら世界中を旅するってのはありなんだよね。
そんな護衛依頼を探してる時に、ギルドから声を掛けられたのが今回の依頼。
襲撃された場合は積極的にそれを迎撃するって依頼だった。ラティスが参加できるか不安だったが、護衛の場合は討伐よりは同行規定が緩いのと、ラティス自身が後方に位置する魔法使いって事で認められた。
(けどまあ、だからって危険をそのまんまにする気はないけどな!!)
待ち伏せされてる直前、俺は空へ飛び出す。
一気に加速して飛び出した事で奴らも気づくだろう。待ち伏せに気づかれてるって。
それでも動けない。
何故って?
待ち伏せに気づかれてるのと、どこにいるか分かってるってのは別だからだよ。
いるな、ってのは分かっても森の中、どこに潜んでいるかとなるとこれが分からない点は案外多い。巧妙なカモフラージュを行うと想像以上に相手がどこにいるかは分からなくなる。転生前にカモフラージュした人達がどこにいるか分かるか、って画像を見た事あるけど、本当に全然分からない。
野盗連中も一部が気づかれても、他の大多数が気づかれてなければ成功するって可能性高いし、下手に動いた方がやばい、って事もある。
だからなんだろうが……。
失敗してる所もある。
こうしたカモフラージュを行ってる場合は即動けないといけない。
狙撃、スナイパーなんかも一度行ったら、即場所移動が鉄則って言われてる。いい場所を見つけて陣取る、ってのも一つの手なんだし、高所に位置すれば撃ちやすいが、同時に見つかったらぱっと場所を移動するのが難しい。
いやまあ、空飛べる種族とかなら問題ないんだけどさ。
今回の奴らは隠れるのは上手くても、そこまでは頭が回っていなかったみたいだな。
(攻撃を仕掛ける時の有利を狙いすぎたんだろうけどな!)
そう、弓の使い手達が樹上に潜んでた。
で、普通のウサギってのは聴力嗅覚は鋭いが、実は視力はあまりよろしくない。
視界は広くて何か動いた!ってのを感知するのはいいが、基本超近視。
要は、何かしら動いたものがいたら即逃げる、ってのが野生のウサギの生存戦略なのね。
これに対して首狩り兎は違う。
こっちから首を狩りに動く首狩り兎はその広い視野は変わらないが、もっと鮮明だ。
それでも、ウサギの特性自体は変わらず、視力以上に耳と鼻の性能が高い。
「植物の匂いと動物や衣服の匂い!ごまかしようがないぜ!!」
空間魔法で、空を蹴って蹴って加速する。
風魔法でぼんやりとでも姿を把握しづらくする。
高速の弾丸並みの勢いで突撃した俺に気づいた時はもう遅い!!
ドン!!
と、最後に一つ加速して一人目の首を飛ばした。
そして、それが戦闘開始の合図になった。
次回は野盗視点予定です
……あくまで予定です