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(ラティス)初仕事の話

 ラティスの魔法は予想以上に使えるレベルだった。

 今日は冒険者ギルドが金取って講義してる魔法取得の日だったらしく、ラティスも最初は新人達に同じように思われてたらしいが、中級クラスの魔法を使ってみせた事で「先輩」と思われたらしく、以後はこっちに最初のような視線を向けてきたりはしなかった。

 というか、あれだな。

 最初の視線は可愛い女の子がいるなーとか、仲間に誘えないかな?とかそんな視線だったわ。

 先輩冒険者と思ってくれてからは視線の質が変わってたな。

 それはさておき。


 「ほんじゃよろしく」

 「おう、こっちこそよろしくな!討伐ではBランクなんだろ、お前さん。戦闘力ではあてにしてるぜ」


 ラティス共々、護衛もランクを上げておこうと冒険者ギルドに頼んで、先輩パーティに見習いとして参加させてもらった。

 予定では往復で一週間以内という近場の護衛依頼任務なので、アイカさんとの契約はそのまんまだ。

 というか、長期護衛なんかで街を離れても、お金を支払っておけば契約を維持する事は出来る。出来るんだが、長いと一ヶ月以上食事とか作ってもらう訳でもないのにお金を払っておいて、しかも一ヶ月分払ったけどちょっと長引いて一月半かかったら自動的に契約解除になっているという……。

 アイカさんと前に契約してた連中は二ヶ月近く街を離れる長期契約になって、そうなると契約を維持するなら余裕も考えれば三ヶ月分は事前に支払いしておく必要があるって事で契約解除となったらしい。

 ちなみにアイカさん曰く「あたしゃ仕事せずにお金貰えるんだから、文句はないよ」って事だった。そらそうだ。


 「そっちのお嬢ちゃんは冒険者なり立てだったか?セレン婆さんから頼まれてるからきっちり教えてやるんで安心しな」

 「よろしくお願いします!」


 魔法詠唱者って事でローブと杖という装備のラティスがいる。

 ラティスは先だって冒険者登録した。

 とはいえ、俺と違って経験ないから最低限のEランクからのスタートだけど。

 ちなみにランクとしてはこの下にFとGがあるけど、Gランクは「このままだと冒険者登録はさせられない」という正真正銘の見習いランク、Fランクは「D以上の冒険者と一緒なら行動を認める」という卵の殻がまだついてるランク。Eからやっと「一応依頼受けていいよ」というランクになる。

 ただし、それはあくまで簡単な依頼に対してなので、今回みたいな一定以上の規模の護衛依頼だと俺みたいな上のランクのおつきという形での受注になるな。

 面白かったのは、こうしたおつきでも最低限の報酬が定められている事、冒険者ギルドからこうした見習い達の引率をお願いされるのは護衛依頼の主力となるパーティにとっても重要な意味があるって事だ。

 前者は以前に見習いって事でまともな報酬を与えていなかった事があったから定められた事で、見習いが報酬受け取った後で「今後も一緒に仕事したいなら」なんて脅して、巻き上げるような真似してたら冒険者資格剥奪の上、最悪街から追放という厳しい処置が為される事になる。要は実際にあったんだな、そんな事が。

 厳しい処罰に思えるだろうが、そういう厳しい処罰を目に見える形で示す事で抑止力にしてんだろうな。


 で、見習い引率を依頼されるパーティというのは「冒険者ギルドからの評価」を示すものになる。

 信用が置けるパーティじゃないとそんな依頼はされず、今回の依頼人の商人さん達もラティスが紹介された時むしろ喜んでた。冒険者ギルドからそういう依頼をされるような評価の高い護衛専門パーティだ、って証だからだそうだ。

 ……実はこの引率引き受けた回数ってギルドで依頼出す際に閲覧出来るパーティ評価に載ってるらしいんだよな。

 だから、何度も引率引き受けてるパーティはギルドからの信用も厚い、って事になるし、逆にランクは高くても引率を全く引き受けた事のないパーティは信用が低いか何かしら問題があるとみられるらしい……。当然ながらそれらは指名依頼や報酬額に直結する。

 それ聞いて、俺らみたいな護衛するのは初めて、なんて連中をあっさり引き受けてくれた理由に納得したわ。

 引率頼まれなかったり、引き受けない方が評判や報酬に影響すんだな……。

 護衛パーティのメンバーの一人は「だから引率をギルドから初めてお願いされたパーティの中には『俺達もやっとここまで来たか』って感極まって泣き出す連中もいるぐらいだぜ」と笑っていた。

 ……でも、そこまで引率を当り前と思ってもらうまでにはギルド、凄く苦労したんだろうなあ……。


 「ようし、じゃあ出発するぞ!!」

 「あいよ!」


 返事をしながら、俺はラティスにちらっと視線を向けた。

 討伐じゃなく、護衛に参加したのは確かに俺自身の護衛ランクを上げたいっていうのもあるんだけど、ラティスに経験積ませる為でもあるからな。

 ……俺だけだと何かあった時にカバーしきれないんだ。

 さすがになあ、多少弱い相手でも十体が相手とかだと俺、範囲攻撃とかは苦手なんで抜けられる危険があるんだよな。

 それを避ける為に、となるとパーティメンバーを増やすか、それともこうしてどっかのパーティと一緒に行動して、ラティスに経験積ませるか……まあ、見ての通り後者を選んだ訳だけど。


 「ま、俺も護衛の仕事は初めてだし、一緒に頑張ろう」

 「うん!」


 ラティスの元気な返事に内心で顔をほころばせた。

 けど、ラティス、俺を抱っこするのはこの場ではちょっと……周囲もなんだか微笑ましいものを見てるような視線向けてくるせいでどうにも居心地が悪い。

 いやまあ、これまでの首狩り兎(ヴォーパルバニー)に向けられる視線よりはマシなんだけどな。

 何というか、俺が抱っこされてる姿見て、周囲の連中の視線が最初の恐怖混じりの視線から急速にほっこりしたというか、優しい視線になってるからなんも言えんのよ……。 

ラティスだけじゃなく、ビットにとっても護衛という仕事は初になります

説明部分が長く感じるかもしれませんが、こういう事情で冒険者達は新人の引率を引き受けてくれます

ただし、新人の側もギルドに見極められてるから、というのもあります

記載してませんが、評判の悪い新人はこうした紹介をしてもらえないので、なかなか上へ行けません

つまり、ベテランチームに紹介される時点でギルドが「この新人達ならちゃんと指示には従う」と判断されるてますから、ベテランも安心して引き受ける訳です

ここでベテランから悪い評価を受けるとギルドからの評価も下がるので、新人もまともな頭があれば気を付けます

これによって、新人とベテラン、双方の質の向上をギルドは図ってます

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― 新着の感想 ―
[一言] なるほど、護衛任務の冒険者がチンピラみたいな奴じゃ信用できませんもんね。 付かず離れず、適切な距離を取って常に警戒し護衛対象の安全をはかるプロフェッショナル! その目安って訳ですな。
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