戦闘
血の匂いに気づいて、進路を変えた。
冒険者は互いに何かあった時は助け合いを基本としている。もちろん、余裕ある範囲で。
何せ、一旦ダンジョンや森の奥へと入り込んだら、基本出会える可能性がある相手となると同じ冒険者ぐらいだ。互いに助けられる部分は助け合っていこうというのには俺も賛成する。
だから、もし、この血の匂いが冒険者なら、まだこの辺ならどうとでもなるだろうと思って向かったんだが……。
「……駄目だ、こりゃ」
馬の他、四人の男女が倒れていたんだが、どう見ても死んでるようにしか見えなかった。
そう思ったんだが。
「う……あ……」
「!まだ、生きてるのか?おい、しっかりしろ!!」
一人、まだ息があった。
あったんだが……。
(うわあ、これ「傷は浅いぞ」なんて気休め無理だろ)
生きてるのが不思議な怪我だった。
「たの……む……ま、だ……」
それでも必死に動かない体を動かして指さそうとするのは、それでも助けたい誰かがいるのか。
「分かった、任せとけ!!」
そう答えて、ここから離れる匂いを追って、駆けだしてすぐ。
黒づくめ集団に殺されそうになってる女の子を見つけた。
「ていやあああああ!!」
うん、どっちが悪人か一目瞭然だな!!
ってな訳で空間を跳ねた俺はナイフを振り下ろそうとしてる奴の首に飛び蹴りを食らわせた。うん、完璧に決まった!!
奴は首が変な方向に曲がったままぶっ飛んで行って、木を何本かへし折って止まった。
「うさぎ、さん?」
「おう、お嬢ちゃん、ちょっと待ってな!怖い奴らきっちり片付けてやるからな!」
無傷とはいかなかったみたいで足にナイフが刺さってるが、残りの奴らとっとと倒してからでないと治癒魔法も使えねえ。
「よし、てめえら怪しい奴だな!投降しねえなら、全員ぶっ飛ばす!!」
そう啖呵をきってみたんだが。
「……魔物か」
「面倒な。だがしょせん一匹だ、やるぞ」
「わかった」
……小声な上、何かしら特殊な技能でも使ってるのか聞き取りづらいが、ウサギの耳+風魔法の勝利だな。
けど、今の聞いてなんか違和感が……?まあ、後でいいか。黒づくめの残りは三人。一人は姿が見えてるけど、残り二人は隠れたまま……のつもりらしい。生憎、既に把握済だ。
駆けだすと同時に風の弾丸を放つ。砲弾じゃでかすぎて、奴らに当たる前に森の木々にぶち当たる。その分、一発で仕留めるのは難しいだろうが……。
「「がっ!?」」
「!?」
よっしゃ、狙い通り!気づかれてないと思ってたのに背後から二人分の悲鳴が聞こえたせいで、一瞬こっちから気が逸れた!!
瞬間、飛び出した俺の体を風魔法で更に加速させる。
空中を飛ぶように近づき、一瞬視線が逸らした黒づくめが視線を戻した時には懐に飛び込んでいる!そのせいで、奴は小さい俺の体を見失ったようだった。そして、気づいた時は手遅れだ。
空間を跳ね、一気に上へ!
俺にだけ見える首の線の端を切るように奴の頭上にまで跳ね、空中を蹴って、再び下へ。
残る黒づくめの片割れに向け、跳んだ時には奴の首はまだ頭の上に載っていたが、既に首はずり落ちつつあった。
あと二人。
そんな意識のまま一気に距離を詰める。
薄暗い森の中に潜んでいる事が災いしたな。
確かに俺の体は白いから目立つ。けど、小さくて見通しの悪い森の中じゃあそんな俺でも高速で動けば見失いやすいぞ!!
視線が、最初の一人に向いていた事もあって、難なくこちらも首を落とす。
これで、あと一人。
相手次第ではこんな森の中でも見失ったりしませんし、そもそも魔物ならウサギの魔物って時点でめっちゃ警戒するんだけどねえ