出会い
はあっ、はあっ、はあっ。
息が切れる。
それでも走らないといけない。
だってそうしないと殺されてしまうから。
なんでこんな事になってるんだろう?
そんな疑問が湧いてくる。
ほんの少し前までこんな事はなかった。
田舎ではあったけど、母親と特に何の問題もなく暮らしていたはずだった。
家で働いていた人達も皆いい人だった。
なのに、あの日。
突然、馬に乗った人が駆け込んできた日からすべては変わった。
急に馬車にお母さんと一緒に押し込まれて、家から逃げ出した。
お母さんに聞いても、小さい頃から家で働いていたアンに聞いても。
「大丈夫、大丈夫よ」
「大丈夫、大丈夫です」
としか言わなかった。
そして、結局、大丈夫じゃなかった。
それまで家で働いていた人達、庭師のオージーやレンボルト、コックのローランド達が険しい顔で武装して、そして私とお母さんを守る為に次々倒れていった。
やがて、お母さんも殺された。
その時、私を抱きかかえて逃げたアンも。
そうして、遂に最後まで「もう少しです!もう少しでフォートの街に!」と言ってたファル兄ちゃんも、追ってきた黒づくめの人達から私を逃がす為に残った。
なんで…っ!
「なんで、こんな事になるの…っ!」
「それはお前のせいだ」
!?
低い声が聞こえて、次の瞬間、足に痛みが走って、私は転倒した。
すごく痛くて、足を見たらナイフが刺さってて……。
でも、それ以上に姿を見せた黒づくめの人達に意識がいって……。
「わ、私のせい、って……」
「…………」
懸命に聞いたけど、それには答えてくれずにナイフを取り出して……。
ぎゅっと目を閉じて、襲い掛かってくるだろう痛みに耐えようとして。
「ていやあああああ!」
「がふっ!?」
予想外の、そんな声に恐る恐る目を開いた。
「うさぎ、さん?」
目の前にいたのは一匹のリュックを背負った可愛いウサギさんだった。
「おうおう、女の子を複数で襲うたあ、何やってやがんだ!!」
結構、口悪かった。
今気づいたけど、きっとさっきの男の人だと思うけど木が何本も折れた向こうに倒れてるのが見えた。
……もしかして、このウサギさんが?
「おう、お嬢ちゃん、ちょっと待ってな!怖い奴らきっちり片付けてやるからな!」
なんだかウサギさんがすごく恰好良く見えた。
フォートの街は利権の関係で完全に魔物の国の一部という訳じゃなく、人の国とも国境線の一部が接していまして……