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試験中(後編

今回はギルマス視点です

 「……なんてこった」


 ハンマーボアを選んだのは複数の理由があった。

 確かにそれなりの戦闘力があるのも事実だが、奴らの逃走速度も考えての選択だ。

 当り前だが、魔獣だって馬鹿じゃない。やられそうになったら逃げようとする。

 だが、それを討伐依頼の冒険者は許す訳にはいかない、手負いの魔獣を放置するなんて危険は絶対冒せない。

 普通の獣だって手負いとなれば興奮し、警戒を強め、人や魔物といった冒険者に対して敵愾心を剥き出しにする。魔獣ともなればそれはより顕著なものになり、ハンマーボアでさえ危険度は一気に跳ね上がる。要は討伐を行う冒険者ってのは相手を逃がさず仕留めるだけの強さ、逃がした場合はそれをきっちり追跡して仕留めるだけの執拗さや技術も必要になる。

 そうした点を総合的に考えて、ハンマーボアを選んだ訳だが。

 ……結果は。


 「とったどー!!」


 見事なまでに首を落とされたハンマーボアが目の前にいる。

 一瞬だった。

 第一段階のテストはまあまあ。

 当り前だが、討伐すべき魔獣を発見出来るかどうかが重要。

 いくら強くても、肝心の魔獣を見つけられなくては評価は下がる。きちんと魔獣の特性や痕跡なんかから魔獣を発見出来るかが第一段階だった。

 まあまあ、といったが、実際には事前にまともな冒険者は依頼を受けると、ある程度対象となる魔獣を絞り込んで、可能な限判明している特性なんかを調べる。

 今回は突発的で、そういう事が出来なかった事を考えると臭いで追跡したのは間違ってないだろう。

 ウサギという動物は首狩り兎ではない、普通の動物であっても実は鋭い嗅覚を持っている。その能力は犬にも匹敵すると言われている。

 当然、首狩り兎もその能力を……いや、魔物や魔獣が基本的に通常の獣より優れた能力を持っている事を考えれば、より優れた嗅覚を持っていてもおかしくはない。したがって、それらしき臭いをクンクンしながら追跡していった事は間違っていないだろう。

 実際、多少手間取りはしたものの、無事発見出来た事だし。

 そして、重要な第二段階。

 逃がさず、討伐出来るか。

 これで逃げられたら、今度は第三段階に移行する予定だったのだが……。


 「……あのハンマーボアを瞬殺かよ」


 ハンマーボアは硬い。

 全身これ鎧といったハンマーボアは一見すると柔らかそうな後ろ半分でさえ実は硬い。

 結果、初めて討伐する事になった時、最初は前面の甲殻の硬さに手こずり、それならと無理に後方を攻撃しようとして連携を崩したり、無茶な行動をしてしまい、何とか攻撃しても後ろ半分もまた硬いという事実にがっくり来る連中だって少なくない。

 猪と同じって事は畑を荒らす奴もいるって事で、時折森から出てきたハンマーボアが住み着いて、畑を荒らす為に討伐依頼が出る事がある。

 これで討伐失敗して降格なんて事になる奴も出るんだが……。

 

 逃げる隙すら与えなかった。


 あれが空間魔法って奴なんだろうな。

 ハンマーボアを発見したビットの奴は空中を跳ね飛んで一気に接近。

 上空から奇襲をかけ、ふと餌を漁っていたハンマーボアが何かに気づいて警戒する素振りを見せた次の瞬間には首が落とされていた。


 「なあなあ、これでいいのか?」

 「ああ、十分だ」


 やれやれ、これなら予想以上にいい冒険者になるんじゃねえか?

 なんて思った次の瞬間。

 ビットの奴の発言に仰天させられた。


 「まあ、シャドウウルフって奴より弱そうだったしな!」

 「うん?シャドウウルフを知ってるのか?」

 「アド爺さんに出会う直前に襲われた!!」


 シャドウウルフの危険度は極めて高い。

 まず、魔精の森の奥深くに棲息する魔獣というだけで強いと分かるだろうが、それでも一匹一匹は真正面から戦えば多少はマシだ。

 だが、奴らは常に群れている上、影に潜み、影を操るという能力を有している。

 これによっていきなり足元から奇襲を受ける事もある上、影で拘束されて動きを止められるという事もある。

 大物よりはマシだが、奴らの牙は下手な鎧なんぞ紙同然に噛み砕く上、狼が魔獣となったからか、一旦敵対すれば異様なまでに執拗だ。

 

 「よく生き残れたな……」

 「アド爺さんとの特訓の後は問題なく勝てたけどな!」

  

 ……は?

 いや、おい。


 「それははぐれのシャドウウルフか?」

 「?最初はそうだったが、後は群れだったぞ」


 ……マジかー。

なんでいつもより遅れたって?

そりゃあちょっと頭痛くて横になるつもりがぐっすり寝込んじゃったのさ!!

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