幕間:この世界の一般的な冒険者の一幕1
ウサギのリハビリがてら!
魔物達にも冒険者はいる。
そして、混沌の街と言われるハウラビも同じだ。いや、混沌と称される程の街だからこそ、依頼も多い。
例えば、討伐。
長年、禁断の地扱いされていただけに冒険者の数も僅かで、結果、手が回らず腕を磨くついでに討伐が為されてきたこの地域には多数の魔獣が生息している。
必然、討伐依頼は常に出ている状態だ。
例えば、護衛。
そんな地域だから街道でも護衛なしというのは、まだまだ厳しい。
魔獣がいない場所もあるが、そうした場所には盗賊が巣くっていたりする。街中でも夜間に備えて、護衛を雇う商店は多い。ある意味、一番仕事に困らない冒険者のクラスだと言える。
他の仕事も同じようなものだ。
他地域では絶滅したと思われていた薬草がこれまで人の手が入っていなかった為に発見されたり、道が建物の増設で変わるせいで道案内の雑用に困らなかったりと発展途上の街と地域だからこそ、冒険者の仕事には困る事はない。
そして、ここにもそんな冒険者グループが一つ。
「あー終わった終わった」
そう言って首をゴキゴキ鳴らしながら言ったのは周囲より頭二つは高い巨漢。その牛の頭部を見れば種族は一目瞭然、ミノタウルスだった。
「リーダー、報告がまだなんだな」
そう苦笑を含んだ声で言ったのはこちらもその豚の頭部が種族を示している、オークだった。
ちなみにオーク族は割と人族の間では「人の女性をさらって子供を産ませる」などとウソの噂が広まっていて、余り良い扱いはされていないのだが、オーク族自身に言わせれば「何が哀しくて、猿の一族と子供を作らにゃならんのだ」だそうである。
要は彼らの視点から見ると人族というのは猿族に属するように見えるらしい。
もっとも、世の中物好きはいるもので、噂のそもそもの根幹は人族と愛し合ったオーク族がいたから、らしい。どちらの種族も「そんなのいねえよ」と否定しているのだが。
「あー、いいよ、俺っちがやっとくからさ。リーダー、こいつ連れてってメシ屋の予約しといてくれよ。先食っといていいからさ」
最後に声をかけたのはもっとも小柄な獣人族、その中でもネズミの男性。
この三名、護衛クラスの冒険者グループだった。
「おっ、いいのか?わりいな!」
嬉しそうな声でミノタウルスがそう言った。
今回、彼らは護衛団の一角として動いていた。
そうして、隣国まで護衛に赴き、復路は別の商会の護衛につき、帰ってきたという訳だ。当然ながら、それなりに長い旅路であり、疲れもした。疲れを癒す為にもさっさと馴染みの食堂でメシと酒を、という訳だ。例え、まだ明るいとしても。
基本、彼らのパーティはミノタウルスが前衛でありリーダー、オークが魔法使い、ラットマンが斥候であり交渉役でもあった。
リーダーは護衛や戦闘の仕事では頼りになるが、それ以外では余りあてにならない。
オークは魔法使いという頭脳労働職故に体力面が劣っており、他二人より疲れが溜まっているはず。
だから、自分が、とラットマンがいうのは彼らの間ではいつもの事だった。互いが互いに不足している部分を理解しており、お互いがそれを補うよう考えて行動しているからこそ、彼らは上手くやれているし、仲の良いパーティだと言えるだろう。
「はい、それじゃこいつの処理頼むよ」
「了解しました。少々お待ち下さい」
冒険者ギルドへとやって来ると、ラットマンは依頼完了のサインが為された契約書を受付へ差し出す。
冒険者ギルドはそれが本物であるかを確認した上で、預けられていた成功報酬を支払う。こうした報酬は基本、全額前払いで冒険者ギルドに預けられる。ギルドはその報酬が支払われている事を、冒険者が依頼を受けた際に受け取り場所として選択した街のギルドに連絡する。
これによって確認を行った上で、冒険者は元の街まで戻らずとも報酬を受け取る事が出来る、という訳だ。
確認の為に少々時間がかかるが、その間にラットマンは顔見知りの冒険者を探したり、ギルド併設の飲食店兼酒場などに顔を出して、情報を集める。そんな中……。
「はあ?あのヘルガ様、婚約決まったって?」
あの絶叫姫に?
思わず驚きの声を上げたラットマンだった。
え、何でこの種族にしたのかって?
そりゃ某作家さんがこんなのがあってもいいじゃないかと書いてた種族の組み合わせだったんで思わず……