鍛錬の話
一日あきました。すいません
疲れかどうか分からんけど、どうにも頭が働かなかったんですよね……
本日、キャラ紹介も簡単なものをアップしています
修行に関しては言う事は……ない!
いや、色々やらされたんだよ。
でもなー……。
「ほれ、見るのは生命ではない。流れじゃ!」
「分かるかい?全ての存在には流れがある」
「命ある者だけじゃないんだよ?金属や陶器、魔道具にだって流れがある」
……という訳で、ひたすら流れを見る鍛錬をさせられたんだが。
本来なら、この鍛錬、知ってる一族なら幼少期からしていって、成人の儀式でその成果を見せる事で一人前、となってたらしいんだな。魔物ってのは基本、寿命が長い。そして、それは体の大きさは関係なく、例え体は小さくても強大な魔物はやっぱり長生きする。そして、首狩り兎という種族は十分以上に強力な魔物とされている。
つまり、本来ならこの鍛錬、何十年もかけてやる修行だって事な訳よ。
しかも、幼い頃からやるのは「金属とかは生命を持っていない」なんて考えを持たない内からやる為だっていう。
けど、あれだ。俺はそんな長々と時間かけてられん訳よ。……修行終わったのが三十年後でした、その頃にはラティスに関わる事とか一連の件は全て終わってました!なんて事になったら、やっぱし後悔すると思うんだよな。何か出来るかはさておき。
さて、そんな長期間かけてやる鍛錬を短期間である程度以上まで身に着けようとしたらどうなるか?
……スパルタ特訓しかない訳だよな。
で、その流れを見る鍛錬となると……ひたすら物との睨み合いな訳よ。いや、正確には違うんだが、傍から見りゃそうとしか見えないって話。元の世界の某マンガでは実体化させる為に鎖を触り、齧り、ひたすら鎖と接するなんてお話しがあったような気がするが、似たようなもんだ。朝から晩までひたすら、その日に出された物と睨み合いだよ……。
幸い、というか、神様が用意してくれた、この体のスペックは確かに高いようで、二日目の夜にはうっすらと見えるようになり、三日目にはしっかりと認識出来るようになっていた。
僅か三日、されど三日。
彼らからすれば、三日で流れを見る事が出来るようになった事に驚いていた。
生命の流れを見る事はそう難しくなくても、物の流れを見る事は難しい、というのが彼らの話。特に、それが既に生命の流れを独自の感覚で掴んでいる者、物に流れなどないと思っている者には余計に固定観念が邪魔をして、見る事が困難になる、と言っていた。
「最低でも一月、普通の感覚ならば五年十年、悪ければ数十年を覚悟しておったんじゃが」
とは三名のリーダー格のヨルク爺さんの言葉。
ちなみに関係を聞いてみれば驚き。
ヨルク爺さんは先々代の当主、フォルカー爺さんは先代当主だった。
というか、今回俺の指導、そして将来の為にフォルカー爺さんはクリストフに当主を譲ったらしい。
いや、最初は何でそこまで!?って思ったんだが……ヨルク爺さんは先々代というだけあって首狩り兎としてみても、かなりの高齢。鍛錬が長引いた場合はもちろん、次世代へと繋ぐ俺とヘルガによる分家創設までいけた場合も、きちんと分家が成立して、独自にやっていけるまでには手続きや支援含めてそれなりの時間がかかる。けど、ヨルク爺さんの年を考えると、その最後まで面倒見れるか分からない、って事で最初からフォルカー爺さんがつく事にしたそうだ。
ちなみにグレーテル婆さんは実はフォルカー爺さんの奥さん……直立した兎紳士の奥さんが人面兎で、その子供が兎獣人みたいなクリストフさんとヘルガ……生命の神秘だな。
もっとも、フォルカー爺さんとグレーテル婆さん曰く「当主を押し付けるのに、ちょうどいい機会になっただけだから気にしないでくれ」と笑っていた。本音がどうかは知らんが、でも考えてみると、ハウラビの街の混沌具合考えると、そこの領主って確かにハードかもしれん……。
間違いなく、毎日仕事に追われるよな。
さて、流れを見る事が出来るようになったら、今度はそれを断ち切る訳だ。
フォルカー爺さんが見本を見せてくれたんだが……すげえのな。
何でも大戦時に活躍した初代を除けば「歴代最強」と言われるだけあって、手足を使って自在にスパスパぶった切りやんの。
……こんな爺さんの子供がクリストフとヘルガか。
……絶対、あの二人、失敗作とか陰口叩かれたんだろうな……。
なんせ、フォルカー爺さんという先代当主は、いわば完成形だ。姿形は獣人に近い姿を保ちながら、優れた一族伝来の【首狩り】を保持している……しかも、それを見事に使いこなす。間違いなく、一族の理想を体現したような存在だ。きっと、一族はその時点では歓喜したんだろうな……。
それが、その次の世代になると急速に……こういう言い方はなんだが、劣化。
しかも、いずれの子供も【首狩り】を失っていた……。
うん、フォルカー爺さんが優秀だったら、それだけにグレーテル婆さんが責められた光景が容易に想像つくな。大体、「歴代最強」なんて言われる当主の陰口叩くなんて相当な度胸があってもなかなか出来るもんじゃねえだろうし……そうなると、どうしても立場が弱い相手に批判行くもんな……。
それでも、グレーテル婆さんに暗い所がなく、夫婦仲睦まじそう。クリストフとヘルガも暗い所がないって事はフォルカー爺さんが奥さん子供大切にしたんだろうな。
ちなみに。
「さて、では一度やってみなさい」
そう言われて、模範演技の後の俺の初挑戦。
見事に失敗して、痛い思いをしたよ……。
だってさ、基本俺達の技って接触が必要だし、そうなると失敗するとぶつかる事になるんだよ……。
幾ら体が頑丈とはいえ、金属柱にぶつかったらそりゃいてえよ。
……これを素手や蹴りでスパスパぶった切ってたフォルカー爺さんすげえ。
直立した兎さんであるフォルカー爺さんは初代を除けば歴代最強を謳われる存在だったという事実
ちなみに初代は実戦で命がけで鍛えていた事に加え、その前の事も色々不明な点が多い為、いわば別格扱いです
そもそも、技術自体が「初代様はどこまで使えたのか不明な点もあるけど、伝承では云々」という事もあります