到着のお話し
さて、その後だが……特に問題もなく、無事首狩り兎の里へと到着した。
まあ、それが当然なんだけどね、本来は。
偉そうな代官や貴族は、そもそもこちらも貴族の一団である以上は出てこない。
盗賊団も先に述べた通り、貴族の馬車には基本ちょっかいを出してこない。
冒険者も貴族に護衛に雇われるようなのが変な奴であるはずもなく……。
むしろ、俺が数日に一度、非常に精神を試されるような事態になったぐらいか……いやな?ラティスだけじゃなく、ヘルガにまで抱き枕にされてな……。
ラティスは以前はやらなかったんだが、ヘルガに抱き枕にされる俺を見て、真似するようになったんだ。で、ラティスに抱き枕にされるのは実はまだ、いい。何せ、人族であるラティスに対しては、俺はそういう対象として根本的に見る事がない。
問題はヘルガだ。
女性として意識出来る相手に抱き枕にされてみろ……。おまけに相手がふっかふかで良い匂いがして……。
これがまだ野営とかが続いた!ってなら我慢するしかねえんだよ。
だってそうだろう?
馬車にはラティス達がいる。天幕とかでも誰に聞かれるか分かったもんじゃねえ。
でも、違うんだ、街があればそこで宿取るんだ……。当り前のようにヘルガってネグリジェとか着て。
「じゃあ、お休みなさい」
なんて、俺、抱っこされて二人きりで防音とかもしっかりした部屋に一緒なんだぞ?
……うん、まあ、そんな状態が一度ならず繰り返されて、相手はいつでもOKてな状態で、ずっと我慢するって不可能だと思わないか?結局、里に到着する頃には……そういう関係になっちまってた。ヘルガは凄い機嫌良くニコニコしてたけどな。
……お陰でラティス以外には即効ばれたっぽかった。
「見えてきました!あれが、私達の街ですよ!」
「わあ!」
ハウラビ。
それが首狩り兎一族の里、現在は街となった姿だった。
一族の里は急速な発展を遂げた。
以前にも言ったが、元々、各国の開発が進んだ結果、禁忌の地みたいな扱いさえされてなければ複数の隣国との交易拠点として相応しい場所に一族の領地はあった。
そして、その禁忌の地、みたいな扱いが消えたらどうなるか?
街道も街も物凄い勢いで発展した。
おまけに、この世界には魔法があり、人を超える力を持った魔物達がいる。戦闘力という点では劣っても、土木工事みたいな事には圧倒的な手腕を発揮する魔物もいる。その結果、急速に街は発展した。
「色々とうちとしても、まずは人に来てもらわないと、って思ったんです」
これに加えて、一族はより多くの人に来てもらう為に優遇策を次々打ち出した。
ウサギは寂しいと死んじゃう、なんて言われる事があるが、別にそこまではならん。けど、賑やかな方がいい、ってのは首狩り兎一族もずっと持ち続けていて、それが遂に叶う!その可能性がある!ってなった時、とにかく人に来てもらえるよう対策取った訳だ。
領地内に関所は設けない。
ハウラビの街で商売をするのに税は取らない、あくまで売り上げた利益に対して税をかける。
行商に関しても前の晩までに申し込んだ奴が抽選で場所を得られる。朝に到着した奴は朝市用の別の場所が同じく抽選で提供される。
農民に関しては自力で開墾した農地は当人の農地として認める、移住してきた場合、三年は無税。
……とまあ、色々対策やったらしいんだな。
成功したものもあれば、失敗したものもあったが、一つだけはっきりしてる事は一気に人が流入した。街道が整備されるにつれて、更に人が増えた。
「……スラムすげえ」
「……ええと、それは、まあ……」
結果、こういう事にもなる。
治安頑張ってるそうだが、急速に人口が膨れ上がったらどうなるか……答えは家の建設が間に合わない。
最低限、城壁を築いて、その内部は安全を維持してるそうだけど、兵を雇うにもある程度、お金が貯まってからじゃないと難しい上、信用出来る兵士を新たに雇うってのは難しい。大体、街道なんかの治安も頑張らないといけない。
しかも、経済が急速に発展してるって事は文官も増やさないと対応不可能な訳で……。
「これでも、大分マシになったんです、よ?」
数十年かけて、大分マシになってきたらしいが雑多な人が多数住まう、ごった煮のような良く言えば活気に満ちた、悪く言えば管理の行き届いていない新興の大都市。
それがハウラビだった。
ウェルカムな美女に毎晩抱き枕にされて、さて我慢出来るかな?
A:出来ませんでした
幾ら頑張っても、一気に人が押し寄せれば、そうなる余地があれば管理が行き届かないってお話しですね
国からも兵士や文官借りたりしてましたが、それでも追いつきませんでした
数十年かけて、何とか城塞都市の形を整え、その内側に関しては大分マシになりましたが、その周囲には…という状況ですね
外にも中にも人が必要で、未だ追い付いてません