子供のお話
感想で「人サイズのヘルガとウサギサイズのビットの間で子供作れるの?」って話があったのでその解答的な感じです
旅は順調だった。
魔物の国とはいえ、やはり末端へ行けば傲慢な者や権力を傘に威張り散らすような者もいるし、小国などは尚更そうした傾向が強い。要は人の世界とは逆に、古き大国ほど古くから君臨する国主の影響力が隅々まで行き届いて安定しており、実力を持つ魔物が不在の小国ほど末端をまとめきれないとも言う。
しかし、そんな小物だからこそ、敵に回してはいけない相手というのをよく理解している。
大国の高位貴族なんて相手がいて、「先を急ぐので饗応などは結構」と事前に断りを入れられていれば、極力簡単な手続きで自身の担当する街を出て行ってもらおうとする訳だ。人の世界でなら、こういう場合、そう断りを入れても小物が押しかけたりするものだが、その点は腐っても魔物の国というべきだろう。
「ここも昔はもっと良い町だったそうなのですけれど」
通り過ぎたばかりの町に関して、ヘルガが溜息をついた。
確かに馬車の窓から見た町は活気がなかった。
四十年程前にそれまで統括していた魔物が亡くなり、それを機に分裂した小国の町の一つだった。
「確か、跡取りの魔物とかいないんだっけか?」
「そうですね。長く生きる魔物は子孫を残す、という点に関して関心が薄い魔物が多いですから」
あー。
成る程な、自分が強くて長生きだから、そうなっちゃうのか。
「そもそも強い種族というのは同種族自体が少ないというのもありますけど」
例えば竜王国を統べるドラゴン。
或いは海王国を統べるクラーケン。
そういう強大な魔物は滅多に子供を作らないせいで、そもそも絶対数自体が少ない。だから、跡を継ぐ子供を作ろうと思っても相手がいるかどうかという……何せ、この世界には人化の魔法みたいなのは存在しない。つまり大型のドラゴンみたいな魔物の場合、最低でも自身の十分の一ぐらいのサイズがいないと子供を作る事さえ出来ない。
いや、自分のサイズ自体は結構魔法で何とかなるそうなんだが、子供が出来た時にその……意識のない子供はそんな魔法使えないから最低でも十分の一ぐらいのサイズがないと母体が……。
人サイズの相手と致して、子供が出来たとして、ドラゴンの子供は出産時には最低でも戦車一台分ぐらいのサイズにはなるそうで……まあ、母体は悲惨な事になるわな。
「結果、跡継ぎが不在で、国を保護し続けた数千年数万年の寿命終えた時には……」
「その魔物の王様がいて当然の暮らししかしてこなかった、魔物の王様より圧倒的に弱い奴しかいない?」
ヘルガが頷いた。
つまり、だ。
何せ圧倒的に王様が強い。
強いから自分達が強くなるという事を考える奴がろくにいない。
何せ、自分達が生れてから何世代もの間ずっと王として君臨し続けてるから「あの王様がいれば大丈夫」と鍛える必要性を感じないし、偶に鍛える奴がいても王様見て心が折れる。戦争やってりゃともかく、魔物同士は根本的に縄張りから出ないから他国からの侵略もない。
ちなみにこうした小国に関しては何百年かしたら大抵はどこかから強力な魔物が流れてきて、そこら辺をまとめて新しい縄張りとしての大国が成立するそうな……。
大体は別の所で生まれたドラゴンの子供とかそういうのが、親から独り立ちして、他の強大な魔物とぶつからないちっちゃな縄張りをまとめて自分の縄張りとする。
「小さな国の王様になった奴って抵抗しないの?」
「元々は強大な魔物の下で楽な臣下やってて、ある程度の範囲まとめきれる魔物がいないからしょうがなく王様やってる魔物が多いの」
小さい領地をまとめるのは面倒が多い。
何百年と指示を受けて来たのに、いきなり全責任を負わないといけなくなるのも嫌だ。
極一部は小なりと王になれた事にうかれるが、何十年かすれば嫌になるんだとか。何せ、前の王様と比べ弱いから、もし、好き放題して反乱でも起きたら鎮圧する方法がない。民も魔物だから多数相手に戦えるだけの自信がない。
結果、面倒ばかり目について、嫌になって……。
「何だかすごい魔物っていい加減?」
「え、ええ、まあ、人のそれとは根本的に違うんでしょうね、きっと」
そこら辺は何百年と生きる奴が当り前のようにいる魔物ならではなのかもしれない。
「そういう意味では、それなり以上に強いのに一族を形成している私達、首狩り兎一族は結構珍しい部類なんですよ」
「なるほどねえ……」
つまり、俺らの一族って結構お盛ん?
そういうとヘルガは真っ赤になってたけど、否定はしなかった。
結論
ウサギは割と発情気味
+
子供が母体に収まるサイズなら子供を作る事自体は割合何とかなる