衝撃の事実の話
「そういや、情けないとか言ってたけど……」
「ごめんなさい……ご先祖様の遺された技術を使いこなせていないようでしたので思わず……」
おや?
「つまり、俺にはまだ先がある?」
「!ええ、あなたぐらいに濃く力を受け継いでいれば間違いなく!【首狩り】はお持ちなのでしょう?」
「そりゃあるけど……ってえ?もしかして……」
「はい……」
その後の言葉は衝撃的だった。
「お恥ずかしながら、既に一族は肝心要の【首狩り】を既に失っていまして……」
先代ぐらいまでは何とか維持出来てたそうだが、現当主辺りで遂にそれを受け継いだ子供が生まれなかったらしい……。
……なるほど、そりゃあスキル復興に全力突っ込む訳だわ。
「そういえば、大事な事を忘れてた」
「「?」」
「俺はビット、こっちはジョン。そっちは?」
「!!私、ヘルガと申します。家名などは長いので省略致しますね」
ジョンがここで教えてくれたが、一応人族が名乗る度に馬鹿にしたような顔や目になるから、それっぽい長い名前をつけたものの、人族のやり方に反発して王族貴族相手でも口調を変える必要なしと断じた魔物の事だけあって、同じ魔物相手だと「名前で十分」になるそうな。
「それでスキルについては……」
「あっ、そうですね!」
現在一族に残っているのは腕や足を断つスキルだけ。
先に述べた通り、【首狩り】を失った結果、現当主でさえ腕と足の二つを断ち切るスキルしか持っていないらしい。
しかし、かつての戦争の全盛期の頃から遺された書物によると……生命なき存在の命すら断ち切る事が可能らしい。その気になれば、攻撃などあらゆる流れを断ち切る……なんじゃそのチートは、と思ったが、実際には色々制限あるらしい。
もっとも、それを考えても「なるほど、そりゃゴーレムみたいな魔法兵器の類出されても暴れ回れた訳だわ」と思う。
ただし、これらのスキルの根幹にあるのが【首狩り】。
つまり、それがない以上、今はまだ先代やその同世代の老人らに残っている技術も、やがては永遠に失われてしまう。
「なので、書籍含めて教えられる事は提供しますが、ぜひ一度我が領地に来て欲しいのです」
俺が将来婿に行く代わりに、首狩り兎一族が提供するのは嫁さんや一族に連なる貴族としての地位、それに伴う豊かな生活とそれに伴う生活費、それに一族伝来のスキルに関する秘伝諸々……これだけ聞いても、どれだけ今の首狩り兎一族が危機感を抱いているか分かるというもの。
さすがに、次期当主の提供は出来ないそうだが、そんなもん貰っても困るしなあ……俺、書類仕事とか今の首狩り兎一族の領地の事とか何も分からんし。間違いなく、なった所でお飾りになるしかない。
もっとも、高位貴族の場合、血が途絶えた貴族の位を買ったり、何かしらの功績で現在持っているもの以外にも貴族位を与えられていたりするので、望むならそれらを提供するらしい。
一族の期待としては俺とヘルガの子がきちんと【首狩り】を受け継いでいれば、現当主の子と結婚してもらって、一族に【首狩り】スキルを再び復活!という事らしいんだな。
「一族にとっては種族の名が冠されたスキルですから……」
なるほど、一族のアイデンティティーに関わる重大な問題な訳ね……。
確かに【首狩り】出来ない首狩り兎って何なの?って気にはなるわなあ……。
「いえ、それどころではないんです……」
どうやらそんな呟きが口から洩れていたようで、真剣な表情でヘルガが口を挟んできた。
「どういう事?」
「……このままだと種族そのものが変わってしまいかねないんです」
………はあ!?
「どういう事!?」
「……【首狩り】を完全に失ってしまえば……私達は首狩り兎から単なる獣人になってしまうんです!!」
な、ナンダッテー!?
冷静に考えてみりゃ、見た目はウサギの獣人
首狩りのスキルもない
「さてはテメー兎の獣人だな?」