事情の話
「はあ!?」
いきなり美女からそんな事を言われて、ビットはさすがに驚いた。
「一体何でそんな話に!?」
「そうですね、貴方にはきちんと説明しておいた方がいいでしょう」
そうして簡潔に話してくれた内容によれば、結局は「親の一部を受け継ぐ」という特性が問題だったようだ。
当り前だけど、完璧な、それこそ外見は完璧に獣人でスキルは首狩り兎のものを完全に受け継いでいる、なんて美味しい話はまずない。
獣人の外見だけどスキルは殆どなかったり、スキルは受け継いだけど外見は首狩り兎のままだったり……。
しかも、そうしたはっきりと分かれている場合はいいが、外見はほぼ獣人だが、スキルも中途半端にしか受け継いでいない、といったケースもあった。
もっといい候補がいれば、そっちを跡継ぎに出来るだろうが、そうそう上手くいく訳もなく……。そうした「100%満足出来る継承度合いではないが、仕方ない」というケースも長い間にはそれこそ無数にあったそうな。
「結果、現在では失われてしまったスキルも多々ありまして」
「はー……」
「それで、一族ではスキル復興計画が今度は持ち上がっておりますの」
成る程、とビットは思う。
要は混血を進みすぎて、大本たる首狩り兎としての要素が深刻なレベルで薄くなってしまった訳だ。
そこで純血の首狩り兎を探して、再びスキルを復活させようと?
「有体に言えばその通りなのですが……何せ、首狩り兎族は表立っては姿を現していない者がほとんどで……しかも、力を隠していれば見た目は単なるウサギです」
お陰で、懸命に長年探しても見つからなかった。
しかし、そんな時、俺というSランクの冒険者である首狩り兎が忽然と現れたと。それも混じりっけなしの白。
なるほど、つまり……。
「俺、種馬?」
「有体に言ってしまえばそうですけれど、出来れば良い夫婦関係を築ければ良いとは思っていますわよ?」
ん?
「つまり、種馬の使い捨てじゃない?」
「そこまで下衆な真似は致しません!」
いや、その姿得るまで結構、種馬、金で用意してたじゃん……とは思ったが、同じ首狩り兎種族だからなのか、あるいは金で雇われた相手ではないからなのか、それとも冒険者ギルドのSランカーを使い捨てにするのはよろしくないと考えたのか。……案外、全部なのかもしれない。
「こほん、正確には我が一族に正式な婿として迎えたいと思っているのです。さすがに次期当主とまではいきませんが、私は現当主の娘、次期当主の妹。それなりの地位と立場は約束出来ましてよ?」
うわお、いわゆる玉の輿?
っていうか。
「なあ、ジョン。お前の情報何時の話な訳?」
「……すまん、首狩り兎一族がまさかこんな事になってるとは」
「あら、仕方ありませんわ。長らく鎖国みたいな状態でしたし、私達の姿がこうして変わったのを公表したのは割と最近ですもの」
成る程、冒険者ギルドの情報では更新されてたかもしれないが、わざわざ興味を持って調べてないと気付かないという事か。
「と、ところで」
「「??」」
「こ、この恰好はどうでしょうか……?殿方を誘惑するならこれ!とウサギ獣人の方から伝統的な衣装として譲っていただいたものなのですが……」
ぐお……。
ば、バニーガール姿の美女が恥じらって顔を赤らめるとかインパクトすげーな。
兎の俺から見ても女性だ、美人だと認識出来るもんだから尚更……。
「あ、ああ、まあ、その、いいんじゃないかな?」
「そ、そうですか!」
ぱっと明るい表情になった。
……やべえ、めっちゃ可愛い。
首狩り兎一族にしても娘を犠牲にしようという気はなく、出来れば上手く夫婦になって子供作って欲しいというのはあるので子供の教育にはきちんと手間と金を惜しまずやってました
なので、高位貴族の子として多少言葉は貴族言葉ですが、基本尽くす女性だったりします……書いててなんだが、爆ぜろビット