お披露目
翌日の早朝、ホテル最上階の部屋、寝室にてひとみとななが眠っている。
何やらなながシングルベットの寝床でうなされている様だ。
夢の中のななが誰かに話し掛ける。
「う、うーん、ななちゃん、ななちゃん・・・」
「どうしたの、大丈夫・・・ななちゃん、ななちゃん・・・」
ななの夢の中の誰かが答える。
「苦しいの、助けて、はなちゃん・・・はなちゃん・・・」
夢の中のななが答える。
「はなちゃん?私はななよ、なな・・・」
「ななは私・・・、あれ?私ははななの・・・?」
とその時、ななは体が揺さぶられている感じがする。
「なな、なな、起きて、起きて、大丈夫?」
ひとみがななのうなされた声を聞いて起き出し、ななを起こしたのだ。
「う、うーん・・・」
気が付き始めたなな。寝ぼけながらゆっくりと身体を起こした。
目には一筋の涙が零れた。
「だっ大丈夫?なな?」
「あっ、ひとみ、おはよう、大丈夫・・・(私はなな・・・)」
それを聞いて少しほっとしたひとみ。慎重な面持ちでななを見つめる。
ななはゆっくりとゆっくりと見た夢を忘れていく・・・
「かなりうなされていたけど・・・?」
ひとみがななに話し掛ける。ななはテーブルに置いてあったペンダントを見つめていた。
「えっ!そうだった?」
惚けた感じでななはひとみに振り向き答えた。ひとみは怪し顔になり、
ななに質問する。
「いつもそうなの?」
「いっいつもじゃないよ、平気だよ・・・」
(昨日、首飾りのペンダントを久しぶりに身に着けたからかなぁ・・・)
と心の中で思ったが口には出さないでいた。誤魔化す様になながひとみに話す。
「さぁ、起きて準備しょ!」
ひとみは大丈夫かな?と思ったが、もう気にするのは止めた。
ひとみとななの準備が終わり、部屋から出ると残りの4人は揃っていた。
ソファーに座っていた翔が二人に話し掛ける。
「あっ!おはよう、ななちゃん、ひとみちゃん!」
「おはよう!翔!」
ななが翔に挨拶を交わし、皆それぞれ挨拶をするのだった。
「さぁ、朝食を済ませてから、お着替えをしてレジャー施設に行きましょう!」
とひとみの母親は子供達に声を掛けた。朝食をしに食堂へと部屋から出た。
朝食を終え部屋に戻って来た一同。このホテルはレジャー施設に直通しているので、
水着の格好をして、その上に軽く何か羽織っていれば部屋から出ても問題ない。
皆、各寝室で水着に着替えて部屋の広間に集まる事にした。
「あれっ?おかしいな、水着がない・・・」
とひとみとななの寝室でななが一人呟く。それを聞いていたひとみが話し掛ける。
「さなちゃんやかなちゃんに聞いてくれば?」
「うん、そうして見る・・・」
とななが急ぎ早に部屋から出ていった。なながかなとさなの寝室のドアをノックすると同時に、
その部屋の中からさなの声が聞こえてきた。
「ななっ、なななら入って来ていいよっ!」
とさも分かった振りで、ドアの外に居たななに声を掛ける。
この時、まだななは知らなかったが、さながななの鞄から水着を抜いていたのだ。
「じゃあ、入るねぇー」
と返事をして、ななはかなとさなの寝室のドアを開けて中に入った。
かなとさなの寝室で何やら3人で話をしている。かなやさなの話を聞きながら、
ななは余り納得はしなかったが、3人で水着に着替え始めた。
暫くして部屋の広間には、ひとみの母親、ひとみ、翔の3人が集まった。
ひとみの母親は黒色のワンピースタイプの水着。
ひとみは赤色のワンピースタイプの水着でスカート付き。
翔の水着は年頃の青色のサーフパンツであった。
3人であれこれ水着の話をしていると、かなとさなの寝室のドアが開き、
さらに3人広間に現れた。かなとさなの後ろにはなながいるようだ。
一人だけタオルを巻いて・・・
かなとさなはお揃いの色違いのワンピースタイプの水着でフリル付き。
かなは黄色、さなはピンク色で、もし髪を解いても見分けが付くようにしていた。
さなに押されてなながさなとかなの前に出てくる。
目の前にはひとみの母親、ひとみ、翔がタオルを巻いているななに注目する。
恥ずかしそうにしているななを尻目に、さながななの巻いているタオルを
勢い良く奪い去った。姿を見せるななの水着。
その光景に目を丸くするひとみの母親とひとみ、翔はじーっと眺めている。
さなとかなはクスクス静かに笑っているようだ。
布面積の少ない白色のマイクロビキニ姿のなながそこにはいた。
ななの時間が一瞬止まる・・・
部屋の中が静けさに変わり、先に我に返ったひとみがななに声を掛ける。
「なな、それって・・・大胆過ぎる・・・」
そして突然、ななは皆の姿を見て、
「キャーッ」
と言って恥ずかしくなり、ななはしゃがんで身を丸くしてしまった。
「勇気を出したのに、勇気を出したのに・・・やっぱり・・・」
ななはブツブツと独り言を言っている。
さなとかなは声を出して、笑い出してしまった。
「クスクス、アハハっ・・・」
そしてさながその水着をフォローするかのように話し出した。
水着知識のないななを知りながら・・・
「だって、なな、翔くんと混浴露天風呂入りたいって言うから・・・」
「布面積が少ない方がいいかなぁっと思って・・・」
それを聞いていたひとみの母親が答えた。
「でもここって波のプールやスライダー、遊園地があるから脱げやすいのは・・・」
その事は知っていたさなとかな。
「それにやっぱり、目立ちすぎると・・・」
「さなちゃんっ!かなちゃんっ!」
ひとみの母親が怖そうな顔をしている・・・
かながななに近寄り、タオルを上から掛け、話し掛ける。
「やっぱり、可哀想だよ、さなっ!ごめんね、なな・・・」
「ななが選んだ水着は私達の部屋にあるから・・・」
ななが立ち上がり振り向きもせず、あの言葉を残して、かなとさなの寝室に入っていった。
「さっさっ、さかなのばかっ!!」
その言葉の後には静けさだけが残った。
何の言葉も発せず、翔はただ、じーっとななが消えたかなとさなの寝室のドアを眺めていた。
漸くかなとさなの寝室から出てきたななは、暫くの間、不機嫌だったのは言うまでもない。
因みにななの選んだ水着は白色のワンピースタイプの水着でスカート付きでした。