タイムマシン
何かの反応を示した生命体送信用転送装置だったが、かなは気付いていなかった。
見た目やデータ上の数値では正常に動作していたからだ。
送信用転送装置の前にいるかなが翔に尋ねる。
「そっちの様子はどう?翔くん?」
翔が受信用転送装置の小窓を覗いているが、まだ何も反応がなかった。
「うーん、まだ何も起こらないよっ!」
と翔がかなに受け答える。
疑問に思ったかなが靄のなくなった送信用転送装置の小窓を覗くとななの姿がなかった。
暫くの間、沈黙していた受信用転送装置が動き出した。
受信用転送装置の小窓からも機械音と共にやがて蒸気の靄が出始めて中の状態が見えなくなった。
機械音がやがてブザー音に切り替わり室内に鳴り響いた。
ビィーッ、ビィーッ、ビィーッ、ビィーッ、ビィーッ!!
翔は受信用転送装置の小窓を見続けていると、転送装置内の靄が消え始め、
椅子に座っているななの裸の姿が見えた。その事をかなに伝えた。
「大丈夫かな?ななちゃん・・・」
かなも受信用転送装置の前にやって来て、小窓を覗く。
暫く動かないでいたななが、少しうなだれている様子に変わった。
そして椅子から立ち上がり、小型物体受信用転送装置から衣服を取り出し、
着替え始めた。
かなが受信用転送装置の扉を開けると、それに気が付いたななが振り向き呟いた。
「あっ、かなちゃん・・・」
元気そうのないなな。それを見たかなは心配そうに見ている。
そして何かの違和感があった・・・
「大丈夫、なな?何かあったの?」
とかながななに話し掛けた。
「何でもないよ。大丈夫だよ、かなちゃん・・・」
「あっ・・・、ちょっと二人で話しが・・・」
とななはお答え、着替え終えると小型物体受信用転送装置からペンダントを取り出し、
服のポケットに入れた。
「じゃあ、取り敢えず、メディカルチェックしましょう!」
とかながななの手を取り、医療室の方に向かって歩いて行った。
その様子を心配そうに見ている翔にかなは、「そこで待機しててね」と言って、
ななと二人で医療室に入っていった。
医療室でななのメディカルチェックが行われた。
健康状態も問題なく送信用転送装置の中に入る前のデータとほとんど一致している。
そして・・・、かなはななを見て何かの違和感の正体が分かった。
「ななちゃん、髪が伸びてる・・・」
とかなはななに呟いた。
すると、またななはうなだれた様子に変わった。
やがて・・・、ななはある事実を口にした。
「私、未来に行って来たの・・・」
この言葉を聞いたななは暫くの間、唖然とし、沈黙してしまった。
立て続けて、ななが話し出す。
「そして、その未来を変える為に・・・、伝える為に戻って来たの・・・」
「ある人に出会い、未来で何日間か過ごして・・・」
何が何やら、分からなくなっているかな。
事実を伝える為に必死になるなな。
二人が分かり合えるのに、暫くの時間が掛かった。
漸く理解して来たかなは、ななに話し掛ける。
「そう、大体何となく分かったわ。」
「あの首飾りのペンダントが未来へ導いてくれる道しるべなのね!」
「取り敢えず、翔くんの所に行きましょう!」
とかなはななを引き連れて、医療室を後にするのだった。
翔の所に辿り着き、お互いに顔を合わせる。
「大丈夫?ななちゃん?」
と翔はななに話し掛けた。
「もう大丈夫だよ。かなちゃんと相談したから・・・」
ななは元気を取り戻し、そのまま翔に語り続ける。
「翔っ!私達、ななやかなちゃんの事、どう思っている?」
それを聞いた翔は、即返答する。
「大事な家族だし、何かあったら絶対に守って上げたい。」
3人で話し合い、翔を未来へ送る事に決めた。
ななが未来の事実を知って、戻って来た事で変わる未来へ
解決策を求めて・・・




