再試行
さなが旅立ってから何日かが過ぎた。家の中は少し寂しくなったが、
皆相変わらずの様だった。一人を除いて・・・
さながいなくなった影響かどうか分からないが、
度々、ななが下着姿で家の中を歩く光景が見られた。
かなはいつも通りの光景だった。
そして其の内に、ななが翔にお風呂を誘い出したのだった。
但し、あの布面積の少ない白色のマイクロビキニを着てだが・・・
二人一緒にお風呂の更衣室に入ろうとする姿を見たかなはななに話し掛ける。
「あっ!ななちゃん、私も一緒に・・・」
それを聞いたななはかなの方に振り向き、言葉を発した。
「今まで、かなちゃんが翔と一緒だったから今度から私と入るのっ!」
そして、翔は照れ笑いをし、二人一緒にお風呂の更衣室に消えた。
その言葉を聞いたかなは唖然とした。なな露出狂計画が失敗した。
独占欲の強いななはお風呂でも翔を独り占めにしたかったのだ。
ガックシと両手、両膝を地べたに付けたかなは、
ただ一人廊下でお風呂の更衣室を眺めていた・・・
その翌日、地下研究所兼住宅の地下実験室にて、
かなとななと翔が改良の終わった生命体転送装置の前に立っていた。
ななと翔はおまじないでお揃いの首飾りのペンダントを首から下げていた。
足元には、ペットのベスがいる。
かなが二人に話し掛ける。
「まず先にベスで試してから、ななと翔くんにお願いするわねっ!」
既に話し合っていたのか、ななと翔はうんと頷いた。
かながベスを連れて生命体送信用転送装置の扉を開けて、一緒に中に入った。
ベスを椅子に乗せて、首輪を外し、椅子から落ちないように固定する。
そして首輪は小型物体送信用転送装置の中に入れた。
かなが扉の外に出て、扉を閉める。操作パネルにて設定を確認し始めた。
ななと翔は少し離れたところから見ている。
全ての確認を終えたかなは、ななや翔の方に振り向く。
「じゃあ、二人とも受信用装置の方に行ってて!」
とかなは話し掛け、二人は生命体受信用転送装置に行った。
かなは二人が受信用装置の前に辿り着くの確認すると、大きな掛け声を出した。
「行くわよっ!」
と合図をし、かなは送信用装置の操作パネルのスタートボタンを押下した。
「スイッチON!」
送信用装置の小窓からベスが見えていたが、機械音と共にやがて蒸気の靄で見えなくなった。
「そっちの様子はどう?なな、翔くん?」
「問題ないよ、ちゃんと反応しているよ!」
受信用装置の小窓からも機械音と共にやがて蒸気の靄が出始めて中の状態が見えなくなった。
「翔、いよいよだね。興奮するね!」
二人の興奮がピークに達した時、機械音がやがてブザー音に切り替わり室内に鳴り響いた。
ビィーッ、ビィーッ、ビィーッ、ビィーッ、ビィーッ!!
ななと翔が受信用装置の小窓を見続けているとベスの姿が見えた。
「うーん、生きているかな?」
暫く動かないでいたベスがビックリした様子であくびをし始めているのが確認出来た。
「かなちゃん、かなちゃん!動いているよ!!プリン食べられるねっ!!!」
と興奮していたななだったがプリンの事は忘れていなかったようだ。
その言葉を聞いたかなは少し苦笑いをするも安堵した様子で受信用装置に駆け寄った。
「どれ、どれっ!私にも見せて!」
受信用装置の小窓を覗くななと翔の後ろに近づき、かなも興奮気味で小窓を覗いた。
「あっ!動いているよ。後ろ足で首を掻いているよ!!」
はっとして三人は顔を合わせ見つめあい抱き合って喜ぶのだった。
実験室の直ぐ隣の医療室でベスのメディカルチェックが行われた。
全くの健康状態で送信用転送装置の中に入る前のデータとほとんど一致している。
そして首輪も小型物体受信用転送装置の中に入っていた。
ベスが終わった後は、ななの順番になる。
やがて・・・
かなは送信用転送装置と受信用転送装置の準備を済ませ、ななを呼ぶのだった。
ななは翔とかなに握手を交わし、一人で送信用転送装置の扉の方に歩き出した。
扉を開けて送信用転送装置の中に入って、扉を閉めた。
送信用転送装置の中にいるななに話し掛ける。中に設置してあるスピーカーからだ。
「あーっ、あーっ、聞こえるなな?聞こえる?」
「返事して、返事っ?」
かなが小窓を覗きながらマイクを使って呼び掛ける。
「聞こえるよ!かなちゃん。なに?」
その声に応答したなな。立て続けにかなが喋る。
「まず身に付けている物を全部脱いで、物体送信装置の中に入れてね。」
「そうしたら、椅子に座って、ベルトを絞めてっ!」
分かったと言って、ななは小窓を覗いているかなに首を縦に振った。
小窓から離れたかなは、操作パネルにて設定を確認し始めた。
翔は少し離れたところから見ている。
ななは身に付けている物を全て、側にある物体送信装置の中に入れた。
おまじないで首から下げているペンダントも含めて・・・
そして生まれたままの状態のななは椅子に座り、ベルトを締めた。
装置の外のスピーカーから、ななの声が聞こえる。
「準備OKだよ!かなちゃん!」
その声を聴いたかなは「了解!」と答えた。
全ての確認を終えたかなは、翔の方に振り向く。
「じゃあ、翔くん、受信用装置の方に行ってて!」
とかなは話し掛け、翔は生命体受信用転送装置に行った。
かなは翔が受信用装置の前に辿り着くの確認すると、大きな掛け声を出した。
「行くわよっ!」
と合図をし、かなは送信用装置の操作パネルのスタートボタンを押下した。
「スイッチON!」
送信用装置の小窓からななが見えていたが、機械音と共にやがて蒸気の靄で見えなくなった。
そしてこの時、まだ誰も気付かなかったが、小型物体送信用転送装置の中にある
ななの首飾りのペンダントが反応を示したのだった・・・




