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始まりの日

このお話は長きにわたり全世界を巻き込んだ姉妹喧嘩であり、

一人の少年の長きにわたり時代を駆け抜けたお話でもあります・・・


舞台はまず少年の幼い頃の時代から始まります。



ある研究所の施設にて実験が行われていた。

これは数十年前に転送装置を使って物体の転送は可能になったが

生命体の転送はまだ不完全の代物だった。


物流はこの転送装置が一般的になり、宇宙にでも何処でも物が簡単に送れる時代になった。


ところが二人の研究者により物体転送装置に改良が加えられ、今まさに生命体の

転送が可能になる実験を始めようとしていた。


「お姉ちゃん、準備はいい?」


「もう少し待って!」


お姉ちゃんと呼ばれるまだ若く幼い少女が受信転送装置側の操作パネルで設定を

何度も繰り返し確認している。


「大丈夫、大丈夫。」


「そっちは大丈夫なの?さなっ?」


さなと呼ばれたまた同じような若く幼い少女が送信転送装置側の前で距離の離れていない

受信側の少女を見つめた。


「お姉ちゃんは心配し過ぎだよっ!さぁっ!始めるよ!!」


送信側の装置の中には、子犬が一匹入っていた。生きたままこの送信側の装置から受信側の装置へ

転送させるのが目的だった。


「了解!準備OKだよ。さな、始めて!」


「じゃあ、スイッチON!」


少し興奮気味のさなは操作パネルのスタートボタンを押下した。押下したが何も反応がなかった。


「あっれれっ!そんなはずないのに!!」


「お姉ちゃん、受信側の操作パネルで確認してみてっ!」


お姉ちゃんと呼ばれた少女は操作パネルで確認していくが設定自体は問題なかった。


「うーん、おかしいな、何でだろうっ?」


暫く操作パネルと睨めっこしていた少女は突然驚いた表情に変わった。


「あっ!ごめん、ごめん!」


お姉ちゃんと呼ばれた少女は送信側のさなの方を振り向き両手を顔の前に合わせお辞儀した。


「えっ!何か問題あったの?」


と同時に少し移動し受信側の少女の方に振り向いたさなは真剣な顔をしていた。

その時、顔を上げた受信側の少女は謝りながらも少し笑っているかにも見えた。


「さな、ごめんっ!受信ONのスイッチが入ってなかったよ。」


設定を何度も確認していたのに操作パネル前面の受信スイッチがOFFになっていたのだった。


「もうっ!かなのばかっ!!」


この光景はいつも通りなのか、さなの方も本気で怒っている訳ではなかった。

ただ怒るとお姉ちゃんと言う呼び方が名前の呼び方に変わるのが癖になっていた。


「かなはいつもそうなんだからっ!ちゃんと反省してよねぇ!」


反省しているかどうかは送信側のさなの方からは見えなかったが、受信側のかなが操作パネルにて

受信スイッチをONに切り替えた。


「ごめんなさい、さな。スイッチONにしたからもう大丈夫だよ!」


少し半信半疑なったさなはもう一度念を押すかのようにかなに言ったのだった。


「本当に大丈夫?」


これもまたいつもの光景なのか、かなも同様に答えるのだった。


「本当に本当に大丈夫だよ!」


さなもこのセリフは聞きなれているのか少し笑顔に戻り、操作パネルの前に移動した。


「今度やったら冷蔵庫のプリン全部貰うから!」


「えぇっ!駄目だよあれは!ななちゃんと一緒に皆で食べるの!」


冷蔵庫の中にはこの実験が成功した時のお祝いに用意した特性プリンが入っていた。

さなは少し突っ込んだ様子で答えるのだった。


「翔くんもいるでしょ!」


「そうそう翔くんも一緒!4人で食べるの!」


残念ながら今まで失敗続きの為、実験の度に用意された特性プリンは二人に食べられてしまったのだった。


「じゃあ、絶対成功させようね!行くよっ!」


さなは再び転送装置の操作パネルのスタートボタンを押下した。


「スイッチON!」


送信装置の小窓から子犬が見えていたが、機械音と共にやがて蒸気の靄で見えなくなった。


「そっちの様子はどう?お姉ちゃん?」


「問題ないよ、さな。ちゃんと反応しているよ!」


受信装置の小窓からも機械音と共にやがて蒸気の靄が出始めて中の状態が見えなくなった。


「いよいよだね。この時が一番興奮するよね!」


かなの興奮状態がピークに達した時、機械音がやがてブザー音に切り替わり室内に鳴り響いた。


 ビィーッ、ビィーッ、ビィーッ、ビィーッ、ビィーッ!!


操作パネルのモニターを見ていたかなが慌てて受信装置の小窓を覗くと可愛い子犬の姿が見えた。


「うーん、生きているかな?」


暫く動かないでいた子犬がビックリした様子であくびをし始めているのが確認出来た。


「さな、さな!!動いているよ!動いているよ!!プリン食べられるよ!!!」


興奮していたかなだったがプリンの事は忘れていなかったようだ。

その言葉を聞いたさなは少し笑いながら安堵した様子で受信装置に駆け寄っていた。


「どれ、どれっ!さなにもさなにも見せて!」


受信装置の小窓を覗くかなの横に近づき、さなも興奮気味で小窓を覗いた。


「あっ!動いているよ。後ろ足で首を掻いているよ!!」


はっとして二人は顔を合わせ見つめあい抱き合って喜ぶのだった。



この研究は幾つもの機関が実験をしており、開発は時間の問題だった。

ただこの二人が実験を成功させたのは生まれつき天才だったのと、

数十年前に物体転送装置を開発した人物の子供だったからである。


父親は物体転送装置を開発した後、行方不明になり姿を消していた。

生きているのか死んでいるのか分からないと、母親から聞いていた。


母親はその後、冷凍睡眠装置を研究、開発し最近になって実用化に成功していた。

こちらはまだ高価で一般的ではないが、生命体を瞬時に眠らせ保存を可能とし

長期にわたり時を過ごせるものだ。

ただ今の時点では研究、開発の期間が短いせいか数年程度の保存しか確認出来ていなかった。


母親の研究を基に娘達二人が物体転送装置に冷凍睡眠装置を組み合わせて、

生命体の転送が出来ないものかと研究、実験をしていたのだった。


ただの物体転送装置に生命体を転送させる事は可能なのだが、

転送後、生命体は魂の抜けたもぬけの殻の状態になり、生きているのだが全く動かないのだ。


研究をする上でその事に懸念した母親は開発した冷凍睡眠装置を使って、魂の抜けた生命体を

保管して生き返せないかと長きにわたり考えていたのだった。


娘達二人は物体転送装置を改良、送信装置側で生命体を瞬時に眠らせ、受信装置側で瞬時に解凍する

方法を思いついた。これであれば生命体を一時的に無機体にし転送すれば可能になるはずだと・・・


そしてその結果、今日になって成功したのだった。


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