格闘紳士
見るに耐えないにやけ面を晒しながら間合いを詰めてくる剣を構えた二人。完全に舐めているのだろう。ローティアートのことを舐め回すように見ている。
ロウリーが前に出る。黒い手袋に包まれた手を平手の状態にし、手のひらを相手に向け、指先を右手は上に左手は下にして構える。
「ここは私にお任せください」
「承諾」
「オイオイ、お爺ちゃぁん?お家のベッドでゆっくり寝てた方が良いんじゃ無いかぁ?アッチの方と同じように立てなくなっちゃうよー?」
ギャハハハハ!と品の無い笑いをする相手二人に対して、ロウリーは俊敏に動いた。
素早く片方の男の懐に入り込み、顎に掌底打ちを行い一撃で意識を狩りとったのだ。
「なっ」
崩れ落ちる男な目の前にいるロウリーに気付いたもう一人の男が剣を振ろうとするが、振り始めを手の甲で押さえつけられる。小さな金属音と共に動きが止まり、その隙に顎を打ちあげられて意識を飛ばす。
「……強いんだな」
「見事」
「ありがとうございます。この程度の相手であれば何時でもお任せください」
そう言って一例するロウリー。その所作は糞爺と同一人物とはとても思えなかった。
「ん?あのアイツはどこ行った?」
俺の足を掴んでいた大男がいつの間にかいなくなっていた。辺りを見回していると、ロウリーのすぐ後ろに斧を構えてる男がいた。
「ロウリー危ない!」
「死ねぇ!」
男が斧を振り下ろそうとしたそのとき、
「さっきはどうもっ、ありがとうよ!」
斧の柄が男の後ろから出てきた手に掴まれ、後頭部を地面に叩きつけられていた。
「ふぅ、あー……巻き込んじまってすまんな」
大男が一息つきながら立ち上がり、申し訳なさそうに頭を掻きながら軽く頭を下げる。
「絶許」
「ゆるさん」
「そうか、ありが……えー」
何故こいつは許されると思ったのだろうか。
「ほ、ほら。爺さん助けたし、ダメ?」
「駄目」
「俺が叫ぶ前から気付いてたみたいだしな。あと、手を合わせて首かしげるのやめろ」
髭面で可愛い子ぶられても怖いだけだ。
「礼ならするからさー」
「奴隷」
「重すぎないか!?」
「妥当」
おい駄メイド。今の主人は一応俺だぞ。ほっぽって会話するんじゃない。
「まぁ、賠償金で手をうってやろう」
金が貯まるほど俺の隠居が早まるからな。
「金なんか持ってるように見えるか?」
「なら、お前も賠償金を貰えば良い。ほら、そこに金が落ちてるだろ」
この大男がやったのだろう。偉そうにしていた恰幅の良い男は伸びていた。
「あんた酷い奴だな」
人を巻き込んだような奴には言われたくない。それに意気揚々と漁ってるじゃないか。
しばらくして趣味の悪いアクセサリーや金貨などを根こそぎ取った男は、そのほとんどを渡してきた。
「これでいいか?」
「無罪放免」
むしろ罪は増えてるんだけどな。まぁ俺には関係無いから良いか。
「なぁ、情報を貰ってもいいか?あの量の馬車が全部こいつのって訳でもないだろうし」
そうでなければ今頃ぞろぞろ出てきていただろう。
「お、いいぜ。出来れば協力して欲しいしな」
待ってましたと言わんばかりにそう言うと、大男は休憩所の中に入っていった。
投稿遅くなりそうだったので投下