はでにはげてる
だんだん主人公の化けの皮が……
「あの男はなんだ!?ワシの娘と親しげに話おって、何様のつもりか!!」
派手な部屋の中、派手にアクセサリーをつけて派手な格好をしたまるっと派手に太ったハゲが、派手に唾を飛ばして派手に怒鳴っていた。
その男はボルケーノリヴァの国王であり、その名をハーゲンテール・ハーデニールという。
その部屋には国王の他に四人おり、内二人は扉の両脇に控えている。
残る二人は国王と机を挟んで対面に立ち、男は貴族風の騎士で青いジャケットとブリーチズ、赤いマント、白いマフラー、そして黒いストッキングにブーツを身に付け、女は給仕風の黒いエプロンドレスにブーツ、白いエプロンスカートとホワイトブリムとフリルの着いた二の腕まである手袋、そして胸当てを身に付けていた。
(汚い臭い気持ち悪い五月蝿いハゲ阿呆醜い豚達磨)
頭の中で罵倒を浴びせつつ、眉一つ動かさない給仕服の女は淡々と報告する。
「姫、男、再開望ム。王ハ不要」
「アイツヲコロセェ!」
(煽るんじゃないこの駄メイドがぁ!)
金髪碧眼の美丈夫である貴族風の男は、隣にいる女の透き通る白い頭をはたき、切れ長で深紅の眼に目潰しを行い、スレンダーなその腹に蹴りを入れたい衝動を抑えつつ、目の前の豚を落ち着かせる方法を模索していた。
「抹殺不要。活用可能」
「カツヨウ?」
「肯定」
豚王は唾と汗を撒き散らすのをやめて給仕服の女に目を向ける。
「帝国調査。単独使者」
「貴女は一体何を考えているんだ。正気とは思えないぞ」
報告を終えて指示を受けた二人は王の私室を出た後、並んで廊下を歩きながらも男が女に怪訝な目を向けていた。
「姫ノ守護ニ必須」
「それとレオンハルト将軍の単独帝国視察にどういう関係がある?単独にしようとした必要も将軍である必要もないだろう」
「否定」
給仕服の女は機械的に歩きながらも返答を返す。
「迅速、能力、無害、国ニ無影響」
その言葉を聞いた男はしばらく考える素振りをし、どことなく納得したような、いまいち納得しきれないような、なんとも言えない苦い表情になる。
「最低限観察力や交渉力があり、相手に警戒されにくく、居なくても国への影響が少ない人物が必要なのは理解できる。だが、やはりレオンハルト将軍である必要性がわからない」
「姫ト会話。把握」
「……人柄を把握したということか?」
「肯定」
入り組んだ廊下を抜けて階段を降りる。
「……そうか。姫様への説明と護衛は任せてくれ」
「貴殿、信用」
階段を降りきったところで、階段な両脇に立っている兵士からそれぞれ預けていた武器を受けとる。男はやや長めの鞘に入ったロングソードを腰に下げ、女はいくつもの短剣を服のなかに仕込み、レイピアより太く短い剣を腰の辺りに下げる。
「再開を祈る」
男はそう言って胸の辺りに握りこぶしを掲げるような敬礼をする。
それに対して女は礼をしてから歩いていった。
「レオンハルト将軍」
中央中庭に向かう途中、無表情ではあるが白髪の美女に話しかけられた。前にリンと別れるときに礼をしていたメイドだ。
人気の無い場所、イケメンの俺と美女。これは十中八九告白だろう。むしろ告白以外に何かあるだろうか。いや、ない。
何を言われても驚かないよう、深呼吸をして覚悟を決めてから振り向く。
「何かな、お嬢さん」
決まった。
髪をかきあげる仕草も、すました顔も、作った声も、完璧だった。
「勅令。帝国視察」
…………………………………………やだ、はずかしい。
糞みたいな勘違いからのゴミみたいなカッコつけについては忘れよう。
顔が火を吹きそうなことも穴があったら入りたい衝動も無視して、目の前に突き出されている紙を受け取る。えーと、ローティアート及びロウリーを連れ、グレス帝国へ使者として赴け?
へ?
「嘘だろ……」
「三人、新婚旅行」
「いやいやいや」
「嫌?」
「光栄です」
「我嫌悪」
「おい」
会ってから表情が全く変わってないから生真面目かと思ったが、かなりイイ性格をしているようだ。
「これ、期日も出動部隊も書いて無いんだが……」
「今、無期限。三人」
「…………」
「イコウ」
「嫌だ!俺は引き籠る!ニート万歳!」
「無駄」
俺を引き摺るその手は、いくら抵抗してもビクともしなかった。
「バトラーのロウリーと申します。よろしくお願いします、レオンハルト将軍」
ハーレムじゃない……だと……?
駄メイドは本気で一人で行かせようと思ってました。貴族風の男ファインプレー
この場面カットしようかと思ってたのですが、今後考えるとあった方が良さげなので上げときます。
しばらく出番無くなる人達が続出中