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死亡フラグは勝手に立つ  作者: パンツ大将軍
2/9

(仕事なんて)ないです

学生の皆さん。学校の国語の授業、やっておいた方がいいですよ(白目)

「将軍、前回の賊討伐の報告書と半月後のリンドヴルム姫生誕祭の計画書をお持ち致しました」


「ちょっと待て」


 顔すらマトモに覚えていない副官が仕事を持ってきた。働きたくない身としてはそれすら問題だが、それ以上に分厚い冊子の計画書がおかしい。


「何故俺のところに計画書が回ってくるんだ。確認であれば宰相を通して王に行くはずだろう」


「こちらに渡された理由は私にもわかりませんが、どうやらほとんど何も決まっていないようです」


「おいおい嘘だろ」


 恐る恐る計画書を開く。二枚目以降は何も書かれていなかった。


「……ほとんど白紙だな」


「その冊子分の催しを行う、ということなのだとおもわれますが、流石にこの量は……」


「だよなぁ」


 何枚あるのか数えてみたが、五十を越えたところでやめた。まだ半分位であった気もするが俺は何も見ていない。


 そもそも娘の誕生日は私が計画するとあれだけ意気込んでいた王が、未だに白紙にしていることが異常だ。これは絶対に面倒なことになる。


「よし、見なかったことにしよう」


「それは……流石に無理では?」


「長生きの秘訣は、厄介事には関わらないことだ」


 頭部の不毛化現象が確認できる若そうな副官殿は、しばし考えるそぶりを見せる。


「……………………どういたしますか?」


「レイア辺りに押し付けよう。あいつなら何とかできるだろう。ついでに報告書も軍師どのに渡してくるか」


 レイアは全身甲冑の無骨さに似合わず、細かい気配りや人を喜ばせるのが上手い。顔を見たことは無いが、完全無欠のイケメン野郎である。何故か負けたような敗北感を感じる。


 軍師は策を練ることに関しては無能だが、おそらくこの程度の報告書ならきっと読めると思われる。多分。


 よし、今日の職務は終わりだ。散歩にでも行こう。












 迷った。







 城勤め八年目にしてこの体たらく。街を歩いていたらすれ違った幼児に、まな板のお魚さんみたいなおじちゃん、と言われたのは伊達ではなかった。


 見取り図としては、中心に五階建ての城(中心部のみ六階)があり、その四隅には更に高い塔と中庭がある。中心部にも中庭があり、三階まで吹き抜けとなっており、二、三階から見渡すことができる。

 十字方向は正面に門があり、それ以外は通路となっていて左右は兵舎等、奥は王族の居住区であり更に行くと近衛専用の区画がある。

 その回りは練兵場などの広場や小屋があり、全体を城壁によって囲っている。正面に門があり、その左右と城壁の四隅に塔がある。


 自分がいるのは四隅の中庭のどれかであるはずだ。しかし、長い階段や廊下を適当に歩いたため、どの中庭かまでは分からない。迷子の鉄則として、無闇に歩かないことが重要だ。


 前回のように人気の無いところまで行ってしまい、泣きかけるような真似はすまい。二度も同じ轍を踏むような人間ではない。


 今は風が気持ちいい季節、たまにはゆったりと過ごすのも良い。


 辺りを見回しても人があまり居らず、雨が降る心配もなさそうである。ベストポジションにハンモックまである。これは寝るしかない。


 寝転がってみると肌触りも良く、抜群の安定感があった。後は酒でもあればベストだったが、高望みというものだ。


 ――――おやすみなさい


 微睡んでいく意識のなか、そう聞こえた気がした。














「来るなぁ!っ、づぇ!?」


 は、鼻を打った……。まぁ、ハンモックの上で飛び起きようとすれば、落ちもするか。


 それにしてもひどい夢だった。何故夢でまでガチムチメタボハゲのオッサンの大群に貞操を狙われなければならんのか。現実が非情ならば夢ぐらい優しくしてほしい。


「大丈夫ですか?」


「あぁ、うん。だいじょぶだいじょぶ。ちょっと鼻血出てるだけ」


「こちらをどうぞお使いください」


 そう言って、目の前にシミの一つも無い純白のハンカチを差し出される。


 そこで前方に人がいることに気付き前を向くと、そこには薄い水色のふわりとした露出の少ないドレスを着た少女が居た。髪は蒼にも翠にも見えるエメラルドブルーとでも表せるような綺麗な色で、腰に届く位長いストレートの癖の無いものである。瞳も同じ色で、穢れを知らない子供のような純粋さを感じるほどに澄んでいる。


 古代の人形師が、ロストテクノロジーをふんだんに使って作成した人形だと、そう言われた方が信じられるぐらい姿形も色も綺麗だった。


「えっと、動かないでくださいね?」


 しばらく見つめたまま黙っていたからか、困惑の表情が微かに読み取れるが、手に持っていたハンカチで鼻を軽く押さえてくれた。


「痛くないですか?」


「大丈夫。折れたりはしてなさそうだ」


「そうですか、良かったです」


 不安そうに聞かれた言葉に大丈夫と返すと、その子は柔らかい笑みを浮かべ、心底安心したように息をついた。








 二十三のおっさん、推定十一、二歳の女の子に惚れかける。

エメラルドブルー:ごく稀に一部の商品等で使われる色の名前。特に定義は無さげ


あの夢は絶対に許さない

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