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詩など(象徴詩)

金魚

作者: 檸檬 絵郎

挿絵(By みてみん)

↑若松ユウさんより、本作のイメージイラスト。




 


 金魚




 彼女の部屋は塔のうえで、

 彼女は外を知らなかった

 ゆがんだガラスの窓をとおして、

 空飛ぶサカナをながめていた


 天蓋(てんがい)に張りついたサテンの金魚が、世界でいちばんのミステリーだった

 彼女はそれを、空飛ぶサカナの標本だと思っていた


 金色(きんいろ)の羽に大きな黒目

 それと、とんがっていない口

 飛び交うサカナのどれとも違う

 世界でいちばんのミステリーだった


 それはきっと特別だからだと、彼女は考えた

 そして自分も特別なのだと、

 はるかに下の、かすんだ世界を見て思っていた


 それでも彼女は退屈だった

 ほんとうの謎を解き明かしたかった

 空飛ぶサカナの正体と、

 かすんだ世界の真実とを



 いつか金魚が動きだして

 彼女を誘って一体になって、

 金色(きんいろ)の光の粉に変わって

 サカナの群へと溶けていく……


 そんな光景を夢に見て、

 彼女は今夜も、まくらを抱いた。





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― 新着の感想 ―
[良い点]  海底ドームとは違う、高い塔の天辺に住まう「彼女」。生き物の形も名前も知らない無垢に、窓を通してどんな雨が降り注いでくるのか。きっと「彼女」も金の雨と一体となって、無限に泳ぎ出すのでしょう…
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