比べなくて良いんだよ
「りのちゃん、あゆちゃんお薬の時間だよ」
りのちゃんとあゆちゃんの担当看護師さんが二人に声をかけました。
「・・・・・・」
りのちゃんは、お薬の時間がとっても嫌いです。
粉の薬が苦手で飲めないので、りのちゃんのお薬はシロップのお薬が処方されています。
「りのちゃん、飲んじゃおうか?」
担当看護師さんが、りのちゃんに薬をすすめるけどシロップを口に持っていく勇気がなかなか出ない、りのちゃん。
その間に、あゆちゃんは看護師さんに渡されたシロップのお薬をゴクンと飲み干し容器を看護師さんに返しました。
「あゆちゃん、偉いね」
看護師さんが容器を受け取りながら、あゆちゃんを誉めます。同じ部屋のみんなも次々に、あゆちゃんを誉めます。
「あゆちゃん、すごーーい」
「あゆちゃんは、かっこいいね」
「うわぁ、あゆちゃんすごい」
「わぁ、あゆちゃんすごいね!」
次々、あゆちゃんに贈られる賛辞。みんなが、あゆちゃんを褒め称える。その中で、りのちゃんはシロップが飲めずにいます。
「さぁ、りのちゃんの番だよ」
看護師さんが、りのちゃんが頑張れるように声をかけます。焦らずりのちゃんのタイミングで飲むまで待ちます。
シロップの入っている容器を見つめるだけでなかなか飲むことができない、りのちゃん。
「まだ飲まないの?」
「あゆちゃんは飲んだよ」
「ちょっとの我慢だよ」
「無理矢理飲まされちゃうよ?」
「早く飲んでお話ししよ」
「りのちゃん、がんばれ!」
悪気はないけど子供の言葉はストレート。りのちゃんは泣きそうになりながら、シロップの入った容器を持つ手に力が入っています。
「りぃ、あゆちゃんみたいにできないもん」
あゆちゃんと比べてしまう、りのちゃん。
看護師さんから渡されて躊躇わず飲めた、あゆちゃんに比べ、シロップが苦手な、りのちゃんはなかなか飲めなくてだんだん悲しい気持ちが溢れてきます。
看護師さんからシロップを渡されて、時間はかかってしまったけどキチンと飲めたりのちゃん。
「りのちゃん、飲めたね。偉いね!」
看護師さんが、りのちゃんを誉めます。りのちゃんは恥ずかしそうにうなずいてお布団に潜ってしまいました。
シロップのお薬は苦手で時間がかかってしまう、りのちゃんですが、みんなが泣いてしまう注射や採血など、泣かずに受けることができる、りのちゃん。
「みんなそれぞれ得意なこと不得意な事があって、それぞれみんな頑張っている。比べなくたって良いんだよ。みんなそれぞれちゃんと良いところあるんだよ」
優しく見守る看護師さんから笑顔と優しい言葉がこぼれました。