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魔族転生  作者: 桃源郷
第一章 幼年期
7/30

待ち合わせと友人達と楽しい1日

無事に研究の成果を上げて、カサリナ達との約束の日を迎えます。

ルーシアが初めて加わる1日はどのようなものになるのでしょうか?


第一章 幼年期 第七部の開幕です。

どうぞ、最後までお楽しみくださいませ。

セシリアとの賭けに負けた翌日の昼。約束通り、俺はいつもの公園に足を向けていた。


今回はセシリアも一緒だ。側にいなくてもついてきてるんなら、一緒に行っても同じようなもんだからだ。

それに、今回は初めてルーシアとも遊ぶ。ジニランフ家を警戒してるセシリアにとっては側にいる方が安心だろう。ルーシアが危険だとは欠片程も思えないけど、それは心配性なセシリアには言うだけ無駄なのは分かりきってるし。それなら、間近で様子を見て、大丈夫だって実感してもらった方がいいだろう。

でも、手を繋いで歩くのは何とかなんないもんかなぁ。物凄く照れ臭いんですが。


「な、なぁ? セシリア?」

「はい。なんでしょうか?」

「今も手を繋いでないと心配か? カサリナと2人で遊んでた間は1人で歩き回ってたんだけど」

「はい。こうしている方が安心です。何があってもすぐに対処できますので」

「そぉかぁ・・・まぁ、それならいーや」

若干脱力しながら言う俺。


まぁ、予想してた答えではあるんだけどな。無意識に手を繋いでくるくらいなんだし。

これが男として好意を向けられてとかだったら、嬉しい事この上無いんだけどなぁ・・・完全に保護者目線だもんなぁ・・・まぁ、5歳児相手に異性としての好意を向けられてたら、それはそれで大いに困るモンがあるわけだけど。



それから程無くして、公園に到着。


前にルーシアはこの出入口近くで踞ってたから、ここで待ち合わせにしといた筈だけど・・まだ来てない、か? まぁ、細かい時間までは言ってないし、先にカサリナと合流するとしようかね?


「あ・・・」

再び歩を進めようとした時、視界の外から小さく気弱な聞き覚えのある声が俺の耳に届いて、そっちに振り返る。

「よぉ。久しぶりだな、ルーシア。元気にしてたか?」

戸惑いを浮かべながらも、コクコクと頷くルーシア。俺は側に歩み寄り、頭を撫でる。

「そっか。それならよかった。さ、行こう。カサリナは多分待ちくたびれてる」

「は、はははは、はいっ」

真っ赤になりながら返事をするルーシア。


照れ屋な子だ。こういう可愛気のある子どもなら、見てても平気なんだけどな。一般的な魔族の子どもはどうにも生意気で可愛気が足りん。やんちゃとか言うレベルをちょっと越えてるんだよな。


それから、カサリナの待つブランコへと足を運ぶ。

「あっ! やっと来た~っ!!」

かなりの勢いで回転させていたブランコから飛び降りて、俺達に駆け寄ってくるカサリナ。

「おう。久しぶり」

「うんっ。ルーシアもっ」

「え? あ、は、はい」

目を白黒させてモジモジしながらまた赤くなるルーシア。

「来てくれてよかったぁ。公園で見かけても、遠くからちょっと手を振るしかできなかったんだもん。ごめんね?」

「え? え? あ、え、と・・・い、いいえ、そんな・・・」

「そっか。この5日間も2人はここに来てたのか」

「毎日来てるもん。ケイが来たりしないかなぁって」

若干頬を膨れさせて言うカサリナ。

「いや、そんな気まぐれは起こさんぞ。っつーか、んな余裕は無い。1日中魔導書と文献と格闘してて、終わったら大概グッタリしてんだから」

「うわぁ・・頭が痛くなりそう・・・・」

「なるぞ。特に、今回のは・・・まぁ、成果は得られたから満足だけどな」

「満足って、じゃあ、成功したんだっ」

弾けるような明るい笑顔で明るい声を出すカサリナ。

「おう。まぁ、まだ練度が足りてないけど、そこは毎日の積み重ねが必要な部分だからな」

「れ、<れんど>って?」

「あぁ。まぁ、要するに練習不足って事だ」

「な~んだ。完成したばっかりなんだから、それは当たり前だよね」

「ああ。ん?」

視界の端で、チラチラと俺を見ているルーシアに気付く。

「どした?」

「え?」

「何か聞きたいんじゃないのか?」

「え!? あ、いえ、その・・・」

「遠慮なんかすんなって。聞きたい事は聞いていいんだぞ? そりゃ、答えられない事もあるかもしれないけど、少なくとも、俺とカサリナは聞かれただけで怒ったりなんかしないから」

俯いてしまうルーシアの頭を撫でながら言ってやると、ルーシアは耳まで真っ赤になってしまう。

「うん。あたしなんかいっつもケイにいろんな事聞いてるしね」

「は、はい」

「んで、どした?」

「あ、え、えっと・・・魔導書と文献、って、何をしてたの、かなって・・・」

「あぁ。そういや、言ってなかったっけか。魔法の研究をしてるんだよ、俺」

「え・・」

顔を上げて驚いた顔で俺を見つめるルーシア。

「俺も[前兆の子]だって事は言ったろ? んで、兄貴の憂さ晴らしの的にされる事があるから、弱いままじゃ危なくてな。セシリアが守ってはくれるけど、いつまでも盾になんかしたくないし」

「で、でも、魔法なんて使ってたら・・・」

「おう。周りにはおもいっきり馬鹿にされてるぞ。弱い奴がやる事だってな。でも、実際に肉体ランクは低いわけだし、馬鹿にされるのを嫌がって対策を打たないってのはどうにも馬鹿馬鹿しくてな」

「あ・・・」

「弱い奴の証拠って言われる魔法でも、上手く使えば自分より肉体ランクが上の奴でも撃退できる。んで、今回の魔法で肉体ランクが上の奴でも勝てるようにはなった」

「「え!?」」

俺の言葉に、カサリナとルーシアの驚きの声が重なる。

「まぁ、練度の問題もあるし、どれくらい上のランクまで通用するかはまだハッキリしてないけどな。でも、短時間ならB-のセシリアにも対抗できるぞ?」

「うっ、ウソでしょっ!? 魔導生命体って、大人の人と同じくらいなんだよ!?」

「本当です。私は全力でご主人様(マスター)を捕まえていましたが、純粋に力負けをしてしまいました」

セシリアの言葉に、カサリナもルーシアも呆然となってしまう。

「それに、魔法の効果時間内のご主人様(マスター)には追いつく事も触れる事もできませんでした。動きについてもご主人様(マスター)の方が上になります」

「まぁ、肉体強度の面に関してだけは、まだどの程度のモンか分かってないんだけどな。セシリアにおもいきり殴ってもらうわけにもいかないし」

「そ、そんな事は絶対にできません。ご主人様(マスター)に攻撃するなんて・・・」

俺の言葉に、全力で首を横に振って言うセシリア。

「分かってるって。そんな事させないから安心してくれ」

「は、はい」

胸を撫で下ろしながら言うセシリア。


俺に攻撃するのはそこまで嫌か? いや、無理矢理させるつもりもないし、セシリアにとっての俺は完全に保護の対象なのは分かってたけど、そんな拒否反応を見せるとは・・・


「魔法ってそんなに凄いんだ・・・ケイはC+って言われたんだよね?」

「ああ。だから、俺がどんなに訓練を積んだとしても、セシリアに本来は勝てない。でも、結果は聞いての通りだ」

「凄い・・・」

「まぁ、この魔法も結構難しいからな。使いたいんなら練習は必要だと思うぞ。カサリナもルーシアも魔法なんか使った事ないだろ?」

戸惑いながらも首肯するカサリナとルーシア。

「・・・練習したら、あたしも使えるように、なる?」

「ああ。難しくはあるけど、魔力構成理論は完成させてる。多分、誰にでも使えるようになるよ」

「だ、誰にでも、ですか? それは危険なのでは・・」

不安そうな声で言うセシリア。

「使おうとするんなら、な。でも、魔族は魔法を弱者の証として捉えてる。学ぼうって気になる奴がまず普通はいないよ。それに、俺が教えるのは俺が信用できるって思った奴だけだ。今の時点だと、セシリアとカサリナ、ルーシアくらいだな」

「「え!?」」「やったぁっ!」

カサリナの無邪気な喜びの声と、セシリアとルーシアの驚きの声が重なる。

「あ~、でも、無理に教えようとは思わないよ。魔族として魔法には抵抗もあるだろうし、すぐに使えるようになるモンでもない。地道な練習が必要なだけに、やる気がなきゃ教えるだけ無駄だろうからな」

「教えて教えてっ! あたし、一生懸命頑張るからっ!」

目を輝かせて言うカサリナ。

「オッケー。時間はかかるだろうけど、少しずつやってこうな」

「うんっ! ありがとっ! ケイ!」

「ま、待ってください、ご主人様(マスター)。カサリナさんは同じ紅魔ですが、ルーシアさんはいくらご主人様(マスター)のご友人とはいえ、白魔の、それもジニランフ家の1人です。危険ではありませんか?」

「ない。俺の友人なんだから」

キッパリと言い切ると、返す言葉を失ったようにオロオロし始めるセシリア。

「・・・ケイ、くん・・・・・ヒック、ヒグッ・・・うぇぇぇ~~ん」

「え!? ちょっ!? ど、どうした? ルーシア?」

いきなり泣き出すルーシアに、本気で慌ててしまう俺。

「な、何か気に障るような事、言っちまったか?」

泣きながら首を横に振るルーシア。


あ・・もしかして、嬉しかったのか? いやしかし、まさか泣き出す程とは・・・


「ど、どしたの? どこか痛いの? 大丈夫?」

狼狽えながらもルーシアに気遣いの言葉を掛けるカサリナ。ルーシアは涙を拭いながら首肯するが、涙が止まらず、溢れ続けてしまう。

「ん。まぁ、ゆっくり泣いていいぞ。今日は1日一緒に遊ぶ日だ。時間はたっぷりあるんだからな」

泣くじゃくるルーシアの頭をソッと抱き寄せて、そのまま頭を撫でてやる。


辛かったんだな。誰にも顧みられず認められず、家族からすら虐げられて、それでも必死で耐えてきたんだもんな。5歳児には過酷過ぎる。俺にどうにかできる問題じゃないけど、ここでの時間くらいは辛さから解放される時間にしてやりたいもんだ。

ついでに、馬鹿兄貴とそのツレのガキどもは機会があったら徹底的に心を折ってやる。趣味じゃないけど、魔族の子どものルールに従ったやり方でな。




それから少しして、ルーシアが泣き止み、離れると真っ赤になって俯いてしまう。

「あ、あの、その・・・ご、ごめんなさ」

謝ろうとするルーシアの額にデコピンを食らわせると、ルーシアはキョトンとした顔で俺を見つめてくる。

「こういう時は謝るもんじゃない。何も悪い事はしてないんだから」

「え、あ、は、はい。で、でも、えと、何て言えば・・・」

「嬉しかったんなら<ありがとう>でいいんだよ」

「は、はい。え、と・・・あ、ありが、とう・・」

語尾が消え入りそうなくらいに小さくなりつつも、嬉しそうに頬を緩ませて礼を言うルーシア。

「お? 初めて笑ったな」

「え・・・」

「うん。ルーシアも笑ってる方が可愛いぞ」

俺の言葉に、ボッという音が聞こえそうな勢いで耳まで真紅に染まるルーシア。

「かっ、かわっ!?」

驚きの声を上げてまた俯いてしまい、そのまま全力で首を横に振りまくるルーシア。

「誉めてんのに俯くなっての。ほら、顔を上げて胸を張ってっ」

ルーシアの肩を持って、胸を張らせ、顔を上げさせる。

「ひゃっ、ひゃいっ」

真っ赤な顔のままで目を白黒させながら、素っ頓狂な声を上げるルーシア。すると、何故かセシリアが俺を後ろから抱き締めてくる。

「お、おぅ? どした?」

「はい。何でしょうか? ご主人様(マスター)

「い、いや、なんで抱き締められてんのかなって」

「・・・・・・どうしてでしょうか?」

不思議そうな顔で言うセシリアに、思わず脱力してしまう。


そんっっなにジニランフ家の子と仲良くなるのが心配か? この様子を見てもまだ安心できませんか。セシリアの心配性はトコトンだな、おい。


「ハァ。大丈夫だって。心配ないから」

「・・・はい。ご主人様(マスター)

「ふぅん・・・ケイってルーシアにも優しいんだぁ」

若干不満そうな声で答えるセシリアに続いて、ジト目になって険の混じった声で言うカサリナ。

「普通だっての。何を怒ってる?」

「べっつにぃ? 怒ってなんかないもんねーっだ」

ベーッと舌を出してそっぽを向くカサリナ。


完全に怒ってんじゃねぇか・・・ハァ。ヤキモチか。これがもうちょっと大きくなってからの事なら嬉しいんだろうけど、相手は5歳児だもんなぁ。いやまぁ、今は俺も5歳児ではあるんだけど。


「怒るな怒るな。カサリナも笑ってる方が可愛いぞ?」

セシリアの腕を抜けて、そっぽを向いたカサリナの頭を撫でながら言う俺。

「お、怒ってないったらぁっ」

赤くなって頬を緩ませてながらも、何とか怒り顔を保とうとするカサリナ。

「ほら、探検に行くんだろ?」

「う、うん・・・もうっ、ケイはしょーがないんだからっ」

口調だけに怒りを残して、完全に緩んだ顔で言うカサリナ。


うんうん。機嫌が直ったみたいで何よりだ。




それから、カサリナの先導で街中探検を開始。

ルーシアは友人とくだらない話をしながらの散歩という初めての経験に、最初はカチコチに緊張してしまっていて口が開けずにいた。しかし、カサリナが優しく、明るく、そして楽しげに話し掛けてくる間に緊張が解れてきたらしく、少しずつ口数が増えてきて、それに比例するように笑顔の頻度も上がっていく。


やっぱり子どもは笑ってるのが1番だ。これもカサリナのおかげだな。俺じゃこんな風に緊張を解してはやれないからなぁ。




そして、夕方になって探検を終了して、また公園に戻ってきた。

「楽しかったね~♪」

「はいっ。こんなにいろんな所に行ったの初めてでドキドキしましたっ」

明るいカサリナの声に、明るいルーシアの声が続く。


しかし、ホントに元気だな・・・俺はもう若干グッタリ気味なんだけど、この2人はまだまだイケそうだぞ。

中身がおっさんだと、疲れるのも早くなるんだろうか? いや、研究で引きこもってるせいか? どっちにしろ、もうちょっと体力も付けないとなぁ。女の子に体力負けしてるのは、さすがに情けないモンがある。


そこに、ルーシアと同じ銀髪の男の子を先頭にした男子4人が近付いてくる。カサリナとルーシアは2人で喋ってて気付いてないみたいだけど、セシリアは俺の隣に来て、軽く警戒の姿勢を取った。


うわぁ・・アレ、やっぱり俺達の方に来てるんだよなぁ。面倒な事になりそうな予感が・・・何せ、白系の髪の色は紅魔族と同じく五大部族の1つである白魔族の証。つまりは、ルーシアと同じ部族。それがわざわざこっちに来てるって事は、恐らくルーシアの関係者だろう。

予想してたトラブルではあるけど、どうやら、初日から楽しいだけの1日ってわけにもいかないっぽいな。

楽しい時間を過ごした主人公達ですが、どうやらそれだけでは済まなさそうです。異なる部族が交流を持っていると、どうしても目立ってしまう事が原因です。何せ、頭髪の色が各部族の目印ですから。

さて、主人公達に歩み寄る白魔の子ども達はどのようなトラブルを引き起こすのでしょうか?



では、これにて第一章 第七部を閉幕とさせていただきます。

お付き合いいただいた皆様に感謝を。よろしければ、次回もまたお付き合いくださいませ。

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