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魔族転生  作者: 桃源郷
第二章 青年期
18/30

ペットと空の旅と黒歴史

主人公の機雷魔法によって服従の姿勢を取る黒竜。その処置はどうなるのでしょうか?


第二章 青年期 第九部の開幕です。


どうぞ、最後までお楽しみくださいませ。

「とりあえず、大人しくなってるし、怪我は治しておいてやるか。《治癒(キュア)》」

若干震えながら俺に撫でられている黒竜(ブラックドラゴン)に、治癒魔法を施して、目に見える外傷を全て治してやる。

「・・・ギュァ?」

痛みが消えたからだろう。不思議そうな声を出して、何回も瞬きしてみせる黒竜(ブラックドラゴン)


愛嬌のあるヤツだな。それでも伏せたままって辺りに、どれだけビビってたのかがよく分かるけど。

・・・ふむ。やたらと頑丈だし、竜の息吹(ブレス)の威力も凄まじかった。コイツがホントに俺の言うことをちゃんと聞くんなら、戦力になるんじゃないか?


「お前、俺に従う気はあるか?」

「へ? ケ、ケイ?」

「俺の言葉が理解できて、俺に従ってついてくる気があるんなら、右手を上げてみろ」

カサリナの戸惑いの呼び掛けは一旦スルーして続けた俺の言葉に、黒竜(ブラックドラゴン)は右手(右前足?)を即座に上げてみせる。

「私達の言葉を理解してるんですね・・・」

「ついてくるって、ケイ、この竜を飼うつもりなの?」

「ああ。戦場に連れてけば、安全性が増すかと思ってな」

「危険ではないでしょうか? 戦いの最中に反旗を翻されては、逆に危険性が増してしまうかと思われますが」

心配そうに言うセシリアに、軽く肩を竦めてやる。


まぁ、言わんとしてることは分かるんだけどな。セシリアは俺の身の安全に関わることになると、過保護振りにブレがないし。


「大丈夫だろ。ここまで至近距離に近付いてるのに、敵意の欠片も見せないし。今ここでガブッとされたら一巻の終わりだってのに、そんな素振りもないだろ?」

「グルル」

俺の言葉に、黒竜(ブラックドラゴン)は鼻先を擦り寄せてくる。


マジで愛嬌あるな、コイツ。黒竜(ブラックドラゴン)の習性に、強者に従うとかってのがあるんだろーか?


「・・・うん、まぁ、そんな風になってるトコ見てたら、心配なさそうだと思えちゃうわよね」

「ケイくんはやっぱり凄いです。黒竜(ブラックドラゴン)をペットにしちゃうなんて」

「ペ、ペットって言われると、このデカさだから違和感が半端ないけどなぁ。セシリア、ダメか?」

「・・・この黒竜(ブラックドラゴン)は言葉を理解しているようですが、ご主人様(マスター)に完全に服従するつもりがあるのでしょうか? その証を見せていただきたいです」

「俺の保護者がこう言ってるんだけど?」

そう言うと、黒竜(ブラックドラゴン)は伏せたままの姿勢でゴロンと仰向けになって、完全服従のポーズを見せた。さらに、そのまま、前足(やっぱり手か? 二足歩行してたんだし)を器用に使って自らの牙を抜いて、俺に差し出してきた。


仰向けのままでって、シュール過ぎやしないか・・・これが黒竜(ブラックドラゴン)の服従の証ってことなんだろうけど・・・


「分かりました。私に埋め込まれた知識の中に、竜種の服従の証に、自らの牙を差し出すというものがありますので、後はご主人様(マスター)の意見に従います」

セシリアの言葉を受けて、俺は黒竜(ブラックドラゴン)が差し出した牙を受け取った。


デカッ!? でも、軽っ!? ナニコレ、スゲェッ!!


ご主人様(マスター)。竜種の牙は良い武器の素材になるそうです。街に戻ってから、鍛治屋に向かわれてはどうでしょうか?」

「お、おう。そうする。あ、もう起き上がっていいぞ」

俺の言葉に、黒竜(ブラックドラゴン)は体を起こして、その場にお座りをした。


りゅ、竜種の威厳が欠片も残ってねぇ・・マジで調教完了しちまってるのな。不都合はないからいいけど。


「・・・なんだろ。ちょっと可愛く見えてきたわ」

「ですね~。ちょっと撫でてみたいです」

ルーシアがそう言うと、黒竜(ブラックドラゴン)はスッと頭を下げてルーシアに差し出した。

「わぁっ、いいんですかっ?」

ルーシアの弾んだ声の問いかけに、黒竜(ブラックドラゴン)が首肯する。ルーシアはそのまま黒竜(ブラックドラゴン)の頭に手を伸ばして、撫で始めた。

「あっ、ズルい!! あたしもっ!!」

その様子を見たカサリナも黒竜(ブラックドラゴン)を撫で始める。心なしか、気持ち良さそうに目を細めてる黒竜(ブラックドラゴン)


・・・竜種のイメージが変わっちまうなぁ・・


そんなことを思っていたら、セシリアがカサリナとルーシアを羨ましそうに見てることに気付いた。

「セシリアも撫でてきなよ。俺だけじゃなくて、皆に従うつもりがありそうだし」

「え? あ、いえ、しかし・・」

「何を遠慮してんだよ。ホラ」

何故か躊躇うセシリアの手を引いて、黒竜(ブラックドラゴン)の頭を撫でさせる。

「・・・・可愛い・・」

ポツリとそんなことを溢すセシリア。嬉しそうで何より。


さて、勢いでコイツをペットにしたはいいけど、街に入れるワケにもいかないし、街から見えるトコに待機させるのもマズイよな。確実に大騒ぎになるし、飼い主が俺達だってバレるのも良くない。戦場に着いたら遠慮ナシで暴れさせるけど、それまでは俺達の実力は隠しておきたいからな。面倒なことになりかねないし。あ、飼うんなら、名前も付けてやらないと。


「コイツの名前はどうする? 飼うんなら付けてやらないと、呼ぶときに困ると思うんだけど」

「そうですね。'黒竜(ブラックドラゴン)'だと可愛くないですし」


ルーシアよ。黒竜(ブラックドラゴン)に可愛い名前は無いと思うぞ。


「どういうのがいいかなぁ? やっぱり可愛くないとね」


カサリナ。お前もか。やっぱり女の子は可愛い名前を付けたがるモンなのかねぇ? どこの世界でも、それは変わらんってか?


「・・・クロ?」


待て、セシリア。安直で分かりやすいけども。ネーミングセンスがベタ過ぎるのも変わってないな、オイ。


「・・・ちなみに、お前ってオス?」

俺の問いかけに、首を振る黒竜(ブラックドラゴン)


あ、メスっすか。このパーティーの女性人口がまた上がったのね・・・・俺の立場が弱くなるとかないよな? いや、別に今が蔑ろにされてるとかじゃないんだけど、むしろ、セシリア達は物凄く優しいんだけど、なんとなく不安が・・・







それから、女性陣の中で色々と意見が出されたけど、いまいちピンとくるものがないとのことで、最終的に俺に丸投げしてきやがった。

「メインの飼い主はケイだしね。可愛いの付けてあげてよね?」

とは、カサリナの台詞(プレッシャー)だ。


にゃろう・・ムダにハードル上げやがって・・・


「・・・スピカとかどうよ?」

「あ、響きは可愛いかも。どういう意味があるの?」

「前世に星座ってのがあってな。まぁ、空の星を繋いで、いろんな形に当て嵌めたような感じのモノなんだけど、その中に乙女座ってのがあるんだ。んで、乙女座を形作る星の中で1番明るくて目立つ星が'スピカ'っていうんだよ」

うろ覚えの知識だから、間違ってるかもしれないけど、ここでは指摘できる奴もいないから、細かいトコはスルーで。

「いいですね・・星で形を作って名前を付けるなんて、なんだか素敵・・・」

「星にも名前があるのね。ケイの前世の世界って。いいなぁ。なんだかロマンチック・・・」

俺の説明にうっとりするルーシアとカサリナ。


'素敵'で'ロマンチック'ですか・・・女の子の感覚はやっぱりよぉ分からん・・


そんな2人と対照的に、難しい顔をしているセシリア。

「セシリアはあんまり気に入らなかったか?」

「いえ。素敵な名前だと思います。ただ、その・・・」

「ん? 何にも気にしないで言ってみてくれよ。遠慮はいらないぞ?」

「・・・多分・・・ご主人様(マスター)に関係する名前がもらえることが、羨ましい、んだと思います」

セシリアの言葉に、思わず肩をこけさせてしまう。


セ、セシリア・・意見の方向性が違ってるよ・・・っつーか、名前で羨んでどうする。改名でもしたいのか?


「いやまぁ、もうセシリアには名前があるんだし、俺が生まれる前に決まってたんだから、そこはどうしようもないっつーか・・・」

「・・・はい。申し訳ありません」

俺の言葉に、シュンと落ち込むセシリア。


うぐ・・・なんか、罪悪感が・・・こういうときはどうすればいいんでしょうか!? 教えて!! グー○ル先生!!


「え~、あ~、で、でも、俺はセシリアの名前が好きだぞ? ずっと俺の傍で俺の世話をしてきてくれた人の名前なんだから」

「は、はい。私のご主人様(マイ・マスター)

俺の言葉に、一転して嬉しそうな雰囲気を全開にするセシリア。同時に、背筋に寒気が!?

「・・・まぁたセシリアとばっかり・・・」

「・・・名前が好きだなんで、私も言ってもらったことないのに・・」

そんな言葉が聞こえてきて、恐る恐る振り返ると、そこにはハイライトの消えた4つの瞳が!!

「《増強(エンハンスメント)》!!」

「「《増強(エンハンスメント)》」」

反射的に身体強化の魔法を発動させて、その場を離脱しようとすると同時に、絶対零度の声音が同じ魔法を発動させて、俺の両腕がそれぞれガシッと腕を絡めるようにして捕らえられた。1歩も動けない内に。


嘘だろ!? 魔法の発動も動きも速過ぎだ!! 俺の方が先に動き出した筈なのに!!


「どこにいくのかしらぁ?」

「くすくす。私達を放ってどこかに行こうとするなんて、ケイくんったら酷いですよぅ」

両脇から静かに響くような声が届けられて、汗が滝のように噴き出してきた。


生命の危機、part.3キタァァァァァッ!!





それから、必死の褒め殺しが功を奏して、カサリナとルーシアの瞳にハイライトが戻ってきた。羨ましそうな視線を向けてくるセシリアにも同じ事をする羽目になってしまい、俺の羞恥心が限界を突破したことは言うまでもないだろう。


・・・前世で夢見たハーレムみたいな状況な筈なのに、何故にこんなに苦労してるんだろう・・ラノベの主人公達は、もっとキャッキャッウフフな感じだった筈なのに!! これも、経験値と耐性が低過ぎるからなのか!? 転生して、同い年連中よりは遥かに人生経験は多い筈なのに!! ドチクショーーッ!!







そんなこんなで、黒竜(ブラックドラゴン)の名前が、無事?にスピカに決定した。スピカも気に入ったみたいで一安心。

それから、俺達は街に戻る為に空を飛んでいた。スピカの背に乗って。


「ヒャッハーーーーーッ!! ドラゴンの背中に乗って空を飛ぶとか!! 厨二な俺が騒ぎまくるぅぅぅぅぅっ!!」

「うわぁ・・・ケイが見たことないくらいはしゃいでるわよ・・」

「ふふ。ケイくんったら」

ご主人様(マスター)、なんだか可愛いです」


後ろから何か言われてるけど、今の俺の耳には届かない!! だって、ドラゴンだぞ、ドラゴン!! しかも、黒竜(ブラックドラゴン)の背中に乗って飛んでるんだぞ!? 厨二Tシャツを着た俺が、'呼んだ?'なんて聞くまでもなくテンション爆上がりだってぇのっ!! これは黒マントも用意して、武器も防具も全部黒塗りにしなければ!!


「全身黒ずくめ!! アリだな!! 今の俺は誰にも負ける気がしねぇぇぇぇぇぇぇっ!! スピカ!! あっちに向かって適当に竜の息吹(ブレス)!!」

「ゴァァァァァァァァッ!!」

俺の指示に従って、スピカが竜の息吹(ブレス)をブッ放して、遠くで地面が吹き飛んだ。心なしか、スピカも楽しそうだ。

「ちょっ!? ケ、ケイ!? やり過ぎ!!」

「まぁまぁ。いつも大人なケイくんが大はしゃぎなんですから、見守ってあげましょうよ」

「で、でも、凄いことになってるわよ!? 呑気なこと言ってる場合!?」

「大丈夫です。あの周辺に魔族の集落はありません」

「そうかもしんないけど!! そうかもしんないんだけどぉっ!! 絶対に大騒ぎになるわよ!? 凄い音してたし!! キノコみたいな雲が吹き上がっちゃってるし!!」

「ケイくんが喜んでるんですから、いいんじゃないですか? これで私達のことがバレるわけもないですし」

「いいぞぉっ!! スピカ!! 俺に撃ったときより威力がデカいじゃないか!! 溜めがあれば威力上がるのか!?」

「ガウッ」

「よっしゃぁっ!! んじゃ、その調子でガンガンいってみよーかっ!!」

ご主人様(マスター)が喜んでくださるのが1番です。何も問題はありません」

「問題ないの!? ホンットに問題ないの!?」

「ないですよ~。だから、カサリナちゃんも落ち着きましょう?」

「ッテェェェェェッ!!」

「ゴルァァァァァァァァッッ!!!!」

俺の掛け声に合わせて、スピカの竜の息吹(ブレス)が放たれ、遠くにさっきより大きなキノコ雲と爆音。さらには、ここまで衝撃波が届いてくる。

「きゃっ!?」

「っと。大丈夫か?」

衝撃波によろめいたカサリナに、咄嗟に腕を伸ばして抱き寄せる。

「ふぇっ!?」

「すっげぇよなぁっ!! 見ろよ!! あんなに離れたトコに着弾してんのに、ここまで衝撃波が来たぞっ!!」

「グルァ」

「マジでスゲェぞっ!! スピカッ!! お前は最高だぁっ!!」

「ゴァァァァァァァァッ!!」

俺の言葉に、嬉しそうな咆哮を響かせて、竜の息吹(ブレス)を連発してみせるスピカ。

「おぉっ!? 継続射出だけじゃなくて、連射もできるのかっ!! かっけぇぇぇぇぇっ!!」

「も、もう・・バカなんだから・・・」

テンションが上がり続ける俺に抱き寄せられたままのカサリナが何かボソッと言ったかと思ったらギュッと抱き締めてきた。

「な、なんだか、英雄譚(ヒロイックサーガ)の1ページみたいよねっ!! 人族の王に拐われたお姫様を、魔王様が飛竜に乗って助けにきたところっ!!」

「おぉっ!! 魔王かっ!! いいねぇっ!! そう遠くない内に、真の魔王だとかって名乗って、大暴れしてやるかぁっ!!」

「そこじゃないわよ!! 鈍感!!」

「むぅ~・・カサリナちゃんったらあざといですよぉ」

「あっ、あざとくなんかないわよ!!」

「ハーハッハッハッハッハッ!!」







そんな超ハイテンションで空を飛び続けて、夜を迎えた。スピカは平気そうだけど、テンションが上がり過ぎて疲れた俺が休息を求めて野営することになり、久しぶりの地面に。セシリア達がテキパキと野営の準備を進める中、俺は1人、羞恥心に悶えて膝を抱えて小さくなっていた。


テンション上がり過ぎた・・・ヒャッハーとか、真の魔王とか、意味なく竜の息吹(ブレス)乱射とか、変な高笑いとか・・・・う゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っ!!! セシリア達はやたらと優しい目で見つめてくるし!! 黒歴史がまた増えたぁぁぁぁぁぁっ!!


「あの、ご主人様(マスター)? 先程のご主人様(マスター)は、なんだか可愛かったです。なので、元気を出してください」

「はいっ。ああいうケイくんは初めてで、新鮮でしたよっ。その、ま、益々好きになりましたっ」

「嬉しかったんだから、はしゃいじゃうのは仕方ないじゃない? ケイが子どもっぽく見えたのなんか初めてだったけどさ、その・・・あ、あたしも、もっと、す、す・・・しゅきに、なった、わよ?」


好意的なご意見、ありがとう。っつーか、カサリナ。無理すんな。俺並に羞恥に悶えてるぢゃねーか。


「ギュァァ」

セシリア達の言葉に続いて、甘えるように顔を擦り寄せてくるスピカ。


うん、もうちょっと待って。精神的ダメージってそんなにすぐに復活できないんだよ・・・







内なる厨二魂が騒ぎ過ぎて落ち込みまくった日の翌日の昼。俺達は上空から、かなり遠方に街を視界に捉えていた。


ちなみに、精神的ダメージ(厨二病の反動)はスピカに乗って空を飛ぶ高揚感が癒してくれた。まぁ、セシリア達だけじゃなく、スピカにまで気遣われたのが情けなさ過ぎだったけど。


「もう街が見えてきちゃった・・・昨日のお昼に出発したから、1日くらいよね? 掛かった時間って」

「物凄く速いです。スピカちゃんは凄いですね」


スピカ'ちゃん'って・・・いやまぁ、メスだから間違っちゃいないんだけど、違和感バリバリなのは俺だけか? 敢えて言わんけども。


「こんなに進んでたんだなぁ。ホントに大したモンだよ、スピカ」

「ギュァァ」

ルーシアの言葉に同意すると、スピカが嬉しそうな声を返してきた。

「ありがとね、スピカ。でも、この後はどうするのよ? あんまり近付き過ぎたら、大騒ぎよ?」

「一応考えてある。スピカ、このまま着地してくれ」

「ガウ」

俺の指示に従って、スピカは地面まで降りて、俺達を降ろした。それから、指笛を鳴らしてみせる。

「スピカ。この音が聞こえたら、そこまで来れるか?」

「ガウ」

「んじゃ、それまではこの辺で自由にしててくれ。そうだな・・・多分、ここから街まで1日ってくらいの距離だろうから・・・まぁ、10日以内にはここに戻ってくるから」

「グルゥ」

俺の言葉に、顔を擦り寄せてくるスピカ。


懐かれたモンだなぁ。大はしゃぎしてたときはスピカも楽しそうだったし、それで馴染んだのかね? まぁ、それなら、厨二病の再発にも意味があったってことだし、そう思っておこう。


「よしよし。また大暴れする機会はあるからな。一緒に楽しもう」

「ガウッ」

「・・・あの竜の息吹(ブレス)乱射ではしゃいだの、スピカも気に入っちゃったのね・・・戦場が凄いことになりそう・・」

「ふふ。あ、でも、スピカちゃんに指笛が届かなかったらどうしますか?」

「それは多分大丈夫だ。今は近くにいるからやってないけど、魔法で音を遠くまで届けられるから」

「そんなことできる魔法なんてあったっけ?」

「風を操る魔法、教えたろ? 音は空気が振動することで伝わるものだからな。その振動を風魔法で遠くまで伝わるようにしてやればいいんだよ」

「振動って、空気が揺れるの? でも、あたし達の声は聞こえてるけど、空気が揺れたりなんかしてないわよ?」

「普通の大きさの声じゃ感じられない程度しか振動しないよ。でも、スピカの咆哮はビリビリきたろ?」

「あ、うん。そっか。おっきい音だと振動も大きくなるのね」

「初めて知りました。やっぱりケイくんは博識ですね」

「まぁ、これも前世の知識だよ。さて、そろそろ行こうか」

「はい、ご主人様(マスター)

「スピカ、寂しいかもしれないけど、ちゃんと待っててね?」

「ちゃんとケイくんに呼ばれたらきてくださいね?」

「ガウ」

カサリナ達に撫でられながらそう言われて、嬉しそうに返事をするスピカ。尻尾を振ってたりする。


・・ドラゴンも嬉しいと尻尾を振るのか。新発見だな。まぁ、ドラゴンの生態なんか詳しくは知られていないだろうしなぁ。


そんなことを思ってると、セシリアもスピカを撫で始めた。

「これからも一緒にご主人様(マスター)の力になりましょう。スピカの力も頼りにしますので、よろしくお願いします」

「ガウッ」

セシリアの言葉に、力強く返事をするスピカ。


・・・戦力になるのを期待してはいるんだけど・・・この気合いの入った返事を聞いたら、なんだか俺の出番が益々なくなるような不安が襲ってきたなぁ・・・俺も戦闘に参加するんだからな? お前らだけに危険なことは絶対にさせないからな?


そんなことを思いながら、スピカと一旦のお別れをして、街へと進み始める。スピカはその姿が見えなくなるまで、俺達を見送っていた。


忠犬ならぬ、忠竜だな、あいつは。

ドラゴンの背中に乗って空を飛ぶというのは、男なら誰しも1度は憧れるシチュエーション(作者主観)なだけに、主人公のテンションがおかしくなったみたいですね。黒歴史というものは、こうして出来上がっていくのでしょう(作者体験談)。

それはともかく、戦場行きを目前にして、心強い味方が増えました。スピカのこれからの活躍に乞うご期待です!!


では、これにて第二章 第九部を閉幕とさせていただきます。


お付き合いいただいた皆様に感謝を。よろしければ、次回もまたお付き合いくださいませ。

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