黒竜と機雷魔法と調教の完了
いきなりの標的との遭遇。主人公達と黒竜との戦闘はどういった結果になるのでしょうか?
第二章 青年期 第八部の開幕です。
どうぞ、最後までお楽しみくださいませ。
「ゴァァァァァァァッ!!」
咆哮を上げながら、俺達を食らうべく、大きく口を開いて迫ってくる黒竜。
こいつ!? 俺達を餌と認識してやがる!?
「「「「《増強》!!」」」」
俺達の魔法を発動させる言葉が重なって、迫る黒竜の左右に分かれて、その牙を逃れる。
「グルァァァァァッ!!」
食い損ねたせいか、俺達みたいな小さな存在に身を躱されたせいか、苛立ちの籠った咆哮を上げる黒竜。その懐には、戦鎚を横に大きく振りかぶったセシリア!?
ちょっ!? いつの間に!? っつーか、なんだか怒ってらっしゃいませんか!?
「ガァァァァァッ!?」
セシリアが戦鎚が霞んで見える程の速度で黒竜に叩き付けると、表現し難い鈍い音が大きく響いて、黒竜が絶叫を上げながら・・・吹き飛んだぁっ!?
おかしいから!! 黒竜のサイズは軽く一軒家くらいあるんだぞ!? それを、戦鎚の一撃で吹き飛ばすとか、何かもう色々おかしいから!!
動揺しまくりながら、黒竜が吹き飛んだ先に目を向けると、そこには蹴りの構えに力を溜めたルーシアの姿が。
って、オイ!? まさか!?
「テェェェイッ!!」
「グァッ!?」
気合いの声と共に、ルーシアの細い脚が飛んできた黒竜の胴を捉えて、黒竜から詰まったような唸り声が洩れ、その巨体が空に弾き飛ばされた。
・・・うっそぉん・・・・
「カサリナちゃん!! 魔法です!!」
「《豪炎》!!」
ルーシアが出す指示に従って、カサリナが瞬時に魔力を構成して、ダガーグリズリーを骨まで灰にした炎の魔法を弾き飛ばされた黒竜に解き放った。
「グルォァァァァァァァァァッ!?」
空中で灼熱の業火に巻かれて、悲鳴の絶叫を上げる黒竜。
・・・・うあ・・・もう、なに? 言葉にならんよ? 想定外の奇襲だったのに、連携までバッチリじゃないか。
育ての親と幼馴染達の予想外なまでの強さに、半ば呆然としていると、カサリナが生み出した炎を黒い光が引き裂いて、そのまま俺に迫ってきた。反射的にその場から大きく跳び退くと、黒い光が地面を穿ち、爆発を起こしたように穿った地面を大小の塊にして吹き飛ばし、大量の粉塵を巻き起こす。
「ご主人様!?」「ケイ!!?」「ケイくん!?」
粉塵の向こうから、セシリア達の俺の身を案じる悲鳴が届く。が、それに応えようとするよりも早く、地面を穿った黒い光が吹き飛ぶ大地の塊と粉塵を消し飛ばしつつ、地面を抉りながら跳び退いた俺の方へと迫ってきた。黒い光の根元には、牙を剥いた黒竜の口。
あの炎を耐えたのかよ!? っつーか、この黒いのは竜の息吹か!! 流石の威力だなぁ、オイ!! いくら《増強》で肉体ランクを上げてても、食らったら死ぬ!!
竜の息吹から逃れる為に必死で地面を蹴るが、竜の息吹は延々と俺を追い続ける。セシリア達は、俺への攻撃を止めるべく、魔法を連発してるけど、空を飛んで竜の息吹を吐き続ける黒竜には効果が上がっていない。放たれた魔法は、竜の息吹に飲まれて消えるか、翼を羽ばたかせる黒竜に軽く身を躱されるかのどちらかだ。
あの蜥蜴、完全に俺を標的にしてやがるな・・・何? そんなに俺は弱そうに見えるのか? セシリア達が狙われないのはいいんだけど・・・・・
舐・め・る・な・よ・ぉ・っ!!
「《機雷:雷》《機雷:爆裂》《機雷:散弾》」
立て続けに、口の中で呟くように、されど、イラつきと怒りを籠めて、魔法を唱える。見た目には何も変化は起こらない。
「ブッ飛べ。蜥蜴野郎」
竜の息吹から逃れながら俺が呟いて、ルーシアの放った《氷の刺》を黒竜が躱した瞬間、何もない空間から突然雷が発生して、空気が焼ける音と共に黒竜の巨体を包んだ。
「ッッッ!?」
声すら上げられずに、その身を焦がされた黒竜が空中でよろめくと、今度はよろめいた先の空間が、空を揺るがす爆発を起こしてその巨体を吹き飛ばす。さらに、吹き飛んだ先の空間が圧縮された空気の弾丸を、音速を越える速さで同時に数十発吐き出して、再度黒竜を弾き飛ばす。弾き飛ばされた先ではまた雷が、その先では空気の散弾が、爆発が、何度も何度も繰り返し黒竜を焦がし、吹っ飛ばし、弾き飛ばし続ける。
ざまぁっ!! 人を舐めてるからそういう目に合うんだよ!! 泣いて謝るまで踊り続けてろ!! クソ蜥蜴!!
そこに、セシリア達が慌てた様子で駆け寄ってくる。というか、カサリナとルーシアを置き去りにする勢いで走ってきたセシリアが、そのまま俺を抱き締めた。
「ご主人様!! 無事ですか!? 怪我はありませんか!?」
「お、おう。ちゃんと躱し切ってるよ。だから、心配すんな」
動揺しつつ、ポンポンと安心させるようにセシリアの背中を叩いてやる。
「セ、セシリア、速過ぎ・・・ケイは、だいじょぉぶそぉねぇ?」
「またセシリアさんとだけ・・私達も心配したのに・・・」
ほんの少し遅れてやってきたカサリナとルーシア。その瞳から、ハイライトが消えていく。
ちょぉっと待って!? 生命の危機part.2ですか!?
咄嗟の判断で、腕だけを伸ばしてカサリナとルーシアを抱き寄せる。
「ひゃっ」「きゃっ」
可愛らしい悲鳴が届くけど、声に喜色がガッツリ混じってる。2人が頬を染めながら緩めてるのを確認して、胸中で安堵の溜め息を吐いてしまう。
た、助かった・・咄嗟の判断が正解だったみたいだな・・竜の息吹に追い回されるより怖いっての。頼むから、目からハイライトを消さないでくれ。
「心配掛けて悪かった。この通り、怪我もしてないから勘弁してくれ」
「本当ですか? 我慢をしていたりしませんか?」
「してないよ。全力で逃げてたからな」
心底不安そうに俺を見上げてくるセシリアに、安心できるようにと笑顔でそう答えてやる。まぁ、例によって、セシリアの表情の変化は俺にしか分からんだろうけど。
しかし、さっきの焦り具合といい、この不安そうな顔といい、過保護なのは現在進行形ですか。まぁ、道中の戦闘すら、俺には一切手を出させようとしなかったもんなぁ・・俺も強くなってるんだぞ~とは思うけど、嫌じゃないから困る。
そんなことを思いつつも、それぞれを離れさせて、未だにピンポン玉の如く空を跳ねている黒竜へと視線を向ける。
「・・・・タフにも程があるだろ。まだ全然元気そうだぞ、アレ」
「うわぁ・・エンドレスにボコボコにされてる・・・ケイの機雷シリーズって、想像してたよりも極悪・・・」
「哀れを誘う姿ですけど・・・ケイくんを食べようとした上に、ケイくんを狙い撃ちにしたんですから、当然の報いですね」
「はい。しかし、ご主人様の魔力残量は大丈夫ですか? 私には機雷の残数は認識できませんが、既に相当数が発動していますが」
「余裕余裕。残りは100発くらいだけど、その倍くらいはまだ追加できるし」
「まだ200もイケるってこと!?・・あ、相変わらずの魔力お化けなんだから・・・」
「流石はケイくんですねっ。私だと、今の残数くらいで確実に魔力枯渇状態になってますよっ」
「また保有魔力量が増加したんですね。流石はご主人様です」
呆れたような感心したような口調で言うカサリナに、絶賛してくれるルーシアとセシリア。
カサリナとルーシアの言葉通り、俺の保有魔力量はこのメンバーの中で群を抜いてる。しかも、セシリアが察したように、未だに成長中だ。使える魔法の種類が増えてきたばかりの頃は、まだ保有魔力量が少なかったから、魔力枯渇の1歩手前、魔力欠乏によくなってた。まぁ、面白がってやたらと使いまくってたせいなんだけど、その甲斐あってか、物凄い勢いで保有魔力量が伸びた。おかげで、継戦力だけはNo.1だったりする。
・・・戦闘そのものに参加させてもらえないんだけどな!! こういうトラップ染みた戦い方以外は、4人中最弱だし!!
「ギュァァァァァァァンッ」
胸中で嘆いていると、機雷魔法でフルボッコ中の黒竜から、なんだか情けない鳴き声が聞こえてきた。
助けってより、許しを求めてるって感じだなぁ。なんか可哀想になってきた・・・元々、命まで奪うつもりはなかったし、最悪、また襲ってきても転位魔法で逃げればいいんだし、そろそろ止めてやるか。セシリア達の強さは十分見れたし、俺の魔法も実戦でちゃんと通用するのが確認できたわけだしな。
「魔獣狩りの目的は達成したし、ちょっと可哀想になってきたから、機雷魔法を解除するぞ。あの鳴き声からして、もう襲ってはこないと思うけど、一応、俺に捕まっててくれるか? まだ戦るようなら、転位魔法で逃げるから」
「トドメは刺さないのですか?」
「刺さない刺さない。こっちの都合で喧嘩を吹っ掛けにきたんだから、元から命まで奪うつもりはなかったよ。状況によっては殺るつもりでもあったけどな」
「ふふ。やっぱりケイくんは優しいですね。いきなり襲われたのはこっちなのに」
「それも、こいつらの縄張りに無断で入ったからだよ。まぁ、追いかけてくるんなら、死ぬまでブッ飛ばすけど」
俺の言葉にそれぞれ頷くセシリアとルーシア。
納得してもらえて何よりだよ。2人共、俺が集中して襲われたせいでかなり怒ってたから、'トドメを刺すべきだ'とか言われたらどうしようかと思った。
「それなら、早く解除してあげて。気のせいだと思うけど、あの竜、涙目になってきてるみたいに見えるのよ」
「ほいほい」
カサリナの言葉に軽い返事をして、セシリア達が俺の腕や肩に触れたのを確認してから、待機中の機雷への魔力供給を止めた。機雷魔法の魔力構成が霧散して、立て続けに発生していた空気を焼く音や爆音が止んで、それと同時に、黒竜が地面に轟音を立てて落下した。
マジか、こいつ。並の魔族なら、塵になってるくらいの威力を籠めたつもりだったのに、多少鱗が剥げてるだけかよ。落ちてきたってことは、それなり以上のダメージを与えられてたってことなわだろうけど、何気にショック。
そんなことを思っていると、黒竜がフラフラと体を起こした。それから、俺達の姿を視界に納めるや否や、バッと上空を見上げて、飛び立とうとした。でも、何故か、その翼の動きが急に止まって、左右をキョロキョロし始める。さらに、俺達のいる方向や自分のうしろを振り返って、空を見上げて、また左右前後と忙しなく顔と首の向きを変え続ける。
・・・何してんの? こいつは。襲ってくるでもなく、ここから去ってくわけでもなく、ひたすらにキョロキョロキョロキョロと。
「どうしたのでしょうか?」
「襲ってきそうな感じでもないですよね?」
「・・・もしかして、トラウマになってるとか? 何もないトコから雷とか爆発とかが連発して、吹き飛ばされまくってたせいで」
「まさか~。仮にも最強種って呼ばれる竜種の一員なんだぞ?」
俺がそう言うと、何故か黒竜はキョロキョロとしていた動きを止めて、石像みたいに硬直した。
・・あれ? まさか、マジで?
「ホラ。ケイの声が聞こえた途端に止まっちゃったし」
「いやいやいやいや。無い「ギュァァ」だ、ろ・・・」
俺の言葉の途中で、最初の咆哮が嘘のような情けない鳴き声を洩らして、そのまま地面に伏せてしまった。その伏せる動きすら、おもいっきり恐る恐るだったりする。
・・・・あるぇぇぇぇ? 完全に俺の声に反応してるよな? 魔法を発動させたとき以外に、コイツが出てきてからほとんど声なんか出してないのに・・・まさか、あの竜の息吹で地面が吹っ飛びまくってる中で、俺の魔法を唱えた声を聞き分けてたのか?
「ギュァ」
「何か言ってあげたら? あの竜、メチャクチャケイのこと見てるわよ?」
「な、何かって言われてもな・・とりあえず、もう機雷「ギュァァッ!?」の魔ほ・・・」
俺の言葉の途中で、悲鳴らしき鳴き声を上げて、伏せたままでガタブルし始める黒竜。あ、仰向けになった。って、まさかの完全服従のポーズ!?
これ、'機雷'って単語に反応して、だよなぁ。ってことは、完全に魔法を発動させたときの声が聞こえてて、しかも、'機雷'って単語が魔法の発動鍵だって理解してるってことか。コイツ、実はメチャクチャ頭いいんじゃないのか?
「あ~、魔法は発動させてない。敵対の意志がもうないんなら、俺の前で伏せてみろ」
試しにそう言ってみると、黒竜はその巨体に似つかわしくない俊敏な動きで俺の前にやってくると、そのまま改めて伏せをした。
「「う、うわぁ・・・」」
「流石はご主人様です。黒竜をただ倒すだけでなく、服従させてしまうとは思ってもみませんでした」
黒竜の必死さが滲み出る動きに、ドン引きした表情と声を洩らすカサリナとルーシア。対照的に、驚きながらも俺を称賛するセシリア。驚き具合が俺にしか伝わってないだろうから、平然とこの状況を受け入れて称賛の言葉を口にしてるように見えるかもしれないけど。
・・・・黒竜を躾ちまったよ・・・どうすんの? コイツ。
そんなことを思いながら、意外に手触りのいい鱗に覆われた黒竜の顔を撫でてみた。
外傷は少なくとも、延々と抵抗することすら許されずに滅多打ちにされるのは、如何に黒竜と言えどもトコトン堪えたようです。むしろ、強力な個体である黒竜だからこそ、これまで一方的に嬲られるような経験がなかった為に心を折られてしまったのでしょう。終わりの見えない滅多打ち状態なんて堪りませんよね。
では、これにて第二章 第八部を閉幕とさせていただきます。
お付き合いいただいた皆様に感謝を。よろしければ、次回もまたお付き合いくださいませ。




