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異世界クラスのアサシン・クリード~ただし、引退しました~  作者: 瑠璃色唐辛子
異世界クラス、魔法習得編
59/179

48時間目 「特別科目~その教師、暴走~」 ※流血表現注意

2015年11月22日初投稿。


遅くなりましたが、続編を更新させていだきます。

タイトル通り、暴走教師を連れ戻そうとする生徒達の奮闘をご覧ください。


久しぶりに主人公視点を切り替えたせいか、少しだけ語りっぽくなってしまってついつい字数が長くなってしまいました。

ずるずると続いていますが、もうそろそろ魔法習得編は終了します。

今回は、メインを生徒達に持ってきて、それぞれで頑張ってもらいましょう。


48話目です。

***



 時間は少し、遡る。


 ゲイルが階下のダイニングで、自業自得を嘆いていた丁度その頃であった。


「(なんか、寝付けないなぁ…)」


 暗がりに沈んだ部屋の中で、気だるげに起き上がった影。

 窓からの月明かりの下に、浮かび上がる少女の影。


 金糸かと見間違える程に整えられた金色の髪。

 この異世界でも、十分に通用する端正な顔立ち。

 目元は少し切れ長で、少し険を含んでいるようにも見える瞳。

 その色は、空色。


 杉坂・エマ・カルロシュア。


 特別学校異世界クラスの生徒の一人。


 机を二つ挟んだ対面のベッドには、同じく金色の髪と端正な顔が瓜二つの彼女の双子の姉・ソフィアが、エマとは対照的に健やかに眠っていた。


 最近は訓練も佳境を迎え体を酷使しているせいか、ただ単に魔法授業による魔力枯渇のせいか、今頃はソフィアと同じように眠っている筈だったエマ。

 しかし、彼女は言い知れぬ胸騒ぎを覚え、夜半とも言えるこの時間までなかなか寝付けずにいた。


 その虫の知らせとも思える胸騒ぎには、多少心当たりがあった。


 それは階上のリビング。

 そこには、度重なる過労からやせ細ってしまい、シャルとオリビアに休養を申し付けられた銀次が眠っている。


 ちなみに、何故銀次がリビングで眠っているかと言われれば、先日の侵入者騒ぎの一件で窓ガラスが破損してしまっているからだ。


 ダドルアード王国がいくら南端にある常夏の国であっても真冬である現在。

 夜中まで暖かい訳では無い。

 窓の修繕は早くても1週間掛かると聞いている。


 その為、銀次は必然的にダイニングで就寝している状況であった。

 今回リビングで就寝しているのは、シャルとオリビアからの要請で魔法習得の修練の最中に、そのまま休養という流れになったからである。


 その休養の要因となった、彼の疲労や衰弱。


 彼女自身も、その様子には気付いていた。

 強化訓練の際には、エマを含むソフィアや伊野田という女子組は、背広の上からも分かる筋肉を鑑賞するのが日課となりつつあった。


 しかし、ここ数日。

 その筋肉が明らかに衰えている。


 覚えがあるのは、冒険者ギルドで受けたクエストの後からだった。


 居合わせた遠征組の香神、榊原、徳川、永曽根、間宮に話を聞いてみれば、『迷路メイズ』という魔法の掛けられた森の中、銀次と榊原は運悪く逸れてしまったらしいという事。

 その際に、榊原が秘匿してしまった為詳しくは聞けていないながらも、榊原やシャルを助ける名目で死にかけた事を聞いた。


 この異世界に来てからは、割と身近だった話題。


 生きるか死ぬか。

 それを、銀次は何度目かもわからないまま、体験して来てしまったようだ。


 その時は心配するよりも先に、呆れてしまった。

 銀次は自己犠牲精神が、少し突出し過ぎているように思えたからだ。


 この異世界に最初に召喚された時もそうだった。

 拷問を受けた時も、彼は自分だけを対象にすることを騎士に提案していた。

 普通の人間からすれば、そんな事は口が裂けても言えないだろう。

 しかし、銀次はそれを言った。


 更には、自分達生徒の為に、これまで数々のことを成し遂げてきた。


 王国の盟約の条件として、引き渡しを要求された時も。

 永曽根がボミット病を発症した時も。

 石鹸やシガレットの開発は勿論、自分達の生活環境の向上の為に尽力。

 キメラ討伐の時も、友人であるゲイルの要請があったからだったと聞く。


 それ以外にも、細かいものを上げればキリがない。


 若干、イラっと険を露にしたエマ。

 その表情は、明らかにむくれていた。


「(だいたい、抱え込みすぎだっつうの!なんで、あたし達が出来る事まで自分だけでやろうとしちゃうんだか…!)」


 彼、銀次が抱え込んでいる仕事。

 それを、少しでも軽減しようと、生徒達も日々話し合いを行っている。


 しかし、更に先を行くのが銀次である。

 話し合いを終えて、いざ実行という時には、大半が彼の手によって終わっている事が多かった。


 その度に言い様の無い虚しさや悔しさを感じていた。

 生徒達の大半が、一度はそんな経験をしている。


「(そりゃ、アイツにはアイツなりの考えとか、行動ルーチンがあるのかもしれないけどさ…ッいつまでも、子ども扱いしやがって、馬鹿銀次…ッ!!)」


 怒りとも取れない感情が、ぐるぐるとエマの腹の中をめぐる。

 傍から見ていれば、エマの顔付きは普段とは比べ物にならないほど険を含んでいるだろう。


 男子生徒達の一部は、遠巻きにして見るだけになるかもしれない。

 元々の性格が怒りっぽいところも手伝って、彼女は頭に血が上るのを止めることは出来なかった。


「(…しかも、相談無しで新しい生徒兼先生シャルまで加えたりしてッ!…否定してるけど、実はやっぱりロリコンなんじゃねぇの!?シャルは確かに可愛いし、良い子だけどさ!知り合いだとか命の恩人だとか言っても、普通10歳の見た目しか無い女の子預かるか!?)」


 溜まりに溜まった欝憤はそれだけに留まらず。

 飛び火したのは、特別学校に期間限定ながらも加わったシャルの事。


 せめて相談をして欲しかった。

 少し身勝手だと考えながらも、紛れも無い本音。


 シャル自身は、確かに少し当たりが強い性格をしていながらも、素直で良い子だとエマも分かっている。

 それは気に食わない人間をとことん嫌うエマとソフィアと別段衝突することも無く5日を過ごしているところからも伺える。

 未だに少し遠巻きにしている部分が無い訳ではないが、悪い子では無いのだ。

 それは、お互いに。


 しかし、問題はシャルが来た事ではない。

 そのシャルを安請け合いで迎え入れて、結果として疲労を溜め込んでいる銀次への不満だ。


 別にシャルが悪い訳ではない。

 それは分かっている。


 しかし、彼女が来てからは、更に銀次は疲労を溜め込むようになった。


 それが、精霊との対話の為だというのは分かっている。 

 その対話で、一日目は呼吸不全を引き起こし、昏倒。

 次の日にはボミット病と風邪のダブルコンボ。

 挙句の果てに侵入者騒ぎ。


 全部が全部銀次のせいでは無いにしても、ここまで続くといっそ死にたがりとしか認識できなくなってしまう。

 しかも、精霊との対話が夢の中でしか出来ないからと、夜中もそうした対話による瞑想を繰り返していると聞く。

 (※情報源はオリビアである)


 やるせない気持ち。

 しかし、おいそれと踏み込めない、情けなさ。


 おかげで、エマの怒りは頂点に達しようとしていた。


 胸騒ぎで眠れなかった筈が、今度は怒りを溜め込んだせいで眠れなくなってしまったようだ。


 しかし、頭に血が上った状態でも、どこか冷静な部分が残っていたのか。

 途端に火が消えたように、脳内が静かになる。


 先ほども感じたやるせない気持ち。

 それが、脳内で渦を巻くようにして、彼女の胸に空虚を齎した。


「(…そんなに、あたし達、頼りない?…そりゃ、銀次に頼りっぱなしだったのは認めるけど、もうこの世界に来て半年も経つんだから、少しぐらいは助けになれる筈なのに、)」


 エマ達は、それこそ必死に訓練をこなしている。


 更に過酷な訓練を受けて来た銀次からすれば、生徒達の訓練などまだまだ生ぬるいのだろう。

 巷の道場での道楽のようにも見えるかもしれない。

 武道家に生まれた永曽根ですら、銀次の前では赤子の手を捻るように制圧される。

 間宮との修練の風景を見れば、おいそれと自分達が踏み込める領域で無い事も理解できる。


 しかし、納得が出来ないのは、仕方ない。


「(なんでもかんでも、一人で考えて抱え込んで溜め込んで、泣くこともしないんだから…最初に言ったこと、もう忘れちゃってるんじゃねぇの?)」


 エマの言う最初に言った事。


 それは、既に遡る事、半年前のこと。

 銀次が異世界から召喚された『予言の騎士』だと判明し、それを蹴った時のこと。


 あの時も、彼は抱え込んで、感情を爆発させていた。


 エマはその時、暴走した銀次の猛威に晒された。

 骨が折れるかと思う程に、その細腕を捻られてしまった。


 ただ、首を触っただけ。

 白粉彫りという技術で彫り込まれた蛇の鱗が浮かび上がった首筋に、興味を引かれてしまっただけだというのに。


 その時、彼は寸前で制御した。

 あと数秒もあれば、エマの腕は折れていた。


 その後、彼はまるで親に叱られる前の子どものように謝罪を繰り返していた。

 無自覚にも涙をぼろぼろと零して、必死に謝る姿。


 その姿は、エマが今まで一度も見た事がない、銀次の弱い姿だった。


「頑張り過ぎないでって…言ったじゃんか…」


 焦らなくて良い。


 一人で頑張らなくて良い。


 協力する。

 一人よりも、皆で考えれば良い。


 そう言って、彼を励ました筈だった。

 しかし、


「馬鹿銀次。アイツ、絶対あたしと決闘した事も忘れてんだろ…」


 半年経った今では、既に彼はその儚いとも思える約束は忘れてしまっているようだった。

 約束以外にも、別の事も忘れているだろう事は予想される。


 折角、裸体まで晒したというのに。


 更に、エマの心はやるせなさに、塗りつぶされていく。

 自然と涙が溢れて来てしまった。


 しかし、その零れ落ちそうな涙を拭おうとした瞬間だった。 


『あ゛ぁあああああああああ゛あぁああぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!』

「……ッ!?」


 その絶叫とも言える悲鳴は、校舎中に響いた。

 掠れしゃがれ、苦痛に満ちた悲鳴。


 隣で、ソフィアが跳ね起きた。


「何っ!?」

「分からねぇよ!銀次の悲鳴じゃん!?」


 そのまま、一も二も無く飛び出したエマとソフィア。

 校舎中からドアを乱暴に開け放つ音が響く。


 階下のダイニングからゲイルが駆け上って来た。


 彼女達の眼の前を、間宮が疾走していく。


 開け放たれたリビングの扉の向こう。

 そこには、


「嘘だろ、銀次!!」


 繭のような黒い球体に包まれた銀次の姿があった。



***



「…『闇』属性ッ!!暴発したのか!!」


 ゲイルの言葉に、その場の空気が凍りつく。


 リビングの半分近くを闇で覆い隠した繭の中。

 その中には、薄らと銀次の姿が透けて見えているが、その意識はみるからに無いように思えた。


 生死は不明。

 黒い繭は色からしてかろうじて『闇』の精霊による魔法の防護壁のようなものだと分かるものの、それ以外の一切が不明となっている。


 中に空気はあるのか。

 そもそも、彼は息をしているのか。


 そして、何があって、このような状況になったのか。


 唯一、一緒にいた筈のオリビアに聞こうにも、彼女は既に部屋の中央で気絶してしまっている。

 その体からは残骸のような靄が、立ち上っていた。


 真っ先に駆け寄った間宮とシャルがそんなオリビアの介抱をしている。

 だが、やはり意識は戻らないようだ。


「魔力は枯渇してないわね…でも、気配が希薄になってる、まるで命を吸われたみたい…っ」


 オリビアの様子を見分していたシャルが唸った。

 その言葉にかろうじて反応出来たのは、ゲイルだけだ。


「…それは『闇』属性の特性か…!」

「そのようね!…あの繭みたいなもの事態が、触れると生命力を吸い取る可能性がある…!」


 しかし、次のシャルの言葉には、生徒達全員が反応した。

 あの繭に触れる意味を理解出来てしまった。


「なら、中にいる銀次はどうなるんだよっ!!」

「落ち着け、エマ…!」


 ますます、その繭の中に閉じ込められた銀次の安否が気がかりだった。

 シャルやゲイルとて、それは同じ。

 生徒達は絶句したり、慌てふためいたりと様々な反応を見せていた。


 中でも、取り乱していたのはエマだった。

 今にもシャルに飛びかからんばかりの勢いに、たまたま近くにいたソフィアと永曽根が二人で抑え込む。


「落ち着いて!…『闇』の精霊だって、宿主や術者を失うリスクは分かってるわ…!」

「で、でも…命を吸われるんだろっ?…その『闇』の精霊が銀次を殺そうとしてたら、どうするつもりなんだよっ!!」

「そ、それは…!!」


 エマの言葉に、今度はシャルが絶句した。


 その考えは、否定できないからだった。


 そもそも、このような状況に陥った術者をシャルは見た事が無かった。

 それは、知る由も無いもののゲイルも同じ。


 確かに『闇』の精霊が、術者の命を脅かす事は否定が出来ない。

 ボミット病の発症に、密接に関わっている事が分かった今、否定できる材料が何一つ無かった。


 しかも、これまで銀次は精霊との対話中に、何度も呼吸不全を引き起こしている。


 精霊が銀次の命を優先するかどうか、彼女達には分ろう筈もない。

 緊張感が、焦りを生む。


 動き出したのは、間宮だった。

 抱き起したオリビアをシャルに任せると、その場に立ちあがった間宮。


 その次の瞬間、彼は背中の脇差を抜いていた。


「な、なにをするつもりなのっ!?」

「まさか、マミヤ…っ!」


 シャルの質疑に応える気は無い。

 元々答える為の声を持たない彼は、ゲイルの予想通り、


「待て、間宮!死ぬぞっ!!」


 ゲイルの止める暇もあらばこそ。

 猛然と走し出したかと思えば、繭目掛けて脇差を振り下していた。


 しかし、


「マミヤッ!!」

「きゃああ!!」

「おい、間宮!!」


 脇差の刃が、繭に触れたか触れないか。

 そんな瞬間、彼はまるで見えない壁に弾かれるように、反対側の壁に激突していた。


 壁に激突しても、まだ間宮の意識はあった。

 よろめきながらも、立ち上がった彼は、またしても繭へと猛然と突っ込んでいく。


「やめろ、マミヤ!」


 ゲイルがその矢面に立って、抑え込もうとしたが、間一髪すり抜けた彼。

 元々間宮との手合わせでも、ゲイルには懐に入り込めた試しが無い。


 捕獲はほぼ不可能と思えた。


 そして、二度目の攻撃。

 だが、繭に今度こそ触れたかと思えた脇差は弾かれ、またしても間宮は弾き飛ばされる。


「…ッ!…落ち着け!」


 今度はなんとか回り込んだゲイルが受け止めた。

 受け止められた間宮は更に突進するつもりなのか、抑え込んだゲイルの腕を振り解こうと彼の腕の中で大暴れしている。


「やめなさいっ!!魔法に物理攻撃なんて効く訳ないでしょう!」

「だったら、魔法ならどうだ!!」


 しかし、次に突出したのは、またしても生徒達。


 シャルの言葉に躍起になったのは永曽根と、榊原。

 同じ『闇』属性の使い手として、彼らは先日発現したばかりの精霊達を具現化していた。


 永曽根の足元には、確かに狼にも似た犬の精霊の姿がある。

 そして、榊原の肩には、大きく羽を広げた鴉のような精霊が乗っていた。


 一瞬、シャルはこの状況も忘れて、その精霊達の姿に魅入ってしまった。


「(…嘘…ッ!発現から、たった一日二日で、具現化まで……ッ!!)」 


 驚きのまま、止めるのも忘れてその精霊たちを見ていたシャル。

 しかし、悠然と走り出そうとした永曽根と榊原の顔が、途端に強張った。


「オイッ、なんだよ、これ!!」

「何で、動けない訳!?」


 その場で、精霊を具現化したまま動けなくなった二人。

 足がその場に縫い止められたかのように、微動だにも出来なくなっていた。


 その焦燥の含まれた声に、シャルもやっと状況を思い出した。

 そして、その場で銀次を包む闇の繭と、永曽根達の精霊達を見比べた。


 すぐに、その答えは出た。


「精霊達も分かってるのよ!いくら、同じ『闇』属性でも、この繭はその精霊達よりも上位の精霊のものだわ!」

「そんなっ!」

「クソッ!」


 思えば簡単な事だ。

 術者を包み込み、生存活動も不明な状況で閉じ込める事の出来る精霊というものは自然界にはほとんど存在しない。

 シャルは、母親からの言伝程度の話を、思い出していた。


 精霊にも、上位、中位、下位が存在する。

 魔族にも当て嵌まるそれは、位が上がる度に一線を画した強さを持っている。

 通常の魔法を行使する際の精霊達は、ほとんどが下位である。


 そして、永曽根や榊原を加護している精霊は、具現化した姿も相まって中位として考えて良いだろう。

 しかし、上には上がいる。

 それが、今銀次を精神世界の檻と現実世界の繭の中に閉じ込めているだろう、上位の精霊。


 自然界には滅多に存在せず、契約を交わす事で行使が可能となる精霊だ。


 シャルは歯噛みした。

 自分も操れる精霊は下位のみである。


 自然と共に暮らす森小神族エルフだからこそ、『水』と『風』の適性が強いだけ。


 今回、こうして銀次を閉じ込めている上位の精霊には、逆立ちをしたところで敵わない。


「なら、私がやる!!」


 しかし、その状況で更に飛び出したのは、少女の鋭い声であった。

 そこには、成人女性よりも一回り以上小さいながらも、背筋を伸ばして凛とした表情をした伊野田。


 彼女の属性は『聖』。


「我が声に応えし、精霊達よ。聖神の権威と鉄槌の力の一端を、」


 しかし、ふとここでシャルがはっとした。

 目線は自分が抱え、力無く横たわっている少女。


 しかし、その実女神だという事は、彼女も知っている。

 その彼女の属性もまた『聖』である事に気付いた。


 その彼女の体から、未だに立ち上っている靄のようなもの。

 それを見た瞬間、


「駄目よ、イノタ!!『聖』属性は食われるわ!!」

「『聖なる矢(ホーリー・アロー)』!!」 


 彼女は、その魔法の行使を中断させようとした。

 だが、後一歩遅く、詠唱が完了した魔法は、伊野田の手から放たれてしまう。


 その瞬間、繭はまるで意思を持つかのように、同じく矢のようなものを放つ。

 伊野田が放った『聖なる矢(ホーリー・アロー)』が一本に対し、闇の繭から放たれたのは数えるだけでも五本以上。

 一本を相殺した残りの闇を纏った矢は、伊野田へと殺到する。


「えっ!?…きゃああああっ!!」

「『雷の檻(サンダー・ゲージ)』!!」


 あわや、伊野田に直撃するかと思われた闇の矢。

 だが、すかさず誰かが唱えた魔法が発現し、闇の矢を相殺。


「(嘘…!?…今、無詠唱じゃなかった!?)」


 シャルの驚きは、その場の空気に呑まれて霧散した。

 その伊野田のすぐ後ろで、兄である河南に背負われつつ手を掲げただけの紀乃の姿。


 彼は、このクラスの中でも、一番最初に魔法を発現。

 そして、銀次とゲイル監修のもと、一番長く行使を続けていた生徒である。


 そんな彼とて、今は驚いてたように眼を見開き、口元を痙攣で引き攣らせている。

 この異世界では未だに誰も行使出来ないであろう、無詠唱。

 咄嗟とは言え、彼は今初めてその無詠唱による魔法の発言に成功したようだ。

 

「…あ、…あ、ありがと、紀乃くん」

「ヤァヤァ…、ドウイタシマシテ…」


 へたり込んだ伊野田。

 精霊の具現化を解き、動けるようになった榊原がすかさず抱え上げる。


 しかし、安堵には程遠い現状。


 闇の繭は未だに健在だった。


 ゲイルは間宮を抑え込むだけで、必死になっている。

 間宮の物理攻撃が、あの繭には一切通らないのは見ての通り。


 そして、同じ『闇』属性でも不可。

 『聖』属性であっても、オリビアや間一髪難を逃れた伊野田のように、攻撃も儘ならない。


 完全に眉への干渉が不可能という状態。


 絶望という二文字が、彼等の脳裏に浮かぶ。

 その場に、沈黙が降りた。


 そこで、


「そんな、…やめてよ、銀次!こんなのに、負けんなよ!!」


 鋭い怒声と共に、走り出した少女。


 金色の髪が、翻る。


「エマッ!!」

「エマ!?…クソッ、こんな時に…!!」


 一瞬の隙を付いて振り解かれたソフィアが叫ぶ。

 先ほどソフィアと一緒に彼女を抑え込んでいた永曽根は、精霊の具現化を解除するのに戸惑っていたせいで反応が遅れた。

 他の男子達も止める暇など、無かった。


「やめなさいッ!エマ!!」

「落ち着け、エマ!!駄目だ!!」


 止める人間など、どこにもいない。


 彼女は先ほどの間宮と同じく、猛然とその繭へと向かって走り抜けた。


「戻って来いよ、銀次!!なんで、アンタがこんな事で躓いてんの!?」


 闇の繭を目の前にして、一瞬だけ立ち止まって怒声を張り上げたエマ。


 その次の瞬間、


「帰って来いってば!!」


 意を決したかのように、彼女はその繭目掛けて両手を突き出していた。

 まるで、中に力無く浮かぶ、銀次へと手を伸ばすかのように。


「エマッ!!」

「やめろ、エマくん!!」


 背後から追い付いたソフィアと香神が止めるよりも、一瞬早くその手は繭の中へと沈んでいた。


「きっ…きゃあああああああああああああっ!!!」 


 手が触れた瞬間、彼女は絶叫した。



***



 そこは暗く、息苦しい世界であった。


 目の前には、屍。


 地面に散らばるようにして乱れた黒髪。

 その髪を汚すかのように、赤くどろりとした血潮が溢れ出していた。


「ごめんなさいっ…!ごめんなさい!!」


 悲鳴のような泣きじゃくる声。


 確認するまでも無く血潮の量で絶命していると分かる屍の目の前。

 そこには、金色・・の髪をした少年が蹲っている。


 斑に血の滲んだ包帯と、体中に刀傷を付けた12・3歳前後の少年。

 現在は『銀次』と名乗った青年の、10年も前の姿であった。


「ごめんなさいッ!師匠!!許してください!」


 ぼろぼろと止め処なく溢れる涙を拭う事すら出来ず、その屍に許しを乞う。


 目の前の屍は、彼の師であった。

 そして、今さきほどまで息をしていた人であった。


 その命を絶やしてしまったのは、彼だった。

 何をどうやって、力量も格も違う師を銀次が殺したのかは定かでは無い。


 その光景だけは、彼の記憶の中には無かった(・・・・・・・・・・)


 しかし、


「…何故、許しを乞うのだ?」


 その屍は未だに、唇を動かした。

 黒髪に隠れていた端正な顔が、のっそりと動き出す。


 はっと目を見開いた彼。

 徐に顔を上げる。


 涙と鼻水と涎と血に濡れた顔。


 信じられないものでも見るかのようにその師の屍を見る。


 だが、異変はそれだけに留まらず。

 屍は、顔だけでは無く、頭、首、体、と次々と動き出し、最後には立ち上がった。


 血濡れの刀を握り締め、自らも血に塗れても尚、屍は動き出した。


 振り乱した黒髪の、端正な顔立ち。

 憤怒とも嘲弄とも取れる感情を瞳に宿し、口元にはまだ溢れ続ける血が零れていた。


 顔中に走った刀傷。

 深いものは、ばっさりと頬肉を切り裂いていた。


「問うぞ、『ーーー』?何故、許しを乞うのか?」


 屍は、そのまま刀を振り上げる。

 目の前に茫然と座り込んだ、恐怖に塗れた銀次へと。


「答えよ!」


 無情にも振り下ろされた刃。


 恫喝のような声に触発され、呆然としていた銀次が動いた。

 その刃をまさに紙一重で躱した彼は、踏鞴を踏んで尻もちを付いた。


 その体は、いつの間にか青年に成長している。

 伸びた手足に、髪は金色から黒髪のウィッグに変わっていた。


 眼の色も元の空色の青から、群青へ。

 そして、危機的状況によって変色する白銀へと変わっている。


 しかし、銀次は自身の変化には微塵も気付いていない。

 まるで、元々この姿だったかのように、意識は体を動かすことが出来ている。


 改めて銀次の見た師の屍は、凄惨の一言に尽きた。


 再びた息を吹き返したかのように見える屍は、しかし生きてはいない。

 首にはまるで何かが貫通した(・・・・・・・)かのような穴がぽっかりと開いている。


 そこから更に、ぼたぼたと零れ落ちる鮮血。

 人間ならば、確実に致命傷であろう傷だった。


「もう一度、問おうぞ?…何故、許しを乞うておる?」

「だ、だって…オレは、あなたを殺して…!」


 ごめんなさい。


 許してください。


 殺すつもりなんかなかった。


 10年もの月日が経っても、彼は師への謝罪と赦免と懺悔を繰り返して来た。

 胸に巣食った後悔と罪悪の感情は、今も尚薄れる事は無い。


「では、どのように殺したのか、言ってみよ。順を追って、思い出せば良かろう」


 そうして、もう一度、憤怒の形相で襲い来る屍。

 奇しくもその姿は、銀次の記憶の中で最後に残った生前の師の姿に酷似していた。


 憤怒を露に髪を振り乱し、農作業用の柄の長いスコップに仕込んだ特殊な刀で切り込んで来る。

 またしても、紙一重で刀を回避した銀次は、今度こそ体勢を立て直してその師の動く屍と真正面から対峙した。


「…そ、そんなの…!必死だったんだ!!覚えてない!!」

「では、思い出すが良い!」


 銀次の必死の弁解を、聞く耳など持っていない。

 猛然と斬り掛かられた彼は、その場を飛び退くようにして後退を繰り返す。


 師の猛攻に晒された銀次は、それこそ必死だった。

 必死に襲い来る刀の軌道を読みつつ、回避に専念する。


 この場に武器は無い。

 あるのは、体一つ。


 そしてもう一つ、必死に考えているもの。


 それは、どうやってこのような猛攻を繰り広げる師を退けたのか。


 10年以上もの間、懺悔を繰り返しながらも、終ぞ彼はその一部始終を思い出す事は出来なかった。


 だが、そこでふと違和感を感じる。


 本当に分からないのだ。

 何故かその時の師との殺し合いの光景が、まるでぶっつりと途切れたかのように暗転している。


 首に開いた穴は、どのような武器で作られたものか。

 また、その刀傷はどのようにして作られたのか。

 そもそも、今の状態と同じく、有効に成り得る武器を持っていなかった自分がどうやって仕込み刀を振りかぶった本気の師を退けられたのか。


 疑問に、思考が早まっていく。


「(…しかも、どうしてこんな簡単に、オレは師匠の攻撃を回避出来ているんだ?)」


 良く良く考えて見れば、この状況は何かが可笑しい。


 今も逆袈裟に振るわれた刃を、余裕を持って屈んで避ける事が出来た。

 更に、そこから続く、正眼、水月、更に左からの袈裟切りも軌道を読み切って回避した。


 13歳の頃の自分は、満足に回避すら出来なかった筈だった。

 無手での、更に言うなら拳骨の類ですら避ける事は敵わなかったのだ。


「(なんで、こんなに軌道が見える?…今まで(・・・)全く読めなかったのに…?)」


 しかし、今はどういう訳か回避に専念し続けているとはいえ、思考を途切れさせることなく動けるのか。

 それは、現在の自分が24歳の体をしているからだと、改めて認識出来た。


 では次に、何故10年前に死亡した筈の師と、何故10年以上経過した現在の自分が相対しているのか。


「(…やっぱり、何かが可笑しい。…そもそも、この状況はあり得ない)」


 違和感のおかげで、一気に血が冷えた。

 おかげで、どうにか混乱した脳内が冷静になったようだ。


 そこで、思考を一旦停止。

 目の前に迫る師の刀を回避と同時、その姿を注意深く観察する。


 年の頃は30代半ばの、端正な顔立ち。

 顔中に走った刀傷のせいで血塗れではあるが、その整った顔は見間違えようが無い。


 更に服装は、いつもの農作業のつなぎでは無くなっていた。

 作務衣にも似た黒の上着に、色の濃いジーンズを好んでいた師。

 ダメージジーンズとは違う傷や穴の開いたものだった筈。

 そこに、何故か革靴を合わせるのだから、少しファッションセンスは異端とも言えた。

 

 次に刀へと目を移す。

 血濡れだった刀は、今は既に白銀の輝きを取り戻していた。

 そして、その刀は師の愛用していた名刀・「紅時雨」。

 気まぐれのように振る雨と、血潮の紅を掛け合わせた随分と物騒な刀だった筈。

 現在にも残る刀匠へと秘密裏に発注したと聞いていたが、現代でも滅多にお目に掛かれない程の名刀だった筈。


 回避と同時に、今度は旋回。

 袈裟切りを放った後の、師の隙となるであろう左側へと回る。


 次に確認しようとしたのは、師の癖だった。

 彼はこうして死角や咄嗟に反応出来ない場所に回り込まれた時(と言っても無茶苦茶に逃げ回っている間に踏み込んでしまう事しか無かったものの)、必ずと言って良いほど行う行動がある。


 その行動を、一瞬だけ無防備な状態を無理やり作り出して待った。


「…なんだ、『ーーー』?…棒立ちになって、切られたいのか?」


 しかし、その攻撃は来なかった。


 確信した。

 コイツは、師では無い。


 ここで、銀次は思考を止めた。

 ついでに、回避行動も全てを止めて、


「…テメェは何だ?…師匠の姿を真似て、何をしたい?」


 刀での回避がほぼ不可となる背面からの、回し蹴りを繰り出す。

 かろうじて避けた、師の屍に扮した何者か。


「…ふふ、随分と情けない顔をしながら、態度だけは大きいな…」

「テメェこそ、師匠の格好しながら、随分姑息な方法使ってんなぁ」


 苛立ちのまま、濡れた顔を拭う。


 そこには、涙も血も、その他諸々の液体はついていなかった。


「見破った事は、褒めてやろう…」

「開き直りやがって…!」


 そこで、立ち姿を一度解いた、その何者か。


 刀は暗がりの中で溶けるように消えていく。

 振り乱された黒髪も、闇に溶けるようにして輪郭すら分からなくなった。

 日本人にしては白過ぎる肌が、絵の具でもぶちまけたかのように黒く染まった。


「…テメェが、精霊か…!」


 そして、その場には立ち上る影だけが残る。

 形すら取っていない状態ながら、銀次にはすぐに合点がいった。


 この世界は、今まで夢の中で行き来していた精神世界にそっくりなのだ。


 暗く、音の無い、もしくはノイズの走った世界。

 体が沈むように重く、息苦しい。


 初めての邂逅ともなった、精霊との対話。


「主にしては、なかなか早い段階で気付いたようだな。…途中から、随分と回避よりも思考に没頭していたようだが、」

「師匠には、癖がある。軌道もそうだが…、刀の握りが甘すぎる。それと、確信に至ったのも師匠の最大の癖だ。

 死角に入りこまれた時、問答無用で足を使ってくんだよ」

「くははは。それは、失敬。足など使った事が無かったのでな…」


 そう言って、立ち上っていた影は、段々と形を形成していく。


 まずは人型。

 次にフルフェイスの兜を被った頭部。

 暗い世界の中でも鈍い光を放つ黒の鎧。

 篭手を嵌めた腕。

 足元まで真っ黒の鎧に覆われていた。


 そこには、黒の意匠が施された甲冑に包まれた騎士の姿。


 銀次の精霊は人型という認識はあながち間違っていなかったようだ。

 しかし、その立ち姿や大きさが、人間と変わらないことを除いて。


「…やっと、お目見え出来たなぁ、主よ。改めて、名を名乗ろうか。我が名はアグラヴェイン。『断罪』の騎士なり」


 やっとのことで、相対したアグラヴェインと名乗った『闇』の精霊。

 未だ銀次の知る由も無いながら、契約をすることで加護や力を貸してくれる上位とも言える精霊であった。


 まるで、地獄から罪人を捕獲せしめんと顕現した死の騎士。


 この時の銀次にとっては、死神のようにも見えた。



***



 闇の繭に触れた両腕から鮮血が飛び散った。


「エマぁあッ!!」

「いやあああああああ!!」


 香神の怒声とソフィアの絶叫も響く。

 その場は一瞬にして、騒然となった。


 闇の繭へと手を伸ばし、銀次を繭の中から引き出そうとしたエマ。

 しかし、彼女の手が闇の繭に触れるや否や、その手は無残にも切り刻まれた。


「やめなさい、エマ!!『聖』属性のオリビアや伊野田も闇に食われかけているのよ!?『風』属性のアンタじゃ、すぐに…!!」

「エマくんッ!駄目だ、すぐに手を離せ!!」


 シャルが叫ぶ。

 エマの突然の行動に驚いた間宮が落ち着いたおかげで、ゲイルがやっと駆け付ける事が出来た。


 しかし、


「ぐあっ!!」

「ゲイルさん!!」


 今度はゲイルも闇の繭から弾き飛ばされる。

 更には、先ほどの伊野田の時同様、闇の矢によって攻撃まで受けた。


 吹き飛ばされた彼は床に体を打ち付けたが、すぐさま転がるように体勢を整えて闇の矢を回避。

 しかし、ほとんど壁際に追いやられてしまい、繭からは遠ざけられてしまった。

 どうやら、正反対の『聖』属性に対しては、半自動的に攻撃が仕掛けられているようだ。


「いやぁああああああああああ!!」

「お願い、エマ!!やめて!!」


 その間も、エマの悲鳴は続いている。

 繭の中に半分程埋まった両腕からは、止め処なく鮮血が溢れていた。


 ソフィアがその体を抱えて、引っ張るが微動だにしない。

 それは、男である香神がやっても同じことであった。


「いやぁあああああああああっ!!やめて、銀次ぃい!!…もう、こんなのやめてよぉお!!」

「おい、やめろっ!!エマ!!」

「いやぁあああ!!エマッ!!エマァアアアアアアア!!!」


 まるで、繭の中に捕らわれたかのような状況。

 彼女自身もその場から動けずに、繭に半ばぶら下がっている状態だった。


 闇の繭は中で渦でも巻いているのか、その中には徐々にエマの鮮血によって赤黒く変わって行く。


 繭の中に浮かぶ銀次の白い肌に、点々と赤が散って行く。

 しかし、その眼は固く閉じられたままだった。


「馬鹿!!死にたいの!?」


 シャルがオリビアをなんとか抱え上げて、生徒達の元へと退避。

 そして、その場で棒立ちになってしまっている徳川や河南へとオリビアを任せようとするが、


「…ぎ、ギンジ様…それに、エマさんの悲鳴が…」

「オリビア!…気が付いた!?」


 そこで、やっと意識を取り戻したオリビア。

 だが、ゆったりと起き上がろうとしたそれを、支えようとして力加減を間違った徳川の手によって、半ば強制的に起き上がらされる。

 それを見ていたシャルも、当人であるオリビアもぎょっとしていた。

 一番驚いたのは徳川だったかもしれないが、彼は「もっと優しく扱いなさいっ!」と、背後の榊原から手痛い拳骨をいただいた。


「…あ、あれは…『闇』属性の上位の精霊のようです…」

「ええ、分かってるわ」


 オリビアが未だに焦点の合わない瞳で、その闇の繭を見る。


 しかし、その前に数名の生徒の姿を見つければ、すぐさまはっきりと意識を覚醒させた。


「駄目です、エマ様!『闇』属性は、命を吸うんですよ!!」


 そうして生徒達の危機を察知したオリビアがすぐに中空に浮かび上がる。だが、すぐさま床に倒れ込むようにして落ちてしまった。

 まだオリビアの体からは、闇の靄のようなものが立ち上っている状況だ。


 彼女の言葉通り、『闇』属性は生命力を吸収するという特性も持っている。

 彼女もまた命を吸われている状況なのかもしれない。


「やっと、解けた!!やめろ、エマ!!」

「…ッ!!」


 エマを引っ張るソフィアと香神に続いて、やっと精霊の具現化が解けた永曽根と正気を取り戻した間宮が駆け付ける。


「ナガソネ様は駄目です!!あなたも『闇』属性なんですよ!!」

「えっ…!?」


 しかし、ここですかさずオリビアの静止の声が飛んだ。

 間宮は問題無く、エマ達の元へと辿り着いている。


 だが、間一髪立ち止まった永曽根だったものの、既に遅く。

 突然、脱力したかのようにして、床に倒れ伏す。


「が…っ?、な…!?…魔力が、…ッ!!」

「同じ属性は魔力を吸い取られます!!すぐに離れてください!魔力枯渇になってしまいますッ!!」


 次から次へと起こる問題。


 闇の矢の攻撃によって壁際に追いやられていたゲイルが、咄嗟に滑り込んで永曽根を引っ張る。

 今度は少し距離があった為か、闇の矢は飛んでこなかった。


「大丈夫か、ナガソネ…!!」

「嘘だろ…っ、もう…ほとんど魔力が…!」


 立ち上がる気力も無い程に、魔力を吸収されてしまった永曽根。

 魔力枯渇で揺れる視界の中、悔しげに歯噛みした。


「どうする!?我々がこのまま動けなければエマくんが死ぬぞ!!」

「でも、どうするって言うのよ!!」


 焦りのせいで、声も語尾も荒くなるゲイルやシャル。

 今の現状では、打つ手が無い。

 暗にそう放たれた言葉の節々に刺が混じるのは致し方ない事だった。



***



 暗い世界。

 前後左右も、闇の中。


 しかし、眼の前には確かに、騎士の姿をした精霊がいる。


 どういう原理か分からないが、この世界の中で認識出来る唯一の相手。

 そして、それが今回対峙すべき、オレの精霊。


 名をアグラヴェイン。

 『断罪』の騎士。


 確か、『アーサー王と円卓の騎士』の中に、そんな名前の奴がいたような気がする。

 気がするだけで、定かじゃない。


「…我が問いの答えは出たのか?主よ」

「もう、そろそろどれが問いだったのか、分からなくなってきたけどな…」


 繰り返されている会話。

 今までの中途半端な一方的な対話とは違って、しっかりとした受け答えが可能な状態。


 心なしか、体が軽いと感じていた。


 思えば、手こずって来た精霊との対話。

 何故か、こんな形となってしまったものの、今回ばかりはすべて吐かせて帰るしかない。


 じゃないと、割に合わない。

 夢の中とはいえ、頭の中をいじくり回されるなんて、我慢ならなかった。

 それが、自身の過去となればなおさらの事。


 先ほどまで、オレの師匠の姿を取って、オレを惑わせていたアグラヴェインを睥睨する。


「…そう睨むな、主。視線で我を殺したいのか?」

「殺されたいなら、殺してやるよ。…やって良いことと悪いことはあるだろうが」


 分別が足りないのだ、と暗に含んだ言葉。

 それに対して、彼は肩を竦めるような動作をしただけだ。


 動作がコミカルだなぁ、おい。


 そして、返答のように、徐に腰に掲げていた大刀を抜き去った。


「…もう一度、問う。主よ、答えは出たか?」

「………」


 再三の質疑。

 それに、オレは無言で答えた。


「未だ分からぬか?いっそ感嘆よな…」

「…抽象的過ぎるのが悪い」


 そもそも、オレの闇が力になるとか、その力はオレ次第とか。


 子どもへの謎掛けももう少し優しいだろうに。

 いや、子どもへの謎掛けだからこそ優しいのか。


 オレだって子ども心を忘れていない大人の筈だったのに。


「また、ふざけた事を考えておるな」

「だから、内心を読むんじゃねぇっつうの。やっぱ、この世界の人間はエスパーしかいねぇのか!」

「…異な事を言う。この世界には我と主しかおらん」

「いや、そっちの世界じゃねぇよ!」


 なんだろう、この残念な感じ。

 このアグラヴェインとやらは、もしかしなくても天然なのだろうか。


「…我は自然界には存在せぬ」

「ご丁寧にどうも」


 違った。

 天然とかじゃなかった。


 ただの馬鹿が付くクソ真面目だった。


 閑話休題それはともかく


「獲物を抜いたって事は、戦うって事か?」

「無論。…我が問いに答えるは、今のうちぞ」

「だから、分からないって言ってるだろ?…せめて、もう少しヒントというかなんというかを、」

「つくづく、甘えたな主よな」


 呆れられた。

 そして、再度肩を竦めた『闇』の精霊(アグラヴェイン)


 しかし、


「ならば、刃を持って応えるべし」

「………馬鹿が付くクソ真面目なバトルジャンキーとか…!」


 先ほどまでの雰囲気は一転。


 唐突に叩き付けられる、凄まじい覇気。

 思わず背中に手を伸ばそうとして、無様に空振った。


 間抜けな事に、はたと気付く。

 ここは言わばオレの精神世界だった。

 武器が無いのは当たり前。


 ヤバい。

 手が震える。


「…おいおい、」


 抜き放った大刀の軌道がぶれる。

 濃密な闇をそのまま纏ったような甲冑。

 気付けばそれが眼の前にあった。


 アグラヴェインは、猛然と突撃を敢行してきた。


 狙いはオレの腹。


 間一髪、足が縺れ掛けたものの、腰を捻って大刀による突きを回避。

 咄嗟の行動とはいえ、避けれたオレは良くやったと思う。


 面積の一番高いところを狙って来たのは、大刀の威力を存分に発揮する為だろう。

 刀と違って、首とか頭とかを狙うと変な風に滑るのだ。

 その代わり、下半身を狙って来られると回避が難しいのも大刀だ。


「良く避けたと、褒めてやるべきか?」

「……主に向かって、随分な口を聞くじゃねぇか」


 突きの動作を引き戻した精霊が、肩越しに兜の奥で笑った気がした。

 兜の奥から睥睨され、その威圧感に思わず喘ぐ。


 コイツ、さっきの師匠に扮した時も手加減してやがったな。


 ただでさえ、あまり良くない状況。

 精霊と喧嘩をするなと言われたのは、シャルからだっただろうか。


 しかし、精霊から喧嘩を吹っ掛けられた場合は、どうするべきなのか。

 残念ながら、この獲物も無い圧倒的な不利な状況での一騎討ちに、活路は何一つ見出せなかった。



***



 どうしようもない。


「近づけなければどうにもならん!」

「だから、その方法をなんとかしなくちゃいけないんでしょ!」

「しかし、私では弾かれてしまうのだぞ!」

「そんなの分かってるわよ!でも、アンタ以外にこの状況をどうにか出来る!?」


 緊迫した空気の中、棘が混ざるのもこの際仕方なく、喧々囂々と言い合っているシャルとゲイル。


 その間にも、エマの体からは生命力が刻一刻とすり減らされていた。


 現状、何かしらの手立ては浮かばない。


 まず、『聖』属性を持っているオリビア、ゲイルは弾かれてしまった。

 そして、『聖』属性で攻撃を仕掛けようものなら、容赦なく『闇』属性の反撃を食らってしまう。


 しかし、同じ『闇』属性では、逆に精霊が委縮してしまって微動だにも出来なくなった。

 更には、不用意に近寄った永曽根が、同じく『闇』属性としての特性で魔力を吸収をされてしまうなどの問題も発生している。


 かろうじて、近寄れるのは別の属性を持っている生徒達ながらも、今はその生徒達が危険となっている。


 埒が明かない。

 どんづまりのような、緊迫した空気。


 しかし、そこでただ一人、冷静な人物がいた。

 オリビアだ。


「『盾』を使います!」

「えっ!?」

「『盾』…!?…『聖』属性の防護魔法か!!」

「はいっ!」


 彼女が、提案をしたのは『シールド』を使った作戦であった。

 まだ多少体の動きがおぼつかないながらも、彼女はその場で立ち上がるとすぐに激励を飛ばす。


 まずは、ゲイルへ。


「ゲイル様は、魔力総量いっぱいまで『聖なる盾(ホーリー・シールド)』を使ってください」

「…!!分かった!」


 オリビアの指示にすぐさま詠唱に取り掛かるゲイル。

 オリビアの言葉の真意を、彼は長年の勘ですぐさま察知したのだろう。

 魔力のコントロールが苦手な彼からしてみれば、魔力を調節する必要のない『聖なる盾(ホーリー・シールド)』は使い馴染んだ魔法の一つだ。


 そして、次に伊野田へ。


「イノタ様は、少し難しいかもしれませんが、ゲイルさんの張った『シールド』の前とエマさんの間に『シールド』を!」

「分かった!やってみる!!」


 そして、最後にオリビア。


「私はゲイルさんの『シールド』の後ろから、エマさんに回復魔法を試みます!その後、魔力を介して生命力を分け与えようと思うのですが、」


 彼女もまた『聖』属性として、そして『聖』属性魔法発動のキーともなっている『聖神』を冠する女神としての仕事を果たそうとしていた。

 そこで、ふと立ち止まる。


「すみませんが、皆さんは私の心許無い魔力を補う為に協力して欲しいのです」


 背後を振り返りつつ、頭を下げたオリビア。

 その言葉に、誰が否と答えるだろうか。


「分かったよ!!」

「任せて!!僕もたまには頑張るよ!」

「もちろん協力する」

「他ニ何かする事ナイ?」

「オレは少し足りないかもしれないけど、」

「…ッオレもやる!」


 徳川、浅沼、河南、紀乃、榊原、永曽根。

 全員が頷いたと同時に、彼女は嬉しそうに微笑んだ。


「もちろん、あたしもやるわよ!見てるだけなんて、冗談じゃないわ!」

「ええ。シャルさんもお願いします!」


 その中に、シャルの声も混ざる。

 涙の滲んだ眼で、オリビアもまた力強く頷いた。


「では、ゲイル様!お願いします!範囲はエマさんの目の前です!」

「了解した!『聖なる盾(ホーリー・シールド)』!!」


 詠唱の完了したゲイルが、オリビアの合図で『シールド』を発動する。

 『シールド』が展開された場所は、エマのすぐ眼の前となっている。

 まるで繭の一部が壁で押しつぶされるかのように変形した。


 すかさず闇の繭が抵抗し、攻撃を仕掛けようとしているものの、『シールド』のせいで跳ね返っていた。

 『シールド』はその属性の性質も相まって、魔法での攻撃を一切通さなくなる。


「次です!イノタ様!!」

「はいっ!!『聖なる盾(ホーリー・シールド)』!!」


 そして、今度は伊野田の『シールド』が、ゲイルの張った『シールド』とエマの間に発現する。


 これによって、闇の繭に捕らわれていたエマの腕から鮮血が飛び散る事は無くなった。


 ゲイルの『シールド』が『闇』属性からの攻撃を拒絶し、伊野田の『シールド』が属性そのものの特性を拒絶している状況になったのである。


 しかし、未だに闇の繭に捕らわれたままの腕からは、生命力が常に吸収され続けているようだ。

 彼女の悲鳴は止んだものの、苦しげな表情でぐったりと膝を付いている。

 それを支えるソフィアと香神も、段々と体の不調が露見していく。


 触れずとも、闇の繭が干渉した空間にいるだけで、生命力を徐々に奪われているようだ。

 間宮は未だ平気そうな顔をしているものの、おそらく時間の問題だろう。


「…では、行きます。皆様、魔力を練って私に渡してくださいませ」

『はいっ』


 『シールド』が張られるまでの間、後方で待機していたオリビアがここで動き出す。

 ゲイル、伊野田の張った『シールド』の後ろから、エマに向けて直接回復魔法を行使。


 これによって、エマの傷口はみるみるうちに回復していく。

 だが、彼女がやるべきことは、表面的な傷を治すことでは無い。


 闇の繭へと吸収されエマが失った生命力を、魔力を介して受け渡さなければならない。


「…本来なら、眷族の契約した間でしか行えないんですけど、」

「それが出来ちゃうのが、アンタなんでしょ?」

「ええ。やってみなければ分かりません」


 ふと呟いた本音。

 そこにシャルが、激励のように被せる。


「あたしが魔力を調節するわ。これでも、魔法のコントロールが得意な森小神族(エルフ)だもの」

「っ……ええ、頼りにしております」


 心強い、シャルの言葉に、オリビアは眦に涙を浮かべて微笑んだ。


 そこで、オリビアは眼を閉じ、見るからに高い集中を開始。

 そのオリビアの肩に手を置き、生徒達へと手を差し出したシャル。


「私の手を握って。その手を回路にして、オリビアに魔力を供給するわ」

「分かった!」


 その手を今度は、榊原が掴む。

 そして、その榊原の手を今度は、徳川が。

 徳川に続いて、河南、紀乃、浅沼、永曽根と続く。


 更に、


「我らにも手伝わせてください!!」

「魔力ぐらいなら、いくらでも…!!」

「少しでもお役に立てるなら!!」

「下の騎士達も呼んで来い!見張りは最小限で良い!!」


 護衛として居合わせていた騎士達も駆け付けた。


「ありがとうございます!」


 永曽根の手を取った騎士達も、同じようにして次々と手を繋いでいく。


「では行きます!」


 集中していたオリビアが、エマへと魔力の供給を開始。

 彼女の肩へと手を置けば、魔力を介して生命力を送り込んでいく。


 オリビアが生命力の供給を始めた傍ら、シャルも同じく集中を高め、繋がった手の向こう側から供給されている魔力を調節する。

 オリビアの負担を少しでも軽減出来るように、出来る限り一定に保つ。


 しかし、良くも悪くもこの学校の生徒達は規格外だった。

 感じる魔力だけでも、魔法を習いたての卵のようには思えない。


 榊原は魔力が少ない代わりに、供給が安定している。

 徳川は魔力量は多いが、暴走気味で抑えが効かない。

 河南は使い勝手が悪いのか、量が調節されていない。

 紀乃もまた使い慣れているせいか、安定している。

 浅沼はなかなか魔力を練れていないのか供給が少ない。

 永曽根はそもそも魔力枯渇寸前だったせいで、ぎりぎりの調整だった。

 その後ろに続く騎士達も、魔力総量は申し分無いものの、供給の安定は難しいようだ。


 それを、彼女は一定量を保つ為に、調節する。

 玉乗りでバランスを取っている最中に、口に卵の乗ったスプーンを加えつつ、計算問題を解いているような状況である。


「(で、でも…すごい。確かに、生命力が吸われている感じ。それを可能に出来るのが、女神なのね…)」


 自覚すると同時に、改めて自分が見ている背中が大きく見えた。

 今は幼女然りとした姿をしているものの、今後銀次の魔力の供給が安定すれば、すぐにでも女神としての真意を発揮できる事だろう。


 今はまだ無理かもしれない。

 しかし、そう遠くない未来に実現するだろう。


 その時は、友人として是非とも祝ってやろうと、内心で微笑んだ。


「(…でも、永くはもたないわね…)」


 シャルの思うとおり、この状況は云わば一時凌ぎだ。


 エマの苦しげな表情は相変わらず。

 このまま生命力を吸われ続けるなら、いずれこちらも枯渇して共倒れになってしまうだろう。


 シャルは歯を食い縛って、耐える。


 しかし、


「エマ様、聞こえます?」

「お、リビア…?」

「はい、オリビアでございます。…無理を承知で、お願い致します。そのまま、ギンジ様へ呼びかけていただけませんか?」

「呼び…かける?」


 その次の一手として、オリビアが提案したのは、エマからの呼びかけだった。


「ええ。…今、一番銀次様に近いのは、エマ様です。どうか、ギンジ様に聞こえるように、大声で無くても構いません。心で呼びかけてくださいませんか?」


 それは、オリビアと銀次、永曽根だけが出来る精神感応。

 以前銀次がトランス状態からの呼吸不全に陥った時にも、彼女が行った方法である。


 その精神感応をエマを介して行おうとしているのだ。


「私は今、ギンジ様の近くには行けません。唯一、一番近くにいるのがエマ様です」

「…あ、あたしが、出来る事?」

「やってみないと分かりませんが…やってみなければ、何も始まりませんわ」


 肩越しにエマが振り返った。

 そこに見たのは、オリビアと協力して自分を助けようとしている生徒達の姿。


 傍らの姉が、苦しげな表情をしながらも、気丈に微笑んだ


「一緒に呼びかけよう?あたしも協力する」

「オレもだよ。アイツが戻ってくるまで、やれることはなんでもやるんだ」

「………ッ!(こくこくこくこく)」


 ソフィアに同調するかのように、香神と間宮も力強く頷いた。


 腕が痛い。

 息が苦しい。

 体中が重い。


 苦痛に満ちていた感情を落ち着ける為、一旦そこで思考を停止したエマ。

 感情の奔流を抑える術は、銀次によって格闘術を習得させられる時から並行して教わっていた。


 思考を停止。

 それにより、客観的な視点に切り替える。


 そして、次の瞬間には、


「お願い、銀次。戻ってきて」


 眼に力を宿し、きりりと強い決意を露にした表情。

 彼女はこの短時間の間に、自身のやるべき役割を正しく認知したのである。


 この状況は、自分が不用意に踏み込んだ事に起因している。

 しかし、オリビアの言うとおり、その行動のおかげで銀次に一番近い位置にいるというのもまた事実。


 彼女は、眼の前の闇の繭と、その中に浮かぶ銀次を祈るようにして見上げていた。


「戻って来ないと、アンタの秘密もバラしちゃうんだからね!」



***



 その日は、また雪が降り始めていた。

 初春を迎えようとしているダドルアード王国では珍しい名残雪。

 それは、寝静まった住人達の知らぬうちに、外の世界を白銀に変えようとしていた。


 それは、1月某日の夜半過ぎの事。

 特別学校異世界クラスの校舎もまた、その雪の世界の中に閉じ込められる。


 その校舎を見上げる、姿無き瞳。


「……なにやら、凄まじい魔力じゃのう?」


 呟いた言葉は、音を持っていない。

 しかし、空気を震わせたそれは、確実に女性の声であった。


「『予言の騎士』殿は思った以上に、曲者だったようじゃな?」


 ふふ、と姿無き女性が、笑った。


 そこにはやはり、女性の姿らしきものはなかった。

 降りしきる雪の中に、足跡だけが点々と続くだけだ。


 人の姿も無い筈だというのに、新雪の上には確かに女性らしい小振りな足跡が残されていた。

 もし、ここで霊感の強いものでもいれば、その姿がうっすらとでも見えたかもしれない。


 しかし、奇しくも夜半過ぎ。

 この時間に外を出回る人間は、住宅地には存在しない。


 そして、その足跡しか残さない女性は消えていった。

 その女性が幽霊なのか、はたまた別の存在なのかは、未だ知る者は誰もいない。



***

頑張れ生徒諸君。

先生も精神世界で色々なものと戦ってるから。

懲りずにまた伏線を張ってしまいました。

それでも、今後の作品の為に必要だと思ってです。


音信不通から一転、殺し合いに発展してしまった精霊の対話をどう収拾しましょうかね?

ご期待に添えられるかは分かりませんが、がんばります。



エマには可哀そうだとは思いつつも、血を流すヒロインを熱演していただきます。

ヒロインの立場上、仕方ないよね?

・・・・・・・・ね?


誤字脱字乱文等失礼致します。

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