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異世界クラスのアサシン・クリード~ただし、引退しました~  作者: 瑠璃色唐辛子
異世界クラス、特別クエスト編
50/179

41時間目 「特別依頼~ゴーレム討伐~」3

2015年11月3日初投稿。


ゴーレム討伐回が、まさかの長丁場。

楽しんで書いている筈なのに、戦闘(?というか、逃亡)が長くなった結果、話もずるずると長くなっている悪循環。


重苦しいシリアスな内容が続いていますが、頑張ってまいります。

そろそろ、ルビ振りも面倒になって来てしまっています。


41話目です。


御愛顧ありがとうございます。

アクセスが70000を越えました。

嬉し恥ずかし、新境地です。


ブックマークいただいている皆様も、ありがとうございます。

感想や誤字報告を頂いている皆様にも感謝をお伝えしたいと思います。


こんな作品ですが、これからもどうぞよろしくお願いいたします。

***



 魔物社会というのは、総じて簡単な形をしている。

 食物連鎖ピラミッドなんてものも現代では存在するが、彼等の中でもそのピラミッドが存在していた。


 弱肉強食は当たり前。

 彼等は種を残す為に生き、そして食らう。


 人間に討伐されればそこまで、他の魔物に食われてしまってもまたそれまで。


 あくまで、魔物達は人間を餌と見做し、そして人間も魔物を餌、もしくは狩るべき害獣ものとして認識している。

 これは、当然の帰着なのかもしれない。


 しかし、この魔物は何なのだろう?


 眼の前にいるのは、某人型汎用決戦兵器(ガ○ダム)を彷彿とさせるゴーレム。

 略してガンレムで良いかもしれない。


 しかし、そんなガンレムは、魔物の食物連鎖ピラミッドの中に含まれるかと問われれば、否。


 ガンレムは、食事をしない。

 体は土で出来た人型兵器だからだ。

 他の魔物にだって、捕食される対象とはならないだろう。

 この時点で食物連鎖のピラミッドからは大きく逸脱している。


 そして、一番の問題。

 ガンレムは、種を残すのか。

 それも否。


 コイツ等は、土を無理矢理捏ねくり合わせて作られた存在であって、脈々と血を受け継いでいる訳ではないし、個体を増やすような思考力すら存在しないだろう。

 受け継ぐような血だって、土くれの体の中に流れているとは思えなかった。

 そもそも、生殖活動が出来るとは思えない。


 何度も交差する視線。

 赤光の視線とも言える眼には、殺気が漲っている。

 しかし、それだけだ。


 生命を繋ごうとする、命への執着は見られない。

 人形に命を吹き込んだだけ。


 死は恐れない。

 その死すらも、彼等は知らない。


 ガンレムにあるのは、敵を排除するか自分が排除されるかの二択だけだ。


 生物ではないにしろ、これほど歪な存在は初めてお目に掛かった。


「せあぁ!!」


 そして、これが通算13回目ともなる、視線の交差。

 オレは上段から踵落としを放ち、ガンレムは愚鈍な動きでそれを見ているだけ。


 まるで、無駄だと声無き声で言われているかのように、ブーツの装甲がひしゃげただけの結果に終わる。

 そろそろ、走り回るよりも、この攻撃の為の脚がしんどくなってきた。


 元々ダメージは期待していなかったが、先に脚がイカレてしまっても可笑しくは無い。


「……っ、先生、頑張って!捕まったら駄目だからね!」

「お願いだから脚を止めないで頂戴っ!もっと、早く逃げて!」

「無茶言ってくれるよ、本当ッ」


 ガンレムを引き付けているオレ。

 それとは別に、そのガンレムの知覚外に逃れようとしている榊原とシャルのやり取りを横目で確認。

 榊原はシャルを抱え上げて、奴の視界に入らないように立ち回っている。

 シャルは、転移型空間干渉魔法メイズの結界に干渉し、オレ達の逃走を手助けしようとしてくれているのだが、そろそろ約束の10分を超えるだろう。


 もしかして、やっぱり15分に伸びる感じ?


「ああ、もうっ!母さんの馬鹿!自動で結界を修復する仕掛けなんて組み込んでくれなくて良いのに!」

「そ、それって、どういう事!?まさか、転移結界とやらが緩められないって事!?」

「そういう事よっ!!干渉しようとした途端、弾かれたわ!今回も、自然な転移に任せるしかなさそうね!だから、後5分持ちこたえなさいギンジ!!」


 やっぱりだ。

 というか、この動き回っていた時間が無駄だったという事になるのか?


 シャルが干渉したせいで、転移の時間が少々延びてしまったらしい。

 今現在は、オレがガンレムのヘイトを取って囮になっていた時間が、12分。

 しかし、弾かれたと言っていたシャルからの一言で、転移するまでまた5分ほどの時間が新たに追加された事になる。


 おいおい、結局15分どころか17分じゃない?

 たった2分でも、されど2分。

 この一方的な命のやり取りを後2分も続けるのは、さすがに厳しいぞ。


「…クソッ!」


 悪態を吐き、ガンレムの全力の突進攻撃を回避。

 上空に回避するのはもう見飽きたと言わんばかりに、ガンレムは左手だけは後方へチャージしていた。


 クソッタレ。

 そんな、学習機能はいらん。

 出来れば、その学習機能を徳川に搭載させてやりたいが、今いない人間にそんな悪態をついても無駄なこと。


 余裕を持って回避する事が、遭遇二回目の今ではすっかり無茶なことになっていた。


 こっちは人間で、あっちは土人形。

 いくらオレもスタミナがあるとは言え、無限ループを12分も続けていればそりゃ体力も乏しくなる。

 ガンレムには残念ながら、体力という概念そのものが存在しない可能性も高いしな。


 あっちにとってオレの攻撃は大した攻撃では無い。


 だが、それはオレには当て嵌まらない。


 一つ一つが質量物量、共に必殺の猛威だ。

 一度でも受ければ、命が危ないのは分かりきっている。


 その緊張感の中で、避け続けるのもそろそろ限界が近い。

 今もガンレムの頭上を飛び越えたオレの脚を追随するようにして、奴の腕がオレのブーツを掠めて行った。

 べろりと、ブーツの装甲が剝がれて落ちる。


 せめてもの救いは、その装甲がガンレムの後頭部に直撃した事だろうか。


「チッ…!」


 そろそろ、このパターンも読まれているな。

 有効な攻撃が何一つ使えない今は、避け続けるしか手立てが無いと言うのに。


 ついでに、ブーツは拉げて凹んで散々な有様で、利き足のブーツに至っては破片がこびり付いたただの革靴になってしまっている。

 安全靴なだけ、まだマシ程度。


 そこで、やっと女神が微笑んだ。

 まぁ、勝利ではなく逃走の女神かもしれないけど。(いるのかな、そんなの?)

 

「5分経ったわ!……えっ…?」


 シャルの叫び、と同時。

 オレ達も身体の芯から引っ張られるような感覚を覚えるが、しかし、


「嘘だろ、おい…ッ!」


 不運は、不運しか運んで来ない。

 面倒事は次から次へとやってくる。


 眼の前の森の様相は、一度歪んでまた戻された。

 オレが落とした装甲も、転移したにも関わらずその場に落ちているだけだ。


 確かに転移はした。

 それは、慣れて来たGがあったのもあって、感覚で理解した。


 だが、転移はしていない(・・・・・・・・)

 もう一度同じ場所に戻されただけだ。


「……移動してない…ッ!!」 

『ヴォオオオオオオオオオオオオッ!!』


 シャルの悲鳴のような声は、ガンレムの雄叫びに遮られて聞こえなかった。


 森の様相は変わらない。

 袋小路になった木々だって変わっていない。


 更に眼の前にいるガンレムですら、遠くには行っていない。

 むしろ、近くなっていた(・・・・・・・・)


 違う。


 オレが呆けていただけだ。


 オレが、ガンレムに補足される位置に棒立ちになっていただけだ。


「逃げてッ!!」

「いやぁああああああ!!」


 榊原とシャルの悲鳴。

 森の中、響くその悲鳴は自棄に遠かった気がする。


 脳内で発されたアドレナリンの大量分泌か何かで、世界が速度を落としていく。


 オレは精一杯の抵抗として日本刀を構えた。


 迫り来る鈍器とも言える腕。

 ボクシングならば上からの渾身のストレートで、ウェイトなんて違い過ぎて考えるのも馬鹿らしい。


 視線の交錯。

 ガンレムは殺気を漲らせながらも、冷静だったように思える。


 しかし、オレはそれこそ必死だ。

 必死になって、その腕を逸らす事だけに集中するしかない。


 日本刀が奴の腕に触れたと感じた瞬間に、オレの脚は半身を通り越してガンレムに背中を預けるような形で懐に沈み込んでいた。


 そこまでの動きをするのに、コンマ3秒。

 速度の落ちた世界では、その0.3秒がまるで1分のように増大して感じられる。

 空気の波が限界までに見開いた目に痛いと感じる。


 顎を滴っていた汗が飛び散るのすら、視界に移った。


 そして、ガンレムの腹に背中を預けるように沈み込んだ身体とは別に、日本刀は最後までガンレムの拳を逸らす事に集中させる。


 ここで、コンマ4秒。

 日本刀の刃を火花を散らしながら、削るような勢いで通り過ぎていくその猛威。

 当たっている時間が、まるで永遠のように思えた。


 更に、刀がガンレムの拳を逸らし終えたのを見届けて、オレの沈み込んだ身体を更に寝かせるようにして地面擦れ擦れまで屈み込む。

 更にコンマ3秒。


 脚は既にガンレムの向こう側に抜けている。

 大きく開いた、右足。

 身体を沈み込ませて、基点軸とした左足が地面と擦れて痛い。

 右足だけを伸ばしきった土下座のような格好である。


 後頭部を掠めるようにして、ガンレムの巨体が通過した。


 精一杯、左足のバネを縮め、十分な頃合を推し量る。


 ずんぐりとしたガンレムの身体には、人間と同じようでありながらも歪な形の四肢。

 人間には有り得ない重量と怪力を誇る傍ら、その四肢にはやはり人間には有り得ない程の隙と隙間が存在する。


 後は身体を滑らせてガンレムの股下を潜り抜けるだけ。


 地面擦れ擦れまで屈み込んだ顔を上げれば、そこにはガンレムの土で出来た臀部が目と鼻の先数センチの距離で広がっていた。

 これが女性であれば眼福な絶景が広がっていた事だろうに、非常に残念な気持ちになる。


 この間で、約1秒。


 踏ん張った左足のバネを使って、後方へと飛ぶ。

 伸ばしきっていた右足が流石に付いて来てくれなかった。


 だが、十分想定内なので、背面宙返りをして空中で体勢を整える。


 心底、体に染み付いた感覚がありがたいと感じる。

 地獄としか形容出来なかった師匠との修行の日々も、全てはこの為にあったのでは無いかと錯覚してしまう。

 現金なものだ。


 そして、皮肉なものだ。


 10年以上前に師匠からの地獄の日々の中で学んだのは、結局逃走に勝る防御は存在しない事だった。


 更に滞空に1秒。


 着地。

 そして、転倒。

 身体が思った以上に、鈍く感じている。


 脳が加速し過ぎて、体が付いて来なかったのか。

 だが、このぐらいの転倒なんて、あの拳にプレスされるのに比べたら差し足るダメージにはならない。


 転倒したままで、ガンレムの背中を眺める。

 ここで、また1秒。

 地面を揺るがした奴の必殺のストレートは、直撃した大木の幹を粉砕し、呆気なく薙ぎ倒していた。


 なにあれ?

 命がいくらあっても足りない。


 そして、ここでまた呆然とする事1秒。


 この4秒と言う僅かな時間の中で、オレの寿命が10年は縮んだだろう。


 生きているって、素晴らしい。

 心の底から、そう思えた。


「ギンジ…!って、えっ…ええ!?」

「うわぁあ…先生、人間超越しちゃってない?どうやって、そこまで移動したのか全然見えなかったけど…?」

「人間、差し迫った危機には、隠れた潜在能力を発揮できるもんだ」


 シャルの戸惑う声と、榊原の呆れた声が背後から響く。

 ああ、彼女達からすれば、オレが瞬間移動したようにも見えたのかもしれない。


 意外と近くまで飛んでしまったようだ。

 着地する足場も見ないで飛んだので、木に激突しなかっただけまだマシだっただろうか。


 立ち上がりつつ、転倒の為に付いたコートの土を払う。

 新調したばかりのコートがまたしても、泥だらけになってしまった。

 前は血塗れだったか、今回はまだマシ?


「…ところで、この状況の原因は分かったのか?」

「あっ、えっ!?…あ、そうよ、そうだった!何で転移した筈なのに、戻ってるのよっ!!」


 ええ?それは、オレ達が聞きたいんだけど。


 教えてくんになるのは気が引けるものの、今の現状では彼女しかこの転移失敗(・・・・)の原因が分かる人間(?森小神族(エルフ))がいないから致し方ない。


 しかし、直後、何かに気付いたのか。

 シャルが顔面を蒼白にして、か細く喘いだ。


「嘘…ッ、こ、この空間だけ、ランダム転移から外されてる…ッ!?何で!どうして!?」


 彼女の言葉に、オレ達も絶句。

 そして、彼女は今にも死んでしまいそうなほどに、真っ青な顔でへたり込んでしまった。


 絶望という、二文字が脳内に踊る。


 ああ、最悪。

 どうあっても、オレ達はあのガンレムを討伐するしか生き残る道はなさそうだ。


 のっそりと、振り返ったガンレム。

 またしても赤く光るが細められたかのように見える。


『何故、生きている?』


 まるで、そう問い掛けられているようだ。


「…生憎、まだ遣り残した事があるから、死にたくないんだ」

『ヴォオオオオオオオオオオッ!!!』


 返答は雄叫び。

 先ほどと同様に猛然と迫り来るガンレムを引き付けるようにして、榊原やシャルのいない左側へと大きく迂回した。


 オレを追うように更に左に大きく迂回した奴の視界を少しでも遮る為に、まだ比較的被害の少ない木々の間へと滑り込む。

 こっちも視界不良のハンデを背負うし、障害物の為に今まで以上の速度では動けないとしても、それはガンレムも同じ。


 と、思ったのだが、


「まるで、ブルドーザーだな…ッ!!」


 背後から大木の幹を圧し折り木々を薙ぎ倒し、薮を均しながら背後から迫るガンレム。

 そうだった、コイツは人間として考えるべきじゃなかった。

 先ほど、オレ達に追いすがってきた時も、こうして木々を薙ぎ倒して来ていたではないか。


「クソッ!!」


 何度目かの悪態と共に、背後の地響きから少しでも遠ざかるようにもつれそうになっている脚を引っ張る。

 ガンレムとは別に、跳ね飛ばされた大木や、それだけでも致死力が高いだろう丸太のような枝が迫るのも避ける。


「やめてよ、お母さん!!あたしもいるのよ!?なんで、こんな事するのよぉおお!!」


 轟音の合間に響く、シャルの号泣の声。

 彼女からして見れば、この状況は文字通り母親に見捨てられたとも言えるだろう。


 まだ、小さいのに、可哀想としか言えない。


 しかし、可哀想なのは、オレも一緒。

 気が逸れていた。


 眼前の視界に唐突に飛び込んできた木の幹を、咄嗟に蹴るようにして別の木の幹へ。

 更に、三角飛びの要領で次の木の幹へと至り、更に上空の枝の上に飛び乗った。


 間宮の事、忍者だのなんだの言えなくなってしまうな。


 追いかけっこはそろそろ、不可能に近い。

 次は隠れ鬼にしようと思っても、そもそも奴は視界では無く魔力でオレを認識しているのだから意味は無い。


 八方塞りの現状で、オレが登った木をガンレムが補足。

 一応、奴の腕が届かない上の枝に着地はしているが、きっとコイツはこの大木ごと引き倒してオレを轢死に追い込むだろうな。


 だが、それで良い。


 脳内に浮かんだ、最後の手段。


 そう簡単に死ぬつもりは無いが、


「榊原、シャルを連れて出来るだけ遠くに逃げろ!!」

「せ、先生!?」


 精一杯、引き離す。

 三人のうち、二人が生き残る方法は、これだけだ。


「嘘でしょ、先生!?先生はどうすんのさ!!」

「時間を稼ぐ!!その間に、お前達は戦線を離脱しろ!!」

「ふざけないでよッ!!」

「オレがふざけていると思うか!?」


 そんな暇は、今は無い。

 余裕があれば、あるいはふざけていられたのだろうか。


 賭けるしかない。

 先ほどのシャルの言葉に。


「ランダム転移から外れているのは、この空間だけ(・・・・・・)だ!なら、空間だけでも遠退け!!そうすれば、本来の転移に戻れるかもしれない!!」


 「この空間だけ(・・・・・・)外れている」、というのがシャルの言葉。

 だが、それなら別の空間は、少なくともランダム転移の範疇には含まれる筈。


 賭けとしか言いようが無い危険だが、少しでも可能性があるなら、先に二人を離脱させる。


 その間に、オレはガンレムを少しでも引き付ければ、あの二人がガンレム込みの転移に巻き込まれる事はおそらく無いだろう。


「それなら、先生も一緒でしょ!?馬鹿やって格好付けて無いで…っ!!」

「…そんな格好良い事が言えるなら言いてぇぐらいだよ…!!」


 本心から吐露する、苦々しい言葉。


 悔しいが、こっちも体力の限界が迫っている。

 先ほどの紙一重の生死のやり取りを受けて、集中力自体がぶっつりと切れてしまっているのだ。

 気が逸れてしまっていたのも、その証拠。


 生徒達には集中しろやら落ち着けと言っておきながら、これじゃ笑われるな。


 こんな状況では、これ以上の鬼ごっこも隠れ鬼も無茶というものだ。


 勿論、最後の最後まで足掻くつもりではいる。

 だが、オレがこのガンレムに倒された後に、次に矛先が向くのは間違いなくあの二人だ。


 ランダム転移であっても森の中を彷徨って、魔物に襲われるか。

 今ここでぐずって残って、ガンレムに殺されるか。


 ならば、生きる確率が少しでも高い方を選ぼう。


「行け!!これは命令だ!!」

「嫌だよ!!無理だよ!!オレだけで、森を抜けろっての!?」

「シャルも一緒だ!!男だろうが!!女の子は命を賭けて守るもんだ!!」


 そして、それを逃がすのが、教師オレの役目。

 不甲斐なく泣き崩れそうになっている生徒のケツを蹴り飛ばすのも、オレの役目だ。


 その瞬間、視界が、足場が大きく揺れる。

 咄嗟に刀を木の幹に刺して、振り落とされないように身体を固定した。


 ガンレムがオレのいる大木へと取り付いた。

 何をしようというのか、突進すると同時に幹を抱え込んだ。


 時間が無い。


「行け!!颯人(・・)!!間違いは二度と起こすんじゃない!!」

「………ッ!!」


 ずるいとは思っても、彼の苗字では無く名前を呼び、心の底で燻っているだろう傷口を抉る。


 一度犯した過ちで、彼はこの学校に来た。

 その過ちを繰り返さない為、そして悔い改める為に彼はオレのクラスでも常に頑張ってきた筈。


 逆に言えば、それで事足りる。


 そうでもしないと、彼は自分だけ逃れようとはしてくれないだろう。


「父親がお前を守る為に何をしたか思い出せ!!お前も命を賭けて、誰かを守るだけの気概を見せろッ!!」


 シャルを守る。

 そして、自分の命をも守る為。


 その為に、逃げてくれ。


「………ッ」


 立ち尽くした榊原の目から、遂に涙が零れ落ちた。

 しかし、その口元には、血が滲むほどに噛み締められた唇。


 見るからに軋んだ音を立てているだろう拳と、食い縛った歯。


 この状況では、近寄って頭を引っ叩いてやることすら出来ないのが、悔やまれる。


 先ほど以上に、視界が大きく揺れた。

 見ればガンレムが木を引っこ抜こうとしている。


 反則だ、そんなの。


「クソッ…!!良いから、走れ!!」


 木の幹に刺していた刀を引き抜き、間一髪の所を枝から飛び降りる。

 着地と同時に地面を転がって勢いを殺す。


 背後で木の根が無理矢理に引き抜かれる悲鳴のような音と、木の幹が圧迫に耐え兼ねて発する異音が不協和音のように響いた。


 もう一度、鬼ごっこを敢行する他無い。


「逃げた後は全部ゲイルに任せろッ!!救援でもなんでも求めてくれれば良い!!頼む!!」

「………ッ、し、死んだら許さないから!!二度と先生なんて呼んでやらないからね!!」


 オレの叫び声に、負けず劣らずの怒声。


 「それで良い」。

 口の中で、無音で転がした心の底からの声。 


 肩越しに見た彼は、へたり込んだままのシャルを無理矢理抱え上げて、踵を返す。


「ちょっ…!アイツは、どうすんのッ!!」

「良いから、逃げるんだッ!!」


 オレとは正反対に逃げる榊原と抱え上げられたシャル。


 まるで、脱兎のようだ。

 それは、オレも同じ。


「…これで、良いんだ」


 しかし、それで良い。

 ここで、心中させるつもりは無い。


「馬鹿だな、…オレも」


 我ながら、馬鹿だとしか思えない。


 何を遠足気分でこんな危険度の高い依頼を受けているのか。

 生徒達まで巻き込んで。


 何を甘えた考えで、簡単な依頼だと思っていたのか。

 ゲイルに「リベンジ」だと笑った、あの時の自分が心底憎い。


 こんな内容のクエストだと分かっていれば、そもそも引き受けなかった。

 そうは考えても、後の祭り。


「…ほら、見た事か」


 悔しさに、口元が震えた。


 「同じ間違いを犯すな」。

 それは、榊原にだけ向けた言葉では無い。


 紛れも無く、自分自身に向けた言葉だった。


 背後で森林破壊を地で行くガンレムも引っこ抜いた大木を放り捨てて、オレを追いかけ出した。

 まるで、ブルドーザー。

 この辺一体を、更地にでもするつもりだろうか?


 このまま体力が尽きれば、アイツの拳なり踏み潰しなりを受けて、オレの体は挽肉になるだろう。

 そのまま、魔物にでも食われて骨も残らないのかもしれない。


 依頼内容を、もっと熟考すべきだった。

 後の祭りとは分かっていても、何度同じ事を繰り返すのか分からない自分自身に後悔の念しか浮かばない。

 むしろ、呆れた。


 あの時も、こうして逃げ回っていた。

 5年前にも、こうして無謀な依頼を受けて、死に掛けていた。


 いや、あの時はもう死んでいたのかもしれない。

 実際、何度も心臓が止り、その度に心臓を直接マッサージされて蘇生されていたのは覚えている。


 同じ事を繰り返して、馬鹿をしているのはオレだ。

 オレが、馬鹿なだけだ。

 馬鹿は死んでも治らないらしいが、何度死んでも治らないという実体験をする事になるとは。


 もう、言葉も出ない。


 悔しい。

 虚しい。

 呆れた。

 疲れた。


 けど、


「……死にたくねぇ…ッ」


 もう、あんな思いは二度とゴメンだ。

 命を諦めるなんて事、二度としたくない。


 折角繋がった命だから、違うことに役立てていたのに、それもたった一度の過ちでこんなにも簡単に全てが無意味になるなんて。


 世知辛い。


 だが、それが現実だった。


「畜生ッ!!」


 もう何度目かも分からない悪態も、もう悔し紛れの負け犬のそれにしか聞こえない。


 背後から響く致死の足音。

 もう先ほど稼いだ数メートルの距離だって、無いだろう。


 なんて無力なんだろう。


 追いつかれるか、それとも奴のプレス攻撃を甘んじて受けるか。

 どっちにしろ、それは死を意味する。


 どくどくとがなり立てる、心臓の音。

 それも、もうすぐ聞こえなくなると思えば、耳に心地よかった。


 呼吸が遠退く。

 背後から迫る音すらも、意識すらも。


 眼の前も真白になり、その先に、


ーーー「(ああ、……死んだかな?)」


 懐かしくも、見慣れた背中が見えた気がした。

 もう十数年も前になるだろう、クソ餓鬼然りのオレが縋り付いていた師匠の背中。


 その背中に向かって、無意識に手を伸ばす。


 ごめんなさい。


 そう呟きながら、


 最後の一歩を踏み締めた時。


ーーードンッ!!


 と、背後でけたたましい音が鳴り響いた。


『ヴォオオオオオオオオオオッ!!!』


 次いで響くのは、ガンレムの雄叫び。

 まるで、勝ち鬨のようなその声に、オレは意識を手放す為に体の力を抜いた。



***



 その瞬間だった。


「ギンジ!!こっちよ!!」


 鋭い声。

 遠退いていた意識を急激に引っ張った甲高い声だ。


 遠退いた全てが戻って来た。

 音も、視界も、体の機能も、そして意識も。


「クッ…!!」


 声の方向に、咄嗟に跳躍。

 ラグビーのトライを決めるような横っ飛びとしか言えない格好で、オレは薮の中へと頭から突っ込んだ。

 木の根か何かに脚が引っ掛かって、麻痺した左腕を下敷きに横向きにスライディング。

 そして、その先には木の根があって、転がった拍子に後頭部をぶつけ、更に勢い余ってジャックナイフのように折り畳まれた。


 無様だ。

 他人事のように、頭に浮かぶ。


 痛い。

 感覚が戻って来たせいか、節々の痛みがより顕著に現れていた。


「ギンジ!!」

「馬鹿先生!無茶な真似すんだから!!」


 そして、その鋭い声の主の姿を見た。


「…大丈夫!?」

「先生、しっかり!」


 薮の先には、シャルが、そして榊原がいた。

 どちらも表情は、憮然そのもの。


 オレは見下ろされるようにして、二人の前に転がっている。

 ちなみに、オレの頭を跨ぐように立っていたシャルのおかげで、眼の前には絶景が広がっていた。


 移動重視のフレアースカートってやっぱり良いよね。

 現実逃避とはまた違う、明後日の方向に意識を飛ばしておく。


 というか、このまま寝たい。

 眼福のままで。


 閑話休題それはともかく


 逃げた筈なのに?、ここで何をしている?、救援はどうした?、と色々な言葉が脳内を渦巻くも、


「なんで?」


 という、間抜けな言葉しかオレの口からは発せられなかった。

 情けない事に歯ががちがちと震えていて、それ以上言葉を出せなかったのもあるかもしれない。


 無制限追いかけっこのおかげで、体力は既に塵も残っていない気がする。


 いや、待て。


 その鬼ごっこの鬼は、どこに行った?


「とにかく、走って!ちょっとは時間が稼げる筈だからっ」


 疑問を口にする前に、シャルに腕を引っ張られて転げるようにして走り出す。

 榊原が横合いからオレの身体を支えるようにして持ち上げてくれたおかげで転ぶような事は無かったものの。


 うわぁ、無様。

 再三の他人事のように、最後の力とも言える気力を引き絞って走る。


 左にシャル、右に榊原。

 オレはそれに引きずられるように走る。


 榊原の肩越しに横目で見たガンレムは、何故か頭を押さえて悶絶しているように見えた。

 その頭からは白い蒸気が上がっているようだ。


 爆発物でも投げたのか?


「魔法よ、馬鹿!知らないの!?」

「…使えないからね」

「呆れた!そんなんで、よくこの依頼を受けたわね!!」

「………オレも、そう思う」


 本心から、苦々しく吐き出す言葉。

 痛いところを突かれたとは、今はもう思えない。 

 だって、本当の事だ。


 横で、榊原が口を噤んだ。

 シャルも走りながら、気まずそうに視線を逸らす。


「と、とにかく、走るわよ!次に転移先が、こっちよ!」

「……お前達は、なんで転移しなかったんだ?」


 素直に浮かんだ言葉。

 今度は舌も縺れることなく話せた。


 何故、ここにいるのか?

 逃げた筈ではなかったのか?


 続けざまに口を開けば開くほど、彼等の表情は険しくなって行った。


「おい、シャル…ッ!!」

「----ッ!!黙って走りなさいッ!!」


 答えが無かったので、直接聞いて見る。

 答えではなく、怒声が返された。


「おい、榊原、どうなってる?」

「ちょっとは自分で考えればッ!!ちゃきちゃき走る!!」


 今度は榊原に問い掛けるが、やはり返って来たのは急かす様な怒声。

 自分で考えても分からない理由だから、聞いたのにね。


 そうしてしばらく走ると、


「うぐっ…!!」

「あ、ちょっ…」

「おわっ!?」


 急激に体の芯から引っ張られる感覚。

 気力のみで走っていたオレの脚から、根こそぎ力が抜けて倒れこむ。


 ついでに、両隣の二人を巻き込んで地面に転んだ。

 申し訳無い。


 今の感覚は、もしかしなくても転移だろうか。


「はぁっ、ハァッ…ゲホッ!」

「…も、もう!しっかりしなさいよッ!」

「ちょ、しっかりしてよ、先生。…ッうわ、ひっどい顔…!」


 シャルは巻き込んでゴメン。

 それは自覚しているから、言わないでくれ榊原。


 倒れ込んだまま、片手のみで身体を支えるも、幾らも身体が持ち上がらない。

 刀はいつの間にか榊原が片手に持っていてくれたらしいので、オレの手には握られていなかった。


 眼の前には擦り傷だらけの、血の滲んだオレの拳。

 その手の傍には、額から顎からぼたぼたと滴り落ちてはじんわりと地面に沁みこむ汗。


 今なら、真っ青な顔をしている事は鏡を見なくても分かる。

 むしろ、有酸素運動のせいで真っ赤だろうか。


 眼の前に差し出されたハンカチ。

 白地に緑の蔓や葉っぱが刺繍された可愛らしいものだ。

 右側からだから、シャルの持ち物だろうか。


 少しだけ顔を上げて、首を傾げる。


「えっ、ちょっと受け取ってよッ!…というか、嘘!アンタ左腕、動いてないじゃないッ!!」

「…いや、これは元々だから」


 オレのにっちもさっちも反応しない、役立たずの左腕を見てシャルが顔を蒼白にして叫ぶ。

 折れたか何かしたかと、勘違いでもしたのかもしれない。


 だが、元々と聞いて、


「……ッ、し、仕方ないわねっ」


 そう言って、シャルはオレの顔をそのハンカチで拭ってくれた。

 じんわりと沁み込む、汗。

 見れば、泥や血も混じっている。


 ああ、折角可愛らしいハンカチだったのに、一気に血生臭いものになってしまった。

 申し訳無さに、苦笑すら出来ない。


 拭っている間、シャルは何も言わなかった。

 しかし、ふと何かに気付いたらしく、オレの目を凝視して目をまん丸にしている。


 って、あ゛…。


「…そういえば、アンタこんな目の色してた?最初見た時は、黒か濃い青だと思ってたのに、」

「…いや、その…」


 ああ、すっかり失念していた。

 眼球の色素異常で、今のオレの目はまるで夜中に見る猛禽類の眼のようになっているだろう。


 マズイ。

 話を逸らす前に、目線を逸らしてしまった。


 しかし、意外なところからの助け舟。


「先生の目の色、非戦闘時は紺色なんだけどね。戦闘時は、こうして色が薄くなるの。ちょっと不思議でしょ?」

「ええ、そうね。でも、それって凄いわよね。綺麗な色だし、」


 榊原が苦笑と共に、シャルに伝えた内容。

 それは、確かに事実に基いているから間違いではない。

 心拍数の上昇や興奮すると色素が変わるのは間違いではないものの、うん、なんというか。


 うん、…えっと…。

 素直に信じちゃったシャルが純粋過ぎて、心苦しいのはオレだけ? 


「……吃驚させて、悪かったな」

「えっ?吃驚はしているけど、別に謝ることじゃないわ。それに、さっきも言ったけど綺麗な色じゃない?ちょっと見れて、ラッキーって思ってるし、」


 うん、やっぱり心苦しい。

 主にシャルが純粋過ぎて、オレがどうすれば良いのか分からない。


 打開策を更に求めて榊原を見上げれば、ドヤ顔を返された。

 それは、何故か解せん。


 ああ、そうだ。

 オレの色素異常は、この際どうでも良い。

 それはともかく、


「…でもまぁ、これで転移は出来たから、少しは時間が稼げる筈よ」

「間に合って良かったぁ…!先生、結構遠くまで逃げてたか、ギリギリだったんだよねぇ」


 乱れ切って無様な息も整った。

 なんとか、身体を持ち上げて、その場に座り込む。


 問題は、どうしてここに逃げた筈の彼等がいるのかだ。


「…なんで、逃げてない?」

『………。』


 しかし、返って来たのは沈黙。

 痛い程の沈黙と、更には彼等からの無言の圧力が振って来た。


 物理的に刺さりそうな奴だ。

 これ、敵意とかまではいかないけど、完全に怒気だね。


 あれ?なんで、オレ怒られてるの?


「先生、ちょっと正座しようか」

「いや、無理。脚が動かん」

「じゃあ、そのままで良いから、聞いて?ってか、そのまま動かんで?」


 …えっ?…あ…うん?

 ううっ……、未だに脚ががくがくで言う事を聞かないから、動こうにも動けないけど。


 そうして、地面に座り込んだままのオレに、榊原は拳を握った。

 えっ、待って?拳?


 篭手付きの拳イン・ザ・ガントレットで?


「待て待て待て、お前、その篭手で殴ったらオレが死ぬわ。殺す気か?」

「死ぬ気だった人が、今更そんな事気にすんのかよ!」

「いやいやいやいや!死ぬ気ではあったかもしれないけど、改めて殺されたいかと言われたら断固拒否する!」

「その拒否をオレ様は断る!!」

「何その、オレ様理論!?」


 何この押し問答。

 後ろから人型汎用決戦兵器に追いかけられるリアル鬼ごっこが終わったとか思ったら、今度は生徒からの超暴論で殴り殺されるの?


「馬鹿な事してんじゃないわよっ」


 しかし、さすがに見兼ねたのか、シャルが止めに入ってくれたおかげで難を逃れた。

 榊原、お前そんなに乱暴だったっけ?


「馬鹿な事をしているのは認めるけど、結構大事な事があるのよ?だって、この人こんな目にあったぐらいじゃ、これからも命なんて軽く考えるだろうし、」

「………一発だけなら許すわ」

「ええっ?」


 かと思ったら、結局扇動されて、榊原には(勿論、篭手無しで)殴られた。

 良い拳だったよ、榊原さん。

 ってか、先生を殴るとか良い度胸してるね。


 と、一発殴られて終了だと思っていたら、


「…ちなみに、」

「うん?」

「フンッ!!」


 バチンっ!て音がして、シャルからも殴られた。

 頬を思いっきり、拳で。

 この世界の女性には、平手という概念が無いのかそうかそうか。


 というか、拳で鳴る様な音じゃなかった筈だけど、一体どんな力で殴ってくれたの?

 この子も見かけによらず、良い拳をお持ちでした。


「痛…っーーー…ッ」


 オレが、痛みに悶絶していると、


「自業自得だよ、先生?」

「簡単に命捨てようとしたんだから、当たり前よね?」


 オレに鉄拳制裁してくれた二人は頭上から恨み言を呟いた。 


 なんか、それは納得できない。

 オレが自分自身の命を優先して彼等を見捨てたなら、恨み言を言われたとしても納得出来る。

 しかし、今回は逆だろう?


 何故、怒られなければならないのか。


「…そんな顔しても、許さないからね先生。シャルちゃんが、転移先を弄くってくれなかったら、先生今頃挽肉だったんだから」

「…転移先を弄くった?いや、…そもそも、なんで、戻って来た?」

「当たり前でしょう?オレ達、そこまで図太くないの」


 と、今度はべし、と榊原に頭頂部を叩かれた。

 軽い音とは裏腹に、そこは先ほどお前が殴ってくれた場所にジャストミートなんだが、わざとか?


 そして、腕組みまでして仁王立ちしているシャルからは、ありがたくない説教を受ける。

 もしかして、さっき花柄のパンツを見た事、怒ってる?


「本っ当に、分かってないのね!アンタ!」

「…ちょっと、意味が分からん」

「ちょっとじゃなくて!あたし達がどうしてここにいるかも分かってないわねっ!」


 見た目年齢10歳の少女からの恫喝。

 正直、見た目で言えばガンレムより怖く無い筈なのに、何故か背筋がピンと伸びた。


「馬鹿だとは思ってたけど、本物の馬鹿ねアンタ!アンタを犠牲にして逃げたからって、あたしも彼も喜ぶとでも思ってたの!?」


 シャルの言葉に、榊原が同意。

 そして、補足するように、しゃがみ込んで伝えてくれた。


「正直、オレは逃げるつもりだったよ。命令とか色々言われたし。…けどさ、それって、結局は先生の自己満足じゃん」

「そうよっ!格好付けないで頂戴!」

「オレ達がここにいるのは、転移した先で、シャルちゃんがまた転移先に干渉して、オレ達を元の場所に戻してくれたからだよ」


 えっと、それは、わざわざ戻って来たって事だよな?

 それは、身を挺して彼等を逃がしたオレの行動が無駄だったって事になるんだが。


「馬鹿言うんじゃないわよっ!人を犠牲にしてまで、逃げたくは無いわっ!」

「しかし、あの時は、それが一番、」

「一番良い方法だったって、本気で言える?」

「……生存率の確率で言えば、」

「その生存率の中に、先生が含まれてないんじゃん。だったら意味無いでしょ?」

「………。」


 榊原に諭されて、またしても黙り込む。

 その沈黙を肯定と取ったのか、シャルが更に追い討ちを仕掛ける。


「自己満足であたし達を逃がして、陶酔でもした訳!?冗ッ談じゃないわ!」

「………」

「オレ様は、シャルちゃんに賛成」

「アンタはそれで良いのかもしれないわよッ!でも、あたし達の気持ちを少しでも考えた!?アンタを犠牲に逃げるあたし達の気持ちが、アンタに分かる!?」


 再度、彼女の拳が握られた。


 黙りこんだままで、しばしの間熟考。

 別にまた殴られるのは勘弁願いたいという訳じゃない。


 気持ちを考えたか?

 誰の?

 榊原とシャルの気持ちだ。


 オレは、今回彼等の命を最優先に考えた。

 その為に、敢えて囮となったオレが、ガンレムの猛威の中に曝された訳だし。


 だけど、それが自己満足だと、彼等は言う。


 格好付けた馬鹿。

 その見栄による陶酔した、これまた馬鹿。

 更には、意味が無いとまで罵られる。


 オレの立場って、何?


「命を簡単に投げ捨てる奴、あたしは大っ嫌いッ!」

「オレ様も、大嫌い」

「……だが、あの時は、」

「それが一番だったなんてまだ言うなら、本気で怒るよ?…オレは先生の生徒だけど、部下じゃないんだ。先生を見捨てて逃げるなんて、出来る訳無いでしょ…?」


 ふと、そこではっとする。

 顔を上げれば、涙目になった榊原の顔。


 ……苦しそうな顔で、オレを見下ろしている。


「…言ったじゃんか、オレ達は先生が死んだら、この世界じゃ生きていけないって…」

「………。」

「それなのに、自分達だけ逃げろとか、見捨てろとか、言われて従えないよ」

「………。」


 そうか。

 すっかり失念していた。


 コイツは、部下じゃない。

 勿論、間宮のように弟子でもない。


 あくまで生徒であって、オレは教師。


 感情面でも経験で言っても、彼等にそれを遂行する理由が無い。

 そういう訓練だって受けてないんだから、当然だ。

 いつの間にか、昔の裏社会人の感覚がフェードバックされていたのか。


 いかんな。

 これじゃ、引退しましたって、胸を張れないじゃないか。


「……命令を、聞くわけも無い、か…」

「そうだよ?でも、信頼してないとかじゃなくて、あくまで感情論でだけ…。逃げるのも怖かったし、置いていくのも怖かった…だから、シャルちゃんが戻ろうって言った時に、一も二も無く同意したの」


 そうして、榊原は命令よりも感情を優先した。

 それが、たとえオレの命令を無視した結果だとしても、逃げるよりも戻り、オレの救助を優先させることを自分で決めた。

 

 生徒としては、花丸だな。

 こう言った場面での兵士としては落第かもしれないが、どの道コイツは兵士じゃない。


 そして、


「一人よりも、三人の方がゴーレムだって倒せるかもしれないじゃないッ!何を格好付けてるのよ!あたしだって森小神エルフの端くれよ!魔法だって、アンタよりもよっぽど上手く扱えるわ!!」

「……だが、命を賭ける必要は無い」

「それはアンタだって、同じでしょう!?あたしもアンタも今日が初対面よ!」

「初対面だからこそ、見捨てられた筈だ」

「ふざけないでよ!!あたしはそこまでして、生き残りたいなんて思わないわ!!そ、それに、まだ、報酬貰ってないんだから、放り出すわけにはいかないでしょ!!」


 この子も、言わずもがな。

 純粋な彼女だったからこそ、榊原同様感情を優先させた。


 それに、助けられたのは、間違いなく事実だ。

 参ったな、頭が上がらない。


「…それだけ?」


 ただし、口は勝手に皮肉やらからかいを吐き出す。

 ゴメンネ、ただの見栄っ張りの格好付けで。


「そ、それだけよ!でも、十分でしょ!?お、お母さんが何を考えているのかは知らないけど、この森の結界のせいでアンタが危ない目に合うなら、それを助けるだけよッ!」

「…そのお母さんのせいで、さっきは君も危ない目にあったのに?」


 ちょっと、この質問は意地悪だったかもしれない。

 けど、事実、彼女は母親が、結界とやらを弄くったせいでガンレム込みの無限ループに巻き込まれた。


「ええっ、そうよっ!帰ったら文句を言ってやるんだから!!でも、その為には、アンタ達を森から無事に送り出して、アンタから報酬をふんだくってやらないとッ!!母さんには、シガレットを餌にお小遣いをふんだくってやるわっ!!」


 それを、彼女は怒りとして吐き出した。

 更には、その母親への制裁として、オレからの報酬であるシガレットが必要だから、と。

 いや、まさか本気で、そんな理由で命を賭けられているとは思えないけど。


 苦笑を零す。


「…だから、アンタも一緒に逃げるの。ゴーレムだって、もしかしたら、三人で協力すれば倒せるかもしれないもの」


 すると、途端にしおらしくなったシャル。


 彼女のテンションのスイッチは、どこにあるのやら。

 ただ、懐かしい気がする。


 この子と子どもの頃だけがそっくりの同僚兼友人も、何故か意味不明な場面で怒っていた気がする。

 泣きはしなかったけど。


 そんな様子をしゃがみ込んだまま見ていた榊原が、にんまりと笑う。

 いつも以上に、良い笑顔。


「…先生、分かったなら復唱してみてよ?」

「自己満足の見栄っ張りはしません。自殺行為も善処します」

「…まぁ、及第点って事で、」


 先生か、お前は。

 こうして立場が逆転する事になるなんて、今までなら考えもしなかったけど。


「…悪くないかも、な?」


 肩の力を抜いて、少しだけ笑った。


 心配してくれた。

 それが、彼等の一番の感情。


 その心配が心地良いいと、感じるオレはまだまだ教師としては子ども過ぎたのかもしれない。


「………先生、その顔固定しておいた方が良いと思うよ」

「…オレの顔面筋肉を壊死させたいのか?」

「いや、壊死させないと維持できないの?……珍しく、良い笑顔だったのに、」


 あらまぁ、それは貴重なもんだ。

 オレは笑うと、何故か悪人面が加速するらしいからな。


「…ッ(なんて、顔して笑ってんのよ!!馬鹿っ!天然タラシッ!!格好付けの死にたがりの癖に、格好良いとか思いたくないッ!)」

「………?」


 そして、何故かシャルは固まって、口に手を当てて涙目で悶絶していた。

 あれぇ?やっぱり、オレの笑顔はNGだった?


 美少女にこういう反応されると、泣きたくなるよね。


 閑話休題。


 始まりはまたしても、オレの無駄な見栄っ張りだったが、それは恥ずかしい黒歴史ともなり得るので記憶に蓋をしておこう。


 それはともかく、一応この状況をどうにかして纏めなければ。

 むしろ、対策というか作戦が欲しい。


 耳を傾けると、どこかしらでまだガンレムの咆哮と森林破壊真っ最中の轟音も聞こえているが、そこまで近くなってはいない。


 結構、遠くに飛んだのかも。

 だとすれば、少しは時間が稼げるかもしれない。


 その間に、方向性を決めよう。


「さて、どうする?ガンレムを破壊するのか、はたまたこのままシャルの案内で、入り口まで戻るのか」

「ガンレムって…」

「ガ○ダムみたいなゴーレムだから、ガンレム。異議は認めん」

「……意外と元気なのね」

「…緊張感ぶっちり切れてるけどな」


 さっきの命のやり取りが嘘だったみたいに、ね。

 さっきは、走馬灯どころか、三途の川の向こう側まで見えたから。


 まさか、10年前に死んだ師匠の幻を見るなんて、明日は魘されるのかもしれない。


 話は逸れたが、こうして和気藹々と団子になっているおかげで、緊張感がこれっぽっちも無くなってしまった。

 これからまた集中しようとするなら、結構な時間が掛かると思われる。


 一旦、煙草吸ってリフレッシュもしておこう。

 もしかしたら、これが最後の一服になるかもしれないし。


「…報酬を吸うんじゃないわよ」

「シガレットケース、もう一個あるからそっちをあげるよ?」

「なら良いわ」


 シャルは純粋で、チョロいね。

 後、シガレットケースが予備として2個持ってるとか、校舎に戻ったら試作品だけでも数種類が眠ってるって言ったらどういう顔するんだろう。


 さて、話を戻そう。


「現状、この三人の戦力で、どうにかなると思うか?」

「…オレは無理だと思うな。先生が逃げるのがやっとなんでしょ?」

「ああ」

「魔法でフォロー出来ないかしら?あたしは、一応『水』と『風』の適正が強いから、簡単な加護なら出来るわ?」


 と言って、彼女が掌に水の玉を生成。


 あ、もしかして、さっきガンレムが頭から蒸気を上げてたのってシャルが何かしたの?


「うん。水の沸点を最高まで上げて、熱湯にして発射したの」

「うわ、器用なことを…」

「そうでも無いわ?ただし、あんまりゴーレムにはダメージにはならないわよ?アイツ、生意気なことに『魔法無力化付加魔法マジック・キャンセラー・エンチャント』が掛かってるから、」


 という、シャルの魔法の器用な話を聞きつつ、オレは首を傾げた。


 …………ん?

 『魔法無力化付加魔法マジック・キャンセラー・エンチャント』?

 ………どこかで、聞いた言葉だな。


「何、その…マジック・キャンセラーなんちゃら?って」

「『魔法無力化付加魔法マジック・キャンセラー・エンチャント』よ。要は、魔法での攻撃のダメージが一切通らないのよ」 

「面倒だね」


 そうそう、面倒なんだよ。

 遠距離攻撃としては最高峰の魔法攻撃が、ある程度本体から離れた部位にしか通用しないし。

 思い出すのは、早数週間前となったキメラ討伐戦。


 あの時も、固体1頭目がそう言ったアドバンテージを保有していた。


 さて、しかし、これには大きな穴がある。


「…それは、良い事を聞いた」

「えっ?」

「何?…って、先生、その顔怖い、ヤバイ!」


 にやり、と口端を歪めて笑う。

 榊原には、恐れ戦かれ、更には尻餅を付かれてしまったけども、


良いもの(・・・・)があるぞ。榊原、シャル」


 対抗策は決まった。

 もしかしたら、イケるかもしれない。


 反撃開始の狼煙は上げられた。


 オレは日本刀の鞘とは別に、腰に巻いていたポーチに手を触れた。



***



 既に時間は昼を大きく回り、夕暮れも近くなっていた。


 未だに、森の奥は鬱蒼として、魔力によって覆い隠されている。


 転移型空間干渉魔法、通常『迷路メイズ』の掛けられた森。


 ダドルアード王国東部に位置する『クォドラ森林』の更に奥地となるこの森は、まるで人の侵入を拒むかのように相変わらず物々しい雰囲気を漂わせていた。


 その森から、ロープで身体を固定した騎士達が続々と帰還する。

 『迷路メイズ』は、魔力総量5000以下の人間のみ、転移型の空間干渉魔法で転移を繰り返させ、入り口へと勝手に戻してしまうシステムとなっていた。


 彼等の帰還は、かれこれ4度目を数えようとしている。

 時間はそれぞれではあるが、ほとんど数回の転移で戻されてしまっていた。


 奥地まで迷い込んだ騎士団中隊編成の部隊は一つも無い。


「申し訳ありません、団長。ライト部隊、帰還致しました」

「フォトン部隊も、同じく」

「いや、良い。ご苦労だった」


 その騎士団の面々の表情も、疲労もあってか晴れる事は無い。


 そんな彼等を入り口で仁王立ちで待ち構えていた上司こと騎士団団長アビゲイルとて、それは同じ事。


「ウチ等も、駄目だったっす!」

「悪いな、旦那」

「いや、すまない。君達まで、苦労を掛けて」


 騎士団の部隊と同じく、森に入っていたAランク冒険者パーティであるレト達も、通算5回目を数える帰還となった。

 彼等だけ回数が一回多いのは、やはりベテランとしての矜持のなせる業。


「ゴーレムの咆哮がさっきから遠くになってるな」

「…先生、戦ってるのかな?」

「だろうな。随分音は遠いが、移動しているだけにしては騒がしすぎる」

「……ッ(うずうず)」


 生徒達は、逸る気持ちを抑えつつ待機をしている。

 それは、ゲイルや冒険者パーティーから言われたのではなく、むしろ率先して考えた結果としてだった。


 これには、ゲイルも冒険者パーティーも少しばかり驚いた。

 血の気も多く、まだ少年青年の域を脱していない彼等が、言われるまでも無く大人しくしているのだから。

 

 これで、同じく血の気の盛んなビギナー連中であれば、絶対に飛び出していた。

 それは、ゲイルも同じ事を騎士団の面々を思い浮かべて考えていたものの、だいたい感想は同じだった。


 ゲイルもイライラしている。

 何本目になるか分からないシガレットを咥え、煙を吐き出しつつ次の虱潰し(ローラー)作戦に移行するか、それとも一旦休憩を取らせて、夕暮れ前に大規模な一斉突入作戦を敢行しようかと攻めあぐねている。

 そろそろ、彼の堪忍袋の限界も近い。


 だが、ここでゲイルの知らない生徒達の大人しい理由が一つ。

 生徒達が率先して大人しくしているのは、その当の攻めあぐねているゲイルを見習っているからだった。


 彼とて、騎士団長とは言え、銀次にとっては友人だった。

 それを、生徒達も間近で触れ合い、衆知の事実として浸透している。


 そのゲイルが、イライラしながらも暴走する事もなくこうして陣頭指揮を執っている。

 そんな彼の姿を見習い、生徒達は自分達の行動を自省していた。

 間宮ですらも銀次の命令を受けない限りは即実行だったというのに、今はそわそわしながらもこうして大人しくしていたのである。


「…どうするか」


 煙を中空に吐き出しつつ、森を睨み付けるゲイル。

 今ではすっかり癖になってしまったシガレットの噛み癖で、ぎしりと乾いた音を立てながら犬歯がフィルターを潰していた。


「それにしても、凄いっすね」

「…うん?」


 いつの間にかゲイルの隣に来ていたレト。

 先ほど帰還してから、ちょっとした休憩を挟んでいた筈だ。


 レトはゲイルと同じ様に、森を眺めてから一つ溜め息。


「これは確実に戦闘音っすよ。けど、かれこれ数時間も、続いているっす。逃げているだけなんだとしてもゴーレム相手に、ここまで粘ってるのは凄い事っすよ」

「ああ、そうだな」


 彼女の言うとおり、戦闘音は継続している。

 その音は、不思議な事に森の中に入った彼女達には一時だけ聞こえなくなるものの、森の入り口で常に待機しているゲイルや待機している生徒達からしてみれば、常に続いている音だった。


 それしか、銀次の生存確認をする、方法が無い。


 その凄まじいであろう戦闘音だけが頼りの現状に、焦燥感と共に沸々と感じる無力感。


 それを痛感させられたキメラ討伐戦を、思い出す。

 彼は奇しくも、銀次と同じ時間に同じ事を考えていた。


 そして、


「部隊通告!一旦、休憩を取り、装備の確認をせよ!休憩の後、一斉に突入する!」

『はっ!!』


 ゲイルは、そこで判断を下した。


 もう二度と、あの焦燥感や無力感を味わいたくは無かった。


 そして、その為には行動あるのみ、と対処法も知っている。


 一度考えを決めた、ゲイルは振り返る。

 銀次の生徒達である、彼等に向かって。


「コウガミ、ナガソネ、カツキ、マミヤ!君達も、休憩の後の一斉突入に参加してくれ!」

「おうっ!」

「はいっ」

「ああっ」

「ッ(こくこく)」

「なお、パーティー編成は、小隊規模とする。君達はオレと騎士団の者達の編成パーティーに同行してくれ」


 こうして、攻めあぐねていたゲイルが決断は降りた。


 号令を受けた彼等は、途端に破顔一笑。

 焦れに焦れていたのは、彼等も同じ事だった。

 やっと突入許可の降りた生徒達は、それぞれの武器を確認しつつ、配給されたロープで各々の身体を繋いでいく。


 その様子は、餌を与えられた仔犬に近い有様だと、ゲイルは内心で揶揄していた。


「アンタも、ちゃっかり子ども達に好かれているっすね」


 その様子を傍らで見ていたレトが、にんまりと微笑んだ。

 それにゲイルも苦笑を零しつつ、素直に返す。


「…子どもは好きでな」

「そうっすか。………趣味とかじゃないっすよね」

「……趣味ではない」


 しかし、素直に返したにも関わらずレトの返答は若干ズレていた。

 やや、辟易としながらも、ゲイルはその言葉へとやはり真面目に返す。


 からからと笑ったレトは、そのままにんまりとした様子であった。

 たった一言、


「(…趣味だったら、良かったンすけどね)」

「うん?」


 ぼそりと、呟いて。


 聞き取れなかったゲイルが怪訝な顔で、彼女を見下ろす。

 腰をかがめようとしているのは、子どもの扱いに慣れている証左。


 しかし、レトは「なんでもない」と手を振って、にんまりと緩めた表情の裏に本心を隠した。


 彼女レトは今年で、18歳を数える。


 実は、銀次の生徒の一人である伊野田と同じく、若干成長が遅いというか止っている。

 身長は140センチに届くか届かないか。


 しかし、身体は確かに大人になっている上に、心とて成長はしている。

 今は、冒険者として父親のジャクソンに負けないほどの大成をする事を目指しているが、心は立派な女としての生活とて望んでいる。

 女心に気付けないのは、男達のみ。


 銀次も大概、天然の女誑しの癖に鈍感ではあったが、それはゲイルも同じ事。

 似たもの同士、類は友を呼ぶというのを体現している歪ながらも、旧来の友人同士のような二人。


 向けられる羨望と恋慕の眼差しに終ぞ気付かないままなのは、当人達だけだった。


 閑話休題それはさておき

 一旦の休憩を挟んだ夕暮れ時、彼等の作戦は敢行された。


 『クォドラ森林』奥地の森に、久しく入っていなかった人間達が中隊規模で終結していた。


 それは、10年ぶり。

 奇しくもその10年の月日を挟んで侵攻したのは、共に王国騎士団『白雷ライトニング騎士団』団長にして、騎士団長の地位を守り続けている親子。

 父・ラングスタ・ウィンチェスターと、息子であるアビゲイル・ウィンチェスターだった。


 銀次曰く、『リベンジ』。

 10年越しのウィンチェスター親子因縁の大仕事が始まった。



***

ガンレムとアサシン・ティーチャーとの身長差はおおよそ3メートル弱。

その描写がまったく活かしきれていないのは、きっとアサシン・ティーチャーの身体能力を欲張りすぎた結果ですね、知ってます。


申し訳ありません。

調子乗りすぎました。


そして、戦闘描写に偏り過ぎて、折角の新キャラであるシャルちゃんが空気扱い。

どうしよう、これ。

フラグ回収が、どこまで出来るかとっても不安です。


結局、怒られるアサシン・ティーチャー。

命知らずはそうでも、無謀と無茶は駄目でしょ。


今後、榊原くんはもしかしたらお説教担当になる可能性がありますけどね。

先生の為に、頑張ってもらいましょう。


誤字脱字乱文等失礼致します。

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