35時間目 「冬休み~新年の行事と国王様との定例会~」
2015年10月19日初投稿。
名前の通り、冬休み。
新章に突入するとか豪語しておきながら、一度休憩を挟んでいきます。
35話目です。
生徒達をこの世界に馴染ませる為に、色々と苦労しているアサシン・ティーチャーの奮闘とも言います。
***
討伐隊の帰還から、1週間が経過した。
帰って来てからは、今までの怒涛の1ヶ月がなんだったんだと思える程の穏やかな日々を過ごしている。
オレも怪我とか色々あったし、疲労もあったので生徒達に勧められるままゆったりと過ごした。
じゃないと、オリビアにも泣かれるし。
勿論、オレと同行した間宮もお休み。
コイツも意外とタフだったが、やはり年齢は15歳。
校舎に着くなりなんなり、気が抜けたのかソファーにごろんとなって泥のように眠っていた。
部屋に運んでやったら、真っ赤な顔で縮こまっていた。
可愛いものだ。
ついでに、ゲイルにも休みを言いつけて、合流は1週間後となっている。
少し渋ってはいたものの、オレと間宮が戻った事もあって護衛の連中にも休暇を取らせた。
正月ぐらい実家でゆっくりして来いと当たり前の事を言ったら、ゲイルを含めて騎士達から男泣きされた。
ああ、またしても、オレへの好意のメーターが振り切れつつある。
こういう行動が良くないのかなぁ。
でも、懇切丁寧な日本人気質だから、仕方ないよな。
まあ、それは置いといて。
今回休んでいるのは、オレだけじゃない。
生徒達にも、1週間とは言え休暇を取らせた。
冬休みだ。
冬期休暇で学校も休み。
ご褒美の名目であった魔法授業。
楽しみにしていた生徒は勿論喜んでくれたが、まずは休めと生徒達に怒られてしまった。
やっぱり、オリビアに泣かれた。
そして、間宮にも泣かれた。
今回は、思った以上に生徒達は頑張ってくれた。
特に徳川は、わずか1ヶ月で、日常会話だけとはいえ英語を習得した。
そして、オリビアとのデートをご希望だったからな。
なので、追加のご褒美が、この冬休みだった訳だ。
まぁ、別の理由もあったんだけどな。
実にしょっぱい理由だ。
別の機会に話すことにする。
オレが討伐隊に参加している最中に新年を迎えてしまったのもあって、これからの1年を恙無く過ごす為にも正月ならではのお休みを設ける事にしたのだ。
まず、生徒達にはお年玉。
一人1千Dmを用意。
日本円にすると1万前後になるが、この世界での物流価格と比較した結果この金額に収まった。
オレは元々捨て子だったし、まだ23歳だ。
子どももいなければ、孫もいない。
親族だっていないのだから、普通の子どもに渡す落とし玉の金額が良く分からなかった。
生徒達の一部のように常識を知っている奴等には揃って『ブルジョワ…』と呟かれてしまった。
うむ。
ちょっとあげ過ぎた?
閑話休題。
それから、もう一つが年越し蕎麦ならぬ、年越しうどん。
うどんは小麦粉と塩、水が原料だ。
労力さえあればいくらでも作ることが出来る、生粋の日本食である。
近くに海があるのが幸いして、出汁を取るのも苦労はしない。
石鹸制作の為に商人に昆布の受注を頼んでいたのもあって、すぐに手に入れる事が出来た。
醤油が無いのが、本気で残念だ。
発酵食品に関しては、食中毒が怖くてまだ手が出せていないので、若干風味が違うが塩で味を調えた。
生徒達にとっては、久しぶりの日本食。
涙ながらに食ってくれた。
オレも食ったけど、意外と美味しいもんだった。
若干、泣きそうになったけど。
これ、もしかしたら、新しい技術開発で使えるかもしれないな。
分量をメモして、今度ゲイルとか商人に聞いてみる事にした。
そして、やっぱりオリビアと間宮に休めと懇願されたけど、何もしないで部屋に篭もるのは流石に無理だ。
オレ自身の鍛錬も間宮の修練もあるし。
さすがに、そっちばかりは休みに出来ない。
生徒達にも、トレーニングだけは休み無く続けさせているからな。
そして、次に正月恒例の初詣。
とは言っても、流石にこの世界に寺も神社も無い。
おみくじも破魔矢の配布も、ましてやお守りだって売ってはいないけど。
朝早くのミサに参加させてもらって、参拝の代わりとした。
ついでに、生徒総出で教会の清掃を手伝った。
これも、一応『聖王教会』とは上手い事やってるよという、世間へのアピールになるんだそうだ。
ついでに、オリビアの実家帰りだ。
聖堂には相変わらず、可愛らしい女神様達がひしめいていた。
癒される光景である。
オリビアが頬を膨らませて、怒っていたのも気にしない。
別に女神様に色目を使っていたわけじゃないし。
のほほん、と微笑ましい光景を見ていただけだし。
そして、最近オレの魔力総量が更に上がっていた事もあってか、彼女達と対話も出来るようになっていた。
「く、悔しくなんか、ありませんからね…ッ悔しくなんか…!」
「…女神様達が、いつも聖堂の掃除をありがとうだって」
「ああ、ギンジ様!このまま、通訳で住み込みをしていただけませんか…!!」
「断る。住み込まれたら困ると言ったのは、お前だ」
などと言う、久しぶりの登場でもある『聖王教会』神官のイーサン・メイディエラの五体投地などが見れた。
五体投地って、マジで床にひれ伏すんだな。
お前がオレに対して、変態のレッテルを貼ったことと、住み込みされたら迷惑と言ったのは忘れない。
ただ、女神様達は意外と、この神官を悪くは思っていないらしい。
女神様達にももっと話がしたいからと通訳をお願いされたけど、住み込みは勘弁して欲しい。
ああ、そういえば。
「久しぶり、ミア。体調はどうだ?」
「ギンジ様!お久しぶりでございます!この度は、魔物の討伐作戦お疲れ様でした」
「ああ、結構広まってるみたいだな…」
住み込みと言えば、彼女。
ミア・アンソニア。
12歳の、蜂蜜色の髪をした少女で、彼女もボミット病だった。
今は、教会に住み込みで働きながら、病気の治療を行っている。
試験的な実験でもあったから、表沙汰に出来なかったのだ。
「勿論です!ギンジ様の素晴らしい功績の話ですから、積極的に広めさせていただきます」
「いや、広めなくて良いから。むしろ、広める事じゃないし…」
「謙虚なところもまた、ギンジ様の素晴らしいところです。ミアは感激です…!」
ただ、この子も好意のメーターが常時振り切れている。
目が恋する乙女を通り越して、いっそ怖いんだけど。
間宮とかに似てる。
やめてね、忠誠誓ったとか。
間宮ですら持て余してるし、オリビアだっているし。
しかもこれ以上、オレの周りに女の子が増えようものなら、また変な噂が立ちかねないから。
ロリコンとかね。
まぁ、話が逸れた。
それでも、彼女は恙無く暮らしている。
発症から、既に3ヶ月を経過した今でも、こうして元気一杯だ。
最初は殺してくれと泣き叫んでいたが、治療が進むにつれて明るい笑顔を見せるようになってくれた。
他人事ではなかったもの、あの時は。
オレも、もしオリビアがいなければ、ボミット病を早くに発症して死んでいた。
病床で生徒達に殺してくれと泣き叫んでいたのかもしれない。
つくづく、オリビアには頭が上がらない。
ついでに、この魔法具の発見が無かったら、ミアもこうして教会の中とはいえ自由に過ごせなかっただろう。
この魔法具を開発した人には、お礼を言いたいが戦時中の遺物なので誰が作ったかは分からない。
残念だ。
最後に、成人式。
初詣と一緒に行った。
メンバーは榊原と徳川と、ついでに永曽根である。
コイツ等は、19歳と20歳。
現代で言うなら、既に成人を迎えようとしている。
永曽根は、一時期とんでもなく荒れていた時期があったので、成人式自体を行っていないから1年遅れで行う事にした。
この時代の成人の儀とやらで、これまた教会で行う。
騎士風のものらしいが、オレも初めて見た。
イーサンが前面的に協力してくれたのもあるが、なんというか感慨深いものだ。
最初の頃はクソ餓鬼どもとしか思っていなかった2人が、1年越しに見ると自棄に大人びて見えるようになった。
もう一人の永曽根は言わずもがなだったが、改めて成人を迎えて思うところがあったのだろう。
珍しく涙を流して喜んでくれていた。
そして、榊原と徳川が貰い泣きして、更に生徒達の一部も貰い泣き。
コイツ等、最近泣いてばっかりだな。
実は、オレもだけど。
そんなこんなで、新年の行事は遣り終えたかな。
お餅やらなにやらは出来なかったけど、しばらくはうどんで新年を乗り切ろうか。
都合、3日は余ったので、買い物にも出かけた。
女子組は主にファッション雑貨や、小物。
男子組は実用的な小物や、何故かファンタジー要素の溢れる魔石や道具を買っていた。
こういう所は歳相応なのかね。
久しぶりに、穏やかで充実した時間だったと思う。
それもこれも、オレも生徒達も頑張った結果だと思いたい。
***
都合2日となった、休暇の中。
時刻は現在、昼を少し回った13時丁度。
オレは、間宮を引き連れて城へとやって来ていた。
護衛は騎士達が戻って来たので、素直にお願いしておいた。
「お待たせしてしまって、申し訳ございませぬ」
「いや、別に。公務の最中に呼び出して悪かったよ…」
来賓室のような場所で待っていたオレ達。
そこにダドルアード王国国王のウィリアムス・ノア・インディンガスが現れる。
面談と言うか、定例報告会をお願いしていたのだ。
今日は、執務終わりなのか、前の時と同じ様にマントも羽織らずラフな格好だ。
ゲイルの言うとおり、最近は活き活きとしているらしい。
以前会った時以上に、目も穏やかになり、目尻には笑い皺が増えている気がする。
聞いた話では、側室との間に子どもも出来たとの事。
おめでとうございます。
お妃様は見た事無いけど、城に飾ってあった肖像画でなんとなく察している。
喪服で描かれていたからな。
亡くなっているのだろう。
とまぁ、オレの内心はさておいて。
「ご報告以来ですな。お久しぶりです」
「ああ、休暇を貰っておいた。勝手にゲイルも休ませたが、連絡が遅くなって悪かったな」
「いいえ。ウィンチェスターの勤務に関しては、ギンジ・クロガネ様と本人に任せておりますので…」
世間話と一緒に、ここ数日の動きを報告しておく。
一応、国政に関わらないとは言っても、部下である事には変わりないからな。
定例報告会は必ず、行うようにしている。
オレの前に出されていたハーブ茶の芳しい香りに、国王も同じものを給仕に頼んでいた。
休暇中だったゲイルも、報告の為にこの部屋に同席している。
約5日ぶりだ。
今日は飲みに行く約束もしておいた。
コイツはコイツででオレの真後ろに待機している。
そして、その隣には間宮。
付いて来なくても良いと言ったのに付いて来て、座れと言ったんだが聞かなかったんだ。
もう、この子は諦める。
「此度は、討伐隊の参加、並びに討伐成功を心より感謝致します」
「ジョセフにはでかい事を言ったが、実際オレは何もしてないさ。報告した通り、死にぞこないのキメラに連れ去られて、討伐隊の騎士達にも手間を掛けさせちまったしな…」
「いいえ。此度もまた、ウィンチェスターが御迷惑をお掛けしたようで、」
後ろでゲイルが、視線を逸らした。
なんか、ゲイルの親父さんみたいになってるけど、国王様。
ウィリアムス国王は、そのまま一端言葉を区切る。
丁度良く、給仕がハーブ茶を持って来たからだ。
また部屋の中に、芳しい香りが漂う。
ただ、間宮はこのハーブ茶の香りが苦手なようだ。
若干、眉根が寄って口呼吸を心がけている。
この香りの良さを楽しめないとは、勿体無い奴め。
「さて、話があるとの事でしたが、報告以外の事と受け取っても宜しいでしょうか?」
「ああ…」
世間話やどうでも良い報告、ゲイルの失敗談に関しては程ほどに。
潔く、本題に入る。
さて、まずは何から話すべきだろうか。
「まずは、オレの魔法の属性についてなんだが、」
「既にウィンチェスターより、聞き及んでおります」
「話が早くて助かる。…これまで以上に、国政には参加出来なくなると思う」
判明したオレの属性は『闇』。
別名『魔族魔法』とも呼ばれる、魔族にしか発現しない属性だった。
使い方や使いどころに関しては、まだ考え中だ。
ただ、民衆に知られると少しマズイ。
いくら『予言の騎士』とは言え、忌避されている魔法の属性を持っているとなれば、その権威だって失墜するだろう。
ついでに、オレの最近の悩みも暴露。
「貴族達からの、学校への入学希望をどうにかしてくれないか?」
「……面目次第もございません」
最近、やたらめったらと五月蝿かったのだ。
いや、まぁ。
今回だけじゃなかった。
以前から、こうした貴族からの入学希望は度々あったのだ。
しかし、今回の討伐隊の遠征で、オレの功績も名声と一緒に広まってしまった。
そこに、貴族達がこぞって駆け込んできたのだ。
おかげで、爆発的に入学希望者が後を絶たなくなってしまった。
学校に子息、子女を入学させて欲しいと。
子息よりも何よりも多かったのは、子女だったので十中八九縁談目的だ。
オレも含めて、生徒達への縁談を組みたいのだろう。
学校を冬休みにした理由は、実はこんなしょっぱい理由もあった。
「あわよくば、オレへと取り入ろうって算段が明け透け過ぎて、困ってる」
「…通達を回しましょう。ただ、あまり大袈裟にしてしまうと、反発があるやもしれませぬが…」
「今のところ、入学希望を受け付けておりませんって叩き付けて置け」
「了承しました。今年の騎士団の入団希望が少ないと思えば、このような理由だったとはお恥ずかしい…」
「…それもそれで、王国騎士団としてどうなの?」
本当に、五月蝿いから、そろそろ黙らせて。
じゃないと、学校が後1週間ぐらい、休みになっちゃいそうだから。
新規入学は受け入れてらんないの。
教師がオレ一人しかいないんだから、これ以上増えたら過労死するわ。
という、報告もあったりなんだり。
「次に、ボミット病に関してだが…」
「目処が付きそうですかな?」
「ああ。今、薬の原料を、調達して貰ってる」
オレと永曽根、そして現段階ではミアが発症しているボミット病。
通称『魔力沈殿型症候群』の特効薬である薬『インヒ薬』の入手を、森でオレを助けてくれた赤鬼さんこと魔族/女蛮勇族のローガンと約束している。
代わりと言ってはなんだが、彼女の町への入国証をこっちで手配した。
既に、国王には入国証の発行はお願いしてある。
その時に、薬の目処が立ちそうだと、触りだけは伝えてあったからな。
「これで、オルフェウスも文句はねぇだろう。今後どうなるかにしても、移住は考えていないしな…」
「ありがたいお言葉ですな。何から何まで、ギンジ・クロガネ様に任せきりになってしまって、申し訳ございませぬ」
「その代わり、保障を頼んでんだ。…今のところ、文句もねぇさ」
ここまでは、いつも通りの定例報告だ。
ここから、いつもとは違ってくる。
この話は、間宮にもオリビアにもゲイルにも話していない。
初めて、自分から、この問題に触れることにした。
「オレの体の事で、一つ話しておきたいことがある」
それは、あの洞窟の中で、発覚した事だ。
ローガンですら、異常な光景に絶句していた。
「傷の完治が異常に早くなってる。…あの時の怪我も、既に一つも残っていない」
「……なんだと?」
「(………)」
「…どういう、事ですかな?」
それぞれに、反応した4人。
間宮が唇を噛んで、俯いた。
ゲイルの声と国王の声は、固かった。
そう言って、左腕の手首を指し示す。
そこには、オレが巻いた包帯があった。
1週間前に、一度傷を付けている。
3日前にも、一度傷を付けた。
そして、今日の朝にも一度、傷を付けた。
その包帯を全て、取り去ってみる。
「1週間前が、このライン。3日前が、このライン。今日の朝のものが、このラインだ」
傷は、深く付けたつもりだった。
間宮が血の臭いに気付いて、部屋の中に飛び込んでくるぐらいには出血もした筈だ。
その時に、実験だと言って丸め込んでおいたが、今ので実験の意味に気付いたのだろう。
「結果はご覧の通り」
昔の古傷ばかりの麻痺した役立たずの左腕には、傷は無い。
油性ペンで書いた日付とラインが残っているだけだ。
今日の朝のものまで、消えている。
今は昼時を回ったとはいえ、約7時間程度。
流石に、この治癒速度は異常だろう。
「いつからだ…」
「ローガンに助けられてから気付いた。…ただし、彼女は何もしていない筈だ。オレの傷が治ったことを受けて、彼女も驚いていたからな」
「………心当たりは、ございますか?」
「何も無い。ただ……」
そう言って、オレの腹を指差してみる。
「ここに、精霊が巣食っているらしい」
ローガンの言葉の通り。
そう、巣食っている。
加護ではない。
巣食っているのだ。
最近、知覚し始めた。
腹の奥底で、何かが息づいている感覚もしている。
魔力を関知するようになってから、やはり違和感を感じ始めていた。
オレ以外の脈動を感じる為、少々不快だが。
「彼女の言葉を借りるなら闇の精霊が巣食っているそうだ。だから、オレの魔法の属性も『闇』で、他の属性が一切使えないんだと考えている」
使えないのではなく、阻害されている。
ローガンも、闇の精霊は嫉妬深いと言っていた。
厄介な精霊に好かれたものだ。
その実、厄介とも言い切れないのも本心だが。
そして、これも一つ、本題だ。
「オレはこれも、ボミット病の発症に関係があると思っている」
「……闇の精霊が、関係あると?」
「………ッ!」
「…オレは、そう考えている」
オレの真後ろで、ゲイルが息を詰めた。
コイツも魔法の事は、色々と知識が豊富だ。
先に相談でもしておけば良かっただろうか。
いや、コイツ。
また何か、隠しているようだ。
ちょっと、放って置こう。
後で、全部穿り返してやる。
と、話を回収する。
ボミット病は、魔法が扱えなくなる。
どんなに魔力があっても、コントロールが乱されてしまうのだ。
魔法が使えないのでは無く、制限されている。
もしくは何かしらの条件を満たしていないから、使えないのではないか。
巣食っている精霊が、何かしら関係しているのでは無いか。
今までボミット病の治療法が確立出来なかった件も含めて、元々人間には発現しずらい属性の人間だった事も可能性としては考えられる。
ついでに気になるのは、精霊の加護を受けられないという事象。
ローガンも言っていたし、オリビアからもある種の言質を取った。
闇の精霊は気難しい。
そして、嫉妬深い。
他の精霊を寄せ付けるなんて、持っての外。
元々、精霊の加護を受けていない人間に発症していた病気なのだ。
精霊はいるのに、魔法が使えない。
当たり前だ。
闇の精霊の発現を絡めないと、魔法が使えないのだから。
だからこそ、ボミット病の発症率も高まる上、死亡率も高い。
今後の対策を探るにしてもなんにても、やらなきゃいけない事がたくさんありそうだ。
薬が手に入るからといって、そこでお終いなんて話には出来ない。
だからこそ、
「調べたい事がある。『加護の水晶』を貸してくれ」
まずは、魔法の属性を調べる。
データにして、この可能性を少しでも事実に近づけたい。
それを調べるには、生徒達の協力も必要だ。
ミアの事も調べさせて貰いたい。
だからこそ、『加護の水晶』の貸し出しを申し出た。
「生徒達の属性を調べる。特に永曽根はこっちで調べたい」
「ああ、冒険者ギルドは人目が多すぎるからな」
「分かりました。すぐに手配致しましょう」
「頼む。明後日までは学校が休みだから、それ以降に頼みたいんだが、」
「心得ました」
これで、今回の定例報告は終了だ。
オレも言いたいことは言ったし、隠し事も無い。
あっちがどうかは知らないけどな。
今回もまた、ゲイルが隠し事発覚したからな。
まぁ、オレの事を考えての秘匿だったから、怒らないけど。
今日は、たんまり飲んで忘れよう。
なんか、色々考える事が多すぎて、最近頭が痛いし。
ついでに、コイツからは色々と聞き出してやる。
根掘り葉掘り、恥ずかしい過去も暴きだしてやろう。
そうすりゃ、今後隠し事をする事もなくなるだろうしな。
オレのカツラの件だって、コイツはもう知っているんだ。
ああ、そうだよ。
八つ当たりだよ。
とりあえず、どっちが先に潰れるか勝負をしよう。
オレはザルだかワクだか分からんから、負ける気はしねぇし。
こうして、国王との定例報告は終了した。
***
ついでに言うと、ゲイルは早々に潰れた。
最近飲んでなかった所為もあってか、潰れるスピードも速かった。
ほろ酔い通り越して、2時間で泥酔だ。
コイツの暴露話は結構、面白かったよ。
際どいところもあったけど。
後、やっぱり童貞だって認めてたけど。
仕方ないので、校舎に泊めてやった。
この日もオレはソファーで就寝したよ。
だって、徳川の部屋、まだ窓の修繕が来てないもん。
新年でお休みだった。
げしょ。
***
問題は山積みです。
そろそろ、ゲイル氏が彼の従者のようになりつつある。
ティーチャーは友人として対応しているつもりです。
お酒に潰されるのもはじめての体験だったようで、解毒魔法を掛けて次の日には何故かけろっとした顔で「初体験だ…」と、生徒達に色々な物議をかもし出されます。
人外発覚のアサシン・ティーチャーはある意味、豪快に調べます。
自分で自分を傷付けるのが、果たして正解なのかは不明として。
間宮の説得は簡単だったと思います。
「実験だ」
「?(こてり)」
「傷の再生時間を見たい」
「!」
「オレの為になる事なんだ。分かってくれるな?」
「!(こくこく)」
なんて、番犬?
リストカットでは無いですよ。
ピックアップデータ。
ローガンディア・ハルバート。
300歳以上。
身長189センチ(←Σッ!?)、体重58キロ。
赤い長髪に、赤い眼。
一見すると男にしか見えない女性。
実は筋肉ムキムキな上で、巨乳らしい。
銀次いわく、D寄りのE。
バスト97センチ、ウエスト71センチ、ヒップ87センチ。
太っている訳ではなく、筋肉の所為です。
種族は魔族である女蛮勇族。
使っている獲物は十字を模した尖部を持った身の丈を越えるハルバート。
長さは約2メートル強。
魔法に関しては種族柄で『火属性』が得意。
別属性を使えないわけじゃないけど、精霊との対話を苦手としているので使えないのにも等しい。
苗字と武器が一緒な理由は、女蛮勇族の特徴らしい。
生まれた家のそれぞれの武器の名前で変わってくる。
ロングソードとかランスとかメイスなんて名前の苗字もあるらしい。
彼女はハルバートの家に生まれたので、苗字もハルバート。
地味に姉妹や多いらしい。
女蛮勇族の名前と等しく、種族は女だけ。
自然と生まれるのが女だけになるらしい。
ただし、男がたまに産まれる事もあるけど、扱いは普通より下という程度。
捨てたりもしないし、戦士としても育てられる。
ただし、子供の頃は女の子として育てる風習があるらしい。
男の娘が自然と発生しているようだ。
戦士になるには、種族の長に認められる事が必要。
その際に一族に代々伝わる飾りや家宝の武器、そして『インヒ薬』を渡される。
その後、強制的に旅に出され、50年の月日を目処に帰ってくる事を許される。
例外として子どもが出来た場合は、速やかに戻ってくることが義務付けられている。
女蛮勇族は産まれる子どもを重んじる種族らしい。
子どもを生んだ戦士は、その後戦士を続行するか村に戻って子育てに専念するかを自分で決めることが出来る。
ちなみに、彼女は…。
銀次に対して、何事も寛大になりつつある女性。
彼への評価は、最初は良い女、次に可愛い男、最後に雄々しい男。
最後には愛すべき馬鹿となる。(良い意味でね(笑))
好みのタイプだった事も災いしました。
彼女が好き過ぎて、作者が辛い!!
ピックアップデータ19回目は、ローガンさん。
ゲイルも好きだけど、ローガンも好きです。
急いで書き上げてしまうのも、そういう理由です。
誤字脱字乱文等失礼致します。




