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異世界クラスのアサシン・クリード~ただし、引退しました~  作者: 瑠璃色唐辛子
異世界クラス、旧校舎探索編
13/179

10時間目 「道徳~住居清掃は、結局他人任せには出来ない~」

2015年9月4日初投稿。


アビゲイル氏が当初考えていたキャラクターよりも熱血系に変貌。

プロットの悪意を感じます。

ただし、そんなあなたも大好きです。


10話目です。


(改稿しました)

***



 最初は、半信半疑であった。


 『聖王教会』の崇める女神様の石板の予言に記された、『予言の騎士』と『教えを受けた子等』。


 それが、どこでも無い、我がダドルアード王国に舞い降りたと聞いた時は、小躍りしてしまいそうは喜んだ。


 待ちに待った終焉への終止符。

 迫りくる終焉を唯一、阻止出来るだろう救世主達。


 私が騎士団長でありながら、視察や魔物の生態調査の名目で飛びまわっていたのは他でもなく、他国に『予言の騎士』や『その教えを受けた子等』が舞い降りた情報を探していたからだ。

 他国に身を置いているのであれば、どれだけの金貨や宝石を積んででも、我が国に引き入れなければならないとの王命もあった。

 そうすれば、貿易に頼り切っている他国との折衝もやり易くなり、あわよくば交渉の材料としても、我が国を優位に立たせることが出来る。


 しかし、どれだけ遠出をしたとしても、出てくるのは曖昧な情報ばかり。

 東国のリンディーバウム、メルンボルン、シャーベリン。

 西国のマグタの街、最西端のランス・ディーンドゥ。

 マグタの街では、突如として現れ、武力を持って代頭し始めていた黒いコートの集団の話を聞いた。

 頬に大きな刀傷のある男が筆頭としていると聞き、それがマグタの街の自治をしている形ばかりの王族へと召し抱えられたと聞いた時は、背筋がひやりとしたものだ。

 しかし、マグタの王宮にも出向いてみたが、それが結局はならず者の集団だっただけ、と酷く落胆させられたりもした。


 そして、何の収穫も無いまま、定期報告の為に王国へ戻った時、今回の『予言の騎士』と『教えを受けた子等』の報告が上がったのだ。


 正直、あれだけ探し回ったにも関わらず、いざ帰ってみれば既に召喚されていたと聞いて、肩すかしを食らったようなものだった。

 騎士団ともども、やるせない気持ちにはなったが、それはそれだ。

 我が王国に、『予言の騎士』と『教えを受けた子等』が舞い降りた事実に、素直に喜ぼうと思っていた。


 その矢先である。


 城内で、噂を耳にした。

 召喚された『予言の騎士』の噂。

 流言とも言える、俗物と悪意を懲り固めて出来たような、見下げ果てた者だと言う、噂だった。


 詳しく話を聞く為に城内を回ってみたが、どれもこれも真偽は定かでは無い。

 だが、『国王に不敬を働いたならず者』や『国王や司祭からの要請を断った背教者』などという、悪辣な噂ばかりが話に上る。


 更には、『教えを受けた子等の、見目麗しい少女を囲い、肉体関係を持っている』だの。

 『年端もいかぬ小さな少女を含めた女子達を閨、もしくは浴場に引き摺り込んだ』だの。

 『奴隷として買い上げた男子達を、生徒と豪語している』だの。

 挙句の果てには、『騎士団に保護されたのを良いことに、捕縛や拷問の事実無根な嘘をでっち上げて、金品や謝礼を国王から巻き上げた』だのと、出るわ出るわ悪徳の数々。


 拍子抜けの次は、落胆しか感じられなかった。

 そんな俗物のような男がこの国に舞い降りたばかりか、『予言の騎士』を名乗っている。

 それだけでも、腸が煮えくり返る思いだった。

 更には、とある騎士達を『決闘と称し、云われの無い罪で処刑した』と聞いた時は、既に怒りは頂点に達していた。


 しかし、その直後に国王より『予言の騎士』と『その教えを受けた子等』の護衛を仰せつかった。

 正直、受けたくはないと思っていたが、その護衛の裏に隠された(・・・・・・)名目を含むと言われれば、否やは言えず。


 そうして、彼等が来るであろう住居へと先回りをし、待ちかまえていた。


 しかし、最初に『予言の騎士』である青年、ギンジ・クロガネ殿を見た時には、驚いた。

 玄関の透かしや窓越しではあったが、その美しさに思わず見惚れてしまったものだ。


 輝かんばかりの黒髪と白肌は、眼を見張るものがあった。

 陶磁かと見間違う程の肌に、海よりも濃い群青の瞳。

 精巧に作られた人形のように最適な位置に配置された目鼻立ちに、筋の通った鼻梁。

 少し小さめの薄い唇は、血色の浮いただけの淡い桃色だったが、それがまた整った顔立ちを引き立てる。


 ここまで美しい女性は、見た事は無いと断言出来た。

 女性との付き合いが希薄だった事は衆知の事実ではあったが、見目の整った女性を見る機会が多かったからこそ、断言出来た。


 勝手に男だと勘違いしていた事に驚く。

 その為に、ついつい気配を消す動作を疎かにしてしまった。

 そして、それをギンジ殿に悟られたと察知した時、相当の手練であると感嘆したものだ。


 しかし、その背後には噂通りに、見目の整った少女達がいた。

 金色の髪の自棄に肉厚的な少女達に、黒髪の幼い少女。

 肩にまでこれまた黒髪の幼い少女をひっ付けていた姿を見て、噂は本当だったと考えた途端、浮足立っていた思考は冷えた。 


 そうして、会い見えた。


 彼女、もとい彼は、自身を知り合いにそっくりだと言っていた。

 しかし、その語り口は、交渉での常套句。

 すぐに、自身へと取り入ろうとしているのだと勘付き、やはり俗物かと思考が冷える速度は加速する。


 無表情である以外は、どこか軽薄そうに見えた。

 女子達に向かい合い、頭を撫で回した時など、女性の命である髪に無断で触れるとは何事かと、怒りのあまり殺気を滲ませてしまった。

 気付いているのかいないのか、曖昧な態度も腹立たしい。

 ついでに、騎士達へ礼も取らぬ不遜な態度に、私に対する物怖じの無い口調も苛立った。


 オリビア様がいなければ、その場で王命すらも忘れて五寸刻みに捌いていた可能性もある。


 女神様の威を借る、ふてぶてしい狸。

 当初の印象は、段々と噂通りの俗物であると、塗り固められていった。

 だからこそ、オリビア様がいない間に、この男の化けの皮を剥がさねばならない。

 今ならば、まだ間に合うのだ、と。

 女神様までその毒牙に掛ける訳には行かぬ、と自分に言い聞かせて、彼が一人になる瞬間を待った。

 しかし、彼は呆気なく、一人になった。

 そうして、再度、私と向き合った。


 驚いた。

 彼は、逃げなかった。

 俗物だと卑下していた彼は、私との話し合いにも呆気なく応じ、そうして騎士団の面々を控えさせた後も、逃げようとはしなかった。

 再三の驚きに、思わず動揺してしまう。

 馬鹿なのか?とも思ったが、眼には純粋で理知的な光があった。

 馬鹿では無い。

 策士なのだ、と分かった。


 そして、彼から、すべての話を聞き出そうとした。


 しかし、それ等は全てが、誤りだった。

 悪辣の限りに塗り固められていたのは、真偽すらもまともに分からぬ噂ばかりだった。


 『カナビスの草(※マリファナ)』を吸い始めた時には、再三の落胆を味わったが、それも後に違う事が判明した。

 可笑しくなることも、挙動が不審になる事もなかったからだ。


 彼から直接聞いた内容。

 それは、その実、突拍子も無いものばかりだった。


 しかし、語るにつれて、彼の口調は荒く、そして稚拙ながらも感情を剥きだしにしていた。

 涙を浮かべていた。


 その時、私は何故ここまで疑心暗鬼となっているのか理解出来た。


 彼の本心が、私には読めなかったからだ。


 文字通り、最初に眼を合わせたその瞬間から、彼はまるで心の中に壁を持っているかのように感情が読み取れなかった。

 心を閉ざしているといえば聞こえは良いかもしれなかったが、その実心の壁は拒絶だ。

 それを、私も無意識のうちに感じ取っていたのだろう。


 だが、そんなギンジ殿の涙を見た瞬間だった。

 その瞳の奥に隠されていた感情が、まざまざと私に叩き付けられた。

 困惑、焦り。

 憤りに、不安。

 更には、悲痛な感情が一番強かった。


 それなのに、彼は気丈にも、生徒達の前では晒すまいと、今まで奮起していた。

 生徒達にも、オレ達にも、涙を隠した。

 そして、生徒達の事を一番に考えて、


『…オレだけならまだ良い。だが、生徒達は貶してくれるな…』


 そう言って、彼は背中で語っていた。

 哀愁に満ちた背中には、無情な程の痛々しい血の痕が転々と残っていた。


 苦労もしただろう、痛みも感じただろう。

 それなのに、彼はその背を曲げることなく、そこに立っていた。


 紛れも無い、一人の男として生徒達を守ろうとしていた。


 元は、軍属に従事していたというギンジ・クロガネ殿。

 確かに、その立ち居振る舞いは若さの割には、しっかりとしたものであった。

 聞けば、23歳だという。

 23歳でここまでしっかりしている者は、私でも騎士団でも見た事は無い。

 実際、私も25歳になるまでは遊び呆けていたものだ。


 だというのに、彼は自分の命のみならず、生徒達の命まで背負っていた。


 いつ死ぬともしれぬ身体を抱え、それでも尚彼はその教職へ従事する。

 生徒達は皆、俗世より弾かれてしまった哀れな迷い子達。

 それを受け入れた組織機関とも凄いものだが、更に凄いのはその生徒達を思い、この世界に来てからも守り続けようと奮起したギンジ殿に他ならない。


 天啓にも思える、その背中。

 自身よりも小さな背中ではあったが、強く、逞しく、これほどまでに大きな背中は見た事が無かった。

 それと同時に、その背中は今にも折れそうで、酷く儚くも見えた。


『…騎士団長、…オレ…すぐにでも戻って、あの方を扱き下ろした奴等を…!』


 悔し涙すら浮かべた、マイケル。

 彼は、この部隊でも歳若く、私を一番に崇拝している男だった。

 だが、私の真意を良く理解している。


 しかし、


『良い。私とて、同じ気持ちだ。

 彼に弓引いた騎士団の連中とて、市中を引き回して四足を馬に引かせてやりたいと考えてはいる。

 だが、ギンジ殿が、それをお許しになられているのだ。

 私達が、余計な口出しをするべきでは無い』


 『聖神』の女神、オリビア様の言うとおりであった。

 アヴァ・インディンガス卿や、オリバンダー卿の言うとおりであった。


 彼女達はとっくの昔に、私よりも彼の真意を理解していた。


 だというのに、私はその言葉にすら耳を傾けられぬ程、眼を曇らせてしまっていた。

 何が、真意を見定める為だ。

 最初から、私の眼は曇っていた。

 心無い野次や噂ばかりに惑わされ、実際の彼の姿すら見ていなかった。


 ならば、


『…主等は、分隊を二つに分けよ。

 片方は、ギンジ殿を始めとした護衛に付く。残りは城の仕事に従事せよ』


 我等は誠心誠意、彼の意向に従うまで。

 そして、罰すらも与えられぬ事を罰と考え、贖罪の為に身を粉にしても彼の為に働こう。


『このアビゲイル・ウィンチェスターの名において命ずる。

 不届き者には、罰を。一ヶ月の間、我等は休息を禁ずる!これも罰だ!良いな!!』

『ハッ!』

『我等はこれより、ギンジ・クロガネ様の傘下に加わる!

 ゆめゆめ、ギンジ殿ひいては生徒様方への無礼を働かぬよう心得よ!』

『ハッ!』


 高らかに宣言した我等の真髄。

 この命を、彼等の命運の為に使う事こそ本望。


 身を粉にして働く所存を、我等一同が宣言した瞬間でもあった。



***



 これ、本当に親衛隊が増えたとかじゃないよな?

 てってれー♪的な流れじゃないよな。


 頼むから、これ以上、オレの心労を増やしてくれるな。

 何度目かも分からない頼みごと。

 主に暴走騎士の相方(ジェイコブ)とか痴女騎士イザベラとか変態騎士イザベラとか拷問騎士イザベラとか。

 コイツは、放牧しちゃいけない部類だと何度も言っている。


 ちなみにではあるが、その件の痴女騎士イザベラ達騎士団は、とっととお引き取りいただいた。

 毛色の違う騎士団が三つもこの狭い校舎にいる必要は無いし、ついでに言うなら、このダドルアード王国最強と名高い精鋭揃いの騎士団が騎士団長率いる『白雷ライトニング騎士団』だ。

 ならば、護衛は事足りる、どころかやや過剰過ぎる。

 と言う訳で、騎士団長様の権力のゴリ押しで消えて貰った。

 結局、国王は引き取りに来なかったけど、もう期待しないって事で良いんだろう。

 せめて、今後は二度と顔を合わせない事を願うばかりだ。


 話は逸れた。


 痴女騎士はともかくとして、件の騎士団長様率いる騎士団に対して、何故オレが心労を増やしてくれるなと思っているか。

 それは、眼の前にいる、穏やかな顔をした彼が原因だ。


 オレの視線の先には、先程よりも晴れ晴れとした表情をしたアビゲイルの姿。

 先ほどは、一度もにこりともしなかった癖に、話し合いの後には一転して、またしても掌返しだ。


 本名は、アビゲイル・ウィンチェスター。

 まぁ、ご大層な名前だこと。

 そして、このダドルアード王国の騎士団長。

 まぁ、ご大層な肩書きだこと。


 そんなアビゲイルは、オレの軽いお涙頂戴作戦の後、まるで尻尾を振る犬のようになっている。

 若干、やり過ぎたかと反省している。

 しかし、なんにせよ、悪いのはオレの涙腺。


 あ、結局オレが悪いのか。


 しかし、イザベラに通じるものがあるぞ、コイツ。

 頼むからこれ以上オレの心労を増やしてくれるな。(二度目)


『次は何を致しましょう、ギンジ殿?』

『こちらは、ここで宜しいでしょうか、ギンジ殿?』

『段差がありますので、お気を付けください、ギンジ殿?』


 思った通りだ。

 コイツは、(主に精神的な面で)オレの敵だ。


『いちいち五月蝿い』

『ごふっ!』


 ローキックを鳩尾のちょっと下に叩き込む。

 先ほどまでは、隙すらも見受けられなかった筈が、話し合いの後には一転して…(以下省略)


『オレはあれこれ、介護されるような歳でも無い。

 そもそも十分手は足りてんだ。がしゃがしゃがしゃがしゃ甲冑で動き回るな』

『い、良いおみ足をお持ちで、…ッ』


 あらやだ、コイツもMなのか?

 やめてくれよ、男のMとか気持ち悪い。

 頼むから、これ以上オレの心労を…(以下省略)


 むしろ、帰れ。


『ご、ご無体です、ギンジ殿…!』

『やめろ、黙れ!鳥肌が立つわ!

 アズマと一緒の顔していやがる癖にオレの事をギンジ殿なんて呼ぶんじゃねぇ!!』

『横暴な理論だな』

『(そこが、ギンジ様の魅力なのです)』


 香神には突っ込まれた。

 そして、間宮はオレを様付けするのをやめれ。

 じゃないと、コイツまで様付けされたら、今度こそオレの心労ゲージが振り切れる。

 既に亜音速で、精神衛生上のリミッター(仮)が針ごとぶっ飛んで再起不能なんだから。


 さて、閑話休題。

 もう、気持ち悪いのは放っておいて、現在の状況を整理しよう。


 現在、オレ達は譲渡された当面の住居を走り回っている最中だった。

 何の事は無い、清掃や点検の為である。

 別に、新しい校舎に勢い余ったテンションで、鬼ごっこをしている訳では無い。

 阿呆か、おい。


 嬉しい事に、雑多なものではあったが、椅子や机は数点が残っていた。

 外で男子達数名に洗わせて来て、それを2階の大広間に設置している。

 その護衛には、親衛隊の騎士が引っ付いていたらしい。


 そして、次に建物だが、元は宗派の違う教会の支部や孤児院だった事もあって、大勢が居住する事を想定していたようだ。

 一階が、ダイニングやキッチン、風呂やトイレなどの水回り。

 二階が、ダイニングと同じ間取りの大部屋と、居住用スペース。

 三階は、ほぼ二階と同じ間取りだ。

 おかげで、部屋数は十分取る事が出来る。

 一人一部屋とは行かないが、双子の姉妹と兄弟を一緒にする事で、一部屋が余った。

 そもそも、常盤兄弟は一緒にしておかないと紀乃が生活できないからな。

 それぞれの部屋割りを決め、各自の部屋を軽く清掃させている。

 清掃をサボったら、飯抜きだ。

 しかし、その清掃にも勿論、騎士達が同行していた。


 ああ、そうそう。

 ちなみに部屋割りは、二階階時計回りに、常盤兄弟、オレ、伊野田、杉坂姉妹と、余った一室を客間に当てている。

 三階には、また時計回りで浅沼、香神、榊原、徳川、間宮、永曽根だ。


 続いてオレ達は、手分けをして水周りの清掃を開始する。

 キッチン、洗面所、脱衣所、トイレ。

 浴室付きのバスルームが完備されていたのは嬉しい限りだったが、使われなくなって久しかったのかカビが生えていたが。

 そこはオレが陣頭指揮を執りつつ、真っ先に清掃した。

 風呂はオレの命の源である。

 そして、ここにも騎士達が同行し、清掃活動に参加していた。


 最後に、この建物は元々、謝礼と言う形で王国から譲与されたものである。

 その際に一緒に受け取った目録や金品なども、引き渡しに合わせて運び入れられている。

 何に使えるのか分らないものも多かったが、仕分けはオレと男子数名で手分けをして行っていた。

 そして、案の定、その仕分けの際にも、護衛と称して騎士が同行していた。


 ぶっちゃけ、言おう。


『うざったい!』

『ご無体!』


 清掃や片付け、ついでに点検などその他諸々全てが終わってから、オレは彼等騎士団を集めて言い放った。


『気持ちは嬉しい。だが、考えても見てくれ。

 生徒達に指示を出すのは故郷の言葉だが、お前達に指示を出す時はこちらの言葉を使わなければいけない。

 二ヶ国語を交互に使いまわすオレの労力が分かるか?

 頭がパンクしそうになるこの気持ちが分かるか!?』

『も、申し訳ない…』

『し、しかし、我等は、何かお役に立ちたく、』

『護衛の仕事に専念すりゃ良いだけの話だろうが!』


 本業忘れて、何やってんの?

 言語の壁が無いのは幸いにしても、翻訳する立場にもなって?

 頭がこんがらがって、ぐちゃぐちゃになるから!

 オレは別に翻訳機能を備えた電子手帳じゃ無いの!!


 どうやら、オレはやはり匙加減を間違えていたらしい。

 別に、彼等はオレ達に害意を持っている訳では無い。

 むしろ、役に立ちたいという考えのもと、行動している節が強い。

 生徒達の事を真面目に手伝い、率先して動いてくれたそうだ。

 生徒達も満更では無さそうだった。

 今も、生徒達は哀れみをこめた目線で、彼等を見ている。

 一応の意味も香神が通訳をしているから、分かっているのだろう。


 おかげで、あまり強く怒れない。

 オレの精神衛生上有害なだけで、生徒達に害があるかと言えばそうでもないからな。

 しかし。

 しかしだ。


『生徒達にとっては、自分達の校舎を作り上げる為の工程なんだよ。

 施設の維持や、生活の基準となる物品などの仕入れや向上などを学ばせる為の道徳教育でもある』


 オレの言葉の通り、これは道徳教育の実習だ。

 オレ達が普段、当り前のように使っていた物品が、どういった経緯でここにあるのか。

 仕入れや補充、もしくは点検や維持、更には向上。

 どうやって自分達が今後生活していくのか、そう言った事を学ばせながらこうして校舎を一から整えている。


 そう言った事を実地で学ばせてながら、生徒達を動かしているのだ。

 なのに、そこに騎士達が手出しをしてしまうと、そのありがたみが薄れてしまう。

 手伝ってもらえるのが当たり前、では困る。


 そもそも、


『生徒達の自主性を育てる為には、時には見て見ぬふりも必要なんだ』


 この特別クラス、もとい異世界クラスの問題点。

 それは、生徒達の大半が自主性を持っていないこと。 

 オレに頼りっぱなし、投げっぱなしという生徒だって少なくはない。


 伊野田や浅沼、徳川が良い例だ。

 ちなみに間宮は、論外。

 コイツは色々な意味で、亜音速で明後日の方向にぶっ飛んでいる。


 ただ、他の生徒達がどうかと言えば、それもまた違う。


 香神と榊原は、割と似たようなもので、意見は言うが反発はしない。

 オレが最初の段階で、そうし向けてしまった事も問題として挙げられるが、基本的には従順過ぎる。


 杉坂姉妹や常盤兄弟も似たような形だが、それぞれが独自の個性を持ちながら、結果的には依存傾向が強い。

 その依存傾向が、杉坂姉妹は恋愛方面に偏ってしまいそうで不安。

 常盤兄弟の場合は、イエスマンになって貰っても困るから不安。


 唯一の例外は、永曽根ぐらいなものだろうか。

 ただ、彼も彼で、善悪の判断がまだまだ甘く、過去に暴走族からヤの付く自由業に落ちかけた経緯もある為、ちょっとした注意は必要だった。


 今まで自主性と言う言葉すらも、考えた事は無かったのだろう。

 オレも、このような形で彼等の自主性に関して、頭を悩ませるとは思いもよらなかった。

 いつまでもオレに、甘えている訳にもいかないだろう。

 それに、オレもこの体がどこまで保つのかが分からない。

 オレがいなくても、いなくなったとしても、上手く異世界で立ちまわっていけるだけの、自主性を持たせてやりたい。

 そして、それは絶対に、今後の生活に役立つと分かっている。

 生活は下より、社会に出た時に、それはアドバンテージにも変わる。


 それなのに、騎士団一同が、1から10まで手出しをしてしまったら、まったく意味が無い。

 それこそ、自主性どころか、依存傾向が高まるだけになってしまう。


『自分達で動く事の大切さを教えているんだ。

 手伝ってくれるのはありがたいが、今は出来れば、生徒達を見守ってくれる方が嬉しい』

『も、申し訳ありませぬ。…そこまでお考えだったとは、ギンジ殿の真意すら探れず、お恥ずかしい限りで、』


 床で打ち震えているアビゲイル。

 いや、手伝ってくれるのは嬉しいんだけどな。


 長々と色々語ってしまった気がしないまでも、地味な本音はこっち。


 ただ、うざったい。

 本気で鬱陶しいの。

 そろそろ、マジでオレの呼び名をどうにかして欲しい。


 さっきまでの殺伐とした空気の方がまだ良かった。

 あれなら、オレの心は折れそうになっても、まだ騎士らしくて好感が持てた筈なのに。


 あれか?

 オレには、この世界の住人を駄目にする力でもあるのか?

 ふざけんな。


 しかし、まぁ。


『(良くここまで懐いたもんだ…)』


 掌返しの反動がデカイ、とつくづく思う。

 溜息が洩れた。


 そんな中、背中をつんつんとされるアポイントメント。

 

『(ギンジ様…)』

『ああ、間宮か。どうした?』


 可愛いらしいアポイントメントは、彼からのものだった。

 元祖様呼びの間宮だ。このヤロウ。

 そういえば、コイツもこっちに来てからはっちゃけた一人だった。


 何だ?

 アビゲイルに同族意識でも芽生えたか?


『(アズマさんと顔だけじゃなく、性格まで似てませんか?)』


 ………やっぱり、お前同族確定だな。

 アビゲイルの同族じゃなくて、オレの同族だけど。


 施設が一緒で、オレの同僚の事まで知ってるとなると、かろうじて下級クラスで下請けだろうか?

 オレも大概だったが、年齢が幼すぎて吃驚だ。


『(アズマの事まで知ってんだな…)』


 ここからは、オレも手話へと切り替えた。

 間宮は相変わらず、読唇術と手話を併用して行っている。

 出来れば、ヒアリング出来る香神にも、騎士達にも知られたい内容では無かったから。


『(先輩でした。施設内で、少し稽古をつけて貰う程度でしたが、)』


 そう言って、苦笑を零した間宮。

 アイツが蒸発した事も、おそらく知っているのだろう。


『(…あー、まぁ良いや。

 それで、アズマに顔だけじゃなく性格も似てるって、どういうこと?)』

『(そのままです)』


 ……うん?

 そのまま、とは?


『(アズマさん、好きな人にはとっても盲目だったんです。

 ギンジ様相手にも、そうだったんじゃありませんか?)』 


 盲目だった…とは?

 そして、オレ相手にもそうだったって?


 ………同居人兼同僚は、どうやらオレにとっては色んな意味で要注意だったって事になるんだが?

 ブルリと、身震い。

 それを、間宮に気付かれて、またしても苦笑を返された。


『(たとえです)』

『(…そっか、なら良かった。アイツに尻を狙われていた訳では無かったんだな…)』


 安心しました。

 うん、滅茶苦茶、凄く、安心した。


 それはともかく、アズマとこのアビゲイルが、顔も一緒で性格も一緒って事だよね?


『(……となると、つまりは、アズマ(アイツ)と同じように扱えば良いって事か?)』

『(その通りです、不本意ですが…)』


 ああ、なるほど。

 って、不本意ってどういうこっちゃ。


『(……蒸発しないか心配です)』

『(容赦ねぇな、お前…)』


 いや、それはオレも心配になってはいるけど。

 先輩相手に、凄い物言いだな、おい。


 まぁ良いや。


 二人で無言で唇と手だけを動かしていた奇妙な光景に、生徒達どころか騎士達もぽかーんとして見ているが、とりあえずは苦笑をして誤魔化しておく。

 話していた内容を聞かれ無ければ、それで良い。


 ……ただ、間宮。

 お前、まさかとは思うけど、アズマやルリが言ってた期待の新人とかじゃないよな。

 じゃのみちは蛇って言うけど、世間って狭い……。


 閑話休題それはともかく


 間宮からの指摘、と言うか助言を貰った訳だが、さてどうしよう。

 改めて、アビゲイルへと向き直る。


『今のは、何かの合図なのでしょうか?』

『手話って言って、声が出ない相手に対する言語みたいなもんだ』

『おお、それは素晴らしい!

 そう言った技術も、ギンジ殿の世界では発達しているのですな』


 まぁ、間違いでは無い。

 手話だけじゃなく、医療技術もきっと発達しまくってるからな。


 話は逸れたが、間宮の言うとおり。

 アビゲイルは顔も一緒だが、性格までアズマとそっくりらしい。

 あーでも、確かにそうかも…。

 懐くと若干うざいところとか、雑に扱われても気にしないところとか、変な所で熱血漢だったり?

 あー、うん分かった。


『ギンジ殿っての、やめてくれねぇ?』

『えっ…?し、しかし、それではなんと呼べば、』

『普通にギンジで良い。

 敬称を付けられるような生活はして来てねぇから、慣れないんだよ。

 後、敬語も辞めろ。友人に似ている顔で敬語を使われると鳥肌が立つ』

『……で、ですが、』

『辞・め・ろ』

『は、はい。…いや、分かった!』


 よろしい。

 まずは、第一段階をクリア。

 じゃないと、アビゲイルを改めて、アスベストと呼ぶところだった。

 有害物質なところが、そっくりである。


 まぁ、それはさておき、


『お前と同じ顔の友人がいた。

 出来れば、同等の扱いや喋り方をして欲しいだけ…』

『……そ、うか』


 生きてるかどうかも、もう分からないけど。

 だけど、赤の他人だと分かっていても、せめて健やかにと思うのは許されるだろう。


 勝手な我が儘と、押し付けがましい独りよがりだけどな。

 それでも、


『気安くしてくれりゃ良いだけさ。

 そうすりゃ、さっきの『オハナシ』に関しては、無かったことにしてやるよ』

『………ああ、分かった』


 そう言って、苦笑と共に立ちあがったアビゲイル。


『改めて、よろしく頼む。オレの事は、ゲイルと呼んでくれ』

『んじゃ、オレも銀次で』


 立ち上がり、オレの前に差し出された掌。

 アズマとは別人の筈なのに、彼が差し出してくれた手がダブって見えた。


『よろしく』


 苦笑と共に、その手を握る。

 23歳、初めての異世界の秋に、初めての友人ができました、と。

 この世界での初めての友人だけどな。

 別に、現代でぼっちだったとかじゃないからな!


 ちなみに、


『でも、なんでゲイル?』

『アビィは、女の呼び名だ』

『あー…そういうもんか』


 名前に関しての違和感。

 気になって聞いてみたら、苦々しい顔をされた辺り、相当名前で苦労していると思われる。

 オレも顔で苦労して来たから、その気持ちは分からんでも無いから。


 さて、それでは、なんとかまとまったかな?

 じゃあ、中断した校舎の点検やチェックに戻ろうか。


 ああ、ついでに、


『悪いが、生徒達に食料を買いに行かせたいんだが、騎士達に随伴を頼んで良いか?』

『勿論だ。ライト部隊を貸そう』


 そろそろ、飯時だ。

 清掃や点検の段階で、キッチンなどの水回りが既に使えることが判明したので、早速使わせて貰おう。

 そうなると、足りないのは食品。

 まだ少し校舎でやりたい事は残っているので、生徒達に社会研修がてら行ってもらおう。

 これも立派に、自主性を高める訓練だ。

 友人(仮)になって鬱陶しさも半減したゲイルのおかげもあって、現在同行している騎士達にはそこまで警戒も必要はなさそうだしな。

 と言う訳で、彼曰くライト部隊とやらの数名を借り受ける。


「香神と榊原は、確か料理が得意だったよな」

「あ、おう」

「趣味ってだけだけどね」

「それで良いさ。別にフランス料理のフルコースを作れなんて言ってねぇから」


 振り返った生徒達。

 若干、だれていたり、つまらなさそう。

 まぁ、言葉が分からない時点で、何を話しているかも分からないだろうからな。


 それはともかく、料理に関して多少の心得のある人間をピックアップ。

 このクラスでは、香神と榊原だ。

 女子組が揃って引っこ抜かれているのは、色々な理由があるものの、今は置いておこう。


「んじゃあ、お前達には買い出し担当を言い付ける。

 ついでに、永曽根と徳川を荷物持ちとして連れて行け」

「分かった」

「え~~~~~!!なんで、オレもなんだよッ!!」


 しかし、永曽根はともかくとして、荷物持ちに抜擢した徳川が反発して来た。

 いやいや、荷物持ちに適任の馬鹿力が何を言うか。


「浅沼は、ほれ…」

「ぐ、ふふ…。僕、死んじゃうかも…」


 あの通り、ぎっくり腰である。

 さっき、備え付けられていた机か椅子かの運び出しの際に、ぎっくりやってくれた奴。

 アイツ、まだ22歳だよな?

 ………オレも気を付けよう。


 まぁ、そんな浅沼の様子を見て、少しは徳川も納得したようだ。

 だが、かと思えば、


「じゃあ間宮は!?」

「コイツは、英語を理解しているから、別の仕事を頼みたいの」

「常盤兄弟は!?」

「紀乃になんて苦行をさせようとしているのか。それに、河南は紀乃の為に残って貰うから却下だ」

「チェッ!」


 盛大な舌打ちを一つ、徳川は渋々と榊原達の後に続く。

 お前、19歳だったよな?

 一個違いの香神(18歳)と比べて、どうしてここまで餓鬼臭いかなぁ…。


「オレの方で、見ておくよ」

「悪いな、永曽根」

「いや、良い。…きっと、オリビアがこっちに残るから、その分の反発だろうけど、」

「…だろうな」 


 今も未練たらたらなのは、眼に見えている。

 徳川が名残惜しそうにちらちらと見ているのは、間宮の近くでふわふわと漂っているオリビアだ。

 間宮が英語を話せると言う事を知って、話相手が増えたと喜んでいる。

 そんな彼女の輝かんばかりの笑顔は確かに可愛らしい。

 徳川の気持ちは分かる。

 だが、せめて自重という言葉を知って貰えないだろうか。


 まぁ、オレが言っても反発するだけなんだろうけどね。

 何なの、この難しいお年頃。


 と、溜め息を零した時だった。


「アンタ、またそうやって先生を困らせないの!」

「うぇっ!痛い!」

「ほら、ちゃっちゃと歩く!逸れても探してあげないよっ」

「お、おい!なんだよ、榊原!…耳を引っ張るなよ…ッ!」


 そんな徳川を引っ張って行ったのは、榊原。

 そして、ご丁寧にも、ちゃっかりオレへとウィンクを返していく、なんて器用な兄貴分(徳川限定)。


「ずいぶん出来たお兄ちゃんだこと、」

「ははっ。その通りだな」


 同年代のストッパー役を、彼は敢えて引き受けてくれたようだ。

 そんな榊原の嬉しい機転に、永曽根と揃って苦笑した。


「んじゃ、行ってくる」

「ああ、気をつけてな。それから、香神は口の利き方には十分気を付けろ?」

「分かってるよ」


 そうして、榊原を筆頭に、買い出し組が騎士の護衛を伴って出て行った。

 護衛達が優秀なようなので大丈夫だとは思うが、何事も無い事を祈ろう。


『っと、次は、』


 と、これまた生徒達を振り返る。

 残っていた生徒達は、やはり死にかけの浅沼以外は、だらけている。


 間宮とオリビアは何かを語り合っているようだが、なんだろう。

 背筋に悪寒が走ってるのは気のせい?


 それはともかく、


「さて、そろそろジェイコブが帰って来るか?」


 時計が無いので時間がそこまで詳しく分からないものの、彼等『蒼天アズール騎士団』にちょっとしたお使いを頼んでからは、結構な時間が経過している。

 そのちょっとしたお使いと言うのは、オレ達のベッドや布団などの寝具類。

 ベッドなどの骨組みはあるにはあったのだが、残念ながら寝具の類は数が足りなかったり、黴や黄ばみで駄目になっていたりした。

 なので、必要経費という事で、まとめて大量発注。

 勿論、金額は王国からの謝礼の中から出させて貰う。


 その発注から運搬までの全てをジェイコブ達の騎士団にお願いしておいたのだ。


 しかし、


「大変だ、先公!!」

「先生!!」


 慌てふためいて駆け込んできたのは、そろそろ帰ってくるかな?と思っていたジェイコブ達では無かった。

 先ほど見送ったばかりの、買い出し組の榊原、香神、徳川、永曽根の四人。

 急いで帰ってきたのか、全員(若干一名を除く)が息を乱している。

 その背後には、護衛に付けたライト部隊とやらも戻ってきている。


 何故、徳川が永曽根に担がれているのだろう?

 出て行ったばかりで一体どうした?


「おいおい、どうした?」

「それが大変なんだってば、先生!」

「さっき、ジェイコブさん達が戻ってきて、」

「戻ってきたのか?…なら、何故、一緒にいない?」


 そろそろ戻ってくると思っていたジェイコブ達も近くにいたようだが、その肝心のジェイコブ達の姿が見えない。

 きょとり、と眼を瞬かせ、思わず隣にいたゲイルと顔を見合わせた。


「そのジェイコブさんが知らせてくれたんだよ!」

「凄い慌て様でさ!」

「いや、慌てていたのは分かったから、何があったのか言ってくれ。

 じゃないと、状況がいまいち分からないんだが、」


 血相を変えた生徒達の表情に、思わず再三の嫌な予感。

 脳裏を過る、今日一日の走馬灯。


「オレ達の校舎が大変なんだって!」

「……何?」


 オレ達の、校舎だと?

 ふと、見回したのは、現校舎である現在の建物だが、おそらく違うだろう。


 となれば、


「…旧校舎の事を言っているのか?」

「そうだよ!」

「魔物が巣食っちゃったんだって!!」

「今、王国で討伐隊を編成しているらしい」


 ああ、なるほど。

 やっと、状況が理解出来た。


 オレ達がこの異世界に召喚された時、丸っとそのまま転移していた校舎の事だ。

 破壊行動を取られたりなんだりとしたが、燃え落ちる事はなくそのまま残っていた校舎。

 そして、その旧校舎に魔物が巣食っている。

 それに対して、王国では討伐隊を編成していて、近くまで来ていたジェイコブ達が知らせてくれた、という事か。


 うん、良く分かった。

 だけど、正直に言おう。


「だからどうした?」

『先生、落ち着き過ぎぃい!!』

「だって、いちいちこの世界の常識に反応していても、疲れるだけじゃないか」


 魔物なんて、この世界では割とポピュラーな生き物じゃん。

 それが校舎に巣食って、それに討伐隊が編成されるって言われても、思うのは大変そうだなぁ、ぐらいだし。

 そもそも、オレは対人戦闘は出来るが、魔物に対して有効な武器や戦闘技術があるかどうかは別。

 慌てふためいたところで、何も始まらないというのが本音。


 いかんせん生徒達からの大合唱が耳に痛いがな。


 だが、


『そうか、了承した』


 オレの隣で、騎士からの報告を受けていたゲイル。

 騎士達の報告は、生徒達よりも速やかだ。

 ホウレンソウは、大切な嗜みだからお前達も見習えよ、と言おうと思った。


 だが、しかし。

 後に続いたゲイルの一言で、オレは絶句した。


『行くぞ、ギンジ!』

『へっ?』


 何を言ってんの、お前?


『何を呆けている!お前達の元校舎なのだろう!

 ならば、地の利はお前達にあるのだ!』

『……いや、地の利とかそんなん…』


 違うから。

 地の利とかそんな話じゃない。


 根本的な話が噛み合ってないから!

 魔物への有効な手段も無いのに、行ってもやることなんてある筈無いじゃんか!

 という、オレの本音は呆気なく、


『石板の予言の騎士だろう!魔物を倒してこそ本懐では無いのか!』


 崩れ去った。


 あれ?可笑しくない?

 オレ、教師なんだけど?

 という再三となった疑問も、職業転向ジョブチェンジしてしまった事実によって、かき消される。


 そこからは、まるで怒涛の攻撃を受けた気分だった。

 抵抗する間もなく、あっという間に腕を掴まれたかと思えば、ひょい、と軽々持ち上げられたかと思えば、気付けばゲイルの肩に担ぎ上げられていた。

 わずか数秒程度の早業だった。

 思わず、オレも生徒達も、呆然としているしかない。


 そして、彼はそんなオレなどお構いなし。

 そのまま、のしのしと、扉をくぐってしまった。

 手も足も出せず、オレは彼に連行されるような形で、連れ出されてしまった訳だ。


「お前等、ここで待機!とにかく待機!

 良いか、絶対待機だぞ!間宮も付いてこようとするんじゃないぞ!

 オリビアもだ!頼むから、生徒を守ってく、」

『バタン!!』


 目の前で無情にも閉められた扉。

 生徒達にゆっくり連絡すらも出来ない、怒涛の展開に成す術も無い。


 だから、お前達の常識をこっちに押し付けるんじゃねぇ!!

 ふざんけんな、畜生!!


 そんなオレの心の叫びも伝わらないまま、オレはまともな装備すら無いまま、魔物退治へと連行された。



***



 クソッ垂れ。

 何度目かも分からない悪態だ。

 逃しまくっている幸せの原因である大仰な溜息は吐く。


 もう、イベントは無いだろう。

 そう思って、高を括っていたオレに最終的にぶち込まれたイベント。


 現在地は、夕暮れ時を過ぎ、やや暗くなった森の中。

 若干心許ないランタンのようなものの灯りを頼りに、急ぎ足の馬の背にゆらゆらと揺られながら進む。

 地味に、乗馬も出来るのよ、オレ。

 ドバイかキューバの任地で、ジョッキーをやったことがあったから。


 体感ではおそらく、午後5時から6時ぐらいだろうか。


 やっと、城で間借りしていた客室から、謝礼として譲与された当面の住居に移動出来たと言うのに、その住居での生活用品の手配どころか清掃も中途半端で放り出して来てしまった。

 飯時だと思って買い出しにも行かせたのに、結局食事の準備すらまともに出来なかった。


 しかし、その状況に対して、オレの友人(?)にランクアップ(?)した騎士団長様とやらは、お構いなしだった。

 攻撃か何かと見間違う程の勢いと膂力を持って、オレを担ぎ上げたかと思えばそのまま速効で騎士団詰所まで走り込み、城の馬を手配、その馬の背に放り投げた。

 あれよあれよと言う間に、オレは連れ出されてしまった。

 これ、誘拐と変わらなくねぇ?

 おかげで、予定が大幅に狂ってしまった。

 オレの休息は、一体いつになったら訪れるのやら。

 やっぱり、オレのスケジュールは過密ハード過ぎる。


 そんな騎士団長様こと、アビゲイルがオレを連れ出した場所。

 そこは、異世界クラスことオレ達が、この異世界に来た当初、一番最初に目を覚ました場所。

 そう、丸っと住所を異世界に移転していた旧校舎である。


 その旧校舎を、追い出されるようにして離れてから1週間。

 まだほんの1週間だと言うのに、校舎の存在はほとんど忘れ去っていた。

 しかし、その校舎の中に、魔物が巣食ってしまったという報告を受けて、オレ達はこうして旧校舎のある、西の森までの副街道を進んでいる。


 なんでも、その報告の発端は、アビゲイルからの権力のゴリ押しで城に戻らせた痴女騎士イザベラからだったらしい。

 そんな痴女騎士率いる騎士団の連絡員から事情を聞いたのが、寝具類の手配でお使いを頼んでいたジェイコブだった。 

 そして、そのジェイコブ達から、今度は食料の買い出しに出かけていた香神達が報告を受けて、現校舎に駆け込んだという伝言ゲーム。


 まぁ、それだけならオレが出てくる必要も無かった。


 そもそも護衛をされる立場なのだから、オレはここに来る必要制は無い。

 元々、旧校舎は捨てたつもりだったのだ。

 だからこそ、旧校舎に魔物が巣食っているという報告を受けた時も、大した感情は浮かばなかった。

 理由は簡単。

 地味にこの異世界の常識に拒否反応を示しているオレからしてみれば、例えオレ達の旧校舎だったとしても、魔物の存在を狩猟および討伐と言うのは出来ないと分かっていたから。

 無責任とか言われようがなんだろうが、有効な攻撃手段も持たないオレからしてみれば、討伐でもなんでも勝手にやっちゃって?と言いたかった。


 しかし、それを許さなかったのが、ここにいる騎士団長様アビゲイルだ。

 お互い友人(?)に昇格した(ランクアップ)らしいので、ゲイルと呼んでいる。

 そんなゲイル曰く、


『魔族を討伐してこその騎士だ!』


 との事。


 討伐隊編成の報告を聞くや否や、そんな良く分からない迷惑な理由でオレを担ぎ上げ、関係ないと高を括っていたオレを引っ張り出してくれた。


 その体躯に見合った素晴らしいマッスルで担ぎ上げて、討伐作戦とやらのフェスティバルへと放り込んでくれた訳だ。

 マッスルフェスティバルだ。

 意味が分からん。


 待て待て待て。

 オレは、教師だ。

 と、何度踏ん張ってもこの男のマッスルには勝てなかったよ。

 いや、それは良い。

 職業転向ジョブチェンジしてしまったのも思い出した。

 そこもまだ良い。

 ただし、オレは背広姿だ。

 もう一度言う。

 背広姿だ。


 討伐隊に参加するの、可笑しくない?

 せめて装備を貸してくれまいか。

 まぁ、槍を貸されても片手でしか扱えないから仕方ないけど。


 閑話休題それはともかく


 その魔物が巣食った旧校舎へ、討伐隊を組まれ、現在は西の森の内部で展開しているらしい。

 元々、この国には魔物や魔族が街へ侵攻するのを阻止、あるいは殲滅する為の騎士団が常駐している。

 ジェイコブ率いる『蒼天アズール騎士団』や、その他の青系騎士団がそうだ。

 迅速かつ可及的速やかに組まれた討伐隊は、既に300を超えている。


 そこに担ぎ出された背広姿のミスマッチなオレ。

 しかも、隣には馬に跨ったゲイル。

 後背には、彼の部下達である精鋭部隊の騎士達が続いている。

 ちなみに、この部隊も一部でしか無く、普段は城の仕事に終始しているとの事だが、その数なんと100名以上。

 しかも、そのほとんどが男で、筋骨隆々だ。

 こんなところまでマッスルフェスティバル。

 むさ苦しいのとか生理的に無理なので、頼むからオレを囲んでくれるなよ。

 ぶっ倒れる自信があるぞ、オレは。


 しかし、そこでふと疑問。


討伐隊こっちに参加しても、大丈夫なのか?』

『問題無い。『予言の騎士』としての、ギンジの職務を補助する分には、我等の裁量に任されているからな』


 えっと……?

 それって、オレが『予言の騎士』として活動する時には、護衛として同行しなさいよ?って事だろうか。


 うーん、まぁ、良いのかなぁ?

 ちなみに、オレを文字通り担ぎ上げて来たのは、彼だ。

 つまり、オレは別に参加する予定が無かった事柄に、半強制的に連れ出したのは彼等であるからして、それは自由裁量とは言わない。

 ただの強制執行。

 ……横に置いておこう、空しくなるから。



***



 一度は通った道を、こうして馬で戻るのも感慨深いものがあった。


 あの時は、連行されている最中だったし、縛られていたり、徒歩だったりと散々だったものだ。

 生徒達の様子を確認、励ましたり諭したりと必死で、周りの風景を楽しむ余裕は無かった。

 まぁ、一応は覚えている景色もあったが。


 斜陽の影に隠れつつある、旧校舎も見え始めている。


 ほんの1年前に、使われなくなった私設学校の校舎を改装された旧校舎。

 比較的新しく、充実した施設を備えていた。

 そんな旧校舎は、オレ達の夜間クラスが発足したと同時に、この校舎も生まれた筈だったのだ。

 

 しかし、そんな新品同様な旧校舎も、今では全体的に仄暗く、燃えた箇所や破壊された後も生々しく残されている。

 暗がりと欝蒼とした森の中に沈むその旧校舎の姿には、どこか哀愁が満ち、寂しげに見えた。

 たった1年足らずで、打ち捨てられてしまった旧校舎が、ふと可哀想に見えた。


『…あれが、お前達の元いた校舎というものか?』

『………ああ』


 隣で、ゲイルがその巨大さに目を丸めていた。

 そして、思いのほか固い声が出たオレに、二度目の驚き。


 ……今は、あまり話しかけないで欲しい。

 異世界に召喚されるなんて、こんな事になっていなければ、オレ達は今でもあの校舎で勉学に励んでいた筈だった。


 現実を分かっていない訳では無い。

 だからと言って、全てを受け入れるには、時間がかかる。


「クソッ垂れ…」


 行き場の無い怒りを腹の底で渦巻かせ、思わず悪態を吐いた。

 隣のゲイルが、眉根を寄せて、痛ましいものでも見るかのように見ている視線が、嫌に鬱陶しかった。



***



 西の森の、少し開けた場所。

 そこは、以前オレ達が拘束を受けた場所だった。


 オレ達が脱出の際に使った視聴覚室の脱出用シュートが、力無く垂れ下がっているのが見える。


 そこに、今回討伐隊として編成された騎士達が展開、作戦行動への準備を着々と進めていた。


 数名の騎士達が、到着したオレ達に気付く。

 隣に荘厳粛々と進むゲイルを視認するや否や、驚愕や歓声を上げていた。


 しかし、やはり背広姿のオレは場違いにも程がある。

 ゲイルを見て歓声を上げていた騎士達が、オレを目に移した途端に、それぞれ顔を歪めて、口を閉ざして黙り込む。

 そんな分かりやすい反応に、軽く心がへし折れそうになった。


『やっぱり、オレが来る必要はなかったんじゃないのか?』

『何を言う!魔物の討伐こそ、王国騎士の本懐だ!』


 そんなオレのチキン丸出しな言葉にも、ゲイルは胸を張って答えた。

 しかし、そんな彼が何を根拠に胸を張っているのかは分かりかねる。


 そんなこんなで、討伐作戦が進行している騎士団の天幕へと移動する。

 馬を降り、後を任せると、お決まりの辛辣な視線とは裏腹に、驚嘆に眼を瞠られた。


 ………乗馬も出来ないと思われていたのだろうか。

 まぁ、それも然もありなん。

 現代社会では、乗馬が出来る人間と言うのは、それ相応の専門業か趣味を持っているかの少数派だ。


 それはともかく。


 天幕を潜るゲイルの後に続けば、天幕の中には見知った顔が勢ぞろい。


『おお、ギンジ殿!来てくださったのですか!』

『ああ、紆余曲折はあったがな、』


 ジェイコブを始めとした『蒼天アズール騎士団』が、天幕内で顔を突き合わせていた。

 どうやら、作戦進行は彼等が、おおまかに執り仕切っているようだ。


『申し訳ありません。

 ギンジ様からの要請の途中ではありましたが、』


 ああ、そういやお使いを頼んだままだったな。

 申し訳なさそうな表情で頭を掻いたジェイコブに、手を振っておいた。


『気にするな。仕事なんだから、仕方ないさ』

『ご寛大なお言葉、ありがとうございます』


 いや、別にそこまで畏まらなくて良いよ。

 そもそも、討伐隊の要ともなる騎士団を借り受けていたばかりか、その騎士団に寝具類のお使いを頼んでいた事が驚きだ。

 騎士団の使い方をなんかちょっと色々間違えていないか、国王様よ?


 と、思っていた矢先、


『…ふざけるな…ッ。何が、寛大だ…!』

『そうだっ!メイソンさんを半殺しにした男だろ…!?』

『なんで、そんな男に媚を売らなければならない…ッ!』


 天幕の中で、囁くような悪態が飛び出した。

 やはり『蒼天騎士団』も一枚岩では無いようで、まだ暴走騎士メイソンの信者が残っていたようだ。


『貴様等、まだあのような男の戯言を信じておるのか…!』


 そんな悪態を聞いて、ジェイコブがまたしても顔を真っ青にしたものだが、


『別に良いさ。どう思われようと勝手だ』

『しかし…ッ、』


 オレは実際、どうでも良い。

 暴走騎士やその部下達に関しては、渋々ながらも王国に一任したから、今更何かを言うのは契約違反だ。

 それに、いちいち反応していても疲れるだけだし。


 しかし、


『…貴様等、我が友人を愚弄するか…!』


 そこで、あろうことか怒りの鎌首をもたげたのは、一任した筈の王国騎士団のトップ。

 勿論、アビゲイルの事だ。


 地を這うような声音とは、まさにこの声だろう。

 テノールバスを通り越して、低音の唸り声かと思う程の声で恫喝したかと思えば、場所を弁えずに悪態を吐いた騎士達を睥睨。

 可哀想な事に、その数名は途端に蛇に睨まれた蛙よろしく、体を硬直させた。


 どうやら、ゲイルは城での一件は知らなかったようだ。

 一応、噂話としては聞いていたようだが、まさか本当に決闘騒ぎがあったとは思ってもいなかったようで。

 ついでに、その処遇を王国に一任した事も知らなかったのか、


『多忙なところをわざわざ加勢に赴かれた『予言の騎士』様に何たる言い種か!!』


 怒号。

 ついで、騎士達の悲鳴。


 天幕の中が、俄かに血生臭い喧騒に包まれた。

 おかげで、討伐作戦を前に『蒼天騎士団』の約半数を占めていた戦力が、再起不能に陥った。


『これ、作戦に支障が出ないか?』


 オレの目の前で、ハッスルしちゃったゲイル。

 ハッスルゲイルが再びだ。


 彼は、オレの呆れた視線にも気付かず、騎士達を千切っては投げ千切っては投げ。

 関係のないだろう騎士達までも、天幕の外へと叩き出していた。

 いや、作戦前に味方を殲滅って、お前は悪魔か。


 オレの言葉に、冷や汗を流しながら頷いたジェイコブ。

 あーあ、ここにも騎士団長様(笑)の恐怖に戦いてる騎士が一人。


『…おそらくは。し、しかし、騎士団長もいらっしゃる上、ギンジ様もおりますれば、』

『……オレ、手持ちの武器はナイフ一本なんだが?』

『………なんと…ッ!?』


 確かにこんな、悪魔な騎士団長様がいるなら大丈夫だろう。

 精鋭部隊とやらも引き連れて来ているしな。


 しかしながら、オレの武器はナイフ一本。

 拳銃を使う予定は、今のところ考えていなかったので、未だに背中のホルスターに収まったまま。

 だから、オレを戦力に入れるの、やめてくれない?

 攻撃力はゼロに近い。

 ついでに、ライフもゼロに近いし、メンタルゲージも既にマイナスだった。



***



『さて、貴殿等!気を引き締めよ!

 今回は、『石板の予言の騎士』様も参加してくださる!地の利は我等にあり!!』


 と、数分前まで地獄絵図を描いていた悪魔な騎士団長様ことアビゲイルの恫喝の声。

 それに、天幕の中に収まった騎士達が力強く、雄々しい首肯で応える。


 ちなみにオレは、そんな恫喝の声に吃驚した。

 いや、いきなりだったもんだから。

 後、終わるまで休憩しておこう、と思って結局うつらうつらと船を漕いじゃってたもんだから、余計にね。

 あー、耳が痛い。


『今回は、二正面作戦とする。

 前門のショウメンゲンカンなるものから突入するフォトン、ブロウ、フラッシュ部隊。

 後門のショクインゲンカンなるものから突入するのは、我等ライトニング部隊だ』

『はっ!!』


 という、作戦進行をジェイコブから引き継いだゲイルの元、今回の討伐作戦の全容が語られている。

 各部隊のトップや補助役を集めて、魔物の巣窟となった校舎の地図を広げて作戦会議。

 軍隊、というか暗殺者時代に戻った気分になってしまったのは、オレも相当職業軍人が染みついている証拠だろうか。


 ちなみに、彼等が顔を突き合わせて見ている地図は、旧校舎の見取り図だ。


 オレの手書きである。

 

 学校の発足の理由や、学業に終始する生徒達が特殊だったこともあって、旧校舎は若干ではあるが複雑な造りになっている。

 一階からの階段は一つだけ、とか、連絡通路が2階にあるとかな。

 万が一の襲撃に備え、ゲリラ戦を想定していたこともあり、位置情報の把握や迎撃作戦の為に、見取り図は頭の中に叩き込んでいた。

 なので、適当で良ければすぐに、三階分の地図ぐらいは書ける。


 まぁ、おかげでゲイル他、騎士達から背筋にむず痒い視線をいただいたのは、いかんせん薄ら寒かったがな。


『見る限りでは、ほとんどの施設が使用可能となっているだろう。

 職員玄関には鍵が掛かったままになっているだろうが、正面玄関に関しては開いたままになっている筈だ』

『……鍵は持っているのか?』

『悪いが、緊急事態だった為、持ち出せなかった。

 だが、鍵開けの技術と道具だけは持ってるから、侵入には事足りるだろう』


 と言う訳で、職員玄関からの突入組は、オレのピッキング待ちとなる。


 そうして、ふと見渡した騎士達。


『とりあえず、正面玄関は良いとして、職員玄関からの突入はオレ達だけなのか?』

『ああ。我等はあくまで殲滅組だ。少数精鋭で…』


 云々かんぬん。


 ゲイルの言葉通り、頷いたのは数名の騎士達だけ。

 彼曰くの精鋭組のライトニング部隊とやららしいが、たった10人足らずという話。

 そんな少人数での突入で、大丈夫?と半信半疑ながら、もっと大変困っている事が一つ。


 オレの武器に関してだ。


 今回ばかりは仕方ない、と拳銃の投入は決意した。

 命あってのなんとやら。

 そもそも、この局面をなんとか乗り切らないと、オーバーテクノロジー云々も言っていられないから。

 仕方ないと割り切ったが、


『…とはいえ、オレの火力は回数限制限があるんだが、』

『我等が命に代えてもお守りします』

『それは、大事な女が出来た時にでも言ってやれ』


 そんな簡単に命を献上されても困るわ。

 護衛を受けてはいるけど、戦えない訳じゃないし。


 オレの言葉に何故か感極まっている様子の騎士達の様子は放っておいて、手書きでヨレヨレの見取り図を見下した。


 しかし、ふとここで、思い出す。


『あ…っと、……待てよ?』


 と、地図の上に指を滑らせて、突入するルートを再確認。

 職員玄関から目的の部屋(・・・・・)を目線だけで辿り、


『よし、ルート内にあるな』

『…何があるのだ?』

『オレの装備だ。行けば分かる』


 怪訝そうなゲイルに、苦笑。


 オレの記憶の通り、ルート内にはオレが目的とする部屋があった。

 それも、この地図上には記入されていない、一種の隠し部屋。 


 そこには、万が一の為に準備しておいた、オレの装備一式が揃っている。

 防弾ベストもあるぞ、万歳!

 回数制限ありの武器だけじゃ困る。

 念の為という考えであったのだが、こんな時に役に立つとは思わなかった。

 備えあれば憂いなしとは、この事か。


 ………この異世界に来た当初に気付いていれば、騎士達の事も迎撃出来たかもしれない。

 今更言っても、空しくなるだけだけど。


 閑話休題それはともかく


 と、言う訳で、ルートの変更は無いにしても、多少の時間を頂く事は了承して貰おう。


『では、作戦開始だ。各自、配置に付け!』

『はっ!!』


 作戦開始。

 ゲイルの号令の元、天幕の中の騎士達が慌ただしくも粛々と動き始めた。



***



 配置に付いた。

 オレ達は職員玄関の扉からの突入組だ。


 そして、オレは職員玄関の扉へと、貼り付いていた。

 何の事は無い、ピッキングの為だ。


 鍵が無いなら作るまで。

 ついでに、ピッキングの道具は、言わずもがな髪に仕込んでいた暗器とヘアピンである。

 あんまり公には言えないけど、カツラだからね。

 隠す場所には事欠かないし、ヘアピン事態は正直、余るほど持っている。

 地味に、ズボンのポケットの中にも、何本も入ってたりもするし。

 外してポケットに入れてそのままだったって事が、よくあるんだよね。


 そんな事をつらつらと考えながらも、手は蠢いている。


『異界の教師とやらは、こう言った技術も扱うのか?』

『オレが元軍属だったからってだけだよ』


 普通の教師がピッキング出来るとか間違った先入観を持つのはやめてね。

 オレは普通とは、ちょっとかけ離れていると言う事もそろそろ気付いて。


 背後から感心しているのか、それとも呆れているのか分からないゲイルからの言葉を聞きつつ、そのままピッキングを続行。

 程無くして、


『開いたぞ』


 がちゃり、と軽快な音ともに、オレの手には確かな手応えが返って来た。

 

 そこで、ゲイルの部下の中でも比較的若い騎士が、背後で呪文を唱え始めた。


『我が声に応えし、精霊達よ。

 業火の力の一端を今ここに示し給え。『炎の矢(フレイム・アロー)』!』


 いつか、聞いた治癒魔法と似ている一文。

 これが、どうやら魔法を発動させるキーワードとなるようだ。

 呪文と、魔力の付与、そしてイメージ。

 詳しく聞いた訳では無いものの、それが魔法の発動となるプロセスらしい。


 『炎の矢(フレイム・アロー)』とは、文字通り炎で出来た矢だ。

 魔法の一種で、火系の初級魔法。

 狼煙や閃光弾と同じで、情報の伝達に使っているのだろう。


 常識がいちいちオレ達のところと違う。

 若い騎士の手から迸る、矢を象った炎。

 あれが即席で出来るなら、マッチもライターも要らないわな。

 そして、爆弾も必要は無い。

 ただただ、高火力の魔法を叩き込めば良いのだから。


 いやぁ、この異世界で生き残れるか本当に不安です。

 そのうち、ステルス機能とかバリア機能とかを本気で考案したくなるかもしれない。


 その前にオレは、防弾ベストだが。

 なにはともあれ、突入開始である。



***



 とはいえ、オレも馬鹿じゃない。

 胸ポケットに常備してある、ミニサイズのライトを取り出し、扉から首だけを覗かせて内部を覗き込む。


 既に電力も落ちているらしく、非常灯すら灯っていない校舎内。

 小さな灯りに照らされた廊下は、若干床が湿っていた。

 あれ?なんで?

 雨漏りでもしてるのかしら?


 そういえば、オレ達がここに来た当初は、まだ電気が煌々と灯っていた。

 教室や視聴覚室が爆発した後、もしかしたら火災報知機が反応してスプリンクラーでも作動したのかもしれない。


異常なし(オールグリーン)、と』


 オレも元軍人(訓練だけとはいえ)だ。

 新たな火力を持った武器を手に入れるまでは、せめて斥候ぐらいはしておこう。


 ただ、背後でやはり騎士達が怪訝な顔をしていたがな。


『何をしているのだ?』

『突入前の安全確認だよ』

『む?そうだったのか…!しかし、わざわざ、我等の為にそこまでしなくとも、』

『オレが安全確認したかっただけだ。それと、突入前にうるさくするんじゃねぇ』


 感動してても良いから、ちょっと静かにしようか。

 こっちは、殲滅組とはいえ、潜入部隊なんだから少しは忍べよ。


 そんなゲイルは放っておいて、ライトを口に咥えつつ、オレは腰のホルスターから拳銃を引き抜いて下向きに構え、扉をくぐり抜ける。

 その後を、続々と騎士達が続く。

 いかんせん、甲冑の擦れ合う金属音が五月蠅いな。


 しかし、


『止まれ…っ』

『なっ…!?』


 突入と同時に、ライトに何かが反射した。


 拳銃を横に突き出して制止を試みたものの、突入してすぐだったことも相俟って、ゲイルに背後からド突かれた。

 おかげで、前に倒れ掛けたが、なんとか膝を付いて転倒は免れた。

 これ、そのうち青痣になってんだろうな。


 それはさておき、


『何かいる』

『…ふむ』


 小声で告げた言葉に、ゲイルが背後で頷いた。


 真っ暗な闇の中に沈んだ廊下の先。

 オレが咥えていたライトが、唯一の光源の筈だった。


 それに、何かが反射した。


 慎重に、口に銜えたライトを歯や舌を駆使して、その方向へと向ける。

 だが、


『へっ?』

『なんだ、あれは…!』


 オレの間抜けな声と共に、ゲイルの切羽詰まった声。

 背後で続々と突入していた騎士達も、それに声も無く驚嘆していた。


 それは、確かにそこにあった。


 オレが知っているものだ。

 だが、おそらく後ろんにいる騎士達は知らないものだろう。


 鮮やかな色合いで着色された、骨格構造。

 臓腑の中身も然ることながら、筋肉や血液の流れまでもを忠実に再現された代物。


『なんで、人体模型がこんなところに…?』


 オレの言葉通り、オレ達の眼前には人体模型があった。

 目玉の名称まで書き込まれている不気味な模型は、一見すれば子どもも泣き出すだろうグロテスクなものだ。


『ま、ものなのか…?』

『違う。けど、』


 オレ達にとっては、人体模型とは人体の構造を知る為に、保健体育の授業でお世話になる程度のものだ。

 一見すると子どもが泣き出す程のグロテスクな様相は、この世界の騎士達からして見ても、なるほど十分魔物のように見えるだろう。


 だが、正直、問題は見た目だけじゃない。


 どうあっても、ある場所が可笑しいのだ。

 当校舎では本来、人体模型は保健室に鎮座している筈のものだった。 

 職員玄関前に鎮座している筈も無い代物だった。

 ここにあること自体が、可笑しいのである。


 そもそも、


『なんで動いてんだよ…!』


 それが、動いている(・・・・・)というのは、何事だろうか。


 問題の事実は、これだ。

 オレの目の前で、人体模型はあろうことか、二足歩行をしているではないか。

 ぎしぎしと、骨格の接合部を鳴らして、まっすぐにこちらに歩いて来ている人体模型。

 暗がりの中に、その音だけを響かせて歩いてくる様子は、不気味としか言いようが無い。


 さすがのオレでも、声が上擦った。

 これが噂に聞く、学校の怪談って奴だろうか。

 だが、詳しい内容は知らないので動く人体模型なんて論外だ。


『あれは、ギンジの世界ではなんという魔物だ?』

『魔物じゃねぇよ、無機物だ。

 どちらかと言えば、ゲテモノだけど』

『うむ、ゲテモノだな』

『…無機物だって話、聞いてたか?』


 えっと…それに対して、オレはどう反応すれば良い?

 目の前のスーパーナチュラルよりも、そっちの方が気になってしまった。


 お前の脳味噌、晴れてんのか?


『…そもそも、動くものじゃない』


 と、苛立った口調を隠しもせず、オレは仕方なくライトを切った。


 ライトを切った瞬間、ゲイルや騎士達から息を呑む声が聞こえる。

 意外と、この世界の人間もホラー系は怖いらしい。


 暗がりに浮かんだ人体模型は、ただの黒い影となった。

 そこに、オレは照準を合わせるだけ。

 腰から抜いた「M1911A1(コルト・ガバメント)」。


 グリップの人差し指下に掛かっているセーフティを押し込みながら、トリガーを絞った。

 腹に響く、発砲音が響く。


『おわっ!?』

『何だ!?』


 あ、しまった。

 耳を塞がせるのを忘れていた。


 銃声を聞いて、騎士達が背後で竦み上がる。

 緊張状態にもあった所為か、余計に驚かせてしまったようだ。


 すまん。


 しかし、オレの焦りとは裏腹に、銃弾は確かに人体模型へとヒットした。

 ギシギシと響く不気味な音が途絶え、代わりに何かが廊下の床にぶつかる小気味良い音がした。


『…そ、それは何だ?』

『オレの現在、唯一の武器。回数制限付き』

『………そのような武器があるのか』


 と、感心したような、それでいて恐々としたゲイルの声を背後に聞きながら、


『おい、近づいては、』

『……確認だ』


 いつでも撃てるように拳銃を構え、ゆっくりと人体模型へと近付いた。


 たとえ無機物であっても、何の原理か動いていた代物だ。

 警戒は怠らない。

 そうして、慎重に近付いて、口に銜えたままのライトのスイッチを歯で押し込んだ。


 それと同時に、


『わぁお、おはようございます!』

『何を普通に挨拶しているんだ!?』


 テンパった。


 いや、だって、人体模型が「よっこいしょ」と言いそうな動作で、立ちあがっちゃったんだもの。

 まるで、お爺ちゃんのような立ち上がり方だったんだもの。

 思わず、敬語になっちゃったよ。


 よくよく見てみれば、頭の半分が欠けている。

 先ほど浴びた銃弾の所為だろう。

 しかし、痛がるそぶりも無く、平然と立ちあがっているあたり、気持ちが悪いとしか言いようが無い。


 しかし、なんでコイツは立ちあがっちゃうのか、むしろ動いちゃうのか。


『…ニンゲン』

『あ、喋った』


 しかも、喋っちゃった。


『ニンゲン、オイシイ…。…カラダ、ヨコセ…』

『いや、人間は餌じゃありません』

『だから、なんで普通に会話しているのか!!』


 背後からのゲイルの渾身の突っ込みを聞きつつも、至近距離でもう一発銃弾を撃ち込んだ。

 今度は、プラスチック製だろう頭部がまとめて吹っ飛んだ。

 そして、再三の固い音とともに、床に倒れる人体模型。

 ………いつの間にウチの校舎は、人外魔境となっていのだろうか。


『…ニンゲン、…ニンゲン』

『あー…これでも、まだ立ち上がるのか』


 正直、もう相手にしたくなかった。

 しかし、そんなオレの内心も虚しく、三度目の正直。

 人体模型が起き上がる。

 やはり、お爺ちゃんみたいな立ち上がり方で音声を付けるとしたら「よっこいしょ」だ。

 ………だんだん愛嬌があるように思えてきてしまった。


『下がれ、ギンジ。おそらく、『ダークヘイズ』だ』

『『ダークヘイズ』?』


 と、ここでオレの背後に来ていたゲイルが、オレを庇うように人体模型に向き合った。


 『ダークヘイズ』という言葉に聞き馴染みは無いが、もしかして魔物か何かの一種?


『命の無い人形や死体、無機物に取り憑くしか能が無い魔物だが、討伐方法が限られている魔物だ』

『…あー…痛覚も無しってことか』


 どうやら、ビンゴのようだ。


 ゲイルの見解は、現在の人体模型の状況に符合する。 

 どうりで、頭を吹っ飛ばしても立ちあがる訳だよ。

 人体模型は本来動く要素を待たされず、人間として歩く事を想定されていない張りぼての人形だ。

 動く度に無理をしていると分かるギシギシとした音が響く。


 ……しかし、討伐方法が限られているとは?


『中身を先に破壊しなければならないんだ。

 先に触媒となっている身体を壊しても、中身が出て行ってしまう』

『……どうやって?』


 というオレの声に、ゲイルが見るからに苦い顔をした。

 あ、嫌な予感。


『『聖』属性の攻撃魔法で払うしかない』

『……ここに、その『聖』属性とやらは?』

『………いない』


 ………今の間が、何やら気になるが、まぁ良いだろう。

 ぶっちゃけて言えよ。

 

『つまり、体を壊して逃がして、討伐を先延ばしにするしかない、と』

『………その通りだ』


 おいおいおいおい。

 『聖』属性とやらがどんな属性かは分からないまでも、エクソシストみたいなもんだって事は、流石のオレでも理解出来た。

 しかし、それがいない。


 現時点で倒せない類の相手だと?

 ふざけんな。


 仕方ないとは言え、仕方ないで済ませて良いものだろうか?


『コイツ等、放っておくしか無いのか?』

『いや、…体を壊してしまえば、どうって事は無いのだ…』


 だから、それは問題の先延ばしってだけじゃ?

 ともあれ、


『せぃっ!!』


 気鋭一閃。

 ゲイルが掛け声と共に、振り下ろした槍が、人体模型を粉々に破壊する。

 ……粉々て。

 しかも、人体模型って意外と高いんだけど、結構簡単に壊してくれやがったな、おい。


『見えるだろうか?…こう、黒い靄のようなものが移動していないか?』

『え?…あー、確かに、』


 オレの内心はともかく、ゲイルが指指した先にライトを当てる。

 そこには、かろうじてではるが、確かに人体模型から立ち昇った黒い靄のようなものが移動しているのが確認できた。

 あれが、中身なのか。


 なるほど。

 だから、『闇の靄(ダークヘイズ)』な訳だ。


 しかし、まぁ真っ暗な中で良く見えたもんだ。

 オレでも、ライトを使ってギリギリなのに。


 だが、


『……ん?』


 ふと、その黒い靄の先に、何かを見つけた。


 『ダークヘイズ』とやらが、消えようとしている廊下の更に先。

 言うなれば、オレ達がいる職員玄関から見て真正面の、廊下の端だった。


 そこに、オレは見てはいけないものを見てしまった。


『じゃあ、あれは何だ?』

『………うん?』


 オレが、ライトを照らし出した先。

 オレの声音も、若干震えていた。

 ゲイルがそのライトの先へと目線を合わせ、ついで身体を強張らせる。


 そこには、手があった。

 真っ白とも真っ青とも形容できる、間違うことなき手だった

 その手の先には、勿論腕が続いている。

 全体的に白い服のようなものを着ていた。

 そして、その腕の先には、乱れた黒い髪があった。

 その黒髪のせいで、顔が見えない。


 皆さま、お分かりだろうか。

 真夏にはしょっちゅう放送されていた心霊番組風に、言ってみる。


 ただの現実逃避だ。


『ぎ、ギギギギンジのしり、あいか?』

『…オレに、あんな黒髪を振り乱した女の友達はいない…』


 俄かに震えたゲイルの声。

 そして、オレも言わずもがな。


 どうやら、ゲイルにも見えているようだ。

 そして、背後の騎士団の連中からも、怯えた気配があることから、彼等も同様と思われる。


 それは、ライトに照らされた場所で、うっそりと立ち尽くしていた。

 黒髪と、真っ白い服。

 下はスカートか何かを履いているようだが、


『幽霊だな。初めて見た』

『冷静すぎる!!』


 あ、馬鹿。


 オレが、乾いた笑いと共に、呟いた言葉。

 それに、律儀に突っ込みを入れたゲイル。


 心の声で悪態を吐いても、もう遅い。

 見事に、その黒髪の女が顔を上げて、オレ達をロックオンした。


 その途端、


『うおわっ!!』(オレ)

『うわああああああああ!!』(ゲイル)

『ぎゃあああああああああああああああああああああ!!!』(その他一同)


 校舎内に騎士達の野太い悲鳴が響き渡った。

 そして、駆け出す。

 一も二も無く、駆け出す。

 ゲイルも駆け出した。

 そして、オレはそんなゲイルに、またしても担ぎ上げられるような形で連れ去られた。

 いや、何この運搬方法?


 何故、駆け出したか?

 ゲイルの盛大な突っ込みの声に、黒髪の女が顔を上げた為に、髪に隠されていた顔が露になったからだ。

 一体全体、何があったらあんな顔になるのだろうか。

 眼窩が剥き出しになり、口は真っ赤に顔を分断するように裂けていた。


 あれは、オレでも怖いわ。


 しかも、


『痛い痛い!オレの足が痛い!!』

『うおッ!?なんで、そんなものをくっつけているんだお前は!!!』

『くっつけた訳じゃないし!!』


 現在進行形で逃げ出したオレ達。

 唯一の逃げ道である階段を駆け上がった筈だった。

 しかし、そんなオレ達に、ほとんど廊下の端と端だったにも関わらず、追いすがった黒髪の女。

 凄い俊足と瞬発力だこと。

 おかげで、最後尾となっているオレの足に、いつの間にやらその黒髪が引っ付いている。


 ほらな、厄日続きだ。

 今度は、騎士達と一緒に、夜の学校でリアル鬼ごっこだ。

 ふざけんな、畜生め。



***

住居の清掃も大切ですが、校舎の清掃も大切だったようです。

住居と校舎を踏まえたタイトルです。

ええ、掃除は大切です。

中身が大変なことになっております。

作者の脳内も大変なことになっております。


そして、またしても、ホラー展開。

せいぜい学校の怪談(笑)程度ですが。

この歳になってから改めて見てみると、学校の怪談シリーズはなかなか面白い要素が目白押しだったのですね。

轆轤首とか眼鏡が本体の教師とか。

ちなみにアサシンティーチャーの本体はカツラです。

嘘です。



誤字脱字乱文等失礼致します。

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