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異世界クラスのアサシン・クリード~ただし、引退しました~  作者: 瑠璃色唐辛子
異世界クラスの春休み
117/179

閑話 「~引っ越し作業と、捕獲された騎士様~」

2016年11月1日初投稿。


遅くなりまして。


続編を投稿させていただきます。

タイトルの通りの内容と、閑話扱いで以前話していた引っ越し作業へと入りました。


長々と尺を取ってしまったダグラス&ガルフォンも今回までとなります。

まぁ、そのうち、キーマンとしてまた登場しますので、お楽しみに。


閑話です。

安直なタイトル同様、安直な内容とはなりましたがご容赦くださいませ。

***



 悲しいけれども、分かっている。


 出会いがあれば別れが来ることも分かっていた。

 だから、受け入れるべきだとも知っている。


 オレにとっては、衝撃的な出会いと言っても過言では無かった。

 この世界に来てから、出会いを通して、来て良かったと思えたのは、これが何度目だろうか。


 考えてみても、きっと数えるほどしかなかっただろう。


 だからなのか。

 この別れが寂しいと、悲しいと感じている自分がいる。


 それは、誰との別れか。


「…ううっ、ひっく……、また会おうね」

『もちろんだよ、ギンジ…ッ。

 ぜ、ぜったい、ぐすっ、またいっしょに、あそぼうね…ぇッ』


 ぐすぐす、えぐえぐ。

 きゅるいー、きゅるるる!


 なんて、涙ながらの抱擁と、語録が幼くなってもはや、文体も呈していない可能性も多いながらも、言葉を交わし合う2人。

 正確には、1人と1匹。


 人語を発しているのは、オレ。

 竜語を発しているのが、ガルフォン。


 今日は、残念なことに、彼が『黄竜国』へと戻る日だった。

 間違った。

 ダグラス氏が、ガルフォンと共に、『黄竜国』へと戻る日だった。


 お別れが辛い。


 彼等がこのダドルアード王国にやってきて、早5日。

 ガルフォンの体調が優れずに、3日もロスしたとはダグラス氏の意見ではあった。

 そんなこと言わずに、何日でも滞在すればいいのに。

 ………半ば本気で口にしたら、「貴方は本当に他人の迷惑ということを学びなおした方が良い」と、こちらも本気で怒られた。

 本気と書いてマジだった。

 嫁さんと子どもを待たせているのは、知っていたけども………何も、そこまで怒らなくても良いと思うんだ。


 思わず、ガルフォンと共に、恐怖に慄いてしまった。


 とはいえ、たった5日。

 それが、衝撃の出会いを迎えた、オレとガルフォンが共にいられた日数。

 しかも、時間に換算するなら、きっと2日も一緒にいなかったのではないだろうか。


 別れが寂しい。

 そして、辛い。


 また来るとは言っていたし、俺も『黄竜国』に行く予定があるので、少しの間の辛抱。

 そう考えても、やっぱりガルフォンと離れ離れになるのが寂しくて、年甲斐も無く泣いてしまう今日この頃。


「………何も、今生の別れでもあるまいに…、」

「此奴、私等の時よりも、傾倒しているんじゃあるまいな…」


 嫁さん達に滅茶苦茶呆れられているよ。

 何を隠そう、オレが。

 ………ローガンの一言に、咄嗟に反論出来ない事実があった。

 

 そうは言っても、寂しいものは寂しいものだ。

 分かっているとも、情けない事なんて。


 オレだって、年甲斐も無く恥ずかしいって事実も、むしろこのまま浚って行ってなんてことも言いたくても言えない立場が分かっているから、こうしてお別れを決めたんだ。

 それでも、寂しくて辛いんだもん。

 そのすっとんだろうが多少はある胸を貸してくれたっていいじゃないか…ッ!


 ………って言ったら、殴られた。

 痛い。

 そして、酷い。


 そんなこんな。


「まぁ、ガルフォンとの別れではあるだろうが、惜しんでくれて何よりだ」


 そう言って、旅装を整えたらしいダグラス氏がひょっこりと。

 オレが縋り付いているガルフォンの首へと首輪と手綱を付けた彼が、その首筋を叩くようにして撫でる。


「………ほら、いい加減泣き止んで、潔く送り出してやれ」

「お前、まだ年甲斐も無く、縋り付いてやがったのかよ…」

「………半ば本気で、懸想でもしてたみたいだな、」


 彼の後ろからやってきたのは、ゲイルとジャッキー、ヘンデル。

 酒飲み仲間として、2日前に親交を深めた仲だからか、冒険者相手だというのにゲイルも珍しく見送りに来ていた。

 ヘンデルは、依頼を受ける為に冒険者ギルドへと来ていて、丁度よく出くわしただけのようだ。


 ………斯く言うオレは、ガルフォンの見送りのつもりで来ていた訳だが。


『…ぼ、ぼく、僕、もっと大きくなってお父さんぐらい強くなれたら、いつかきっとギンジを迎えに来るからね…ッ』

「あらやだ、なんて素敵なプロポーズ!

 いつかと言わず、今でも良いんだよ…!」

「こらこら、何を言っているのか!

 正直半分も意味を理解出来んかったが、良くない流れだと言うのはわかったぞ!」


 そんな舞い上がりそうなことを言われ、思わず赤面する24歳。

 しかし、そんな舞い上がった思考の中でのたまった一言が耳ざとく飼い主(ダグラス氏)に察知されたらしく、悲しいことに勝手に却下されてしまった。

 

 あぅうう~………人の恋路を邪魔する奴は、飛竜に蹴られて潰れてしまえ…ッ。


「………そんな呪術でも掛けそうな視線をされても、ダメなものはダメだ」


 ………これまた目敏く呪おうとしたのも察知された。

 畜生、新しい呪詛の文面も考えたというのに………。


「ほれほれ、いい加減、離れなしゃんせ!」

「そうだぞ、ギンジ。

 ダグラス氏が出立出来なくては、ガルフォンとて帰れないだろうに…ッ」

「………ううっ、もうちょっとだけ…ッ」


 嫁さん2人が呆れ交じりに、引き離そうとする。

 オレも負けじとガルフォンに縋り付くが、


『………これ以上は、僕も名残惜しくなっちゃうよう』


 そう言って、ころりころりとオレの頬に涙を落とすガルフォン。

 その姿を見て、胸が引き絞られるような感覚を覚えてしまう。


「ごめん、ガルフォン。

 オレは、お前を困らせたい訳ではなかったんだ…」

『ううん、良いんだ、ギンジ。

 また、一緒に遊ぼうね、今度は一緒にお空も飛ぼうね!』

「うん、うん!」

『きっとだよ!約束だからね!』


 ガルフォンは涙ながらに、オレの頬へと舌を這わせる。

 指切りか、何かの儀式か。

 ざりざりと、動物特有の突起の多い舌が、頬を這う感覚に思わず背筋が粟だった。


「こら、ガルフォン!求愛をするなと、あれほど言っただろうに…ッ」


 そして、飛ぶのはダグラス氏の叱咤の声。

 首を噛む以外にも、求愛の方法があったなんてねぇ。


 だが、こちらとしては、その行動だけが嬉しいものだ。


「お返しだ」


 そう言って、彼の鼻先へと自分の鼻先を擦りつける。

 きゅうう~ん!とガルフォンの可愛らしくも甲高い鳴き声が響いた。


「貴方も、誘惑するなと何度言えば分かるのか…!」


 これまた、飛ぶのはダグラス氏の叱咤。

 今回は人間オレ相手だった所為か、ガルフォンの時よりも遣る瀬無さが含まれた声音だった。


 とはいえ、


「またね、ガルフォン。道中気を付けてな

 ………ついでに、ダグラス氏も…」

『うん、またね、ギンジ。

 ギンジも次に会う時まで、元気でいてね?』

「………オレはついでか。………まぁ良いが、」


 先にも言った通り、彼等を困らせたい訳では無い。

 勿論、ガルフォンもそうだが、ダグラス氏を困らせるのもあまり良くない。


 なにせ、彼はこれから戦争を止める為に動く、オレとしても大事な手駒だからね。


「じゃあ、改めて、道中気を付けて。

 ………例の件は任せた」

「見送りに感謝を。

 ………任された」


 短い会話を交わして、名残惜しくもガルフォンの鼻先にもう一度擦り寄ってから(※やっぱり誘惑するな!!って怒鳴られたけども)、少しだけ離れる。


「また来いよ、ダグラス!

 今度は、もっと気楽に酒でも飲めるように、お前も気張れや」

「またなぁ、貴公子様よ!」

「道中、女神の加護があらんことを、」


 こちらも、三者三様に見送られ、苦笑を零したダグラス氏。


「オレもまた会うのを楽しみにしている。

 それまで、お前達も女神の加護の下、息災であれと願おう」


 旅立ちの文言なのか、そう言って小さな辞儀をしたダグラス氏。

 しかし、ふとオレへと視線を向けた。


「………次は、オレとも手合わせをして欲しい」

「…えっ?」


 言葉が降ってくる。

 それと同時に、涙の零れる不格好な表情だけども、視線を彼へと合わせれば、


「………約束をして欲しいだけだ。

 それまで、貴殿も女神の加護の下、息災を願う」


 厳かに、それでいて少し緊張した面持ちで、飛竜鐙の上から見下ろしていた彼。


 その表情には、オレも覚えがある。

 好戦的でいて、闘争本能を剝き出しにした、肉食獣さながらの表情だ。


 以前は、ゲイルがよくこんな表情をしていた。

 最近はジャッキーに塗り替えられていた、というのもあるけども、きっと彼も本質は彼等とそっくりなのだろう。


 オレの返事は、聞く気はないのか。

 その表情のまま、どこか満足そうに口元を歪めたダグラス氏。


 鐙を踏み込んで、ガルフォンが翼を広げたのを確認する間もなく、


「………ハァッ!」


 気鋭一閃。

 そんなダグラス氏の掛け声と共に、ガルフォンが大きく四肢を踏み込んで駆け出す。


 十分な助走をつけてから、ガルフォンが翼を羽ばたかせれば即座に中空に飛んだ。

 白銀の羽と、その長大な体が晴天の空を切り裂いて行った。


 飛竜は、陸路ではなく空路を飛ぶ。

 だからこそ、飛竜と言う名を持っている、とその背中が誇らしげに主張しているかのように思えた。


「きれいだ…」


 馬鹿の一つ覚えのように、涙を零しながら感想だけを零す。

 いつかまた会えれば、と彼が約束してくれたあの騎乗が、今からとても楽しみになった。


 そんな中、


『またね、ギンジ…!』

『………ッ、ああ、また…っ』


 唐突に飛んできた、精神感応テレパス

 飛行中だというのに、わざわざオレに届くように、ダグラス氏の手綱に抗ってまで旋回したガルフォン。

 意地らしいその姿勢に、またしても涙が零れる。 

 ついでに、その言葉にも。


 ………ちょっと焦った様子のダグラス氏には、折角決め顔で飛び立ったというのにちょっと可哀そうとも思ったけどね。


 でもまぁ、元気になって、何より。

 別れは寂しいし悲しいけれども、今生の別れでもない。


 今生の別れにしない為にも、オレが『予言の騎士(オレ)』として出来る事をしよう。


「………行っちまったな」

「………ああ、悲しいけど、仕方ないしね」

「次は、お前が向かう番だな」

「………うん」


 まだ少し、涙が零れてて、赤くなった眦に穏やかな風が少し痛い。

 呆然と彼等の後ろ姿を見送っていたオレの背後に、ジャッキーとゲイルが並んだ。


 慰めてくれるつもりは無いようだけども、見守ってはくれているようだ。

 ありがたいけど、子ども扱いが少々過ぎる。

 ………まぁ、あんだけぐずったんだから、仕方ないのかもしれないね。


「そんで?今日の予定は、どうなってるんだ?」

「校舎でやることが溜まってるから、そっちを消化してからかな?」


 ジャッキーからの問いに答える為に、苦笑気味で振り返った。

 そうそう、オレもやるべきことをやらないとね。

 いつまでも泣いてなんていられない。


 ………24歳にもなって、ここ最近泣き過ぎだというのは、ちょっと遠慮したい事実。

 げっそり。


「そうか、じゃあ、仕方ねぇ」

「あ、なんか用事あった?」

「いや、オレの用事では無かったんだが、

 ………実は、ディルの野郎が、今日もギンジの師事を受けられるのか、朝からウズウズした様子で聞いてきてよぉ…」

「………仕方ないから、今日のトレーニングに招待してやろうかね」


 おやまぁ、願ったり叶ったり。

 ディルの師事は、どうあってもジャッキーがいる時以外が都合が良いからね。


 ………なんか、親友認定のジャッキーを騙している気がして、ちょっと心苦しいけども。


「では、そろそろ我等も、校舎に戻った方が良かろう?」

「私たちはともかく、荷物が多いのはどちらかと言えば、お前の方だろう」

「うん、そうだね」


 嫁さん達から急かされるようにして、見送りに出た庭から踵を返す。

 少しだけ名残惜しげに振り返った時、白亜の使いのようなガルフォンの雄姿は、空の中点で豆粒程の小ささになっていた。


 また、会えると良いな。

 ………いや………。


 そう考えて、瞬間に頭を振る。


 また、会う為に、生きるのだ。

 決意を新たに、地面を踏み締めた。


 今日も今日とて、オレのスケジュールは大忙しだ。



***



 と言う訳で、


「引っ越し準備開始~!!」

『いきなりだなぁ、おい!!』


 突然ですが、引っ越しします。


 生徒達からは、怒号のように文句が(※むしろ激昂)が飛んだけども、オレとしては元々予定していたスケジュールに沿っているので、いきなりだとは思っていない。

 むしろ、引っ越しに関しては、以前から話していた。

 だから、そろそろだと勘付いていた生徒がいても良いぐらいだろうに………。


 まぁ、オレも連絡が遅くなったのは、反省しよう。


 朝から、ガルフォン(と、ダグラス氏)の見送り。

 午前中は、いつも通り生徒達の強化訓練トレーニングと、ついでに招待していたディル、ディラン、ルーチェの基礎作り。


 そして、午後からこうして生徒達へと引っ越し準備の号令。

 つまり、今ここってところだ。


 オレはオレで、手の空いた時間に部屋の整理は終わっていた。

 いらない書類はまとめて、古紙製造リサイクル

 そのうち、羊皮紙を作ってやろうと思っていたので、試作品製作の為に取っておくのである。


 他に、増え続けていた衣装(※血や泥で汚れてしまった礼服)なんかは、何着かを残して捨てた。

 オレのジャージ以外での、訓練用に使いまわす算段である。


 他に必要なのは、日用品の整理。

 今日明日の日用品や衣服だけを残して、後は全てコンテナ(※のような木箱)に詰め込むだけ。

 ………だったのだが、元々オレ達はほとんど身一つで、異世界にやってきたようなものだ。


 おかげで、大した労力も無く、終わった。

 結局一番嵩張っていたのが、校舎の書類ばかりだったなんて事実が、オレの職業病ワーカホリックぶりを裏付けたよね………。


 とまぁ、閑話休題。


「これは、どうしたものじゃろうか…」

「………これから行く宿屋に、仕舞えるスペースってあるのかしら?」


 なんて、引っ越し作業の最中。

 首を傾げて途方に暮れてしまっていたのは、オレ達と同じく荷物が少なくて部屋の片付けが早かったラピス達。

 ちなみに、ローガンやアンジェさんも、旅装のみだった事もあって早々に終了していた。

 その為にこちら、物置の片付けへと参加してくれている。


 そんな彼女達は、物置に詰め込んでいた生活用品以外の片付け中だった訳だけども、


「この大八車ごと騎士団に預けるって話は通してあるから、悩む必要はないよ?」


 オレも物置の武器類各種オーバーテクノロジーの整理を行っていた傍ら、困り果てたと言っても過言ではない彼女達に、休憩がてらシガレットを片手に苦笑を零す。


 別に、仕舞う必要があるのは、騎士団の倉庫であって宿屋の倉庫ではない。

 むしろ、そのスペースを確保するだけで、一軒家を貸し切らざるを得ないという事が前段階で分かっていたので、既にゲイルにも騎士団の管理部署やらにも話は通してあった。


 なので、彼女達の心配も実は杞憂。

 言ってなかったから、これはオレも悪かっただろうけどね。


「大八車ごと、預けちゃうの?」

「うん、そのつもりだよ。

 結局、校舎の改築が終わったら、また搬入しなきゃいけないし…」


 シャルの問いに答えながら、大八車の荷物をポンポンと叩く。

 金属音がした為、おそらくはラピスの研究成果や、その製作の為の機材か何かだろう。


「倉庫を一つ空けたから、量に関しても心配はいらんぞ。

 元は戦役中に増築した兵糧の保管倉庫だったから、今は使われなくなって久しいものだしな、」


 オレと同じく、苦笑交じりで、荷物を大八車に載せていたゲイルが戻ってくる。

 シガレット休憩だったのか、オレの隣にどっかりと腰を下ろして、額に滲んだ汗を手の甲で拭っていた。


 彼の言う通り、倉庫の容量も申し分ない。

 オレが事前に視察した結果、大八車も3台は余裕で入るぐらいだし、武器類各種については別の場所での保管も決まっているから問題ない。

 十数年前の戦役当時に増築した倉庫と言うこともあって、セキュリティに関しても十分だった。


「あい分かった。

 ならば、遠慮なく積載してやるとしよう」

「………運べる程度にはしてね?」


 なんか意気込んでいるところ悪いけども、重すぎて大八車押せないとか壊したとかはないようにね。

 一応、大八車に関しては、全て騎士団からの借りものだし。

 ………まぁ、壊れても買い上げるから良いにしてもね。


 とはいえ、やはりそうは言っても、やはり荷物は少ない。

 生徒達も、身一つで出てきたというのがあって、こちらで増えた荷物を取ってもささやかな旅装程度の範疇で収まっていた。

 嵩張るのは、オレの武器類各種や家具類、機材等々。

 旧校舎から運び出してきた、向こうの世界での備品も多々あるが、消耗品を使い込んでいる現在は既に、荷物は微々たるものだった。


 この調子なら、あっと言う間に引っ越し準備も終わるだろう。

 まぁ、大変なのは、ここからだとは分かっているんだけどねぇ。


「先生、荷造り終わったよ~!」

「荷物の運び出し、もうやっちゃう?」


 そこで、校舎から生徒達から数人、進捗情報の報告の為に出てきた。

 ほとんど全員が、元々の片付けが得意な連中ばかり。


 ………女子組と徳川が遅いのは、通常運転だろうね。

 まぁ、押して察するよ。


 とはいえ、予想以上に早かったのは事実。

 懐中時計を見て、時間を確認しても荷造りからたった数時間だった。


 ………ちらり、とゲイルへと視線を向ける。


「別に、倉庫に関しては既に手配済みだから、今日のうちに運び出しても問題はないぞ」

「………察してくれてありがとうよ」


 アイコンタクトで言いたいことが通じた神秘。

 ………オレとしては、この筋骨逞しいゲイルとのアイコンタクトだという事実だけが、悲しいだけだがな。


 まぁ、それはともかく。

 ベッドなんかの家具類は残して、運び出してしまおう。

 実際、毛布や布団さえあれば、最悪いつかのようにダイニングやリビングで雑魚寝でも1日ぐらいなら平気だろうし。

 オレの夜の性活が妨げられるだけだ。

 ………うん、なんの問題も無い気がする。


「………お前、いやらしい事でも考えていないか?」

「………ローガンッタラ何ヲ想像シタ訳?」

「目を見て言ってみろ?」

「………ゴメンナサイ」


 エスパーか…。

 嫁さんにちょっと内心が漏れたらしく、真顔で怒られた。

 昼間っから、そんなことを考えるな、と言われたとしても、昼間っから発情して襲われた事実を棚に上げおって…!


 ………って考えたら、真っ赤な顔で睨まれた。

 あ、これまたバレた?


 まぁ、そんなことはさておいて。

 話が逸れたけども、


「終わった男子組から、各自荷物の運び出しに移行。

 女子組は、運び出しが終わった場所から、掃除に移ってね」

『了~解』

『はーい!』


 オレ達のやり取りを生ぬるい視線で見守りつつ、待機していた生徒達へと指示を飛ばす。

 ………今までのやり取り、完全に見られていたと思い出したのか、ローガンが真っ赤になって更に尻を抓ってきたけど…。


 ………いやぁ、マジ。

 しばらくは、ローガンを怒らせないようにしよう。

 尻の肉、千切れるかと思ったからね。 



***



 荷物の運び出しや、清掃も順調に進んでいた頃だった。

 ふと、用事があってダイニングへと戻ると、丁度良く騎士団の連中が玄関口からやってきた。


 大仰ながら増援か?と小首を傾げた矢先、


「お忙しいところ、申し訳ありません、ギンジ様。

 国王陛下からの要請で、王城への出向をお願いいたしたく馳せ参じました」

「………うん?」


 きょとり、と瞬きを繰り返しつつも、騎士団からの言葉を嚙み砕く。

 つまりは、お呼び出しって事で良いのかね?


「ゲイルー!今日、王城で何か予定入ってたか~!?」


 と、ダイニングから騎士団長へと声を張り上げる。

 聞こえたかどうかは不明。

 実際、運び出しやら掃除やらで埃が立つので、ダイニングの窓とか階段の窓とか開けっぱなしだったしね。


「………いや、何も無い筈だ。

 必要な会議については、職員会議の時にも話した筈だったし、」


 どうやら聞こえたようだ。

 裏口からキッチンのドアを開けてダイニングに入ってきたゲイルが、顎に手を当て思案をしつつも答えてくれる。


「あ、いえ、国王が言うには、会議とは別に報告があるとかで、」


 あ、そう?

 じゃあ、引っ越し作業の途中だけども、呼び出されちゃおっか。


「悪いけど、」

「(お気になさらず)」


 皆まで言う必要もなく、間宮が既に出かける準備をしてくれていた。

 武器類各種、まだ半分も運び出してないんだけど、大丈夫なんだろうか?


 とはいえ、送り出してくれたのでそのまま、王城へと出向する事にした。


 ついでに、余計な事だろうと思いつつも、生徒達へと声を掛ける。


「ちょっと出かけてくるけど、サボるなよ~」

『サボりの張本人が何言ってんの?』


 したっけ、今しがた部屋の片付けが終わっただろう杉坂姉妹からぐっさりと刺さる一言を受け取ってしまった。


 別に、オレだってサボりじゃないしッ!

 一応、これも『予言の騎士』としての職務の一環だし!


 いや、マジ………余計なことは言うもんじゃない。



***



 生徒達からは逃げたなんて理不尽な言葉を貰いつつ。

 嫁さん達からは、こういう時ぐらい仕事は程ほどにしろ、と釘を刺されつつ。


 王城へと出向したのは、15時を過ぎた頃だった。


 ついでに、丁度良いからと積載の終わった大八車から、馬で牽引して騎士団の倉庫へと預けておいた。

 ………お馬さんが、ちょっと厳しそうだったから、仕方なくもう一台大八車を借りる事を決めておく。

 先に一回、運び込んでおいて良かった。


 なんて、荷台と一緒に運ばれつつ(※歩くのが面倒だった訳じゃないよ?こうしないと、荷物が崩れそうだったから押さえていただけだし…)、王城へと辿り着いた。

 いつも通り、国王陛下の執務室へと案内される。


 と、即座に、


「ご足労いただき、申し訳ありません。

 急遽、ギンジ様の耳に入れておかねばならぬ、多数案件がございました故、」

「お気になさらず…」


 単刀直入で、切り出された内容。

 国王陛下の表情を見るに、おそらく結構切羽詰まった要件だと思われた。


 ………まぁ、予想は付いてるんだけどね。


「実は、昨年に復興した東端の国の件で、」

「ああ、旧ダーク・ウォール王国の件かな?

 まさか、『予言の騎士』が擁立でもされたとか?」

「………ッ、ま、まさに、その通りです…!

 ご、ご存じだったのですか?」

「………ウチの校舎で、冒険者ギルドの依頼を授業に組み込んでいるって話は、何度もしていたと思うがな…?」


 軽いジャブのつもりだったが、見事にストレートが決まったようだ。

 国王が表情を、鹵獲された家畜のようなものに変えて、見るからに動揺しているように見えた。


 むしろ、何故知らないと思っていたのか、20字以内で教えて?

 情報開示がされてないから知らない、ってのが一番妥当だとは思うけど?


 内心が表情に現れたのか、にっこりと笑ってしまった。


「ひっ…お許しを…ッ!」


 ら、国王陛下までもが、大仰に仰け反った。

 やっぱり、オレの笑顔はNGが多いらしい。


 まぁ、あんまり虐めるのは、色々な無茶を言っている手前、今回は辞めておくがね。


「随分と派手にやらかしているとは聞いてるな。

 冒険者ギルドでも大層な話題になっているらしいから、オレだって耳にする機会ぐらいはあったさ」


 暗に、ゲイルから聞いた訳ではないと釘を刺す。

 これ、バレたら、ゲイルも謹慎だけじゃすまないと思うんだ。

 オレ達としてはありがたかったとしても、騎士としては猛省しなきゃいけない不祥事だもの。


 国王の後ろに控えつつも身じろぎしたゲイルが居心地が悪そうではあるが、まぁ良いだろう。

 そのまま話を続ける事にする。


「それで、その『予言の騎士』一行が、今度は何をやらかしたって?」

「………い、いえ、別に、何かをした、という訳でもなく。

 まぁ、商隊キャラバンを巻き込んでの魔物の討伐作戦で、多くの負傷者を出したという直近の情報は入っておりますが………、」


 うん、その話はもう聞いているから、驚きはしないけども。


 本当に、洒落にならないよねぇ。

 国王ともども、辟易とした表情を隠せないまま、大仰な溜息を吐く。


 まぁ、それは良いとして。


「………で、それ以外の別の要件ってのは?」

「実は、このような書簡が、今日届きましてな…」


 そう言って、国王が懐から取り出した一枚の手紙。

 蝋印が施されているので、公式文書なのは間違いないだろうが、いったいどこからのものだろうか。


 既に封を切られている手紙を受け取った。

 受け取る途中、ゲイルが蝋印の出所に心当たりがあったのか、表情を強張らせた。


 書簡の宛名は、王国へ。

 完全に公式文書だというのは分かるが、問題はその差し出し国の名義。


「………新生ダーク・ウォール王国………」


 まさに、例の偽物『予言の騎士』一行を擁立した国からの、直々の書簡だった。


 オレも多少緊張をしつつも、その手紙を開く。

 中身を改めると、


「………うわ、マジかよ。

 遂に奴ら、『聖王教会』本部への巡礼を視野に入れたらしいぞ…」

「………つ、つまり、ここに来るということか!?」


 オレの一言で察しがついたのか、ゲイルが素っ頓狂な声を上げる。

 大袈裟ながらもその反応は、致し方ない事だ。


 手紙の内容は、半分が王国復興までの道順や経過、お互いに東端南端ではあるが仲良くできませんか、的な政治的なやり取り。

 そして残り半分が、擁立した『予言の騎士』一行の活躍や功績を称えるものと、今後の巡礼予定、それに合わせた歓待の承諾を求めたものだ。


 つまり、『名実共に申し分ない功績を引っ提げて大手を振って本部へと乗り込むので、国を挙げて歓迎してくれ』、と遠回しに要請しているということだ。


 ただ、時期については詳しく書かれていない。

 それがいつになるのかは、国王の交渉次第。

 ただ、相手方はなるべく早めに、とせっついているようだ。


 これには、流石のオレも眩暈を感じた。

 ソファーの背もたれにぐったりと、もたれ掛かってしまう。

 だが、咎められはしなかった。

 むしろ、咎められないだろう。


 この問題は、以前の『白竜国』の一件と同じく、『予言の騎士』と『その教えを受けた子等』であるオレ達が、完全に中心となってしまう話だから。


「………国としての対応は、どの辺りまで協議出来ている?」

「一応は、東端とはいえ元は大陸随一の要塞国でしたので、それ相応の対応を、と議会では決定しております」


 つまり、受け入れる訳でもないけれど、撥ね退ける訳でも無いって事だな。

 ………波を立てないなら、それが妥当だな。


 そもそも、巡礼を断ったとかいう『黒竜国』やらの『竜王諸国ドラゴニス』が、国家として圧倒的に立場が上ってだけだ。

 要塞でもなく、貿易国としての側面の強い弱小国のダドルアード王国では、この程度が関の山。

 大人しく歓待を引き受けるしかない。


 余計な波風を立てないのが、一番無難って事。

 万が一、要請の棄却が原因で戦争を吹っ掛けられでもしたら、折角の『黒竜国』VS『青竜国』への布石が水の泡になってしまう。

 戦争って、連鎖反応が起きやすいから、注意していないと一斉に燃え広がるしね。


 とはいえ、


「………それを今言われても、ねぇ…」


 元から『予言の騎士(ニセモノ)』がいると言うのは知っていた。

 だとしても、こっちにその情報が開示されたのが、こっちに来る予定があるから、なんて話があってからだ。

 隠し通せなくなった、と暗に分かったからこそ話したのだろう。


 基本的に、信用はしないとは言っていたけども、


「………出奔して欲しいってことで良いのかな?」

「そ、そのようなことは、滅相もございません!!」


 オレの一言に、泡食って否定した国王陛下。

 ゲイルも真っ青な顔で取り成そうと必死になっているが、お前はボロを出すだろうから喋るな。


 オレ達に出て行って欲しいとしか思えない。

 情報開示しない時点で、オレ達にとってもあんまり良い環境とは思えないもの。


 うんざりとした表情を隠しもせず、書簡をテーブルへと投げる。

 頭痛が痛い。


 国王陛下も、これには流石に呵責を感じているのか、


「申し訳もありませぬ。

 もう少し早く、我々としてもお伝えするべきだったと思ってはおります」


 そう言って、真摯な姿勢で頭を下げる。


 こういうところは、愚鈍な国王じゃないって分かるから、良いけどね。

 溜飲は下がる。

 仮にも、国のトップの頭が下げられているのだから、オレも大人な対応はしなくてはならないだろう。


「………反省してくれるなら、良いさ。

 ただ、こっちだってただ手をこまねいて、アンタ等からの情報を待っているだけだとは思って欲しくない」

「………承知いたしました」


 情報源が、何も彼等だけではない、と含みを持たせておいて、この話は打ち切りとした。


 協議の結果は、基本的に国の方針だ。

 勝手に変える事も、決定を覆すことも出来ない。

 それこそ、反発や不満を招くから、オレとしてもそれは最終手段としておきたい。


 ………また大きな事故でも事件でも起こしてくれたら、それを理由に巡礼拒否は出来るだろうけどね。

 まぁ、それはそれで、犠牲者を望むことになるからあんまりな話だが。


「まぁ、この話は良いや。

 ゲイルには既に、オレの今後のスケジュールは渡してあるから、何かしら参加しなきゃいけない行事があるなら、ゲイル経由で申請してくれ」

「承知いたしました。

 ともあれ、ギンジ様とてお忙しい身の上でございますれば、なるべくこちらとしても接触が出来る限る少なく済むように調整致しましょう」

「ああ、そうしてくれると助かるよ」


 そうしてくれるのが、一番助かります、マジで。

 察してくれてるのか何なのか、今の一言で今までの秘匿はチャラにしても良いと思ったぐらい。


 まだ向こうの戦力の把握出来ないから、出来る限りの接触は避けたいしね。


 他にも、細々としたものは決めておく。


 『聖王教会』への巡礼を目的にしているからには、歓待については主に『聖王教会』頼みになるだろう。

 とはいえ、滞在する間は、国賓相当の扱いが求められるのは必至。

 つまり、王国としては王城での歓待が当然出てくる。

 その為、その間の行事をずらすか、もしくはオレ達の参加しないものへと切り替えるか。

 あるいは、その両方が必要になるだろうね。


 3月は期末となる月であり、行事も当然増えていく事になる。

 しかも、行事以外でもオレが顔を出さなければならない事案も多数ある為、これまた調整が必須だ。


 ………ほとんど参加していないとはいえ、石鹸やシガレットの工場の経過観察とかもオレの仕事だしね。


 ついでに、今後は医療部門の活動があるので、特許取得の為には結局『商業ギルド』のみならず、王城への出入りをしなくてはならない。

 (※特許の取得って、王城での許可が必要だから)


 偽物『予言の騎士』一行との邂逅は、避けては通れないだろう。

 だが、最低限に抑える為には、慎重に予定を調整しなくちゃならない。


 そこらへん、国王陛下も押して察してくれているのか、渋る事も紛糾する事も無く決定していったけどね。


 まぁ、偽物『予言の騎士』一行対策は、これぐらいで十分だろうか。


 オレとしては、南端砦に遠征している頃に、通り過ぎてくれるのが一番良い。

 けど、そう上手くはいかないのが世の中ですって、知っているから。


 ………唐突に、ガルフォンに会いたくなってしまった。

 癒しが足りない証拠だろうか。

 ………犬でも飼おうかな、生徒達のカウンセリング名目で。


 閑話休題それはともかく


「…さて、対策については、このぐらいか?

 後、オレ達に関連した事項で、何か報告しておくことある?」

「………いえ、特には無かった筈ですな」


 執務室に通されてどれだけの時間が経過したのか。

 紅茶が3杯と、お茶請けとして出されたマフィンらしきものがあらかた消費された辺りで、やっと会議の目途が立ったようだ。


 時刻は、既に17時を回っていた。

 ああ、このままだと、また生徒達からサボり認定を受けてしまうではないか、畜生め。


 そんなことを考えながら、やや辟易としながらも帰り支度を整えていると、 


「…ああ、そういえば、」


 ふと、国王陛下が何かを思い出したのか、オレの後ろ背に向けて声を掛ける。


「お耳に入れるかどうか迷ってはおりましたが、知っておいた方が賢明であろう内容が一つございました…」


 意味深な一言を添えた前置き。

 その一言に、ふとゲイルともども背筋が怖気立ったのは気の所為ではなかった事だろう。


「実は………、」


 その国王陛下から続いた一言。

 それが、オレ達(・・・)の残されていた仕事がやっと終えられる事を意味していた。



***



『遅ッ~~~い!!』

「仕事だとは分かってるけどさぁ!!」

「運び出しも積み込みも、掃除も終わっちゃったよ?」


 校舎に戻って開口一番、文句が発せられる。

 仁王立ちになった杉坂姉妹にシャル、榊原と徳川。

 他の生徒達は、残されたダイニングの家具にもたれつつ、溜息混じりである。


 嫁さん二人は、ソファーに懐いて、相変わらず胡乱げな視線を向けている。

 オレ、頑張って国王と協議してきたのに、報われない。


 とはいえ、


「悪い悪い、良いニュースも悪いニュースも、ごちゃ混ぜでやってきたもんだから、」


 内容に関してはぼかしつつ、苦笑を零しておく。

 最近、生徒達が反抗期だと思いつつも、口に出したら『子ども扱いするな!』と言われるのが関の山だから言わないでおく。


 ………やっぱり、癒しが欲しいよ。

 ガルフォン、カムバック。


「遠い目しているところ悪いけどさ、」


 そんな癒しを求めているオレに向けて、榊原が挙手。


「今日、ご飯どうするの?

 食料消費しなきゃ腐っちゃうんじゃないの?」


 なんて、彼の心配事。

 ………片付けが終わるよりも先に、材料の心配かよ。


「………正直、どんだけ残ってるのか不明なんだが、」

「オレ達にまかせっきりだもんね、食事も片付けも」


 あらまぁ、ちょっと根に持っていらっしゃる。

 ………事実だから否定は出来んがね。


 とはいえ、


「作り置きしたうどんがしこたまあるから、引っ越しうどんでもしようかと思ったんだが、」

「それで良し」

「でも、野菜と肉類はちょっとしかないんだよね。

 野菜も玉ねぎと人参(※のようなもの)がいっぱいあるだけだし、」

「卵はあった筈だな」

「ああ、そういやそうね、後小麦粉もいっぱいあるよ?」


 ………月見うどんとかき揚げしか思い付かない。

 だが、それで良いような気がしてきた。


「じゃあ、それで…」

「………丸投げだね」

「………丸投げだな」

「………勿論、手伝うよ」

「茹でるだけだよね」

「茹でるだけじゃねぇか」


 仕方ねぇだろ、畜生!

 それしか出来ねぇよ、片腕なんだから!

 ってか、根に持ちすぎだろうが、ちょっとは教師を労えよぉ!!


 なんて言えないまま結局、この日は月見うどんとかき揚げになった。


 野菜が足りないとか思いつつも、まぁ明日からの飯が宿の料理になるのだから、今日ぐらい良いだろう。



***



 その翌日である。


 まずは、荷物の運び出し。

 大八車を一台追加して残りのベッドやらテーブルやらを積載していく。


 既に運び出しを終えていた大八車に関しても、騎士団の倉庫へと預け終える。

 その足で、今度は宿泊予定となっていた宿へと、生徒達各位の荷物を置きに寄った。


 チェックインをして、部屋の場所などを確認するだけでまた校舎に戻るつもりだったのだが、


『凄ぇ~~~~…ッ!!』


 生徒達の歓声の通り、長期滞在を予定してた宿屋のグレードはかなり高かった。

 なんでも、普段は国賓や他国の貴族家の接待を目的にしている宿だとか聞かされた時、またしても眩暈を感じてしまった。


 中でも、生徒達が歓声を上げたのが、オレの宿泊予定の部屋。


「オレ、こんなランクのホテルを予約しろとは言ってない…」

「国王の善意だ。

 気兼ねなく受けておいて、損は無いと思うぞ?」


 ………オレの部屋が、ベガスのスイートルーム(時価ウン千万単位)だとか。

 折角国庫が安定したんだから、無駄遣いすんなよッ!!

 オレは、生徒達が気兼ねなく強化訓練トレーニング出来る庭があればそれで良いとしか言ってなかった筈だが!?


 なんと、丸々ワンフロアをぶち抜いた仕様の、5LD。

 キッチンは流石に無かったけども、完全にこれ給仕がくっついてくるタイプの宿だわ。


 しかも、エキストラ加えて、ベッドが4台って?

 必要なの?

 ねぇ、必要なの?


 と、思わずゲイルの首を締めあげてしまったけども、護衛目的でオレも泊まるとか言われてベッドの運び出しを決めた。

 遠慮する。

 むしろ、お前が遠慮してくれ。

 同室ではないとはいえ、男と寝泊りなんて最悪だよ!!


 とかなんとか。

 色々あって、時間を大幅にロスしてしまった。


 しかも、生徒達も生徒達で部屋がかなり豪勢なのか、大興奮だった。


 女子組なんて、しばらくベッドから離れたがらなかったぐらいだもんな。

 天蓋付きベッドってのは、どうあっても女子の夢らしい。


 更に更に、生徒達が全員一人部屋だった事も吃驚だった。

 ビジネスホテル的な感覚で一つの部屋に2人とか考えていた所為か、もう吃驚し過ぎて疲れたよ。


 ただ、嬉しい誤算が一つだけあった。

 ラピスやローガン達も当然、同じように泊まる訳だ。


 だが、今まで彼女達は同室である娘や妹の手前、堂々とは動き回れなかった。

 気を使って、夜中に寝静まるまで待ったりなんて事もあったからな。


 しかし、こうして一人一部屋となったからには、動き回るのもそこまで苦も無いだろう。 

 来たいと思ってくれるなら、いつでも来れる。

 むしろ、オレが足を向ける事も可能、と言う事で少しばかり嬉しいと感じる今日この頃。


 桃色白書は、この辺にしとこう。

 また、察知されたのか、ローガンの視線が険しくなっていたし。


 そんなこんなで、泊まる宿のグレードにプチパニックを起こしつつも、何とか持ち直して校舎へと戻る。

 あらかたの掃除は終えているとは言っても、やることはまだまだある。


 昨日と同じく、清掃だけで午前中を終えた。


 とは言っても、細々としたところは既に終わっていたので、大まかな部分。

 埃を払って、床を水拭きして、新居同然まで漕ぎ着けるまでで大分生徒達がへこたれてしまっていた。


 また、間宮とオレは、屋根裏をどうにかしなければならなかった。

 以前の鼠騒ぎで、少々心許ないながら巧妙な罠を多数、配置していたからね。


 とはいえ、間宮も間宮で清掃の片手間に解除はしていたのか、残っているのが半分程度。

 手間暇掛かるものは、先に解除したらしく問題は無かった。


「………ってか、屋根裏の罠だけで、また荷物が増えたな…」

「(考慮してませんでしたね…)」


 気づけば、コンテナ一個分になっていた罠に、逆に驚いた。

 オレの荷物として、宿に運び込むしかあるまい。


 まぁ、それは良いとして。


「おやまぁ、わざわざ清掃までしてくださったようで、」

「頼むからには、徹底的にやっておきたかったんでね」


 午後になってから、改築をお願いしていた業者『建築連合』のジョンと親方、その他従業員各位がやってきた。

 既に、今日から改築の前準備をしてくれるつもりだったのか、足場なんかを荷馬車で運び込んでいる。


 受け渡し前に、ここまで清掃が終えていたのは初めてとの事でジョンには驚かれた。

 元々、こちらでは清掃や家財の運び出しも込みで、改築などを引き受けていると聞いて、今度はこっちが驚かされたけども。

 ………現代人の感覚が、こっちでは通用しないらしい。

 普通、リフォームとかの時って、運び出しはこっち側でやっておくんじゃなかった?


「とはいえ、これなら今日のうちから、中の改装に入れますよ」

「早めに終わるかもしれませんねぇ。

 まぁ、一応主柱なんかのメンテナンスも含めておきますよって」


 あらまぁ、なんか至れり尽くせりで頼もしい。


 改築ということで、外観は変えないままだ。

 中身を改善してくれる訳だし、その為に主柱なんかは残して、そのまま補強なりなんなりをしてそのまま再利用する。


 ただ、建築されてから結構経っているらしいので、もしかしたら全面的に取り換える可能性は指摘された。

 まぁ、任せるからには好きなようにして貰った方が良いだろう。

 こちらとしては、増築する部屋数と物置を注文したぐらいだし、素人が玄人に口出ししてもあんまり良くないだろうしね。


 と言う訳で引き渡しを、終了。

 そのまま、今日から改築工事に入ってくれるという事で、オレ達はそのまま校舎を後にする。


「リフォームとか、体験できるとは思ってなかった…!」

「こっちの世界では、特にな」

「部屋狭くなるとか言われたけどさ、」

「今まで広すぎたんだから、良いんじゃない?」


 なんて、宿に戻る傍らで、生徒達が楽し気に会話をしている。

 生徒の中には、豪邸暮らしなんて面子もいるから、多少不満が出るのは覚悟していたが、何も無いようで何よりだ。

 日本人は、広い部屋よりも狭い部屋の方が落ち着くしね。

 例外はあるだろうけど。


 壊れてしまっていた部分もあったので、それも直ると考えれば良いだろう。


 ともあれ、しばらく校舎とはお別れだ。

 慣れない宿暮らしで苦労はするだろうが、何事も経験である。


 そう思っていたのも、束の間。


「校舎のベッドも、天蓋付きに出来たりしないかなぁ…」

「やっぱ、伊野田も夢見る乙女じゃん?」

「先生にお願いして、付けて貰っちゃおうか!」


 女子に関しては心配なさそうだ。

 良いよ、たまにオリビアとかシャルとか寝ているところを覗かせてくれるなら。


 ………想像しただけで、マジ癒し。


 しかしながら、嫁さんからは不興を買ったらしい。

 またしても、尻の肉が千切れるかと思った。



***



 なんて、引っ越し作業がひと段落した後。


 向かったのは宿では無く、『聖王教会』のダドルアード王国本部である。


「『聖王教会』とか久々だよねぇ」

「先生は、しょっちゅう来てるみたいだけど、」

「オリビアもね」

「だから、仕事だってば、」

「面目ないですわ」


 生徒達としては、久々である『聖王教会』。

 オレは生徒達の言葉通り、オリビアともどもしょっちゅう顔を出しているので、まぁ否定は出来ん。


 別に面目ないとは思わなくても良いと思うけどね。

 要は実家帰りだけども、近くなんだからそれはそれで良しとしてよ。


「おや、ご息災でございましたか?」

「前は、弱った姿を見せて、悪かったな。

 この通り、体調も多少は復活したから、巡礼の予定でも詰め込もうかと思ってさ、」

「それは、本当でございますか!?」


 対応してくれたイーサンから驚かれつつも、苦笑。


 巡礼の日取りはまだ未定ではあるが、5月には第一弾を敢行する旨を伝える。

 こういうのは、早めに言っておかないと。

 出来れば、『予言の騎士』一行と鉢合わせにならないようにと願っての皮算用もあったりなんだり。


 まぁ、彼としては自身の巡礼も満足に行えていないから、オレ達の巡礼に付いていくつもり満々なんだろう。

 喜ぶ訳である。

 道中の護衛が、確保出来たも同然だしな。


 まぁ、それはさておき。


 そこで、『聖堂』へと足を踏み入れる。


 相変わらず、99対の視線が向けられるが、どれもこれも安堵が含まれていた。


 以前、オレが体調不良でダウンした時期に、ここには癒しを求めてやってきたものだったが、いやはや問題が解決するだけでこの変わりよう。

 我ながら、現金なものである。


『まぁ、お元気になられたようで、何よりですわ!』

『今日は、顔色も赤みを帯びてらっしゃいますのね』

『良かった。

 一時は、どうなる事かと思っておりましたが、』


 等々。

 そう言って、一斉に周りに集まってくれる女神様方。


 ガルフォンがいなくなったオレにとっても、彼女達は相変わらず癒しである。


「ご心配をおかけして申し訳ありませんでした。

 この通り、順次公務へと復帰しておりますので、」


 そう言って、微笑みながらも背後へと振り返る。


 そこには、半分が呆然と、半分が驚愕の表情で立っている生徒達の姿がある。

 実は、聖堂に入るのは、生徒達も初めてだったりする。


 簡易成人式を行った際使ったのは、この『聖堂』ではなくチャペルなんかに使っている、別の聖堂だったから。

 文字通り、『聖域』となるここはミサの時と、『神託の儀』にしか使われていない。


 さて、そんな場所に、何故生徒達を連れて来たのか。

 ついでに、ゲイルやラピス、ローガンなんかも連れて来てはいるが、


「さて、ここにいる女神様達が見える者は挙手。

 見えないものは、一歩後退だ」


 そう言って、彼等に指示を出せば、案の定。

 呆然としている組は一歩後退、その代わり驚愕をしていた組が挙手をした。


 伊野田、香神、河南、紀乃、間宮、シャルが、挙手をしていた。

 浅沼、榊原、エマ、ソフィア、徳川、長曾根が、一歩後退。

 見事に、半分に分かれたものである。


 ちなみに、生徒達以外でも、ゲイル、ラピス、ローガン、アンジェさん、とアダルト組は全員が挙手。

 まぁ、ゲイルは昔から精霊と会話が出来ていたと言っていたし、ラピス達も種族柄視えているというので然もありなん。


 ………イーサンまでもが参加して、悔しそうに一歩後退したのはどうなのか。


 そして、女神と精霊が、同列なのかどうか。

 良いのだろうか、それで。


 まぁ、審議は置いておくとしよう。


「今、挙手をした面々は、魔法の授業をラピスからの師事へと切り替える。

 精霊が見えている前提で、より高度な魔力を精力的に教えてくれることになるから、そのつもりでいる事」


 今しがた、挙手をした伊野田達へは、ラピスが魔法講師となる。

 基礎を飛び越して完全に魔法能力をものにしている彼女達には、うってつけの講師となる訳だ。


「また、今一歩後退した面々は、オレと共に引き続きゲイルからの師事を受ける事になる。

 優劣を付ける訳でも無いが、基礎を重点的に補って、今後の魔法能力の増強を目標にしてくれ」


 そして、残りはオレと共に、魔力の調整と実技を磨く。

 ゲイルもゲイルで基礎はしっかりと学んだ、講師に適した人材であるからして、ラピスとはまた違った実直な魔法講師となれるだろう。


 実は、これ魔法教育の判定だったの。


 精霊を視える眼ってのが、どの時点で養われるのかオレも定かではない。

 実際、オレも視え出したのは、つい最近だもの。


 ただ、生徒達の中には、最初から見えていた者もいれば、徐々に見え出した者、それから全く見えない者までいる。


 何故気付いたのか、と言えば。

 何度かオリビアが、実体化を保てなくなった時の事が原因。

 魔力不足でほとんど気配だけとなってしまったそんな彼女が、視えていた面々と視えていなかった面々がいたのに気付いたのが、始まりだった。


 視線の追い方、目線の行方、声を掛ける向き。

 実は、目敏く見ていたりしたんだよね。


 その時に思ったのが、女神と精霊の見え方って実は同じなんじゃ?って疑問。

 ずっと考えていたんだけど、こうして用事が出来たついでに直接生徒達に聞いてみようと思って『聖堂』に入らせて貰ったんだよね。

 いやぁ、イーサンに無茶は言ったけど、正解だったね。


 おかげで、今後の生徒達の教育方針が決まった。

 しかも、見事に半分にばらけてくれたから、こちらとしてもやり易い。


「宿に引っ越したとはいえ、まだまだ修練を行うからそのつもりでな。

 ちなみに、今回視えていない面々は、視えるようになった時点で見えていた面々に随時移動予定というのも、付け加えておく」

『はいっ!』


 ともあれ、これでなんとか今後の方針も決まったな。

 残りの仕事も、今日一日の有限な時間もあと僅かである。



***



 『聖王教会』を後にして。


 その後は、待ち合わせをしていた面々と合流する。

 場所は、以前にも使った銅像の前だ。


 勿論、ウチの校舎への編入予定である、ディランとルーチェだ。

 宿への引っ越しと同時に、彼等にも合流してもらうことを決めていたの。


 新しい校舎になれば、始業式をまた別にする予定ではある。

 けど、一緒に暮らすことになるからには、早い段階から2人を慣らしていく算段って事でね。


 実は、この間の依頼への同伴と買い出しの後に、既に連絡していた。

 なので、オレ達が商業区入口に到着したと同時に、合流した訳。


 大荷物を抱えたディランとルーチェ。

 今後の生活の為に絞っては来たと言うし、後々校舎に搬送予定の荷物もあるだろうが、まずは一緒に生活して慣れて貰おう。


「今日から、生活するのは市井しせいとなる。

 それに、オレの下で動く事になれば、当然、編入試験の時とは比べ物にならない程の地獄の訓練漬けが待っている。

 その準備も覚悟も十分なら、そのまま付いておいで」

「勿論です!」

「これから、よろしくお願いします!」


 脅しを加えながらも、にっこりと笑ってやる。


 少し表情には、緊張が現れている。

 だが、圧倒的な展望がある所為か、どちらも目が爛々と輝いていた。


 まだまだ堅苦しさは抜けないようだけども、これで全員が揃ったね。


 出席番号に変動を加えて、後々生徒達に配布してやろう。

 ………また騎士団の面々を借り出すことになりそうだわ。


 まぁ、閑話休題それはともかく


「じゃあ、宿に戻りますか。

 一応、ウォーミングアップ程度で許してやるけども、食事までの時間に今日出来なかったトレーニング分は動いておけよ」

『了解~』 

『う~い』


 後は、宿へ帰るだけだ。

 まぁ、生徒達の午前中のノルマが丸々残っているので、トレーニングはサボらせないけども。

 おざなりながら、返事が返ってきたので良しとしよう。


 ちなみに、オレとしても一日のルーチンが終わってないから、実はちょっとウズウズしていたり。

 間宮との修練も、ましてやオレの筋トレも終わってない。

 だから、食事よりもそっちが楽しみなんだよねぇ。


 ………オレも脳筋だった訳だ。

 他人の事、言えなくなってしまった。


 主にジャッキーとか、ゲイルとか、ディルとか、ローガンとか、ジャッキーとか。



***



 と思っていたからなのか、なんなのか。


「いよぅ!!偶然じゃねぇか!

 今日も、生徒達引き連れて、お出かけかい!?」

「げっ!?」


 商業区の飲食店が立ち並ぶ通りの辺りで、見つかってしまった。

 誰に?

 ジャッキーに決まってんだろ。


 噂をすれば、影とはこのことか。

 思わず、カエルの潰れた時のような声を出してしまった。


「飲みに行くところなんだが、お前も一緒にどうよ!?」

「い、いや、これから宿に戻る予定でな。

 それに、食事も宿で頼んであるから、」


 しどろもどろになりながらも、ホールドされかけた腕から逃れようと身を捩ろうとして、


「………テメェ、さっきオレの悪口でも考えていなかったか?」

「ナ、ナンノ事デショウ?」


 失敗。

 おかげで、恐怖の大魔神、もとい酒呑童子ジャッキーにオレが鹵獲された。


 生徒達の生温い(※一部は驚愕の)視線が突き刺さる。


「姉ちゃん方もどうよ!?」

「我等は遠慮しておくでな」

「ああ、ギンジもゲイルもいないのだから、私達が生徒達の保護者代わりにならなければな、」

「ちょ、ちょっと待て、オレもか!?」


 そして、誘われた嫁さん達は完全にオレを売った。

 しかもご丁寧に、ローガンがしれっとゲイルまでもを売っていた。


 おかげで、彼の犠牲者がまた一人。

 オレ同様、ゲイルも襟首を掴んで鹵獲された挙句、


「………ウチの娘と、飲みに行った話、詳しく聞かせてくれや?」

「ん゛な゛っ!?な、なんの話やら…ッ!」


 逃亡に失敗。

 二人揃って、酒場《地獄》への連行が決定しました。


 しかも、ゲイルの弱み、なにそれ?

 娘って、まさかレトの事?

 しかも、飲みに行ったって、まさかまさかで2人きりだったとか…ッ!?


 ………超聞きてぇ。

 出歯亀上等じゃん。


 なんて思っていたのも束の間、


「テメェも、オレの息子を勝手に誘惑しやがった件を、詳しく聞かせてもらうからそのつもりでな…?」

「うげぇ!?」


 うっ、わ、やばい!

 なんで、バレてるし!!


 ディルの事、勝手にスカウトしてたって、何でバレてるの!?


 2人揃って、知られてくなった秘密が暴露された瞬間だった。

 これまた、生徒達からの胡乱げな視線が突き刺さる。


「さぁ、男同士、楽しくやろうヤァ」

「ははは………お手柔らかに、」

「………出来れば、前後不覚に陥る前に解放してくれると助かるんだが、」


 にっかりと、豪胆でいて嫌らし気な笑みを浮かべたジャッキー。

 乾いた笑いを零す他、オレ達には選択肢がなかった。


 そして、


「テメェ等の、誠意次第だな。

 がぁっはっはっは!楽しみだぁ…」


 オレ達がこの後、無事に生還できたかどうかは、


「………身から出た錆じゃのう」

「(帰ってきてから、少しは労ってやればいいだろうな)」


 達観した様子で、ジャッキーにドナドナされるオレ達を見ていた嫁さん達だけが知っている。


 親しき仲にも礼儀あり。

 やっぱり、いくら親友だからって、後ろめたい秘匿はするもんじゃないねぇ。


 ………心底げっそり。



***

そして、やはりタイトル通りと言う訳です。


ジャッキーさん、結構地獄耳だったりします。

暗に、聞こえていただけとかいう、バレバレな若人組の策略。

まぁ、レトとディルの反応なんかを見て、勝手に判断した可能性も無きにしも非ずですがね。


気の良い兄貴だから最初は黙っておりますが、話してくれないなら自分で聞きに行っちゃうせっかちさん。

結局、ギンジと似た者同士の、気さくな親父さんでした~。


誤字脱字乱文等失礼いたします。

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