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短編をいっぱい書いたらインスピレーションとか高まってくんじゃないかなっていう試み  作者: 永多 真澄


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最近のオススメはレモネード

ツイッターでお題を募ったやつ。

第一弾は妹が送りつけてきたお題。

 バスとバスを繋ぐ十数分が、この頃は妙に愛おしい。

 中継のバス停で、田舎行きのバスを待つ間だけ重なるあの子との時間。中学までは同窓で、今は正反対の方角に進んでしまったぼくとあの子の、束の間。

 また別々のバスに乗って去るまでの、ほんの数十分の時間が、愛おしく寂しい。


「よう、偶然」


 なんて。ぼくかあの子のどちらかが、冗談めかしてそう言う。いつものこと。

 ずいぶんさびれた自販機で、缶ジュースを買ったりする。僕が奢ることもあるし、奢ってもらうこともある。懐具合の微妙なバランス。


「君のところは、変わったことはあったかい」


「とくに。きみのところは?」


「とくに」


 僕は貧乏くさくちびちびとシュースをすすりながら、あの子は気持ちよくひと息で飲み干しながら。とくに中身もない話をする。

 バス停のベンチに腰かけて、めったに車の通らない道を眺めながら、足をぶらぶらさせて。そういう、傍目にどこか白けたような、どうでもいいようなやり取りが、心をじわりと温める。


「いや、一つ変わったことがあったかな」


「どんな?」


「君に言うのは少し恥ずかしいが、告白を受けたよ。同級の子に」


「へえ、入学して半年もたたないのに、早いもんだ」


「驚かないんだね」


 口ではそう言っても、特に驚いたそぶりは見せていないのは、ぼくと同じだった。


「まあ、君ならね。顔も性格も悪くないんだから、そういう事はあるだろうさ」


「気恥ずかしいな」


「それで、受けたのかい?」


「悩んでるんだ」


「そう」


 ぼくはジュースの残りを無理してひと息であおって、錆びた自販機でレモネードを二つ買った。


「告白祝い」


「変なお祝いだね」


「いいじゃないか」


 瓶のレモネードは甘くて、ほのかに酸っぱい。


「君に先を越されるとはなあ」


「先も何も、まだ保留してる段階だよ」


「悩んでいるなら、受けるといい。どうするにせよ、あまり待たせるのは先方に失礼だろう?」


「それは、そうだね」


 先にぼくのバスが来て、「それじゃあ」とだけ言って乗り込んだ。いつもなら返ってくる返事は、この日ばかりは聞こえなかった。


 あくる日、あの子とバス停で顔を合わせることはなかったし、これからもないだろうな、という予感があったから、ぼくは錆びた自販機でレモネードを一つ買って封を切った。


 これからしばらくは、レモネードのお世話になるかもしれない。

 レモネードは甘くて、少し酸っぱい。

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