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悩める王子

作者: 天海六花

この短編は、「即興小説トレーニング」で書いた作品を清書した作品です。


王子は悩んでいた。

自分の役目とは何だろう?

先王がいる限り、王にもなれないのだから、何をすればいいのだろうか?

 王国に美姫ありといえば、やはり悪役に攫われなきゃならない。攫われる事で、その美しさが際立つから。でもやっぱり攫われるのはもうマンネリしていると思う。それでも攫われてこその美しき姫なのだが。

 だが王子の役目ってなんだろう。姫を助けにいくにも、実力は勇者に叶わない。悪党になったとしても、本物の盗賊や魔族には叶わない。それに頭も悪いから、知略を活かした策士なんてものにもなれやしない。

 ついでに言えば、顔も平均的すぎるから、婚約者がこぞって集まるようなイケメン王子にもなれやしない。

 はぁ、僕というつまらない何の取り柄もない王子の立ち位置は、なんて中途半端なんだろう?


 そんな悩める王子が僕だ。

 王子として何をすれば王子らしくあるかを考え、早十年。もう王子を名乗るのも微妙な年齢になってしまった。ここはひとつ、結婚でもして王様にでもならなけりゃいけない。

 しかし先王はまだ健在だ。先王がいる限り、王子は王になれない。老人といっていい年齢だが、いまだ病気一つした事のない健康優良な先王だ。つまり僕の父なのだが。

 先王がいるのに王になんてなれやしない。僕は先王が崩御するまで王子のままなのだ。ああ、これももうマンネリだ。


 僕はいったいどうすればいいんだ?

 これを考え続け、更に五年。もはや誰も王子と呼んでくれない。殿下と呼ばれる年齢になってしまった。

 ちなみに先王はまだまだまだまだ健在だ。こういっちゃ難だけど、崩御しなくていいから、さっさと王位継承してくれないものかな? 王になったという拍が付けば、少々歳を重ね過ぎた僕でも、結婚だってできるかもしれないのに。結婚だけでもすれば、王になれなくとも生活に華やかさが出る。

 見合い話一つ持ってこないだなんて、先王に僕は愛されていないのだろうか?


 と、考え続けてまたまた三年。もうさすがに無理だ。

 妹姫は攫われないし、イケメンな勇者は王国にちゃんといるし、先王はまだまだ健在だし、僕は殿下のままだし、結婚もできないし、何も変わらない。無駄に年齢だけ重ねていく。

 王族でなければ、自分で開業したりできたのかもしれないけど、僕は王子。それすらできない。そんな自由は与えられない。


 ああ! 僕は王子として何を求められているんだろう? 王子という縛りさえなければもっと気楽に生きられたかもしれないのに! 王子である限り、金銭面で苦労はしないけど、王子である事に苦労が絶えない。もう王子なんてやめてしまいたい!

 やめたとしても、今までぬくぬく王子として育ってきた僕に、自活なんて無理なんだけど!


 そうだ! いっそ、姫の代わりに僕を攫ってもらえませんかねぇ、悪党の皆さん?

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