魔道具師、イト
それはグルル王国の外れ、王都からは大分離れた所にある店。
世界中でも数が少ない、魔道具の店。
そこの店主である魔道具師のイト・ウルブドは、今日も一人、楽しく魔道具を作っていた。
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朝食は具なしのスープにリンゴのパン。カウンターの奥にある部屋で、魔道具師のイトは質素な朝食を口にしていた。
長身で、ダブついた服を着ている今年で二十三歳になる青年だ。長い黒髪を三つ編みにし、背中に垂らしているその青年は柔和な顔立ちをしており、なんとも人の良さそうな雰囲気を漂わせている。
店を立ち上げてから約二年。徐々に常連客が増えつつあるこの店だが、日の昇りだしたばかりの時間から客が訪れるわけではない。王都にある魔道具店にいけば、それこそ開店早々客が入るのだろうが、ここは違う。客が来るのは昼あたりから。一日に五人来れば盛況な、閑古鳥店なわけである。
そんな事は一切気にしない彼は空になった皿を台所に持っていくと、好みのお茶をゆっくり味わった。
「あぁ~。今日も一日、何事もなく過ごせるといいな~」
大きく体を反わせながら、イトは呑気な事を口にする。元から緩んだ顔は更にユルユルになり、周りから見れば何とも間抜けな光景だ。だがここに、それを指摘する他の存在はいない。
一人で魔道具を作り、一人で店を切り盛りするイトは、毎日を気楽に過ごす。
それでも退屈しない日々に、イトは充足感を得ていた。




