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僕のいもうと  作者: AI
9/32

故意のキス

「やっと来たぁ と思ったから まあ それなりに食べられたけど いまひとつだったわね。」


その割りには 千秋はしっかり食べていたのだが 


「まあ こんなもんさ。」


「でも 食器可愛かったですね。」


美幸は特にグラスが気に入ったようで 氷をストローでかき混ぜながら 笑った。


「さあ この後は どこを見る? パレード見ておこうか?」


千秋が時計を見ながらパンフをなぞる


「あ 私 そろそろ 帰ります。」


美幸がそういうと


「え!? どうして?」


千秋は驚いて顔をあげる。


「ごめんなさい・・・ でも 宿題が結構あって 今日のうちに図書館で調べておきたいものがあるんです。」


申し訳なさそうに頭を下げる美幸。


「そうか・・・ ごめんね 美幸ちゃんはY高校だったもんね。


付き合ってくれてありがとう。」


千秋が手を差し伸べると


「いえ 楽しかったです。 ありがとうございました。


兄さん じゃあね。」


と美幸も握手に応じて微笑んだ。


「・・・ああ 気をつけて帰るんだぞ。」


(置いてかれちまった・・・)


そんな風に感じた。


美幸は 俺と千秋を気遣って ひとり先に帰ったのだが


急に気分が落込んだ俺を 千秋は敏感に察したのか 


「坂本くん。疲れたんでしょ・・・


やっぱり ショーを見に行こうか?」


「ああ そうしよう。」


美幸が帰ってから  千秋はもっと堂々と俺の腕を取って歩くようになった。


周りがそうだと だんだん慣れてくるもので 千秋との歩調もだんだん合ってくる。


「ねえ あそこ見て お尻の振り方 かわいい♪」


「ああ 本当だ ハハハ。」


女の子とデートしたことがないとは言わないが そう多いわけではない


だが それほど 緊張せずに一緒にいられるのは


普段から よく交流のある千秋だからこそであろう。


少し涼しくなってきて 足が重く感じ始めたので


「そろそろ 帰ろうか?」


と 提案してみる。


「そうね さすがに この格好だと 寒くなってきたわ。」


「あ・・・ そうだよね。 ごめん 気がつかなくて


もっと 早くに言えばよかったな。」


自分の気の利かなさに舌打ちする思いでいると


「ううん・・・ もっと一緒に居たかったから 黙ってたの。」


「・・・千秋。」


「ねえ ・・・また 誘ってくれる?」


視線を下に向けたまま 千秋は訊いた。


「ああ 今度はちゃんと温かい格好して来い。」


なんだかいじらしくて 俺は千秋の髪をクシャッと撫でた。


「だって 私の自慢って 足くらいだから・・・」


顔を真っ赤にして 言い訳をする千秋


「十分堪能したよ。 夢にまで 出てきそうだ。クスクス。」


「え 本当? フフフッ」


「さあ 帰ろう 君が風邪をひく前に。」


「うん。」


俺たちは再び腕を組んで 駅をと向かった。


帰りの電車も結構混んでいて 俺は壁際に追いやられた千秋を庇うようにして立つ。


「なんだか 冷え切った体 すっかりポカポカになっちゃった。」


美幸より背が高い千秋は 身長182センチの俺より10センチほど低いくらいだ。


(美幸は 一人で大丈夫だったかな・・・)


おそらく 昼過ぎに帰ったのであれば こんなに混みあってなかっただろうから


心配はないと思うが・・・


「ねえ 何を考えてるの?」


「ん?」


見下ろすと顔を上げた千秋と視線がかち合う


ガタン・・・


神いたずらか 俺たちは そのまま 故意にそうしたかのように キスをしていた・・・


「・・・ごめん。」


「・・・別に わざとじゃないでしょ?


それに こんなことでもない限り 坂本くんからなんて さよならのキスさえしてもらえそうに なかったもの。」


「さ さよならの キス・・・・・?」



「昼間 私から したんだから それくらいするのは 礼儀です・・・ブッ 本気にとらないでよ。もう すぐ顔に出ちゃうんだから。 わかりやすいな~ 坂本くんは。」


「はは 意外と 気が利かなくて がっかりしたろ?」


「ううん 辺に 気が利きすぎる遊びなれた人より 一緒にいると ホッとするかも。」


ポフ・・・


千秋はそう言って 俺の胸に頬を預けた。


「好きだよ・・・ 坂本君。」


ドクン


千秋の告白に 俺の心臓は跳ね上がり


それを千秋がダイレクトに聞いているかと思うとますます 鼓動が早くなっていく。


「もっと 一緒にいたいよ・・・」


千秋の手がそっと俺の手を握る。



「千秋・・・」


「坂本くん・・・」


静かに顔を上げた 千秋の唇は


うっすらと開いて


俺はつい その柔らかそうな唇に魅入られる。


だが


「●●前~ ●●前~」


ついに千秋の降りる駅についてしまった。


「・・・ じゃあ またね 坂本くん。」


千秋は 少し残念そうに笑うと 手を振って 電車を降りていった。


ガラス窓越しに 見た千秋は 


TDL内で見た 明るさは どこかに隠れて


ぽつねんと さびしそうに立っている。


(千秋・・・)


あんな子を見ていると 側に駈け寄って 抱きしめてあげたくなるんだろうな・・・


世の中の男は


俺の 場合は・・・


少し それを 重たく感じていた・・・



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