TDL
土曜の朝 千秋や美幸と一緒にTDLに行くことになっていた俺は 少し早めに目が覚めてしまった。
千秋と待ち合わせた時間に間に合わせるには まだ余裕があったが トイレにも行きたかったし起きる事にした。
「あ 兄さん おはようございます。」
「美幸 随分はやいね・・・」
髪をふんわりとカールにさせた 美幸は レース使いのシャツを腰のあたりでゆるくベルトで締めており
その下から 白くすんなりした足が ピンクの膝小僧と共にきれいに並んでいた。
「み 短すぎないか?」
俺は目のやり場に困ってそういうと
「大丈夫 スカートじゃないですから。 これホットパンツっていうんです。」
とシャツの下に穿いている短いショートパンツも見せてくれた。
「ホ ホットパンツね・・・」
おそらく 美幸くらいの若い女の子じゃないと 穿きこなせない。
「変ですか・・・?」
少し不安そうに尋ねてくる美幸。
「いや すごく 可愛いよ。」
つい ジッと見てしまう。
(妹の足だからって あまりジロジロ見ちゃ・・・)
俺は慌てて トイレへと避難する。
「うう・・・ 落ち着け 俺。」
そういえば 普段 美幸は 制服以外 スカートもあまり穿かない方で
陽にさらされてない ゆで卵を剥いた様な足は あまりにも 危険かも知れない。
(ここは 兄としてびしっと言っておかねばなるまい・・・)
会社の女の子達も 通勤用のスーツでパンツやタイトスカートの子が多く
「ホットパンツ」なるものを穿いている子は あまり見たことはない。
渋谷などに行けば 普通にそんな子はゴロゴロいるのであるだろうが おそらく千秋もあまり奇抜な物は着てはこまい・・・
だが
「兄さんと 二人で出かけるなんて 初めてですね。」
にこにこと微笑む美幸の顔が更にまるくなる。
「ああ そうかもしれないね・・・」
言えない・・・
この笑顔を崩してしまうのが イヤで・・・と自分に言い訳をして そのまま 俺たちは待ち合わせ場所を目指して 家を出た。
「私と 兄さんって こうして並んで歩いてみると結構身長差ありますよね・・・」
「そうか? 今日はいつもよりは ないように感じるけど・・・」
「あ 少しヒールの高い靴を履いてるから・・・」
義妹はウエッジソールというのだろうか
今日彼女は そんなサンダルを履いている。
だが そうなるとますます足がきれいに見えてしまう・・・と俺は先ほど忠告できなかったことをひどく後悔し始めていた。
「兄さん こんな格好の連れがいるのは 恥ずかしかったんではないですか?」
俺がチラチラ 下半身に視線を投げかけるのに気がついたのであろう
そんな風に 少し悲しそうに 美幸は俺を覗き込む。
「恥ずかしいとかじゃないんだっ ただ あんまりキレイな足だから 他の男がおまえの足をジロジロみちゃうんじゃないかと 心配なだけであって・・・陽射しが肌にやさしくないとか・・・えっと・・・」
焦って 説明してるので 益々 訳がわからなくなってしまった。
「ふふ 心配してくれてありがとう。でも 今日は兄さんがいっしょだから 大丈夫ですよね?」
「ま まあ そうだな・・・コホン。」
ところがである・・・
「坂本く~ん♪」
駅で待ち合わせをした千秋は ミニスカートを・・・しかも ほとんどマイクロミニとも 呼ぶべき超ミニのスカートであり 薄い小麦色のほっそりした足が かっこよく 前後してこちらに近付いてくる・・・
「お 女の子って TDLに行くときは足を出すって 決まりでもあるのかな・・・」
とつい 口走ってしまったほどだ。
「そんな わけないじゃない!
でも まあ 歩き回るわけだから この方が歩き易いのよ。ね 美幸ちゃんだったかしら?」
「はい 兄がいつもお世話になっています。 坂本 美幸といいます。今日一日よろしくおねがいします。
足 すごく細くて きれい・・・」
遠慮なくジイーッと美幸は千秋の足を見ている。
(女同士だしな・・・)
少し羨ましい気持ちがわかないでもない
そして TDLに着いた。
土曜日のこの日は 家族連れも多く かなり混雑していた。
乗り物に乗るたびに並んでいるのも疲れるので あまり人気のないアトラクションを選んで周った。
「じゃあ 今度は美幸ちゃんが 坂本くんの隣に行くといいわ。」
二人乗りのアトラクションが多いため 俺たちは いつも2対1の状態である。
「いや 俺はひとりで 後ろに乗るから 君たち二人で座るといい。」
「えーっどうして?」
「交代で乗ればいいですよ 兄さん。せっかく来たのに・・・」
と二人から同時に 詰め寄られる。
(こんなことなら 先輩も誘えばよかった・・・)
と つくづく後悔しながらも 交代で二人は俺の隣に座ってくれた。
「次は私と一緒だよ 坂本君。」
何箇所目かの時アトラクションに乗る前に 千秋がいきなり 俺の腕を取った。
「ぁ・・・」
聞こえるか聞こえないかの ほんの小さな声が後ろからしていたが
気がついたときには 千秋と二人でビッグサンダーマウンテンの最前列に乗っていた。
もちろん 美幸はそのすぐ後ろである。
「どきどきしてきた・・・」
そう言って 再び千秋が俺の腕にしがみつく。
ムニ・・・
(こ これは 千秋のムネ・・・?)
ヒジに当たる柔らかい感触に おれは アトラクションを楽しむ余裕を喪失し
「兄さん両手挙げて!」
後ろからの 美幸の声で 我に返り あわてて 両手を挙げ
急流をいっきに下っていく。
「きゃーっ!」
「うわあああ!!」
こんな絶叫をしたのは ひさしぶりだった。
水しぶきがかかり 思わず目を瞑る。
「はあ・・・結構 しんどかった・・・」
出口から降りて ゼイゼイ言っていると
「兄さん はい。」
と 美幸は未使用のハンカチを俺に差し出してくれた。
「お サンキュ。」
「あの手の込んだお弁当といい 本当によく気がつく 妹さんね。」
長い足を 少しクロスするかのよう 千秋はモデル立ちをして言った
「そんな・・・」
なんとなく 空気が固いのは気のせいだろうか・・・?
俺は それを打ち砕くかのごとく
「腹へったな・・・ 何か 食べよう。」
と 提案をして
(今度は 俺はぜったい一人で 席にすわる!)
と 心に固く誓ったのだった。