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僕のいもうと  作者: AI
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リフレッシュ

「おはようございます。」


俺が顔を出すと 黒田先輩が慌てふためいて 立ち上がり 駈け寄ってきた。


「圭吾! おまえ 大丈夫なのか?」


「すみません ご心配お掛けしました。」


「今日 千秋ちゃんと お見舞いに行こうと話してたんだが・・・


まだ 腕吊っているじゃないか?」


俺の上から下 前 後ろまで 全部確認する先輩(苦笑)


「ヒビが入ってるだけだし 左腕だから 大丈夫ですよ 先輩。」


「セッカク チアキチャント フタリッキリデ・・・」


「はい? どうかしましたか?」


「ああ プレゼンの準備も この辺まで進んだんだが・・・ 今日 顧客の東京支社の方が」


と 黒田先輩が 進行状況をパソコンの画面を開いて 説明してくれている時に


「ああ 大事なところで 休んでしまって・・・」


「坂本くん!? どうしたの? ねぇ もう 出てきていいの!?」


早朝から 千秋の声がフロア中に響く。



「ああ ごめん もう 全然大丈夫。 心配かけたな。」


「びっくりしたわよ・・・ 美幸ちゃんも 大丈夫なの?」


どうやら 母のようにニュースを見て みんなある程度事情は知っているようだった。


「ありがとう 今日から もう学校に行ってる筈だ。」


「そう 良かった。本当に災難だったわね。」


ホッとしたように千秋は微笑んだ。


左腕は不自由だったが 現場に戻れた喜びの方が大きかった。


それに 心のわだかまりが消えたことも大きく影響していたかもしれない。


「なんだか 今日 おまえ 妙に調子良さそうだな?」


黒田先輩が首を傾げる。


「え? そうですか・・・ ああ きっと 二日間休んだのが 丁度いいリフレッシュになったのかな?」


たしかに 普段の俺なら あちこち傷だらけで 左腕が利かないとなったら


イライラしっぱなしになっただろうが


今日はそんなこともなかった。


「お昼しよ♪」


休憩時間になって 千秋がやってきた。


「私 今日お弁当作ってきたんだ。」


と 二段になった おしゃれな弁当箱を机に載せた。


「へえ 自分で作ったのか?」


「うん こないだ ママが作ってくれた お弁当 美味しかったから


私も練習してみるつもり。」



「すごい がんばったな 千秋。」


「ふふ 少し 交換してあげてもいいよ。」


「本当か? じゃあ そのミートボールと 俺のサンドイッチ取り替えてくれよ。」


「もちろん いいよ。 美幸ちゃんのお弁当いつも完璧で・・・・・ん?」


千秋が俺の弁当を覗き込んで 怪訝な顔をした


「今日は俺が作ったんだ。」


不恰好なサンドイッチに納得した千秋は


「そうなんだ。美幸ちゃん やっぱり具合が悪いんじゃない?」


「いや いつも美幸にまかせっきりだから 


たまには どうかなと思って作ってみたんだ。」


そんな 話をしていると まだ昼休憩に出ていなかった黒田先輩が


「おお 最悪にまずそうなサンドイッチ。 汗


千秋ちゃん 悪いことは言わないから そんなサンドイッチなんかと 千秋ちゃんのミートボール交換しない方がいいよ。」


「失礼だな・・・ ちゃんと手を洗って作ったんですから。 


ジャムと ピーナッツバターと チョコクリームと・・・・・」


「ただ塗っただけなのに なんで そんなに不恰好になるんだよ!?」


「そ そんなことないよ。私甘いの好きだから これなんか おもいっきりチョコがはみ出してて おいしそう♪」


と千秋が手を伸ばしかけると


「千秋ちゃん 止めろ。


おなか壊したらどうする?


ああ しょうがない 俺が食べよう。」


「ええ?」


なぜか 黒田先輩が 手を伸ばして 俺のサンドイッチを 一口かじる。


「ん・・・ 見た目どおりの チョコたっぷりのサンドイッチ。」


「クスクス 黒田主査 私のお弁当もどうですか?」


「ええ いいのかい♪」


「もちろん どうぞ。お口に合うかどうかわかりませんけど・・・」


と言いながら 俺がトレードしようとしていた ミートボールをつまむ。


「美味しい~ 最高だよ。 千秋ちゃん。」


「なんだよ・・・ったく。まあ いっぱい作ってきたからいいけどさ。」


「子守唄を? わぁ 気持ち悪い・・・ 美幸ちゃん 怖かったでしょうね~」


事件について 話すと千秋は両手で肩を抱くようにして震えた。


「まわりに警察官が沢山いたから すぐに出て行ったんだろうけど・・・


そうじゃなかったら どうなってたんだろうかと思うと ぞっとするよ。」


俺も またあの声を思い出して 苦々しく思った。


「本当にそうね・・・


怖いわ~ 


それって いつ 他人に逆恨みもたれても 不思議じゃないってことよね?」 


「・・・ああ そうだな。」


ふと 気になることがあった。


― 本当に 子守唄を聞かされただけだったんだろうか? ―


枕を持って 俺の部屋に訪れたのは 


あんな事件のあった直後で怖かったからと 単純に考えていたが


あれほど行動力のある犯人が 美幸になにもしないで 立ち去るだろうか?


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