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僕のいもうと  作者: AI
2/32

二人の距離

妹の勉強を見てやってから


しばらく落ち込んでた俺は 夕方になってから やっと立ち直って


窓を開けて 少し 部屋の掃除を始めた。


-また 遊びに来てもいい?-


美幸に そんな風に言われたことを思い出して


もうちょっと ましな状態にしておきたかった。


ヌード写真集とエロ雑誌は クローゼットの奥深くに押し込んで


大量に出現したゴミと資源ゴミを持って 廊下を出た。


埃っぽい 俺の部屋とは一変して 香ばしいカレーの良い香りがしてきた。


グルルルルル・・・


一階に下りると 美幸は台所でカレーを温めなおしていた。


「あ 兄さん 今呼びに行こうと思ってたんです。


さっきは ありがとうございます。 


それから お部屋にも強引にお邪魔しちゃって・・・ごめんなさい。」


美幸は また敬語にもどっており なんとなく他人行儀な感じで圭吾はすこし寂しい気持ちになる。


「いや また いつでも 来てくれて構わないよ。」


「ありがとう


あれ それは・・・」


美幸の目が 下に移るのに気が付いて 


「あ ガレージに行ってくる。」


慌てて 俺は裏口に向かった。


大量の漫画やペットボトル・空き缶を 押し込んだ俺は


洗面所に立ち寄って 手を洗った。


(義妹に 見られたからって いきなり 掃除を始める俺・・・ カッコ悪。)


それでも ダイニングに戻ると義妹は すでにテーブルに座って俺を待っていた。


「ごめん 待たせちゃったな。」


「ううん 


兄さん 私 お返しに お部屋の掃除くらい 思いつけばいいのに 


ごめんなさい。」 


(美幸に俺の部屋の掃除なんて・・・とんでもない。)


「いや 気にしなくていいよ。


おいしそうだな ありがとう 美幸 頂きます。」


「頂きます。」


俺の向いで 美幸のちいさな手が合わせられる。


腹が減っていた俺は すぐに スプーンで大盛りに掬い上げ 大口をあけて パクッと一口で 食べた。


「・・・・・美味い!」


「良かったぁ・・・」


美幸は じっと 俺の食べる様子を見ていたようで 


俺が美味いと褒めると ちょっと 顔を赤くして 微笑んだ。


(か 可愛い・・・)


カレーの辛さと 興奮で 異常に汗が出てくる。


「ちょっと いつもより 辛くしたんですけど


大丈夫ですか?」


汗だくの俺を見かねたのだろう 気が付くと 美幸はタオルを濡らしてお絞りを作って差し出してくれていた。


「・・・サンキュ。」


義妹の細やかな 気遣いに感激しながらも 


その冷たい お絞りを広げて 顔に押し当てた。


(き 気持ちいい・・・)


首の後ろや もっと他のところまで 拭きたくなってしまったが 


そこは ぐっと抑えて 


再び カレーに取り掛かる。


「おかわりあるかな?」


と 空になった皿を差し出すと


「はい。」


美幸は にっこり笑って 皿を受け取ると おかわりのカレーを盛ってきてくれた。


「あの 掃除機まだ かけてないのでしたら 私 やりますけど?」


美幸は 思い出したように 顔を上げる。


「いや 勉強教えたくらい そんなたいしたことしているわけじゃないから


気にしなくていいよ。


このカレーを作ってくれたことだけで 十分だ。


美味しいよ 本当に。」


無理だ・・・あんなまだ 埃がもうもう立ち込めるような部屋に美幸は 入れられない。


「・・・あの。」


「何?」


「兄さんは・・・ その・・・」


カチャ・・・カチ


下を向いたまま 美幸は いたずらにスプーンを カレー皿の上で遊ばせる。


(何か 俺に 言いづらいことでもあるんだろうか・・・?)


「何でも 言ってごらん 遠慮せずに。」


そう 促すと


「は はい・・・


に 兄さん 私が この家に いること どう思っているんですか?」


「え・・・?」


俺は 意外な質問に まじまじと 彼女を見た。


緊張のためか 少し強張った 顔


「どう 思ってるかって・・・ どうしたんだい? 急に・・・」


質問に対して 質問で返してしまってる・・・と 思いながらも 聞かずにはおられなかった。


「圭吾兄さん・・・ いつも 私に 優しくて 


すごく 気を使ってくれてるのが わかるんです・・・


そんなに気を使わなくちゃいけないほど 私のこと 苦手と思われてるのかなって・・・」


「そんなことはない!」


美幸の言葉を半ば遮るように俺は声を張って答えた。


「俺 美幸みたいな いもうとができたこと すごく 嬉しいよ。


さっきみたいに 頼ってくれたことも 誇らしかった


気を使ってると思わせてたならごめんよ。


いもうとを持つのは 初めてで 


どうしたらいいか わからないだけなんだ。 ごめん いい歳して。」


「いい歳してって 兄さんは まだ 21歳でしょ?」


クスッと少し緊張の解けた顔をした美幸


「君からみたら  おじさんだろう?」


「そんなことないよ。私 もっと 兄さんと 打ち解けたいなって ずっと思ってて・・・


今日は 絶対 兄さんのお部屋に お邪魔しようって 思ってたの。」


「そ そうだったんだ・・・」


なんだか すごく 照れくさくて 嬉しくて


俺は すごく複雑な顔をしていたと思う。


「それから・・・ 今日 できれば・・・」


「ああ なんだい?」


「私の部屋に 遊びに来て・・・ほしいんです。」


ドキーッ!



「み 美幸のへ 部屋に・・・?」


噛みまくりで 不審がられるのでは?と不安になったが


「はい 掃除で 忙しいですか?」


「いや もう ほとんど かたづいたから じゃあ 掃除機をかけたら お邪魔するかな。」


「本当? 良かった・・・」


真っ赤な顔をして 美幸は 微笑んだ。


ドキドキドキ・・・


(ああ 動悸がおさまらない・・・)


夕食を終えた後


俺は 食器は兄が洗うというのを 美幸に押し切られ 二階の掃除の続きをすることにした。


(美幸の部屋に・・・招待されてしまった・・・)


興奮がまだまだおさまらない。



床の隅に落ちていたペンや ベッドの下に 落ちていた 靴下など だいぶ 掃除機で吸い込んでしまったようなのだが


そんなことも あまり 気にならずに 


-私の部屋に 遊びに来て・・・ほしいんです。-


と言った 美幸の顔が 何度も脳裏に蘇ってきた・・・


掃除機をかけおわり


カレーと掃除で 埃まみれ汗まみれは さすがにまずいと思い


1階のバスルームに向かった。


案の定 シャツは汗でぐっしょりと重たくなっており


このまま行けば 不潔な兄といもうとに軽蔑されるところだったに違いない・・・


そして ハーフパンツを脱ぎかけた時・・・


ガチャ


「・・・」


「・・・」


髪をアップに纏めた 美幸と ハーフパンツを半分下ろした俺の視線がかち合った。


「や やあ。」


「ご ごめんなさい。」


美幸は 耳や首筋まで赤くなってしまったため


俺も逆に恥ずかしくなってしまった・・・


「ごめん 声をかければ良かったね・・・ 先にお風呂使っていいかい?」


「も もちろんです 兄さん。」


美幸はそう言うと すぐにドアを閉めて 出て行った。


(はぁ ビックリした・・・)


我に返った俺は 美幸が待っていることを思い出して さっさと体と頭を洗い 汗を流した。


(今日は もう お邪魔しない方がいいだろうな・・・)


思春期の少女に 汗臭い上半身裸の姿を 披露してしまったのである


きっと あの子は ショックで 今夜は眠れないに違いない


罪深き兄は 反省して 自室にて自粛しているべきであろう・・・


風呂からあがると 「風呂あいたよ。」


と 居間に一声かけて 俺は自室に下がった。


開けっ放しだった 窓から 夜の心地よい 風が入ってくる


自分の部屋でこんなに綺麗な空気を吸うのは久しぶりだ


これもそれも すべて いもうとのお陰である。


(年頃の女の子と一つ屋根の下で暮らしてるって 自覚が足りないよな 俺は・・・)


普段なら ここで ベッドに寝転がり エロ雑誌など読んでいるところだが


今日はそんな気にもならず っていうか 殆ど先ほど処分をしてしまったため


俺はCDをかけて 夜なのでヘッドホンをつけて 好きなナンバーを目を閉じて聞いていた。


コンコン・・・


♪~~~♪~


コンコンコン・・・


♪~♪~~


ドンドン!


「ハッ!?」


ドアが鳴っているのに 気づいて 慌てて ヘッドホンを外すと


「どうした!?」


ガチャ!


勢いよく ドアを開けると 再度ドアを叩こうとしていた 義妹が俺の胸に飛び込んでくる形となった


ポム・・・


やわらかくて 甘い 良い香りが俺の鼻腔を擽る


「兄さん・・・ 来てくれるって 言ってたでしょ?」


「え・・・あ ああ でも もう 遅い時間だし・・・」


「まだ 10時です。駄目ですか?」


泣きそうな 顔をして そう訴える美幸。


「ご ごめん 行くよ。」


ずっと 待たせていたのだろうか・・・


ちゃんと 行かないのであれば そう 声をかけるべきであったのだ・・・


「どうぞ。」


俺がちゃんと着いて来ているか 確かめながら 美幸は 部屋まで案内してくれた。


ここは 来客用の寝室だったのだが 義妹が来たことに伴い 少し壁紙など変えて改装したはずであったが


まるで 別物の部屋になっていた


義父が買ったテディと 他の縫いぐるみが並び


カーテンもレースをふんだんに使った少女らしいもの


壁掛け時計も 絨毯も ベッドも 全てが女の子らしい


母が感激するのも頷ける。


「凄いね・・・」


「え? そ そうですか・・・? あんまり 見ないでください 恥ずかしいです・・・」


「あ そうだよね ごめんよ。」


部屋着に着替えた義妹は 俺に ベッドに腰掛けるよう勧めて


遠慮がちにそっと 腰掛けた俺は


(美幸がいつも ここから みてる眺めか・・・)


とベッドからの光景をぼんやりと 見る。


できれば その枕に顔を埋めたい・・・と いう衝動と戦いながらも


義妹がなにやら クローゼットから 運んでくるのが目に入った。


「兄さん これ・・・ 一緒にやって。」


「これって・・・ テレビゲーム?」



「そうなの・・・ こっちの学校に来て初めて声をかけてくれた子の家で 先月初めてやったんだけど 全然勝てなくて・・・


悔しいから 溜めていたお小遣い使って 先週中古のゲーム機買ったんだ。


でも 女の子の友達で テレビゲーム やってる子いなくって・・・ 全然上達しないの。」



(って ことは・・・その初めて声をかけてくれた子って 男の子なのか・・・)


と 考えていると


「ねえ 兄さんは ゲームできる?」


と 美幸に尋ねられていた。


「ああ もちろん 言ってくれれば 買わなくても 貸してあげたのに 


俺の部屋に まだいろいろソフトもハードもあるから いつでも はいって遊んでいいよ。」


「本当! ありがとう!」


子供らしい笑顔に 俺はきゅんと切なくなる。


だが 俺たちは そのすぐ後に また大汗をかくことになるのだ・・・


「美幸 そこ 撃て!」


「ええっ あ あああ 外れた!」


「こっちだ 早くかくれろ!」


「ま 待って あああ 掴まっちゃうっ!」


「美幸 そこだ 連打!!!」


「はいっ」


ガガガガガガガ!!!


コントローラーを熱く握る義妹への手ほどきは 深夜まで続き



この日 



俺たちの距離は 少し 縮まったような 気がした。



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