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僕のいもうと  作者: AI
14/32

保護者

ひとり分の皿はあっという間に洗えるはずなのに


ボーっと考え事をしていたらしい


ガチャ・・・


その時 浴室から美幸が出てきて


「洗ってくれたんですか? ありがとう。」


上気した頬に 濡れた髪


パジャマ代わりのTシャツと 短パン


普段は それほど気にならないのに


さきほど 翔とキスをしていた光景がフラッシュバックする。


「喉渇いちゃった・・・」


美幸が俺の横を通り抜け 奥の冷蔵庫を開く


「ほら コップ・・・」


「ありがとう。」


美幸に手渡そうとして ふと視線が そのふっくらとした唇に止まる。


ガチャン!


「あ ごめん!」


「ううん 私こそ すぐ受け取らずにごめんなさい。」


「あ 動くな 俺が拾う。」


素足の妹の周りに飛び散る ガラスを 慌てて拾う


大きな欠片を集めて


ふと視線を上げると 桃色に色づいた ふたつのつるんとした膝小僧が並んでいた。


ゴクッ


「掃除機もってくるから  そのまま 動かずにいろ。」


「ごめんなさい 兄さん ありがとう。」


喉を鳴らした音 


かなり 大きかったし 妹も気づいたかもしれないが


構わず 掃除機をかけて 彼女の足の指に入り込んだ欠片も吸い取ってやった。



「く くすぐったい・・・フフッ」


固く目を閉じて 震えながら笑う妹に


「こら 動くな 皮膚に刺さっちゃうぞ。」


パチパチ・・・


しだいに ガラス片を吸い込む音が静かになり


歩かせても 平気かどうか


再度 ウエットティッシュで床を拭いた。


「動いてもいいぞ 美幸。」


「ありがとう 兄さん。」


新しいコップに水を入れて 


数歩 歩き出した美幸は


「痛い・・・」


と 立ち止まった。


「え ごめん まだ残ってたんだね。 どっちの足だ 見せてごらん。」


俯いた美幸は なぜか恥ずかしそうに小声で言った。


「ううん 足じゃない・・・」


「何? じゃ はねた破片で切ったのか?」


「そうじゃないの・・・ 水飲んだら 沁みてきちゃった。」


美幸が手で唇を押さえている


「・・・さっきので 傷つけられたのか?」


「私がいきなり 突き放したから・・・」


(あいつ 美幸にとっては初キスなのに 唇を甘噛みでもしてたのか?)


またムカムカしながら 


「見せてみろ・・・」


と 少し恐い顔で言ってしまったのか


「だ 大丈夫だよ。」


と 妹は立ち去ろうとする。


「いいから 見せてみろ。」


妹の手にもったコップを取り上げ 台所に置いて


両手で 顔を包んだ。


「・・・どの辺だ?」


「あ あの・・・」


妹の舌が 傷ついた部分をちろりと舐める。


「そこか・・・」


親指で 下唇を押し下げ


ヤツの歯形の残る ピンクの唇を 凝視する。


「ひどいな・・・ 俺の美幸を 傷つけやがって・・・」


ムッとする俺に


「え・・・俺のって・・・」


とまどう 美幸


「あ・・・ いや 俺の大事な 妹の唇を 乱暴に扱われて ムカついただけ。」


あわてて 言い訳をする俺。



(変に思っただろうか?)


ジワ・・・


「あ 血が出てきた。」


俺が 親指で押している所為もあったのだろうが


ピンクの唇に 真っ赤な血が滲んできた。


血がジワジワと出てきて 結構 深く噛まれていたことがわかる


これじゃ 水はもちろん 食べる時もしばらく沁みるだろう


「可哀相に・・・」


俺の親指にまで 血は達して


すっと 指を外すと


鮮血が唇の端から滴り落ちそうになった。


「あ・・・」


俺は魅入られるように美幸の唇から流れ落ちる血に唇を押し当てていた


「!」


鉄の味が口中に広がって初めて 自分が今何をやっているか気が付く。


が 美幸は抵抗せず じっと目を閉じていた。


(美幸・・・)


ペロ・・・


彼女の傷からにじみ出る血を舐め取りながら 何度も唇を重ねた


(やめなきゃ・・・ こんなこと・・・)


心ではそう 叫んでいるのに


俺の両手は しっかりと美幸を捕らえ


まるで吸血鬼のように 血が香るキスを味わった。


ゴクッ


俺の喉が鳴ったのを合図に 唇が離れ


「・・・ごめん。血が落ちそうだったから つい・・・」


パチン!


「もっと 腫れてきちゃったかも・・・」


と 言って美幸は ポロリと涙を落とした。


「美幸 俺は・・・」


(何を言いたいんだ・・・俺は?)


言いかけて 固まっている俺を


「・・・おやすみなさいっ」


美幸は 置き去りにするように 駆け出して 自室に入ってしまった。


(なにやってるんだ・・・俺? 最低・・・だ 保護者としての 自覚 “0:ゼロ”じゃないか・・・)




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