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僕のいもうと  作者: AI
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お留守番

-お留守番-


「兄さん・・・ 父さんが呼んでいます。」


妹の美幸が また敬語で呼びかけて来た。


あの子と義父が この家に来て 3ヶ月


いっこうに打ち解けてくる気配はない。



中1と言うのは 微妙な年齢なのかもしれない


21歳の俺を かなりおじさんと見て 畏まっているのか?


「ああ わかった 今 降りるよ。」


大学4年で某企業に内定の決まっている俺は 時々バイトする位でほとんど家にいる。


別に引きこもっているつもりもないが 


それがあの子を怖がらせているのか?


再婚で 双方子連れ


まあ 俺も これを機に一人暮らしをしても良かったのだが


なんとなく 親の再婚で いい年した男が拗ねたように思われるのが嫌だったのというのもあるけど


義父というのが 結構忙しい人で


出張も多く 


ほとんど家を空けている為 用心棒のつもりで やむを得ず 残っているとしておきたい。



血の繋がった父親が不在で


新しく家族になったばかりの歳の離れた義兄の俺と


さばさばしたキャリアウーマンだった俺の母と暮らしていることを 


実際 美幸は どう思っているのだろう・・・


ガチャ


ピクッ


「ああ ごめん。」


ドアを開けると 思いがけず 美幸はそこにいて 


俺が意外と早く出てきたので 驚いたのか 体を微かにビクつかせた。


「・・・お土産があるみたいです。」


「そうか~ なんだろうね?」


努めて 柔らかく 爽やかに 話しかける俺を 


ますます 怪しく感じるのか


美幸は 


「さぁ・・・」


と 言葉少なに 答えた後 さっと 急ぎ足で 階段を降りる。



細く柔らかい まだ少女の髪は


さらさら風に乗って 一足ごとに 肩先で揺れる。


時々 触れてみたい衝動に襲われるが


そんなことをすれば 口もきいてくれなくなりそうで恐ろしい・・・


「やあ ただいま。圭吾。」


「お帰りなさい 父さん。」


母と同じ会社の上司だった義父は 再婚を機に母を専業主婦にさせて


俺達家族を養っている。



専業主婦というものに 憬れていた母は 


あまり家事は得意ではないものの


ガーデニングをしたり お菓子を焼いたり


そして なんと言っても 愛らしい娘と買い物に行くというイベントに夢中になっている。


母のテンションにまったくついていけてない様子の美幸は


それでも 健気に毎回 母のお付き合いをしてくれている。


そして 俺も


「おおっ これ エンゼルスの松井のサインボール!? すっごい。 観に行ったの? 父さん!」


あまり大袈裟にならないように 俺が驚いて見せると


「ああ 取引先の接待でね。 ヒット2本打っていたよ。」


とほっとしたように微笑む義父。


「うわ~~ いいな。俺もリアルで観てみたいよ~ ありがとう。」


野球のことなど 特に興味のない母と美幸にとってみれば なんのありがたみもないただのボール。


義父は俺が昔 少年野球をしていたことを母から聞いているのかもしれない。


が それは 昔の話で 今 俺はどちらかというとサッカーの方に興味がある。


「美幸 お前は 何を貰ったんだ?」


「これよ テディ。父さん ありがとう。」


すこしアンティークな熊のぬいぐるみを 膝に載せて 微笑む愛らしい美幸。


まだこの子は こんなぬいぐるみの似合う少女だ。


「ごめんな もう 中学生だし ぬいぐるみなんて 卒業する頃だと思うんだが


迷ううちに つい こいつに手を伸ばしちまうんだ。」


と苦笑する義父。


実際 美幸は 既に 何体ものテディを持っているらしく 


母の話だと ガラスケースに大切に並べて保管されていて やっぱり女の子ね~ アンタの部屋とは違うわと目を細めている。



まあ 美幸の部屋に入ったことはないが ゲームソフトやCDを積み上げ


ベッドの下から エロ本がはみだしているような 俺の部屋とは比べようもないだろう。



「でね 今日はパパ ひさしぶりに帰ってきたから 


ママとデートすることに なったのよ。


悪いけど あなた達は お留守番ね。」


2週間ぶりとはいえ 俺と美幸を置いて 二人だけで デートかよ・・・


まあ 俺がいるから 安心して美幸を置いて 夫婦で出かけられるということも あるのかもしれない。


そう考えると 俺って 親孝行してるのか? 


「何? 圭吾ったら ニヤニヤして・・・ 嫌な子。」


母が照れて 顔を赤くしている。


「別に 思い出し笑いしていただけだよ。 いいよ 行ってきなよ。


美幸 俺達も なにかうまいもん食いに行こうか?」


と 声をかけると


美幸は 少し 戸惑ったように長い睫毛をはためかせた。 


「ああ 大丈夫よ。 ちゃんと さっき 美幸とママでカレーを作ったから。」


母が 偉そうにそう言ったが どうせ 美幸がほとんど作ったのだろう。


「そうか へえ 楽しみだな。美幸は料理上手だよね。」


実際 俺の母より 手際が良い


ずっと義父と二人暮しで 家事をしてきたらしく


店屋物や スーパーの惣菜で済ませてきた母とはキャリアが違う。


「そんなことないです・・・。お母さんの味付けがいいから。」


(おや 少し 赤くなった。)


一瞬 リアルな美幸を見たようで 興味を惹かれた。


「いってきま~す♪」


「楽しんできて!」


機嫌よく 出かけた 母と義父。


残された 俺達は 二人を見送った後


何を話しするでもなく それぞれのお土産を持って 自室に下がった。


(うぅ・・・ 飯の時は どういう態度とっておいたら リラックスしてくれるんだろ・・・ 参ったな・・・)


今頃 美幸は 俺の何倍も緊張しているかと思うと 気の毒でならない


母のデリカシーの無さにはあきれるばかりだ。


(まあ 食べたら さっさと風呂入って 寝ちまえば いいんだ。)


夕飯までは まだ 時間があるため ベッドでごろごろとしながら ヘッドホンをして CDを聞いていると


コン・・・


微かに ドアを叩く音が聞こえたような気がしたが


まさか 美幸が母の不在時に 俺の部屋を訪ねてくるとは思えず 


(そら耳か?)


と 高を括っていると


コンコン


「・・・」


今度は確かにノックの音が聞こえた。


俺はヘッドホンを取り


「美幸か?」


と 今家には 俺以外 あの子しかいないのに 馬鹿な質問をした。


「はい・・・ 美幸です。」


消え入りそうな声が 返ってくる。


「どうした 何かあったのか?」


ドアを開けると 俯いた姿勢の美幸がそこに立っていた。


「美幸?」


じっと 動かない美幸に 声を掛けると


やっと はじかれたように


「休んでいるところを 突然 ごめんなさい・・・」


と ぺこりとお辞儀して 恐る恐る 顔を上げた。


ドキッ


長い睫毛の下の大きな瞳が少し潤んで 


つやつやした柔らかそうな唇は微かに開いている。


「べ 別にいいんだよ。 どうせ 本を読んでいただけだから 何か 俺に用かい?」


年甲斐も無くどぎまぎしながら 俺が訊ねると


「あの・・・ 数学教えてくれませんか?」


おずおずと 背後から 問題集を出して 俺に見せた。


「数学か そろそろ難しいところに入るもんな いいよ。じゃあ 居間に下りようか?」


「・・・ここでもいいですか?」


「は?」


「兄さんの部屋でも いいですか?」


一瞬 美幸が何を言ったのか 理解できなくて 俺は固まった。


「私 兄さんの部屋 一度 見てみたかったんです・・・ 駄目ですか?」


「俺の部屋を・・・ マジで?」


こくんと 頷いた 美幸は 少し目元が潤んでいる。


(ま まずい・・・ きっと この子なりに 俺に打ち解けようと 必死なんだ。)


「い いいよ もちろん すっごい むさくるしい部屋だけど 驚くなよ。」


「ありがとう・・・」


ほっとしたように 美幸は 頬を緩めた。


それから 俺は 少し慌てた


「ちょ ちょっとそこで待ってて!」


だいたい机の上は勉強できる状態にはなってない。


空いたペットボトルと 食べかけのスナック菓子 脱ぎ捨てたジャケットを手早くどけて


アダルト雑誌類をベッドの奥の方へと蹴飛ばした。


「どうぞ ちょっと 汗臭いかもしれないけど・・・」


(消臭スプレーでも 買っておけば良かったか?)


と 更にへんな 汗をかいていると


「お邪魔します・・・」


と 意外と すんなり美幸は入ってきて


キョロキョロと周りを見回した。


「こっちに 座りな。」


あわてて 机の前の椅子に美幸をかけさせる。


この時 俺は 初めて 美幸のノースリーブの肩に手をかけたのだが


無意識に触れたその素肌は吸い付くように滑らかで


一瞬めまいがしたほどだ。


(・・・俺って 危なすぎる。さっさと教えて 買い物にでも行って来よう・・・)


俺の戸惑いなど いっこうに気づかない美幸は


さっそく問題集を机の上に開いて


「ごめんなさい ここなんだけど・・・」


と恥ずかしそうに 指をさした。


「ああ 応用問題だね。」


少し ひっかけがある問題で それなりに高度な問題集をやっているようだった。


俺は なるべくわかりやすく噛み砕いて説明をしながら 解き方だけを教えてやると


「ああ そうだったんだ。」


と にっこり微笑んで すぐに美幸は答えを導きだした。


「できるじゃないか よしよし。」


可愛くて つい 俺も調子に乗り 美幸の頭を撫でてしまい


直後に (まずい・・・)


と手を止めたが


美幸は俺を振り仰いで 


「ありがとう 兄さん。」


と ステキな笑顔を見せてくれた。


(か かわいい・・・)


この辺りで もう俺は この新しくできた義妹にいちころになってしまっていた。


それから 数問 勉強をみてやった後


「ありがとう すごく助かっちゃった。」


と 美幸は椅子を立った。


(もう 終わりか・・・)


もっと 居てほしいとさえ 思い始めた俺の脇をすり抜けるように ドアの前に立つと


「それから・・・ このお部屋・・・面白い! ふふっ


また 遊びに来てもいい?」


と いたずらっぽい笑顔で 振り向く。


ズギュン!


完全にぶち抜かれた気分。


「あ ああ いつでも・・・」


しどろもどろにやっと答えた情けない俺は


こんな ガキに いや あろうことか義妹に


まるごとハートを持っていかれてしまったのだ。


(どうするよ 俺? この後も まだまだ こいつとふたりっきりなんだぜ?)


へたり込んだように 椅子に座った俺は


「あ・・・」


机の上の本棚に ヌード写真集が数冊載っているのを発見。


しばらく落込んだ・・・


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