おにぎり屋ふくふく|はじめてのおつかい
朝のふくふく。
「いらっしゃいませ」
ふくさんの声に、小さな女の子が顔を出しました。
きょろきょろと店の中を見ています。
クロが、そっと近づきました。
「にゃ」
女の子は、びっくりして一歩下がります。
「……ねこ」
でも、逃げませんでした。
「どうしたの?」
ふくさんがやさしく聞きます。
女の子は、ぎゅっと手を握って言いました。
「おにぎり……ください」
「はいよ。どれにする?」
「えっと……」
女の子は、並んだおにぎりを見て――
止まってしまいます。
ミケが小さく言いました。
「迷ってるね」
まぐろはくすっと笑います。
「初めてかな」
トラは応援モード。
「がんばれ!」
シロは静かに見守ります。
クロは、女の子のそばに座りました。
「にゃ」
女の子は、クロを見て、少しだけ深呼吸。
「……おばあちゃんに、あげるの。元気ないから……」
ふくさんは、やさしくうなずきました。
「そうかい。それは大事だねぇ」
クロは、ひとつのおにぎりの前に座ります。
梅ぼしのおにぎり。
女の子は、それを見て言いました。
「これ……すっぱいやつ?」
シロが、くすっと笑います。
「でも、元気が出るの」
ふくさんは、そっと包みました。
「はい。やさしい元気、入れておいたよ」
女の子は、大事そうに受け取ります。
「ありがとう」
店を出るとき、クロもついていきました。
トコトコ。
女の子は、何度も振り返ります。
「来てくれるの?」
クロは、「にゃ」と答えました。
家に着くと、女の子はそっと扉を開けます。
「おばあちゃん」
中から、弱い声。
「どうしたの……?」
女の子は、差し出しました。
「おにぎり、買ってきたの」
「元気になるやつ」
おばあちゃんは、少し驚いて、でもやさしく笑います。
「ありがとうねぇ」
ひとくち、ぱくり。
「……あったかい」
その声に、女の子の顔がぱっと明るくなりました。
クロは、そっと外から見ています。
しっぽを、ふわり。
帰り道、女の子は言いました。
「ねこさん、ありがとう」
クロは、少しだけ前を歩いて――
「にゃ」
その日もまた、ふくふくのおにぎりは、誰かの大事な気持ちを、ちゃんと届けていました




