1.1 天の川銀河から姿を消す
「くそっ…知覚因果説の否定には中々骨が折れるな…」
俺は苦慮していた。自分が取り組んでいる哲学問題にである。
「そして、そろそろ膀胱がやばい…マジで漏れそう…」
または、自分が抱えている頻尿にである。
俺は学屋の姓に哲と名付けられた通り、哲学を学ぶことに腐心している。
…学校の勉強など放っぽり出して。
だって学校の勉強はつまらない。問題はや解き競争に強制的に参加させられ、用意された答えを言い当てるだけのつまらないゲーム。
だから俺は、高校1年生の初っ端から学校に行くのをやめた。
高校受験で十分に悟ったのである。"この先もこんなことを続けて何になるのだろう"、と。
「だから明確な答えが一つに定まらない哲学は、俺の絶好の狩場なのに…!クソっ、思考を遮る自分の頻尿が恨めしい!」
ドンッ!ドンッ!下から箒で天井を叩く音がする。
「夜中にやかましい!不登校の分際で、研究と称して騒ぐな!このバカモンが!」
父のどなり声だ。お前こそ説教という名目で騒ぐな、と言いたい。
「が…まぁこれ以上邪魔が入っても嫌だし、静かに研究を進めるか…」
俺は声を数トーン落とす。そして真剣思考モードに入る。この思考のモード切り替えの瞬間、いつも俺は髪がフワッと舞い上がる感覚を覚えるのだが、まぁ錯覚なのだろう。
「…ってあれ?」
本当に髪が、いや身体が宙に浮いている。
「ってえええええ!」
この日、アマチュア哲学者こと学屋哲はそんな叫び声ともつかない声と共に、天の川銀河系から姿を消した。




