けっして蛇口をひねってはいけない部屋
AIが考えるホラー風に書いてみます
たぶんギャグになると思います
親友の美沙が一日だけマンションの部屋を留守にするというので、私が留守番をすることになった。
留守番とはいっても、じつはお願いしたのは私のほうだ。彼女の豪華なマンションの部屋にぜひとも住んでみたかったのだ。
「置いてあるものは動かさないでね。ゲーム機は好きに使っていいわよ。猫も好きに遊んで」
私を連れて、美沙は部屋の中を案内してくれた。
「汚したらちゃんと掃除してね? ベッドのシーツは私が帰るまでに取り替えて」
「男なんか連れ込まないわよ」
私はそんなつもりは本当になかった。
「ただ、いつもの安アパートとは違う暮らしがしてみたいだけだから」
キッチンへ案内すると、美沙は冷蔵庫を開けた。
「中に入ってる食料品、自由に食べていいわよ。賞味期限の近いものから片付けてね?」
開けられた冷蔵庫の中を見て、私は少しだけ驚いた。
「ペットボトルがたくさんあるね。これ、中身はぜんぶ水?」
「そうよ。水はこれを使って」
美沙は振り向くと、脅すように言った。
「これはすごく大事なことだから言っておくけど、水道の蛇口だけは絶対にひねらないでね」
「えっ?」
そう言われて、思わず流し台を見た。
不自然だった。いかにも最新のキッチンなのに、水道の蛇口だけがやたらと古めかしく、まるで昭和のような、ひねるタイプのものがついている。
私は聞いてみた。
「蛇口をひねるとどうなるの?」
「わからない」
「わからない……って?」
「この部屋に入った時、管理人さんに言われたの。蛇口をひねると恐ろしいことが起きるって。だから一度も私はひねったことがないの」
「そっか……」
「それじゃお留守番、お願いね」
美沙はまるで海外旅行にでも行くみたいな大荷物を身の回りに出現させると、部屋をすうっと出ていった。
「へへ……。ブルジョワ気分」
私はふかふかのベッドの上で飛び跳ね、ゲーム機で遊び、猫で遊び、冷蔵庫のソーセージを猫と一緒に食い尽くすと、やることがなくなった。
ふいに気になった。
『蛇口をひねるとどうなるんだろう……?』
流し台に視線をやった。
薄暗い夜の影の中で、静かに蛇口は佇んでいる。
私は吸い寄せられるように、そこへ近づいていった。
近くで見るといかにも古めかしい。
こんな綺麗な部屋には似つかわしくもなく、何十年も前からここにあるように、それは腐食していた。
私は蛇口の栓に手をかけた。
暇だからだろうか。刺激を求めているからだろうか。湧き上がるそれをひねりたい衝動を、必死で抑えた。
「水なら冷蔵庫にいくらでもあるじゃない」
なんとか思いとどまり、冷蔵庫を開けると、ペットボトルの水を取り出し、コップに注いで飲んだ。
「まっず……!」
腐ったような味がしたのでよく見ると、コップの中に糸みたいな虫が何匹もいて、クネクネと動いている。
「うがい……! うがいしないと……!」
浴室へ走った。
シャワーのたもとについている蛇口を急いでひねった。
美沙が「ひねってはいけない」と言ったのは、キッチンの蛇口のことだ。ここは大丈夫なはずだ。
蛇口からはふつうに水が出た。私は口の中を濯ぐと、ふぅ……と息を吐いた。
背後に誰かが立っている気配を感じた。
おそるおそる振り向くと、誰もいない。
その向こうに、流し台の蛇口から、ぴちゃん、ぴちゃんと、水が滴っているのが見えた。
「なんで……水が出てるの……?」
私はひねってない。猫がひねったのかとも思ったが、猫は自分のベッドですやすやと眠っている。
私は再びそこへ近づくと、水を滴らせている蛇口の前に立った。
ぴちゃん──
ぴちょん──
止めないと……と、思った。
腐食した水栓に手をかける。
それを、閉めるほうへ、ひねった。
どざざー!
間違えたようだ。開けるほうにひねってしまった。
どざざざー!
水が止まらなくなった。
閉めるほうへひねったら、かえって水勢が強くなった。
猫がびっくりして蛇のような声で鳴いた。
水と一緒に、蛇口から何かが出てきた。
「ひねってはいけないって、あれほど言ったのに!」
そう言うと、蛇口から出てきた美沙が、水を止めた。
しかし部屋に充満した水はガラス窓を水圧で粉々に割り、私は9階から笑顔で落下していった。