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序章
──「現実が終わっても、ゲームは続く。」
その言葉が初めて安永律禾の目に飛び込んできたのは、校舎の窓に春の光が差し込む、静かな放課後のことだった。
時刻は午後五時を少し回ったところ。
まだ冬の名残が残る空気の中、律禾と一志の二人は、学校から駅前へと続く坂道を並んで歩いていた。下校ラッシュのざわめきからは少し離れた、ひっそりとした裏通り。アスファルトに落ちる影が、どこか長く寂しげに伸びている。
律禾の手元には、引換証のコピー。
今日がその発売日だった。
──《Labyrinth of Rebirth》。
突如発表された完全新作のフルダイブ型VRMMORPG。
その存在は、まるで霧のように謎に包まれていた。公式サイトに記されていた情報はごくわずか。ゲームシステム、ストーリー、登場キャラクター、すべてが不明。だが一つだけ、確かなことがある。
「七つの大罪を倒さねば、この世界からは出られない」
そう書かれた一文だけが、異様に鮮明に、燦然と掲げられていた。