43.決戦、影と炎の剣
王の墓所に響き渡る、重々しい沈黙。
“王の炎”を纏う少女と、“魔王の影”を統べるゼルギウス――。
二人の間に漂う緊張は、まるで嵐の前触れのようだった。
レイヴァンは剣を構えながら後方へ下がる。
「……奴の力は尋常じゃない。お前の”炎”だけが頼りだ、気をつけろ」
少女は静かに頷く。
「……ええ、わかってる」
ゼルギウスが不敵な笑みを浮かべる。
「さあ、見せてみろ。“王の継承者”よ」
刹那、地が揺れた。
ゼルギウスが黒き剣を振り下ろす。
「“影の刃”――滅せよ」
ゴォォォォォ!!!
黒い斬撃が一直線に少女を襲う。
少女は反射的に剣を振るい、“王の炎”で受け止めた。
キィィィィィン!!!
蒼炎と黒影がぶつかり合い、火花が散る。
衝撃波が墓所全体を揺るがした。
(強い……!)
ただ剣を交えただけで、腕が痺れるほどの威圧感。
ゼルギウスは剣を構え直し、静かに歩み寄る。
「まだ終わらぬ。第二撃――」
少女は歯を食いしばる。
(受け続けていてはダメ……攻める!)
剣を逆手に持ち直し、前へと踏み込む。
「燃え上がれ……“王の炎”!!」
蒼き炎が剣を包み、爆発的な熱を放つ。
ゼルギウスがその一撃を見極め、迎え撃とうとした、その瞬間――
ドォォォン!!!
蒼炎が黒影を突き破る。
ゼルギウスが初めて防御を崩され、後方へと跳ぶ。
「ほう……」
鎧の一部が焦げ、黒い靄が立ち上る。
「……やはり”王の炎”は厄介だな」
ゼルギウスは低く笑うと、剣を持ち直した。
「ならば……“影の王”の力を見せよう」
その瞬間、墓所全体が黒い闇に包まれた。
ゴゴゴゴゴゴ……
壁に刻まれた紋章が、一斉に黒く染まる。
影が渦巻き、空間そのものが歪んでいく。
レイヴァンが目を見開く。
「……これはマズい!“影の領域”だ!」
“影の領域”――それは魔王の影が発動する特殊空間。
この中では、影が実体を持ち、敵の力が何倍にも強化される。
ゼルギウスの瞳が赤く光る。
「“影の王”の剣を、その身に刻め……!」
闇が凝縮され、剣に纏わりつく。
まるで虚空を裂くかのような、漆黒の斬撃――
少女は剣を構え、迎え撃つ。
「……私は、負けない!」
“王の炎”を燃え上がらせ、渾身の一撃を繰り出す。
蒼炎と黒影が、墓所の中心で激突した――!