41. 王の墓所の戦い
ドォォォン!!
闇の奥から現れた**“影の巨人”**が、圧倒的な力で地を揺るがす。
その体は黒い靄に包まれ、輪郭すら曖昧だった。
ただ二つの赤い光が、闇の奥からこちらを睨んでいる。
「……強敵ね」
少女は剣を構える。
レイヴァンもまた、静かに剣を抜いた。
「こいつが”魔王の影”の核を守っているのか……」
影の巨人は、のっそりと腕を振り上げた。
そして――
「……ォォォォォォン!!!」
咆哮とともに、拳を振り下ろす。
その一撃はまるで城壁を砕くような破壊力だった。
ズガァァァァン!!
衝撃波が地面を揺らし、石の床が砕け散る。
少女は素早く横へ跳び、回避する。
(正面から受けたら、一撃で終わる――!)
レイヴァンが叫ぶ。
「足を狙え!動きを止めないと勝てん!」
「わかってる!」
少女は黒炎を纏った剣を握りしめ、跳びかかる。
影の巨人の膝へ向けて、一閃!
ズバァッ!!
黒炎が影を焼き裂く――はずだった。
しかし――
(くっ……!?)
影の巨人の体は、剣をすり抜けた。
まるで”実体のない闇”でできているかのように。
「効かない……?」
少女は眉をひそめる。
レイヴァンが険しい表情をする。
「こいつ……普通の攻撃じゃダメだ!“魔王の影”に対抗する力が必要だ!」
「魔王の影に……対抗する力?」
少女は拳を握りしめた。
その瞬間、体の奥底から”熱”を感じる。
(……この力は)
王城での試練以来、少女の中に宿っていた**“炎”の力**。
“王の炎”――
それこそが、“魔王の影”に対抗する鍵だった。
影の巨人が、再び拳を振り下ろす。
少女はそれをかわし、瞳を閉じる。
(私の中にある”炎”……“王の炎”よ)
(――答えて)
ボッ――!!
黒炎とは異なる、蒼き炎が少女の剣を包んだ。
それはまるで、“夜空を焦がす彗星”のように蒼く輝いていた。
レイヴァンが驚愕する。
「……これは!?」
少女は静かに目を開いた。
瞳に宿るのは、蒼き炎の光。
「“王の炎”……“影”を打ち払う炎よ!」
蒼炎を纏った剣を振るう――
ズバァァァッ!!!
今度は、影の巨人の体を切り裂いた。
“影”が焼かれ、黒い靄が消滅していく。
影の巨人が苦悶の叫びを上げた。
「グォォォォォォォ!!!」
少女は息を呑む。
(やはり……この炎なら”影”を消し去れる!)
ならば――
「レイヴァン、最後の一撃を!」
レイヴァンが頷く。
「……任せろ!」
二人は同時に跳ぶ。
蒼炎と黒炎が交差し、影の巨人を貫いた――!
「――終われ!!」
ズバァァァァァァン!!!!
影の巨人が砕け散る。
そして――
王の墓所の奥に”核”が現れた。
影の巨人が消滅した後、墓所の奥に黒い球体が浮かんでいた。
それは、まるで”生きている闇”のように蠢いていた。
「……これが”魔王の影”の核」
レイヴァンが慎重に剣を構える。
「これを破壊すれば、王都を覆う”影”も消えるはずだ……だが」
少女は剣を握りしめる。
「“魔王の影”……ゼルギウスの力そのものが宿っているなら、簡単にはいかないわ」
ズズズ……
核が不気味に蠢く。
まるで、自らの意思を持つかのように。
そして――
「……貴様が”黒炎の継承者”か」
墓所の奥から、低く響く声がした。
レイヴァンが表情を険しくする。
「……ゼルギウス!」
黒い霧が渦巻き、その中から漆黒の鎧を纏った男が姿を現した。
魔王の影を統べる者――
“魔将ゼルギウス”。
少女は剣を握りしめる。
「……やはり来たのね」
ゼルギウスは冷笑した。
「貴様が”王の炎”を覚醒させるとはな……だが、それだけでは”魔王”には届かぬ」
「……魔王?」
ゼルギウスは剣を構える。
「“王の試練”の最後の扉を開け……“真実”を知るがいい」
次の試練が、始まろうとしていた。