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40.王都への帰還

影の戦いを終えた少女とレイヴァンは、ようやく王都の城門へとたどり着いた。


 しかし、王都は異様なほど静まり返っていた。


 「……何かがおかしい」


 少女は足を止め、周囲を警戒する。


 かつての王都は活気に満ち、多くの人々が行き交う場所だった。

 しかし今、通りにはほとんど人の姿がなく、まるで”見えない何か”が人々を怯えさせているようだった。


 「レイヴァン、これは……」


 「……おそらく”魔王の影”の影響だろう」


 レイヴァンの視線が王城へと向かう。


 王城の上空には黒い雲が渦を巻き、不穏な気配が漂っていた。


 (魔王の影……ゼルギウスの言葉が気にかかる)


 “魔王は必ずお前を討ちに来る”


 少女は剣を握りしめた。

 今はただ、王城へ向かい、この異変の正体を確かめるしかない。


 「……行こう」


王城の門を抜けると、そこには王国の重臣たちが集まっていた。

 彼らの表情には不安が浮かんでいる。


 そして、王座の前に立っていたのは――王太子アルベルトだった。


 「黒炎の継承者よ……よく戻った」


 アルベルトは重々しく口を開いた。


 「王が倒れた。魔王の呪詛に蝕まれ、眠りについたまま目を覚まさない」


 「……王が?」


 少女は驚きを隠せなかった。


 アルベルトは苦しげな表情を浮かべる。


 「そして……王が倒れてから、王都には奇妙な”影”が現れ始めた」


 “魔王の影”――それが王都を覆いつつあるのだ。


 レイヴァンが低く呟く。


 「ゼルギウスの仕業か……」


 アルベルトは頷く。


 「おそらくな。だが、問題はそれだけではない」


 彼の言葉に、少女は緊張を走らせた。


 「王が倒れたことで、“黒炎の継承者”であるお前に疑いの目が向けられている」


 ――“王の呪詛は、黒炎の継承者がもたらしたものではないか”と。


 少女は息を呑む。


 「私が……?」


 「王都の民の間でも、不安の声が上がっている。“黒炎”が呪いであるという古い伝承が、また広まり始めた」


 王都の不穏な空気の理由がわかった。

 人々は黒炎を恐れ、少女を”呪われた存在”として見始めているのだ。


 (そんな……私は、黒炎の呪いを乗り越えたはずなのに)


 しかし、それを証明するには、ただ力を示すだけでは足りない。

 “王の継承者”として、王都を救わなければならない。


 「私は……どうすればいい?」


 アルベルトは少女の瞳を見つめ、静かに告げた。


 「“王の試練”を受けろ」



 “王の試練”――それは、真に王の器であるかを証明する儀式。


 古代王国では、新たな王が即位する前にこの試練を受けることが義務付けられていた。

 試練を乗り越えた者こそ、“王の資格”を持つと認められる。


 「だが、この試練は簡単なものではない」


 アルベルトは厳しい表情で続ける。


 「お前は”黒炎の継承者”として、王の試練を受け、王都を脅かす”魔王の影”を討たねばならない」


 「……“魔王の影”を?」


 アルベルトは王城の奥を指さした。


 「“王の墓所”の奥深くに、“魔王の影”の核が存在すると言われている」


 少女は眉をひそめる。


 「なぜ王の墓所に……?」


 レイヴァンが答える。


 「おそらく、ゼルギウスが”魔王の力”をそこに隠したのだろう。

  王都を呪い、“黒炎の継承者”を貶めるために」


 「……やるしかないのね」


 少女は剣を握りしめた。


 王の試練は、単なる儀式ではない。

 王都を覆う”魔王の影”を討ち、民の不安を払うための戦いなのだ。


 (私が”王の炎”を受け継いだのなら……この戦いに勝たなければならない)


 少女は決意を込めて前を向いた。


 「“王の墓所”へ向かう」


 その言葉に、アルベルトは頷いた。


 「頼む。お前が”王”としての資格を示せるか……すべてはこの戦いにかかっている」


王城の地下に広がる”王の墓所”。


 そこには歴代の王たちの霊が眠ると言われている。

 だが今、そこに漂うのは死者の静寂ではなく、“魔王の影”の気配だった。


 少女はゆっくりと歩を進めた。


 ズズズ……


 奥へ進むにつれ、闇が濃くなる。

 まるでこの場所そのものが”魔王の領域”に侵食されているかのようだった。


 「……ここに”魔王の影”の核があるのね」


 レイヴァンが剣を抜く。


 「気をつけろ……何が出てくるかわからん」


 その言葉と同時に――


 ドォォォォン!!


 巨大な黒い腕が地面を裂き、目の前に現れた。


 “影の巨人”――魔王の影が生み出した守護者。


 「……やはり”ただの試練”では終わらないか」


 少女は”ルシフェルブレード”を握りしめる。


 黒炎が剣を包み込み、静かに燃え上がった。


 「……来い」


 試練は、始まった。

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