27.囚われた者たち
黒き霧が立ち込める森の中、少女とレオニスは慎重に足を進めていた。
霧の向こうにぼんやりと浮かび上がる人影――亡者たち。
彼らは静かに立ち尽くしていたが、少女が一歩踏み込んだ瞬間、
一斉にゆっくりとこちらを向いた。
その顔には、何の感情も宿っていない。
「……黒炎の影に取り込まれた者たち?」
少女は、手のひらに炎を灯しながら呟く。
すると、その声に反応したかのように、亡者たちは動き出した。
足音もなく、静かに、しかし確実にこちらへと迫ってくる。
レオニスが剣を構えた。
「……やるしかねぇな」
少女も頷き、黒と青が混ざった炎を握りしめた。
一体の亡者が少女へと手を伸ばしてくる。
その瞬間、少女は炎を放った。
黒炎と雪の力を宿した、新たな炎。
それが亡者に触れた瞬間――
亡者の動きが止まった。
「……?」
普通の黒炎ならば、すぐに燃え尽きるはずなのに。
だが、少女の炎は亡者を焼き尽くすのではなく、
その身体にゆっくりと溶け込むように広がっていった。
すると、亡者の顔に微かな表情が浮かんだ。
「……たすけて……」
少女の胸が、締めつけられる。
(この人……まだ完全には取り込まれていないの?)
炎がゆっくりと亡者を包み込んでいくと、
やがてその身体が霧のように消えていった。
残されたのは、ただ静寂だけ。
レオニスが驚いたように少女を見つめる。
「……今のは?」
「……私の炎が、亡者を解放した?」
普通の黒炎とは違う。
この炎は、破壊するだけでなく、何かを”浄化”する力を持っているのかもしれない。
少女はもう一度手のひらに炎を灯した。
黒と青が混ざった、不思議な炎。
(もしかして、これが……黒炎の本当の力?)
黒炎は、単なる破壊の力ではない。
本来は何かを”救う”ために存在していたのではないか――
少女はそう思い始めていた。
その時、森の奥から重い足音が響いた。
現れたのは、他の亡者たちとは違う異様な存在。
全身を黒炎に包まれた、一際大きな亡者。
少女は、息を呑んだ。
「……この炎で、救えるのか?」
次の瞬間――その亡者が、黒炎を纏った腕を振り上げ、
少女へと襲いかかってきた。




