24.雪に覆われた街
降りしきる雪の中を歩き続け、二人はようやく街の入り口にたどり着いた。
そこには、静寂に包まれた白銀の街が広がっていた。
「……ここ、は……?」
少女は息を呑んだ。
見渡す限り、雪に覆われた建物。
しかし、奇妙なことに――
人の気配が、まったくない。
レオニスが慎重に辺りを見回す。
「……妙だな。普通なら、雪が降るだけで人の姿が消えることはない」
まるで、すべての生命がこの街から消え去ったかのようだった。
少女の中で、不安が広がる。
(この雪は、ただの自然現象じゃない……)
黒炎を受け入れたその瞬間、世界の何かが変わった――そんな予感があった。
二人はゆっくりと街の中へと足を踏み入れた。
雪の下から、かつての生活の痕跡が覗いている。
扉が開いたままの家、食卓に残されたままの食器、倒れたままの椅子。
まるで、人々が何の前触れもなく消え去ったかのようだった。
「誰もいないのか……?」
レオニスが呟いたその時だった。
かすかな音が、どこかから響いた。
――ザリ……ザリ……
それは、雪を踏みしめる足音だった。
二人は同時に振り返る。
そこにいたのは――
一人の少女。
彼女は、ぼんやりとした表情でこちらを見つめていた。
白い髪、白い衣。
まるで、この雪の世界の一部のような存在だった。
しかし、彼女の瞳は不自然に黒い。
少女は、静かに唇を動かした。
「……あなたは、巫女?」
少女は、わずかに驚きながらも答える。
「……そう、だけど」
次の瞬間――
その白い少女の瞳が、黒炎の色に染まった。
「ならば、あなたを迎えに来たわ」
少女の言葉とともに、街の雪がざわめき始める。
――まるで、それが生きているかのように。
突如、街に吹雪が巻き起こった。
ただの雪ではない。
それは、どこか不気味な気配を帯びた白き霧のようだった。
レオニスが剣を抜く。
「……何が始まる?」
白い少女は、微笑んだ。
「これは、黒炎の巫女を迎える儀式」
「あなたが、新たな時代の巫女となるために――」
その言葉とともに、雪がうねるように動き出す。
そして――
白銀の街が、黒炎の巫女を試す戦場へと変わった。




