表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/11

奇妙な朝



朝、まどろみの中で目を覚ました。部屋は薄暗く、カーテンの隙間から朝日が細く差し込んでいる。隣には、いつも通り夫が寝ている——はずだった。


しかし、そこに夫の姿はなかった。


代わりに、小さな赤ちゃんが布団の上で手足をバタバタさせていた。


「……え?」


寝ぼけているのかと思い、目をこすりながら辺りを見回す。でも、やはり夫はいない。代わりに、1歳の娘、桜とは別の、見知らぬ赤ちゃんがいる。


「……ちょっと待って」


心臓がドクンと脈打つ。夫は昨夜、確かに隣で寝ていた。深夜にふと目を覚ましたとき、彼の寝息を聞いたのを覚えている。それなのに、朝起きたら姿が消え、代わりに赤ちゃんがいる——?


悪い夢でも見ているのかもしれない。そう思いながら頬をつねる。痛い。夢ではない。


赤ちゃんがふにゃっと小さく泣いた。


「え、ええと……誰?」


桜はベビーベッドでまだ眠っている。この子は誰? どこから来たの? 夫はどこ? 頭の中で疑問がぐるぐる回る。


パニックになりながらも、とりあえず赤ちゃんを抱き上げる。しっかりとした温もりがある。柔らかく、少し湿ったほっぺたが頬に触れる。間違いなく、本物の赤ちゃんだ。


「ええと……落ち着いて、落ち着いて……」


深呼吸をして、もう一度赤ちゃんの顔をじっくり見る。その瞬間、血の気が引いた。


この子、どこかで見覚えがある——。


まん丸の目、少しつり上がった眉、ぷっくりした唇。


「……まさか」


夫に、似ている。


心臓が跳ねる。そんなはずはない。そんなはずは——。


震える手でスマホを掴み、夫に電話をかける。コール音が鳴る。しかし、部屋の片隅から聞き慣れたバイブ音が響いた。


「え……?」


見ると、夫のスマホが枕元に置かれている。つまり、彼はスマホを持たずに出かけたのか? それとも——。


理解が追いつかない。これは何かの冗談? それとも、何かの事件?


そのとき、赤ちゃんがふと、私をじっと見つめた。


その目には、戸惑いの色が浮かんでいるように見えた。まるで、「どうしてこんなことになったんだ……?」と言いたげな、大人びた目で——。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ