クマ出没注意
賢者タイムという言葉をご存じだろうか。動物的本能で射精した後に冷静になるアレのことだ。俺は今その状態になっているわけなのだが、最初に感じたのは寒いという事だった。夜中の森の中裸で野ざらしである状態が寒くないわけがないだろう。それに相当汗をかいた。俺はシャツをタオル代わりにして汗を拭き服を上下ともに着る。ここまでずっと無視してきたのが本当は一番最初に感じていたのだが目をそむけたくほかの行為をしてしまうのは小心者ならば絶対共感してくれるはずだ、しかしもう着替えは終えてしまった、するとどうだろう心なしか湯気が立っていて満身創痍で寝伏せていてあそこから白い液体がたらたらと流れている見るも無残なというか俺のせいなのだが襲われた全国的人気モデルの女の子がいるじゃないか、背後に、そう罪悪感だった。これが誰かにばれてしまえば俺は社会的に死ぬだろう。というかファンや全校生徒から殺されるかもしれない。ひとまずすぐさま通報される場所かあたりを確認することにした。行為の途中を見られるような場所であれば俺は今すぐにでも外国に移住計画を立てなければならないことになる。しかし探索しに行くのにも裸のやられっぱなしな哀れな女の子を置いていくのにも気が引けるため俺はくるみに服を着せそのままおんぶをして一緒に連れていくことにした。「ぐかー」というか寝てやがる、寝息が耳元でなりっぱなしの状態から始まる森林探索の始まりであった。ざくざく、道はもちろんまともに整備されておらず小枝や枯れ葉、砂利などでミックスされた地面をはだしで歩くのは正直とてもつらい。今すぐにでも辞めたい。しかし探索を開始して数十秒で見つけたある看板を見つけたからには歩くのをやめるわけにはいかないのだ。クマ出没注意、たしか見つけた当初は走ったっけ。本当にビビりだな俺、いや普通の人でもこれはビビるよな。なんせクマ撃退スプレーも持っていなければ騒音を鳴らして威嚇できるような得物もない丸腰状態の一般人がクマと出会って何ができよう。みすみす食われるのがオチだ。となれば今はたとえ足に変な細菌が入って後で壊死しようとも必死にこの森から降りるだけだ。しかしここはどうやら森ではないようだと気付いたのは痛いのが足だけではなく膝だとわかってからだった。しかもとても急斜面であり冬場はスキーでもやれるんじゃないかと思う程だ。しかし急斜面で人をおんぶして足が悲鳴をあげようともにわかの俺でも知っている山の知識によると下っていくのは悪手であり遭難するのみだということなので大変つらいのだがここは耐えるしかない。殺風景に見えるのは山に木があまり生えていないからだろう。夜なので道が広いのは大変ありがたいのだがその吹き通しの景色からクマが俺を見つけてしまうのではないかと大変心配だ。少なくとも山頂にクマがいるなんて聞いたこともないし標高が高ければナッツに見つけてもらえるのではないかという希望もある。帰宅部の俺にとって急斜面を上るのはかなりつらい。厳しいって、モテないって、という煽りに乗せられて運動部に入っとけばよかったと心底後悔してるさながらとうとう足がプルプルと震えてきた。いくら吹き通しの景色と言っても全然山頂なんぞ見えないしそれに枯葉も辺りにはないため潜伏もできない。ザ・エンドってねとマリオRTAでの決まり文句を言って俺は歩くのをやめた。限界だ。こりゃ起きたらクマに食われててお陀仏かね。くるみを木にもたれさせ俺も寝っ転がって死を待つ。長い長い夜だった、童貞を捨てるのがまさか彼女じゃないなんてな。とんだ屑だな、俺。こんなんじゃ神様に天罰食らって殺されるかもな、たとえ明日クマに見つからず死ななかったとしても、死ななかったとしても………「グルルル!」見つかりましたね。終わった。まぁでも童貞を捨ててこの世をされたんだから悔いはない。現代社会に残る魔法使いどもさらば。これが俺の辞世の句である。ドスンドスンドスン!某漫画のイノシシの被り物をしていたやつがいつも言っていた猪突猛進ってこういう事を指すんだなぁと俺はどこか他人事のようにしょんべんを垂らしながら達観していた。「チビるなんて情けないわね」いや、ほんとにな。俺も漏らしたのなんていつぶりだろう………って誰?「ふんっ!」と言いながらそいつは怪しげな円状の皆を包み込む緑のバリアを放つ。クマはそれに向かって突進していく。ドゴン!ドゴン!ドゴン!凄い衝撃波がこの変な領域内からでも伝わってくるがまったく領域が緩む気配がない。これでもまだクマはひるまず今度は噛む攻撃に移行したようだ。ガチガチガチ。例のごとく領域は揺るがない。そのうち自分の歯が折れたと自覚したクマはついに恐れをなして逃げていった。それを当然のように見送るのはナッツであった。怖え、こんなあっさりクマを撃退するなんてこいつこんなに強かったのか。思えば初対面で思いっきり攻撃のフルコンボ食らって俺は気絶したな。くるりと振り返るとその恐るべき怪物少女は「なんかいうことないの」とクマより怖い形相で尋ねてきたので「す、すみません」と返した。「!!」グイっと胸倉をつかまれる。俺とナッツはお互いの鼻先が当たるくらいの距離である。至近距離からにらまれるって怖い。またちびりそうだ。ナッツは顔を真っ赤にさせながら鼻息が荒く「ッッ!………ッッ!」と言った感じで会話の出だしに苦労していた。でも見るからに怒鳴りそうだし何というか落ち着けなんて言ったら片方の手でぶん殴られそうで俺はそのおそらくそのうち出てくるであろう怒声を待つのみであった。「スッーーー、」おっと思いっきり息を吸い込んだぞ、もうすぐで俺の鼓膜の寿命がきそうであr「ずっーーーーーーとみてたんだからね!!」ざわっ!山全体が喚いた。鳥は一斉に鳴き声を飛ばしながら飛んでいくしいたる木の中からフクロウとリスの声がする。動物園かここは。しかしそんな大きな声も耳栓をしていれば問題ない。ちょっと鼓膜が破れるくらいで済んだ。まぁとにかく痛い。しかしここはなろう主人公らしくヒロインの言葉は聞き取る能力を持っていたということにしよう。なんせどうせ「聞いてんの!?」って言葉で締めくくられるにきまってるんだからな。それまでずっと俺の脳内オタク話を読ませられる読者がかわいそうだろう。なのでここから俺は人生で初めて使う能力を使ってナッツの罵声を読者にお届けすることにする。別に俺は聞きたくもないんだがな。「私、一応彼女よね!?キスもしたし、好きだって言われたし私彼女よね!?それなのになんでレンの初体験は私じゃないの!?天界にいると全部丸見えなのよ、このエロ猿!なんなのよなんなのよなんなのよ!あんなクソ巫女のどこがいいのよ!それにそのビッチの妹まで好色だしたりして布団の中だろうと天使の目はごまかせないんだから!それにね、いままでずっと言ってなかったけど私人間の心の中くらい読めるのよ?あんな腐ったノイズをよくも聞かせてくれたわね!この、この、このおおおおおお!」バシッ!バシッ!バシッ!とビンタが往復。これは殴られても仕方がないな。というかいままでずっと聞こえていたのか、俺の脳内の声が。「えぇ、そうよ!あんたのマニアックな思考もすべて吹き通しだったわ!それも含めて全部受け止めてやるって言ってんのよ!」おぉ、なんだか怒ってるようでもなかなか可愛い。ツンデレっていいよなぁ。近頃は暴力系はダメだとかママがいいとかいう甘ったれた奴もいるがでもやっぱr、「うるさいうるさいうるさい!今はそういうこと考える時じゃないでしょ!?いいからキスしなさいよ!誠意を見せるのよ、誠意を!」はいはい、わかったよ。誠意を見せますよ、誠意を。もはやさっきの怒声で野生動物はいない。この世の全て音を排除したかのような月夜に照らされて破廉恥な行為をするというロマンチックな環境の中なまめかしい音が響く。ちゅっ。なんともエロい。「エロいのはあんたでしょ、っんぐ!?」もうナッツの声は聞き飽きたので口をふさぐことにする。「んっんっんっ///]とキスしているとナッツが喘ぐのは俺のキスの仕方がうまくなっているからなのだろうか。それもさっきのあれも含めての事なのか、いや考えたくもない。今の俺にはこんな可愛い彼女を見捨ててほかの女とやってしまったという罪悪感で胸がいっぱいだからだ。そんな贖罪のキスはとても長く続いた。しかしそれは後ろにいるすっかり忘れられたくるみの声で止まってしまう。「な、なにやってんの!?」俺たちは強引に引き離される。ナッツは夢見心地で紅潮した顔のままキスが終わったのも気づいていないようなぽかんとした顔をしている。いや、まずいぞ、この力。引き離されたといっても手がまるで見えなかったし脳も多少揺れたと思う。くるみは次の瞬間ナッツに襲い掛かろうとする。いかん!「ナッツ!」と叫ぶとナッツはハッとした顔をして目の前の敵を確認する。ぱぁん!手が組み合う音が山の中にこだまする。さっきから騒音がすごいが苦情が来ないか心配だぜとか考えるのは小心者の思考でありすぐにそれは打ち消されるほど超常現象が目の前に起こった。二人とも手をつかみあったまま空を飛んでいる。はーまてまて、ナッツはわかる。ナッツはわかるんだが………なぜ人間のくるみが空を飛べる!?ぱちぃん!今度は二人とも手を離したようだ。離れあう二人。じりじりと間合いを確かめある二人。どこか要所要所二人がそっくりと思う部分もあった。しかしそんなことは月明かりに照らされながら当たったらヤバそうな光の弾を飛ばしあって戦う幻想的風景の前では些細なことでありすぐに吹き消される。某人気同人ゲームの戦いにそっくりだなぁ早くまた整数作品やりたいなぁといつの間にかそのゲームのことを真剣に考えこんでいる間に勝者が決まったようだ。ナッツがくるみの襟首を掴んで降りてくる。ナッツは不機嫌そうに「少しは私にがんばれーとか言えないわけ?まぁ私が負けるわけないけど。この子人間にしてはやるわね。戦闘力ならフ○ーザくらいあるわ。あんたは戦闘力5の例のあの農家ね。で、この子の家どこ?送り返したら早速いい機会だしあんたんちで映画?だっけ見たいわ」と言い俺の手を掴み、空を舞うのだった。




